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3巻 1章 魔導人形と電撃飛来と愚者のカードと
息吹の掌 Three types
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焦りと怪我の痛み、そして自信という鼻っ柱を確実に折られた事を実感するジルベニスタ。上下の歯を悔しさで噛みしめる。切れた口の中からまた少量の出血が見られ、袖口で拭う。
(くそ……これほどのダメージを受けるとは! 完全に舐めきっていましたね。こんなところをフィオナ様ならいざ知らず、父上に見られずに良かったというもの)
自分が冒険者Sランクになり、王国騎士団団長という地位に着いてからというもの、激務に追われ、王都での政略に塗れ、毎日蝶や花のような貴族の女性たちと浮名を流していた。そう実戦から、鍛錬から、冒険からかなりの間遠ざかっていた事実を突きつけられたようだ。
「このまま倒れているだけなんて認めませんよ! 騎士団長である『疾風のジルベニスタ』の異名は伊達では無いのですから!! 」
特にアイツだ。あの特異な炎の魔道具を持つレンジ! わたくしに全く尊敬の念を抱かず、動じもせず、媚へつらいもしない。あのような者には初めて出会った。
だが倒れたままで、レンジに助けられるだけなんて構図は絶対に認めんぞ!
『命運を紡ぐ叙事詩』
この能力は占いにも使えるが、本当の能力は戦闘用に特化したこっちだ。21枚のカードの中からランダムに引いたカードの運命に従って戦うことで、大きな力を発揮する事ができる。
(引いたカードによっては不利になるという面も背負っていますがね。カードがもたらす不確定性という枷があるからこそ、Sランクの力たりえるのだ)
引いたカードは『愚者のカード』!
自らの魔力を糧にして仲間たちの魔力を一時的にではあるが、上昇ラインの幅を超えて高める事ができるというカード。糧に使用した魔力は、与えた魔力に比例して大きくなるのが弱点。しかし使い方によっては絶大な威力を発揮する。
「レンジ! わたくしがお前とフィオナ様の手助けに徹してやる。いいか、あくまでもお前たちに花を持たせてやるだけで、決してわたくしの本意ではないことだけは、肝に銘じていろ」
自分の精一杯の虚勢を張った声に、レンジとフィオナが冷ややかな視線を投げつけてくるのが分かる。くそっ、どうしてわたくしはこういう場面でも素直になれんのだ。
『仲間を頼れ、絆を築くことに全精力を注ぐのだ! ジル。お前に足りないところはそういうところだぞ』
ガルムの過去の言葉が頭の中で響く。父上、いやガルム! 母上様の為にもわたくしはあなたを超えたいのだ。絶対に!
レンジとフィオナの魔力が底上げされるのを確認する。逆に自分の魔力がどんどんと減少していくのを感じ、疲労と苦痛が更に浮き彫りになるのを肌身に感じる。
「ジルベニスタ。おまえ、ふざけるなよ! 初めに調子こいて突っ込んでいったのは誰なんだよ!」
レンジの噛みつくような声は当然だ。慢心が招いた結果は全て私の責任。その責任において、私のすべての魔力で償ってでも、お前たちのサポートに徹してやる!
その時、愚者のカードにより全身に溢れかえった魔力を拳に集中させ、フィオナが宙に浮く魔導人形に向かって、大きく跳躍する。
「魔導人形はわたしが食い止めますから、魔力をしっかりと練ってください! 」
そんなバカな。いくら魔力が高まったとはいえ、アルベルト拳聖流は打撃の技ではないのか? 神官としての魔法能力を高めるためにカードを使用したというのに、フィオナ様は何をお考えなのだ!
「フィオナ様! 敵の防御結界があるのをお忘れか? このままでは……」
「フィオナ! ちょっと待て、これじゃジルベニスタの二の舞いだぞ! 」
ええい、レンジの奴め! いちいち突っかかっている場合ではないだろう! そんなわたくしの目に信じられない光景が飛び込んでくる。拳に魔力を込めたフィオナが、直接魔導人形に挑みかからずに、その場で空を叩きつける様に拳を人形に向けて連打するように突き出す。これは……?
『アルベルト拳聖流……息吹の掌!! 』
フィオナの突き出した掌から、圧縮された清らかな魔力が、衝撃波を伴う光の弾丸となって連続で放たれる! その一発一発が、魔導人形の防御結界を悠然と突き抜けるように突破し、的確にヒットしていくのを視界に捉える。そのまま押されるようにして、人形が下水道の壁面にめり込んでいく。
わたくしは降り立ったフィオナから女神のような威光を感じ、恍惚とした表情で見上げる。
「拳聖流には3つの型が存在します! わたしは使いこなすにはまだまだなのですが…その中の掌の型! 拳に込めた魔力を飛ばす技です」
下水道の床を踏みしめ、毅然とした動作で立つ彼女を見ながら、わたくしの中で全く違う感情が湧きだすのを感じた。
(ずっと女性は守られるだけの存在であり、特に戦いの場においてはある意味居るだけの無意味なものと思い込んでいた。それがどうだ……フィオナ様の優雅で傑出したような高い決意と戦闘能力。そんな女性も存在するのだ! )
呆けたようにフィオナを見つめる自分の脳裏に、ちりちりと異形とも言える黒い魔力の波動が伝わってきた。これは……下水道の壁にめり込んでいる奴の波動か!
「我が防御結界を超えてクルとは! ユルシマセン! 許しませんよ」
(くそ……これほどのダメージを受けるとは! 完全に舐めきっていましたね。こんなところをフィオナ様ならいざ知らず、父上に見られずに良かったというもの)
自分が冒険者Sランクになり、王国騎士団団長という地位に着いてからというもの、激務に追われ、王都での政略に塗れ、毎日蝶や花のような貴族の女性たちと浮名を流していた。そう実戦から、鍛錬から、冒険からかなりの間遠ざかっていた事実を突きつけられたようだ。
「このまま倒れているだけなんて認めませんよ! 騎士団長である『疾風のジルベニスタ』の異名は伊達では無いのですから!! 」
特にアイツだ。あの特異な炎の魔道具を持つレンジ! わたくしに全く尊敬の念を抱かず、動じもせず、媚へつらいもしない。あのような者には初めて出会った。
だが倒れたままで、レンジに助けられるだけなんて構図は絶対に認めんぞ!
『命運を紡ぐ叙事詩』
この能力は占いにも使えるが、本当の能力は戦闘用に特化したこっちだ。21枚のカードの中からランダムに引いたカードの運命に従って戦うことで、大きな力を発揮する事ができる。
(引いたカードによっては不利になるという面も背負っていますがね。カードがもたらす不確定性という枷があるからこそ、Sランクの力たりえるのだ)
引いたカードは『愚者のカード』!
自らの魔力を糧にして仲間たちの魔力を一時的にではあるが、上昇ラインの幅を超えて高める事ができるというカード。糧に使用した魔力は、与えた魔力に比例して大きくなるのが弱点。しかし使い方によっては絶大な威力を発揮する。
「レンジ! わたくしがお前とフィオナ様の手助けに徹してやる。いいか、あくまでもお前たちに花を持たせてやるだけで、決してわたくしの本意ではないことだけは、肝に銘じていろ」
自分の精一杯の虚勢を張った声に、レンジとフィオナが冷ややかな視線を投げつけてくるのが分かる。くそっ、どうしてわたくしはこういう場面でも素直になれんのだ。
『仲間を頼れ、絆を築くことに全精力を注ぐのだ! ジル。お前に足りないところはそういうところだぞ』
ガルムの過去の言葉が頭の中で響く。父上、いやガルム! 母上様の為にもわたくしはあなたを超えたいのだ。絶対に!
レンジとフィオナの魔力が底上げされるのを確認する。逆に自分の魔力がどんどんと減少していくのを感じ、疲労と苦痛が更に浮き彫りになるのを肌身に感じる。
「ジルベニスタ。おまえ、ふざけるなよ! 初めに調子こいて突っ込んでいったのは誰なんだよ!」
レンジの噛みつくような声は当然だ。慢心が招いた結果は全て私の責任。その責任において、私のすべての魔力で償ってでも、お前たちのサポートに徹してやる!
その時、愚者のカードにより全身に溢れかえった魔力を拳に集中させ、フィオナが宙に浮く魔導人形に向かって、大きく跳躍する。
「魔導人形はわたしが食い止めますから、魔力をしっかりと練ってください! 」
そんなバカな。いくら魔力が高まったとはいえ、アルベルト拳聖流は打撃の技ではないのか? 神官としての魔法能力を高めるためにカードを使用したというのに、フィオナ様は何をお考えなのだ!
「フィオナ様! 敵の防御結界があるのをお忘れか? このままでは……」
「フィオナ! ちょっと待て、これじゃジルベニスタの二の舞いだぞ! 」
ええい、レンジの奴め! いちいち突っかかっている場合ではないだろう! そんなわたくしの目に信じられない光景が飛び込んでくる。拳に魔力を込めたフィオナが、直接魔導人形に挑みかからずに、その場で空を叩きつける様に拳を人形に向けて連打するように突き出す。これは……?
『アルベルト拳聖流……息吹の掌!! 』
フィオナの突き出した掌から、圧縮された清らかな魔力が、衝撃波を伴う光の弾丸となって連続で放たれる! その一発一発が、魔導人形の防御結界を悠然と突き抜けるように突破し、的確にヒットしていくのを視界に捉える。そのまま押されるようにして、人形が下水道の壁面にめり込んでいく。
わたくしは降り立ったフィオナから女神のような威光を感じ、恍惚とした表情で見上げる。
「拳聖流には3つの型が存在します! わたしは使いこなすにはまだまだなのですが…その中の掌の型! 拳に込めた魔力を飛ばす技です」
下水道の床を踏みしめ、毅然とした動作で立つ彼女を見ながら、わたくしの中で全く違う感情が湧きだすのを感じた。
(ずっと女性は守られるだけの存在であり、特に戦いの場においてはある意味居るだけの無意味なものと思い込んでいた。それがどうだ……フィオナ様の優雅で傑出したような高い決意と戦闘能力。そんな女性も存在するのだ! )
呆けたようにフィオナを見つめる自分の脳裏に、ちりちりと異形とも言える黒い魔力の波動が伝わってきた。これは……下水道の壁にめり込んでいる奴の波動か!
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