【生魚=毒】だと言われる異世界に転生した寿司職人レンジ~師匠に託された伝説の包丁を使って、エリュハルトの食の常識を『旨い』で覆します!

小宮めだか

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3巻 1章 魔導人形と電撃飛来と愚者のカードと

現れしザックマーニャ

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 ちょっと待て。話が飛躍しすぎだろう。全くいい気分でこれからファーバンのお披露目が出来ると思っていた矢先に面倒くさいことを言い出しやがって。

「分かったよジルベニスタ。好きにしろ、まぁ俺が言わないでもお前なら勝手に動くんだろうけどな。なんだろうが受けて立ってやるさ。それがガルムの……仲間の為ならな」

 鼻息荒く、言いたい事だけを言い放つとまた視線を外すジルベニスタ。そういえば話の飛躍で思い出した。俺だって言いたいことの一つくらいならあったんだ。
 そう。異世界転生のきっかけとなった事。師匠の裏手の蔵の火事を起こした張本人。そいつが目の前にいるんだ。

「コーマ。よもや忘れちゃいないよな。俺に懺悔すると言った言葉、今ここで証明してもらおうか! 」

 ジルベニスタの勢いに俺も載せられたような格好になってしまったんだが、それでもやはり確認しておきたい。これだけはどうしたって譲れない事だ。
 コーマはそんな言葉に唇の端を振るわせるようにして小さく笑って答える。

「ふふ。レンジさん。私もそうしようと思っていたのですが、貴方のその研ぎ澄まされた様な魔力の高まりを感じたら、また気持ちが変わってきました」

 コーマの声に今までとは全く違う、心の中に仕舞っておいた熱量といった本音の部分を話しているかのような、そんな感情的な部分が見えているように感じる。

「いいですか。私が創元師匠の1番弟子なのです! あなたはあくまでも最後のお弟子さんという立場です。そしてあなたの持つ包丁よりも先に、わ・た・しが件の包丁を使いこなしている。あなたがいくら包丁を先に見つけたとて、現状では私の包丁の方が力は勝っているのをくれぐれもお忘れなきように! 」

 コーマの言葉から感じる、様々な感情の高鳴り、入り混じった複雑な厚みを感じる。今更そんな事言うのか。さっきまでのどこか平静を装っていたコーマの表面的な表情とは打って変わった顔に戸惑いを覚える。

「ふっざけんな! 氷雨ひさめ。ここままお前バックレる気か! 」

「その昔の名前で気軽に呼ばないで頂けますか? もう私の中で捨てた名前です。今の私はコーマ・ドルーマン。それ以外ではありません」

 顔を近づけ、一触即発になりそうな俺とコーマ。その時だった。コーマの目線の先、エレノールの凍り付くような……信じられないものを見上げる様な怯えた視線が突然目に飛び込んできた!
 その瞬間、ガルムによって無残に破壊されたグリモワールの書庫塔の窓附近から、やけに幼い女の子の声が聞こえた。しかしその声は響きとは裏腹に、近づくもの全てを圧迫し尊大な威圧感を示すような類のモノだ。

「そうじゃな、レンジとやら。わらわもお前たちには挨拶をしようと思っておったところなのじゃ! 」

 ……なに? この声は!
 この場で絶対に聞こえてはいけない声に、俺は驚愕の表情を浮かべてエレノールの視線の先を仰ぎ見る。
 空中に浮かぶ多大な魔力に銀色の髪をたなびかせている女の子……気の強そうな赤い瞳の色と太い眉毛が印象的な8歳ぐらいの幼女の外見。片手に携える銀白色の堂々たる錫杖。

「アホな! ザックマーニャ・リザルト!!! なんでココにおんねん! 」

 信じられないものを見るように、一瞬で表情が引き歪むエレノール!
 真っ赤な瞳に尊大な畏怖を称え、恐ろしいほどの残酷な愉しみを秘めた眼差しで見下ろすザックマーニャ。その手には分厚い本が握られている。

「あれは写本ではないのか! しまった……いつの間に! 」

 ギリリッと奥歯を強く噛みしめるアリーゼ。それを庇う様にセバスさんがアリーゼの前に立ちはだかる。

『唸れ……銀白色の錫杖フローズンよ! わらわの前に屍を晒せ…… 致死毒の積乱雲デス・クラウド

 そうザックマーニャが導術を唱えるが早いか……その錫杖に、一気に魔紋が錬成され、瞬く間にどす黒い粘着性のある霧状のものが俺たちの周りに形成される。
 その瞬間、エレノールの必死の一括!

「絶対それを吸い込んだらあかん! 一瞬で死ぬで!! ……破邪呪文ディスペル・エルナ! 」

炎の大盾グローサー・フォイアシルト! 』

 エレノールの導術と俺の魔法が瞬間的に発動する。発動した炎の膜はその場に居た全員を包み込み、霧状の毒雲の影響から辛うじて身を守る盾を形成。エレノールの導術が毒雲を分解し、徐々にその場から黒い影は消失していく。

「ふざけんなや! 魔力を大量に消費してもうた……詠唱破棄はキッツイねん! 」

 肩で大きく息をし、魔力の大量消費にエレノールが辛そうに顔を青ざめる。
 俺も先ほどの魔導人形との戦いから時間が経っていないこともあり、腹減り度がMaxに近づいているのが分かる。背中に大量の冷や汗が流れ出す。
 心に深く刻み込まれるような圧迫感。そう、今、絶対に戦ってはいけない相手だ。

「良い連携じゃのう……わらわの導術を中和させるとは。やりおるのぅ……エレノール、これはわらわが本気を出していいという意味と受け取ってよいのじゃな」


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