【生魚=毒】だと言われる異世界に転生した寿司職人レンジ~師匠に託された伝説の包丁を使って、エリュハルトの食の常識を『旨い』で覆します!

小宮めだか

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1巻 1章~異世界と再出発と火トカゲと

相棒はトカゲ!?グリューン登場 / サングラスの饒舌な訪問者

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 俺は右手を自分の前にかざして、輝く光から両目をかばった。すると何かが自分の左の肩にそっと乗ったようなそんな感覚を感じて、顔を恐るおそるそちらに向けた。
 そこにはサングラスを掛け、小さな可愛い燕尾服姿の2足歩行のトカゲが俺の肩に乗っていた。

「グーデンモーゲン!やっとお前の前に姿を見せることができたぜ! 」

 ぐ…ぐーでんもーげん?
 なんだよ。このトカゲ? なんなんだよ!
 俺はあごが落ちるかと思うくらいに大きな口を開けた。
 その二足歩行のトカゲは小さな口を開け、俺の方を向いてニヤリと笑い、片方の手を挙げた。トカゲの開いた口からは小さな炎がチロチロと燃えているのが見えた。
 俺はそのままヘナヘナとその場に力なく座り込んでしまった。


「相棒! 驚かせてすまなかったな! 」

 サングラスをかけ、小さな燕尾服えんびふくを着たトカゲ君は俺の左肩から飛び降りると、正面で腕を払うようにして俺に深々とお辞儀じぎをした。
 この世界に降り立ってからこの方、かなり驚かされてばかりだったが、今回のコレはまたかなりの衝撃だった。ほんとに顎が外れるかと思ったぜ。
 2足歩行のトカゲと聞いて思い浮かぶのは、懐かし動画とかのCM特集にでてくるエリマキトカゲだ。そのエリマキトカゲがサングラスを掛けて燕尾服を着て、人の言葉を話している様を想像してほしい。
 ファンキーなエリマキトカゲとでも言うべき彼は、俺の肩にもう一度飛び乗ると、「たーくたくたくたく! 」と言いながら嬉しそうに身をよじらせた。

「おっと! 名乗るのが遅れたな。オイラの名前はグリューン・ヒエンだ。レンジ、お前の持つ伝説の包丁『萌炎ほうえん』の仮の姿。そうさ! お前がこの世界『エリュハルト』に降り立ってからずっと一緒に居たんだぜ! 」

 グリューン・ヒエンと名乗ったエリマキトカゲもどきは、右手を前に出し、首をゆっくりと回すような動作をして、俺の顔の方へ向き直りニヤリと笑った。

「レンジ! 今、ずっと一緒にいたのはホムラじゃないかって思っただろ? そう思っただろ! 違うんだな…相棒。お前はまだよくわかっていない。じゃなーい? 」

 俺は一気にエリマキトカゲにまくし立てられて、今目の前で起こっている事を理解しようとして整理がつかず、頭が痛くなっていたところを更にハンマーで殴られたような感覚になった。

「ちょっと待て、頭がおっつかないぞ。まずは落ち着け、エリマキトカゲ」

 エリマキトカゲと言われたグリューン・ヒエンは鼻をふくらませて、さも憤慨ふんがいだと言わんばかりに両手を広げている。トカゲに鼻のあなってあったんだなと妙に冷静になる俺。

「相棒! エリマキトカゲってのはないだろ!ちゃんと俺にはグリューン・ヒエンって名前があるんだぜ。せめてカッコいいキュートな、それでいてアクティビティなニックネームってやつを付けてくれないと! やってらんないぜ! 」

 その尖った口でどれだけしゃべるんだよ。俺はこいつの口をじっと見つめ、器用に動く口の中から時折れる炎の舌をじっと見つめた。

「グーデンモーゲンってドイツ語か? それなのになんで普通にしゃべる時は英語混じりになるんだ? 」

「はぁ? そこ? そんな細かいところをお前は気にするのか!おい、相棒よ。なっさけないぜ! 」
 
 グリューンは人差し指を左右に小さく動かし、チッチッチ!と小さく呟く。
 その時俺はある事に気づいて一瞬固まった。

「ちょっと待ってくれ。俺は、いや俺とお前はいったい何語で話しているんだ……」

 そうだ……そうだよ。今の今までこの異世界に来てから誰かと話すなんて経験してなかった。待てよ。雪の精霊! そういえば雪の精霊の言葉が俺に分かったのはなんでだ? 
 俺は固まった表情のままグリューンをもう一度見た。グリューンは鼻を膨らませるようにして次の言葉を口から出した。

「やっとそこに思い至ったか! おせえ……遅えよ。この言葉さえもレンジ、お前の耳には聞き慣れた言葉に変換されているはずだ。これが伝説の包丁の能力の1つ『情報処理スフェアバイト』。ホムラがレンジに与えた『神の恩恵ディ・ベーガ』の能力の一端さ」

 得意げに語るグリューンの言葉をなんとか理解しようと、俺は頭をフル回転させる。
 つまり異世界の言語を包丁の力で、俺が理解できる言語に変換して聞いていたってわけか。そんなことが本当にできるなんて。
 グリューンは俺の考えを理解したかのように頷いた。

「ここに来るまで、お前は不思議な力を使ってきた。なにか困ったことが起こって、それをどうにかしたいと願った。そうすると頭に言葉が浮かんできただろ! お前に分かるように言うならば、魔法の呪文ってやつさ」

 暖かくしたり、食材を探したり。確かに俺は魔法の呪文が咄嗟とっさに頭に浮かび、それを言葉にすることでなんとなく力を使っていた。やっぱりあれは、俺の思った通りの包丁の特殊な力だったんだ。

「すごいな。よくわからずに何となーく使っていただけだったんだが……」

「やっとわかったのか! そうよ。包丁の、つまりはオイラの能力だ!よく分かったら、オイラを尊敬してもらっても全然いいんだぜ」

 腰に両手を当てて自慢げに話すグリューン。そんな彼を見ながら、次の疑問が俺の中で浮かぶ。

「そういえばクジャクンはどうなったんだ。俺をこの異世界に転生させてくれて。消えちまったのか」

「クジャクンじゃなくてホムラな」グリューンは、俺の言葉に鋭くツッコミのを入れてくる。「まあ、どっちでもいいんだけどよ。」と言いながら、グリューンは手を顎の下に持っていき、なにか考えているかのように指で顎のあたりを何度か叩いた。

「この言い方が正しいかどうか分からないが。オイラはホムラであってホムラじゃない。ホムラが眠っている間の簡易的な案内人に過ぎないんだ」

 クジャクンが眠っている……簡易的な案内人……俺は頭の中で繰り返した。

「少なくともオイラが眠りについたホムラからたくされてお前の前に現れた。それは分かるよな! 俺はお前をこの異世界で生きやすいように助ける義務があるのさ。だがオイラはホムラじゃない。この世界について分からないことや、言えないことも多いのさ。ホムラから言うのを止められている事だってある」

 俺はクジャクンの事を心配していた。なるべく考えないようにしていたが、頭の片隅ではやっぱり気になっていた。消えてしまったのではなく眠りについたんだ。ということは、いつかは起きるってことだよな。また会えるんだよな。

「聞いているかレンジ。お前を異世界転生させるほどの力を使ってしまったホムラは眠りについている。いつ起きるかは正直オイラにも分からねぇ。それまではオイラが責任を持ってお前を助けてやる。それがホムラの願いだろうし、更に……」

 その先を言おうとして、グリューンは急に口を押えて、ウガクク……と唸る。

「おっと。この先は言えないのか。めんどくせぇなぁ…とにかくだ!お前の持っているその包丁は、お前の望むように姿を変えることも出来るんだぜ。そしてお前の使った包丁の力は、お前の腹具合によって使える量やパワーの度合いが変わるのさ」

 ちょっと待て。『俺の腹具合で変わる』って。どれだけ設定がガバガバなんだ! こういう異世界転生チートものだと自分のマジックポイントの数値が視えたりするもんだろ。
 細かい事ツッコミはいいか。つまりさっきは腹が減っていたから呪文を唱えても、分かる情報が少なかったんだな。妙に納得したぞ。
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