【生魚=毒】だと言われる異世界に転生した寿司職人レンジ~師匠に託された伝説の包丁を使って、エリュハルトの食の常識を『旨い』で覆します!

小宮めだか

文字の大きさ
74 / 155
2巻 1章~旅立ちと騎士団長と王都到着と

波乱の入都審査

しおりを挟む
 結局バスケットの中の『ルブルス鳥の唐揚げセリナ風サンド』は列に並んでいる時間で3人と1匹で食べる事になった。
 俺はルブルス鳥なる食材を口に含む。これは……たぶんキジ肉の類か? 俺の『食材探知レベンスミッテル』だとそう直感できる。最近ジビエ料理とかテレビで特集してるよな。あれはちゃんと処理をしないと危ないんだけどな。
 タルタルソースも美味しいな! タルタルソースがあるってことは、こっちの世界にも卵黄や玉ねぎ、ピクルスなんかも普通にあるってことなんだよな! これは王都での食材探しがかなり楽しみになってきたぞ!
 う~ん……この旨味としっかりとした歯ごたえがいいな。外はカリっと、中はジューシーに仕上がっている。タルタルソースの酸味がよいアクセントだ。黒パンに挟んであるから旨味が逃げていかない。セリナは料理が上手いんだろうな。グリューンもサンドイッチを分けてもらうと夢中で齧りついているのが見える。

 美味しそうに、おんなじ顔と表情でルブルス鳥を頬張っている美人姉妹を、俺はほっこりした表情で眺める。特にフィオナの幸せそうな表情がいい感じだ。セリナが姉の頬についているタルタルソースをハンカチで拭いてあげているのが可愛い。

「次の者! 中に入れ! 」

 狐風の容貌をした獣人らしき衛兵が俺に大きく声を掛けた。お。いよいよか。結構早く感じたのはフィオナ姉妹のお陰かな……
 石造りの大きな建物に呼ばれるままに入ると、中は簡素な机と椅子が並び、フィーム族らしき衛兵と、俺よりもかなり背の小さい異種族が小さく敬礼をしている。フィーム族の男の衛兵が俺に目で促す。机の上には水晶玉のような明らかに魔法が掛かったものが、紫の布に包まれるようにして置いてあり、衛兵はそちらの前に行くように指示した。
 壁の所にフィオナ姉妹が並び、静かに俺の様子を眺めている。

「では、こちらの魔力球に力を込めてくれ。お前の魔力エルナ闘気エルビスを感知して淡い光を放つはずだ。緑や青に光れば問題はない。赤や黒の判定がでれば王都には入れんぞ。問題がなければ簡単な書類にサインをして貰って終了だ」

 決まりきった文言なんだろう。無機的に言い放つフィーム族の衛兵。
 これってアレだよな……異世界転生ものでよくある力の判定シーン。ということは……

「おう相棒! お前の力を見せつけてやれ! 」

 グリューンが得意げに耳元でささやきかける。見せつけるって言われてもよ。
 恐るおそる右手を水晶球の上にかざす。腰の包丁が温かみを増すのが感じる。嫌な予感しかしない……

魔力エルナを込めるってこうやるのか? 」

 腹の中央に力を入れるようにゆっくりと集中する。包丁の温かみだけが意識の中ではっきりと感じられるように……その温かみを手の中で再構築するようにイメージをする。

「レンジさん……いつもよりずっと魔力エルナが洗練されています! 」

「フィオナ姉さん! これって……すごい魔力エルナ! 」

 遠くでフィオナとセリナの声が聴こえるような気がする。衛兵たちのざわつく声もなんだか離れた空間から聞こえるように感じられる。その瞬間だった!

 バリン!!

 手をかざしていた水晶球が、まるで内側から強大な力に押し出されるように、甲高い音と共に細かく砕け散った!
 あ……やっぱり。こういう展開になるんだ……

「な、なんだ今の魔力エルナは!? 」

「判定の水晶球が壊れただと……バカな! 」

 狐風の容貌の衛兵や、フィーム族の衛兵が目を剥いて起こった事態をうまく飲み込めずに右往左往している。

(だから嫌な予感がしたんだよ。この状況ヤバいんじゃないのか……? )

 俺が大きくため息をついたその瞬間、詰所の奥の扉が勢いよく開け放たれた! 



「どうしました! いったい何が起こったんですか! 」

 詰所の奥の扉が開いて、黒いローブを羽織った別の衛兵らしき男が入ってくる。どうやら部屋の中の右往左往する音を不審に思い、顔を出したといったところか。
 そのローブの男が入ってくると、途端にその場で剣を体の前にかざし、騎士団の敬礼をする衛兵たち。「ザイール・ファルナート! 」と大きく唱和している。
 そういえばさっきガルムに挨拶をしていた騎士団のヒト達も同じような事を唱和していたよな。こういうのって軍隊の常なんだろうか。
 そのローブの男は部屋の中に四散した水晶球の破片を目に止めると、ゆっくりと俺に振り向いた。その真深く被ったローブから放たれる氷のような冷徹な視線。背の高さは俺と同じくらいか。
 うん? なんか前にも同じような視線を感じた様な気がする。どこだったか……?

「1番隊副長殿! お騒がせして申し訳ございません! 」

 狐風の衛兵が敬礼の態勢を崩さずにそう告げる。1番隊副長か。ここにガルムが居ればなんとなく情報が分かるんだろうが、あのおやっさん、さっさとギルドに向かっちまったからな。するとグリューンが俺の耳元でひそひそと呟く。

「相棒……あいつ。ラベルク村の宴会の時に騎士団長と一緒に居た奴だ! ヴァハト気を付けろ! あの魔力エルナは只者じゃねぇぜ! 」

 そうか。思い出した! ジルベニスタがラベルク村から出ていこうとしたときに感じた視線。あの時遠くから俺を見ていた奴だ。
 でもそれだけじゃないんだ。もっと前に……目の前に立っているローブの男が発している様な、冷たい視線を感じたことがあったような気がするんだ。

「非番でたまたま詰所に来たのですが、まさかあの時の貴方に出会えるとは。私の幸運に感謝しないといけませんね」

 やけに丁寧な言葉遣い、だけどそれが返ってどこか癇に障るようなそんな印象を受ける。そう。そんな印象で話す奴を俺は知っている。それがどこだったかが思い出せない。
 その冷たい印象の男は、被っていたローブの頭部をサッと取り払った。現れたのは、短い青の髪に、20代中盤と思しきフィーム族の男。褐色肌の精悍な顔つきだ。もちろんその顔に見覚えはない。見覚えはないんだが……その冷徹な鋭い眼差しが、どうしても心に引っ掛かる。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした

渡琉兎
ファンタジー
『第3回次世代ファンタジーカップ』にて【優秀賞】を受賞! 2024/02/21(水)1巻発売! 2024/07/22(月)2巻発売!(コミカライズ企画進行中発表!) 2024/12/16(月)3巻発売! 2025/04/14(月)4巻発売! 応援してくださった皆様、誠にありがとうございます!! 刊行情報が出たことに合わせて02/01にて改題しました! 旧題『ファンタジーを知らないおじさんの異世界スローライフ ~見た目は子供で中身は三十路のギルド専属鑑定士は、何やら規格外みたいです~』 ===== 車に轢かれて死んでしまった佐鳥冬夜は、自分の死が女神の手違いだと知り涙する。 そんな女神からの提案で異世界へ転生することになったのだが、冬夜はファンタジー世界について全く知識を持たないおじさんだった。 女神から与えられるスキルも遠慮して鑑定スキルの上位ではなく、下位の鑑定眼を選択してしまう始末。 それでも冬夜は与えられた二度目の人生を、自分なりに生きていこうと転生先の世界――スフィアイズで自由を謳歌する。 ※05/12(金)21:00更新時にHOTランキング1位達成!ありがとうございます!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。 ※2026年半ば過ぎ完結予定→七月に完結(決定)

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

スキル買います

モモん
ファンタジー
「お前との婚約を破棄する!」 ローズ聖国の国立学園第139期卒業記念パーティーの日、第3王子シュナル=ローズレアは婚約者であるレイミ・ベルナール子爵家息女に宣言した。 見習い聖女であるレイミは、実は対価と引き換えにスキルを買い取ることのできる特殊な能力を有していた。 婚約破棄を受け入れる事を対価に、王子と聖女から特殊なスキルを受け取ったレイミは、そのまま姿を消した。 レイミと王妃の一族には、数年前から続く確執があり、いずれ王子と聖女のスキル消失が判明すれば、原因がレイミとの婚約破棄にあると疑われるのは明白だ。 そして、レイミを鑑定すれば消えたスキルをレイミがもっている事は明確になってしまうからだ。 かくして、子爵令嬢の逃走劇が幕を開ける。

処理中です...