超絶悪役当て馬転生、強制力に抗う方法は×××

笹餅

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執事のキール

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俺とキールの出会いは5歳の頃だった。

キールの家系は代々俺の家に仕える使用人一族だった。

引っ込み思案だったキールは初対面の俺を警戒して母親の後ろで隠れていた。

ここでゲームのリックはキールを鼻で笑い「薄汚い使用人が」と罵る。
そんな事を言うもんなら一生恨まれてバッドエンドまっしぐらだ。

俺はゲーム実況時代を思い出し、キールに優しく接してきた。
ゾンビにならないように、そして純粋にゲームのキャラクターと仲良くなりたかった。

そう、俺は友達になりたかったんだ…決してこういう関係になりたかったわけではない。
確かにキールに構いすぎていたのかもしれない。
でもそれは友達の範囲を超えた事は一度もなかった。

あまり人付き合いが得意じゃないから、友達はキールしかいなかった。

俺はキールがもしヒロインに選ばれる事があったら全力で応援するつもりだった。

キールに襲われて、翌日…鏡の前で自分の首を見た。

どんだけ付けるんだよと言いたくなるほどのキスマークがびっしりと付いていた。

これって、内出血だよな…ちゃんと治るのか?

部屋のドアを数回ノックされてびっくりした。

首を隠そうと周りを見渡して、とりあえずネクタイを首に巻いて訪問者を呼んだ。
部屋に入ってきた人物を見て、さらに驚いて目を丸くした。

頭の上に紙袋を被せた謎の男が立っていた。
俺を暗殺に来た誰かと思って距離を取るが、その服を見て気付いた。

「キール…?」

「はい」

「何その頭」

「坊ちゃんはもう私の顔なんて見たくないと思いまして」

キールはそう言って、俺に今日の顔合わせで着る服を渡してきた。
声からして反省しているのか、いつもの淡々とした態度ではなく暗い。

いつも着替えを手伝ってくれていたが、今日は他の人がやるようにキールが頼んだそうだ。
俺の手伝いが出来る事が喜びですと笑っていたキールが…

服を渡しに来ただけのようで、すぐに帰ろうとしていた。

他の人が着替えを手伝うとなると、この大惨事の身体も見られるじゃないか!
慌ててキールの腕を掴むと、ビクッと驚いていた。

こちらを振り返る紙袋男はかなり破壊力があるな。

「俺、今かなりの内出血が身体にあるんだけど…さすがに他の人に見られたくない」

「申し訳ございません、私はなんて事を」

「キールは俺を傷付けるためにあんな事をした奴だと思ってないし、なにか理由があるんだろ」

「……それは」

「とりあえず、怒ってないから紙袋もやめろって」

頭に被っていた紙袋を取ると、綺麗な顔なのに目を腫らしたキールが出てきた。
泣いていたのか…襲われた俺が泣いていないのは変な話だよな。

でも、不思議とキールに怒りが湧かないのは何故だろう。
最初は攻略キャラクターが何やってんだと怒りが込み上げてきていた。

それがキールを見て、そんな気にはならなかった。
文句の一つでも言ってやろうと思ったが、明らかにいつもと違うキールに怒りより心配が勝った。

キールは幼馴染みだけど、それ以前にゲームで知っている。
もしも俺が嫌いであってもキールはそんな事はしない。
むしろリックに冷たくして、関わろうとはしなかった。

俺の着替えを手伝ってくれる別の使用人にはキールが断った。

寝間着を全て脱いでから、シャツに袖を通す。
俺の肌に触れないように注意しながら服を着ている。

「なぁ、聞いていいか?…なんであんな事したんだ?」

「申し訳ございません、私はどうかしていたのです…どんな罰も受けますのでどうか…」

「いや、罰とかそういうのは怖いからいいって」

「ならば私が坊ちゃんの前から消えます」

「なんでそうなるんだよ!」

キールは袖に隠していた小型ナイフを握って何処かに行こうとしていた。
お前ってそんなメンヘラキャラだったっけ!?

キールを追いかけようとして、足がふかふかのじゅうたんに引っかかった。
身体が傾くのを他人事のように考えていた。

倒れるけど、じゅうたんだし痛くはないから別にいいか。

俺の身体はじゅうたんではなく、なにか硬いものにぶつかった。
上を見上げると、安堵で小さく息を吐くキールがいた。

とりあえずキールが死なないように俺の顔合わせに付いてきてもらう事にした。
キールがあんなことをしたのは婚約者と会う事なら、実際に見ればいい。
それで納得出来ないなら、改めてキールと話し合えばいい。

「坊ちゃん、そろそろ…」

「あ、ごめん…重かったよな」

「いえ…」

キールに寄りかかっていたから、すぐに離れると寂しそうな顔をしていた。
顔と言葉が全く合ってないんだよな、主人だから本音を言えないというのもあるだろうけど。

服を着替え終わり、キールに髪もセットしてもらった。

いつもよりも大人っぽく仕上がり、着慣れない正装の肩の装飾を弄っていた。
ちょっと騎士団みたいでカッコいいな、ゲームと現実の顔はやはり微妙に違う。
絵だから当然だよな、でも実写化したらこんな感じかもしれない。

キールに「坊ちゃん、時間になりました」と言われて、部屋を出た。

ゲームで見たシーンがこれから始まるとなると緊張する。
主人公の少女とも出会うんだ、俺の緊張はピークに達していた。

馬車で向こうの屋敷に出向くから、家の前では馬車が待っていた。

「キール、顔色は大丈夫そ?」

「すこぶる体調がよろしくないようにお見受けします」

「……マジかぁ…」

緊張で顔色が悪く見えていても、相手には俺の体調なんて分からないよな。

馬車に乗り、移動中…俺は別の事を考えていた。
こうして気分を紛らわせるためだけに、景色を見つめていた。

俺の家からそう遠くないはずなのに、とても長く感じた。
他に気分を紛らわせる事が思いつかず、キールの手を握った。

キールは慌てた様子だったけど、すぐに大人しくなった。

ごめんキール、今だけ手を握って気分を紛らわせてくれ。

馬車が大きく揺れて、俺の身体が傾いてキールが支えた。
すぐに御者のおじさんが謝ってきて、大丈夫だと声を掛けた。

でこぼこした地面なのかな、揺れはどうしようもないから仕方ない…もごもご。
なんか妙に喋りづらいなと、口になにか入っている事に気付いた。

手で口から出すと、少し硬い布があり触れる。
キールが少し息を乱しているけど、そんなに揺れが怖かったのか?

「…っ、坊ちゃん…それはいけませんっ」

「え……ぁ」

俺の目の前にあったのは、布というかキールの下半身だった。
俺を支えてくれたのはキールの下半身で、慌てて謝って立ち上がった。

頭を天井にぶつけて痛みに耐えてキールに手当てしてもらい、緊張は何処かに吹き飛んでいった。
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