超絶悪役当て馬転生、強制力に抗う方法は×××

笹餅

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呪いの人形

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客間に通して、俺とカイザーが向かい合って座る。

キールは俺達に紅茶を出して、部屋の隅まで下がった。

キールに言われて、俺が父の代わりに仕事を受ける。
どうしたらいいのか分からないが、キールがサポートしてくれるらしくて心強い。

カイザーはアタッシュケースのような入れ物から一つの人形を取り出した。
その人形は、顔と胴体はあるが顔のパーツはない。

服も着ていないし、人間というより本当に人のカタチをしているだけだ。

テーブルに置かれた人形を手に取ると、なにかが入っているのかずっしりと重い。
綿だけではなさそうだ、でも手で触っただけではなにが入っているか分からない。

「あ、その人形…素手で触ったら呪われるよ」

「えっ!?」

「なっ…!?」

カイザーの冷静な言葉に俺とキールの声が重なった。

キールが俺から人形を受け取ろうと駆け寄ってくるが、キールが触ったらキールも呪われるとぬいぐるみを抱えて椅子から立ち上がる。

とんでもないものを持ってきたのに、カイザーは片付けて帰ろうとしていた。
仕事が終わったらそれでいいかもしれないけど、ちょっと待ってくれ!

何の呪いかとか解く方法とか教えてくれないと対処が出来ない。

人形しか渡されていないし、説明書も何もない。

そもそも父はこんなものをどうするつもりだったんだ?

俺の呼び止める声では立ち止まる事がなく、腕を掴んで帰るのを止めるしかない。
眉を寄せて嫌そうな顔も隠しもせずに俺の手を振り払った。

「なに?男に手なんて握られたくないんだけど」

「それは、ごめんなさい…でも呪いを解く方法を知らないと…」

「今から呪いを掛ける人形なのに、そんなのあるわけないだろ」

鼻で笑われて、カイザーは部屋を出ていった。

キールはカイザーを引き止めて呪いを解く方法を聞き出すと張り切って行ってしまった。

俺と人形だけがその場に取り残されてしまった。
気のせいか、口がないのに人形が笑っているように見えた。

いや、気のせいだ…気のせい…そう思っておかないと俺の精神が持たない。

小さくため息を吐いて、俺も客間から逃げた。

父が帰ってくるまで、嫌だが部屋に人形を置いた。
少ししたら息を切らしたキールがいて、追いかけたがカイザーの逃げ足が早くて追いつかなかったそうだ。

せめて一緒に呪いをと人形に手を差し伸ばしたのを全力で止めた。

そして一番の怖い事は、父が帰ってきて人形に心当たりがない事だ。
父は婚約者がどうだったか気になって聞いていた。
でも、正直今の俺はそんな事よりもっと大事な事があった。

この人形って、カイザーって…なんで届けに来たんだ?
エリスとは関わりがないからゲームではこんなシーンはなかった。
裏の話ではあったのか?だとしたら、俺は知らない。

どうやって対処したのか分からないから、まずはこの人形を調べる必要がある。
カイザーは店を持っていないが、具体的な日は分からないがエリスと会うからこの国には必ずいるはずだ。

そして呪いの効果を知らぬまま、翌日になった。

怠いような気がするが、何でもかんでも呪いのように思えてしまう。
ダメだな、これからカイザーを探さないといけないのに…

「おはようございますリック様……その手はどうかされたんですか?」

「うーん、こっちの方がイメージしやすいから」

キールは変な人を見るような顔をしている。
失礼だな、ゲームを配信している気分でやってるんだからもう少し待ってくれ。

ゲームをするように指を動かしたり、パソコンのタイピングを指で再現した。
この世界にはゲームやパソコンはないからキールには説明しても分かってもらえないだろう。

でも、前世の記憶が俺を再びゲーム実況者にしてくれる!

どのくらい経ったか、数分しか経ってはいない気がする。
俺は元のリックに戻って、ベットから降りた。

経験ないリックルートの実況は難しくて断念した。

「終わりましたか?」

「…うん、待たせてごめん」

「もっと待たせてもいいのですよ、私の時間は坊ちゃんのものですから」

胸を張って誇らしげにそう言われると、どう言ったらいいんだろう。
次からは誰も待っていない状態でゲーム実況をしよう。

身支度を終えて食堂で朝食を食べている時、キールが新しい茶葉が手に入ったと厨房に向かって歩いていった。
新しい茶葉か、どんな味がするんだろうと想像しながらパンを一口食べる。

何となく横を見てみたら、俺の隣の椅子を見た。

ここの食堂は長い机に、大家族でもないのに20人が座れる椅子がある。
俺しか座っていないし、この家の子供は俺しかいない。

それなのに、部屋に置いてきた人形が椅子に座っていた。
大きな声を上げて、椅子から立ち上がるとキールが飛んできた。

「うわぁぁ!!!」

「坊ちゃん!どうなさったのですか!?」

キールの傍に行き、声にならない驚きで指差すのが精一杯だった。
視線を人形に合わせて、キールも短い悲鳴を上げていた。

そういえば、ゲームでキールは幽霊系が苦手だと言っていた。
人形がいるだけで逃げ出したいほど怖いよな。
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