異世界ヒーローレッド! ……の俺が、なぜか、魔王の力で、無双する ~でも、俺が作りたいのは最強のヒーロー戦隊です~

ひより那

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=== 001 目指せ! ヒーロー戦隊 ===

第3話 ヒーロー、街へ

 静寂が戻った街道に、俺は一人佇んでいた。

 足元には気を失った盗賊たち。彼らが乗ってきたと思しき馬は、主人の逃走劇に驚いてどこかへ走り去ってしまったようだ。
 人助けは、できた。しかし、そこにあったのは感謝の花束ではなく、恐怖の眼差しと、走り去る背中。そして、俺の中に残ったのは、後味の悪さと、新たな目標だった。

「……さて、と」

 俺は思考を切り替える。ヒーローとしての活動は、戦闘の後処理まで含めて一つのパッケージだ。プロデューサーとしての腕の見せ所である。

 まず、この失神した盗賊たちをどうするか。このまま放置すれば、いずれ目を覚まし、また別の誰かを襲うだろう。それは、断じて許されない。彼らを然るべき場所に引き渡すのが、ヒーローの正しい仕事だ。

 幸い、彼らが持っていた荷物の中に、頑丈そうなロープが数本あった。俺はそれを使って、手際よく盗賊たちを縛り上げていく。人数は五人。荷馬車がない今、全員を一度に運ぶのは不可能だ。

「面倒だが、仕方ないか……」

 俺はまず、リーダー格だった男の体を肩に担ぎ上げた。ずしり、と重い。ヒーローの力をもってしても、なかなかの重労働だ。残りの四人は、道の脇の木にまとめて縛り付けておく。

 こうして俺は、悪党一人を担ぎ、意気揚々とは程遠い、地味で泥臭い凱旋行進を始めることになった。

 再び半日近く歩き、ようやく街の門にたどり着いた頃には、俺の精神は疲労困憊だった。
 門を守る衛兵たちは、汗だくで、しかも大の男を担いで現れた俺を見て、当然ながら目を丸くした。

「おい、小僧。そいつはどうした?」
「街道で、商人を襲っていた盗賊の頭目だ。残りの仲間は、現場の木に繋いである。場所を案内するから、身柄を確保してほしい」

 俺が冷静に、しかし疲労を隠しきれない声でそう告げると、衛兵は俺と、担がれた盗賊の顔をまじまじと見比べた。

「……本当か? お前みたいな細っこいのが、一人でこいつらを?」
「ああ」
「……ふん、まあいい。どこの誰かは知らんが、ご苦労だったな。こいつらは我々が預かろう。何か礼が出るかもしれんから、名前と滞在先を教えておけ」
「名前……」

 しまった、偽名を考えていなかった。咄嗟に何か、ヒーローらしい響きのいい名前は……。頭に浮かんだのは、元の世界で俺が一番好きだった特撮ヒーローの名前だった。

「……ジンだ。宿は、まだ決めていない」

 俺は、ほとんど無意識に、憧れのヒーローの名を名乗っていた。衛兵はそれに頷くと、仲間を呼び、盗賊の身柄を受け取ってくれた。残りの盗賊の確保に向かう部隊が編成されるのを横目に、俺はようやく街の中へと足を踏み入れた。

 街は、活気に満ち溢れていた。
 まずは、今日の宿と食事を確保しなければ。そう思いながら大通りを歩いていると、ふと、視線を感じた。
 道の向かい側にある、仕立ての良い服を売る店の前で、一人の男が、こちらを驚いたように見つめていた。……あの時の、商人だ。

 彼は、俺に気づくと、慌てた様子で駆け寄ってきた。

「あ、あの! やはり、あなた様でしたか! 先ほどは、本当にありがとうございました! そして、申し訳ありませんでした!」

 商人は、俺の前で深々と頭を下げた。どうやら、俺が衛兵と話しているのをどこかで見ていたらしい。

「いや、無事だったのなら何よりだ」
「はい……。あの、赤い鎧の方が……あなた様だったのですね。あまりの出来事に、恐怖のあまり、つい……」
「気にするな。君たちが無事だった。それが全てだ」

 俺がヒーローとして百点満点の台詞を言うと、商人はさらに恐縮した。

「なんと心の広い……。私は、アトラスと申します。ささやかではございますが、ぜひ、お礼をさせてください」

 そう言ってアトラスさんが俺の手に握らせてくれたのは、ずしりと重い革袋だった。中を覗くと、銀貨が十枚以上は入っている。

「こ、こんなには受け取れない」
「いえ、命の値段に比べれば、安いものです。それに……もしよろしければ、これを」

 彼は懐から、一通の封蝋された手紙を取り出した。

「これは、冒険者ギルドのギルドマスター宛ての、私の紹介状です。ジン様のような腕の立つ方が、一介の冒険者として燻っているのは、あまりに惜しい。これがあれば、多少の融通は利かせてもらえるかと」

 十分すぎるほどの謝礼金に、ギルドマスターへの紹介状。
 俺のデビュー戦は、後味の悪いものだったと思っていた。だが、どうやら、最高の形で結果に結びついたらしい。これぞ、ヒーロー活動の醍醐味というやつだ。

「アトラスさん、感謝する」

 俺は素直に礼を言い、革袋と紹介状を受け取った。これで、今夜の寝床も、明日の食事も心配ない。そして、ギルドで有利に立ち回るための、強力なコネクションも手に入れた。

 俺は、街で一番大きな建物――冒険者ギルドを、今度こそ、確かな希望を持って見据えた。

 理想のヒーローになるための、理想の能力スキル探し。そのための準備は、全て整った。
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