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=== 001 目指せ! ヒーロー戦隊 ===
第11話 ヒーロー、無法の街に立つ
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俺たちが鑑定士のギメルに教えられた場所――鉄屑街は、街の他の区画とは、明らかに空気が違っていた。
錆びついた金属を無理やり組み上げたような歪なゲート。それを守るように立つ、ガラの悪い男たちの刺すような視線。鼻をつくのは、オイルと埃と、そして、どこか暴力的な匂い。衛兵の姿は、どこにも見当たらない。
「なるほど、悪の巣窟というわけか。ヒーローが光をもたらすには、これ以上ない舞台だな」
俺が、眼前の光景にプロデューサー魂を燃やしていると、隣でアオイが深い溜息をついた。
「最悪……。いい、ジン? ここでは絶対に目立たないように行動するわよ。あなたも、その変な正義感は、頭のUSBと一緒にポケットにでもしまっておきなさい」
彼女はそう言って、ローブのフードを目深にかぶる。その隣で、タンポポが目を輝かせていた。
「ジンさん、あそこのお店、煙がたくさん出ています! きっと、美味しいものを焼いているんですよ!」
彼女が指差す先では、何の肉かも分からない、黒焦げの串焼きが売られていた。俺は、その純粋すぎる食欲に眩暈を覚えながら、彼女の服の袖を強く引いた。
まずは情報収集だ。俺が「こういう時こそ、困っている人に話を聞くのがヒーローの基本だろう」と提案すると、即座にアオイから「愚の骨頂だわ。この街で『お人好し』は、骨までしゃぶられるカモのことよ」と、辛辣なツッコミが入った。
結局、彼女の「こういう場所の情報は、人の集まる酒場に集まるものよ」という、至極もっともな提案に従い、俺たちは鉄屑街で一番大きな酒場へと足を踏み入れた。
店の中は、荒くれ者たちの熱気でむせ返っていた。
俺たちがテーブルにつくと、ジロリ、と幾つもの詮索するような視線が突き刺さる。俺たちはそれを極力無視し、目立たないように、ただ黙ってエールを飲むことにした。
だが、面倒事は、こちらが望まなくても向こうからやってくるものらしい。
三人のチンピラが、ニヤニヤと下品な笑みを浮かべながら、俺たちのテーブルに近づいてきた。
「よう、見ねえ顔だな。この街で遊びたきゃあ、まずは俺たちに挨拶料を払ってもらうのが、礼儀ってもんよなぁ?」
リーダー格の男が、俺の肩を馴れ馴れしく叩く。典型的な、三流悪役の台詞だ。
俺は内心でため息をつきつつ、穏便に済ませるべく口を開いた。
「悪いが、俺たちは人を探しているだけだ。面倒事はごめんだ」
「ああ? やる気か、てめぇ」
リーダーの男が、拳を振り上げる。その拳が、俺の顔面に届くことはなかった。
ゴッ! と、鈍い音が響く。いつの間にか俺の前に立っていたタンポポが、その巨大な盾で、チンピラの拳を真正面から受け止めていたのだ。
彼女は、まるで邪魔な虫を払うかのように、盾をほんの少し前に押し出す。それだけで、リーダーの男は「ぐべっ」と潰れたカエルのような声を上げ、派手に吹き飛んでいった。
「なっ!?」
仲間がやられ、逆上した残りの二人が、腰のナイフに手をかける。
だが、彼らがそれを抜くことは、叶わなかった。
「……うるさいわね」
アオイが、テーブルの下で、小さく指を鳴らす。
瞬間、目に見えないほどの魔力の衝撃波が走り、チンピラたちは二人同時に「うっ」と呻くと、その場で腹を押さえて崩れ落ちた。詠唱も、派手なエフェクトも一切ない、あまりにスマートな無力化だった。
酒場全体が、水を打ったように静まり返る。
その静寂を破ったのは、カウンターの奥から現れた、酒場の主人だった。腕っぷしの強そうな、この店の主らしい大男だ。
「ったく、うちで面倒事を起こすな、チンピラどもめ」
主人は、うずくまるチンピラたちを店の外へ蹴り出すと、俺たちに向き直った。
「お前さんたち、見かけによらず、かなりやるじゃないか。で、この物騒な街で、一体何を探してるんだ?」
願ってもないチャンスだった。俺は、正直に告げた。
「不自然な魔道具を扱う、違法な工房を探している」
主人は、その言葉に少しだけ目を細めると、顎を撫でながら言った。
「……工房、ねぇ。心当たりがないわけでもない。この街の最奥にある『廃棄された時計塔』だ。最近、あそこから夜中に、奇妙な光や音が聞こえるって噂で持ちきりだ。気味が悪ぃんで、近寄る奴は誰もいねえ。何かの実験場になってるとしても、おかしくはないな」
思わぬ形で、俺たちは、次なる目的地を特定することができた。礼を言って酒場を出た俺の心は、すでに決まっていた。
「よし、目標は決まったな! あの時計塔に、悪の秘密が隠されているに違いない!」
「だから、話が早すぎるのよ! 時計塔なんて、いかにも罠が満載じゃない。もっと慎重に……」
「とけいとう、ですか。高いところなら、見晴らしが良くて、美味しいお店が見つかるかもしれませんねー!」
頭を抱える仲間と、明後日の方向を見ている仲間。
俺は、この二人を率いて、危険なアジトへ潜入しなければならないという現実に、ヒーローとしての使命感と、プロデューサーとしての頭痛を、同時に感じていた。
錆びついた金属を無理やり組み上げたような歪なゲート。それを守るように立つ、ガラの悪い男たちの刺すような視線。鼻をつくのは、オイルと埃と、そして、どこか暴力的な匂い。衛兵の姿は、どこにも見当たらない。
「なるほど、悪の巣窟というわけか。ヒーローが光をもたらすには、これ以上ない舞台だな」
俺が、眼前の光景にプロデューサー魂を燃やしていると、隣でアオイが深い溜息をついた。
「最悪……。いい、ジン? ここでは絶対に目立たないように行動するわよ。あなたも、その変な正義感は、頭のUSBと一緒にポケットにでもしまっておきなさい」
彼女はそう言って、ローブのフードを目深にかぶる。その隣で、タンポポが目を輝かせていた。
「ジンさん、あそこのお店、煙がたくさん出ています! きっと、美味しいものを焼いているんですよ!」
彼女が指差す先では、何の肉かも分からない、黒焦げの串焼きが売られていた。俺は、その純粋すぎる食欲に眩暈を覚えながら、彼女の服の袖を強く引いた。
まずは情報収集だ。俺が「こういう時こそ、困っている人に話を聞くのがヒーローの基本だろう」と提案すると、即座にアオイから「愚の骨頂だわ。この街で『お人好し』は、骨までしゃぶられるカモのことよ」と、辛辣なツッコミが入った。
結局、彼女の「こういう場所の情報は、人の集まる酒場に集まるものよ」という、至極もっともな提案に従い、俺たちは鉄屑街で一番大きな酒場へと足を踏み入れた。
店の中は、荒くれ者たちの熱気でむせ返っていた。
俺たちがテーブルにつくと、ジロリ、と幾つもの詮索するような視線が突き刺さる。俺たちはそれを極力無視し、目立たないように、ただ黙ってエールを飲むことにした。
だが、面倒事は、こちらが望まなくても向こうからやってくるものらしい。
三人のチンピラが、ニヤニヤと下品な笑みを浮かべながら、俺たちのテーブルに近づいてきた。
「よう、見ねえ顔だな。この街で遊びたきゃあ、まずは俺たちに挨拶料を払ってもらうのが、礼儀ってもんよなぁ?」
リーダー格の男が、俺の肩を馴れ馴れしく叩く。典型的な、三流悪役の台詞だ。
俺は内心でため息をつきつつ、穏便に済ませるべく口を開いた。
「悪いが、俺たちは人を探しているだけだ。面倒事はごめんだ」
「ああ? やる気か、てめぇ」
リーダーの男が、拳を振り上げる。その拳が、俺の顔面に届くことはなかった。
ゴッ! と、鈍い音が響く。いつの間にか俺の前に立っていたタンポポが、その巨大な盾で、チンピラの拳を真正面から受け止めていたのだ。
彼女は、まるで邪魔な虫を払うかのように、盾をほんの少し前に押し出す。それだけで、リーダーの男は「ぐべっ」と潰れたカエルのような声を上げ、派手に吹き飛んでいった。
「なっ!?」
仲間がやられ、逆上した残りの二人が、腰のナイフに手をかける。
だが、彼らがそれを抜くことは、叶わなかった。
「……うるさいわね」
アオイが、テーブルの下で、小さく指を鳴らす。
瞬間、目に見えないほどの魔力の衝撃波が走り、チンピラたちは二人同時に「うっ」と呻くと、その場で腹を押さえて崩れ落ちた。詠唱も、派手なエフェクトも一切ない、あまりにスマートな無力化だった。
酒場全体が、水を打ったように静まり返る。
その静寂を破ったのは、カウンターの奥から現れた、酒場の主人だった。腕っぷしの強そうな、この店の主らしい大男だ。
「ったく、うちで面倒事を起こすな、チンピラどもめ」
主人は、うずくまるチンピラたちを店の外へ蹴り出すと、俺たちに向き直った。
「お前さんたち、見かけによらず、かなりやるじゃないか。で、この物騒な街で、一体何を探してるんだ?」
願ってもないチャンスだった。俺は、正直に告げた。
「不自然な魔道具を扱う、違法な工房を探している」
主人は、その言葉に少しだけ目を細めると、顎を撫でながら言った。
「……工房、ねぇ。心当たりがないわけでもない。この街の最奥にある『廃棄された時計塔』だ。最近、あそこから夜中に、奇妙な光や音が聞こえるって噂で持ちきりだ。気味が悪ぃんで、近寄る奴は誰もいねえ。何かの実験場になってるとしても、おかしくはないな」
思わぬ形で、俺たちは、次なる目的地を特定することができた。礼を言って酒場を出た俺の心は、すでに決まっていた。
「よし、目標は決まったな! あの時計塔に、悪の秘密が隠されているに違いない!」
「だから、話が早すぎるのよ! 時計塔なんて、いかにも罠が満載じゃない。もっと慎重に……」
「とけいとう、ですか。高いところなら、見晴らしが良くて、美味しいお店が見つかるかもしれませんねー!」
頭を抱える仲間と、明後日の方向を見ている仲間。
俺は、この二人を率いて、危険なアジトへ潜入しなければならないという現実に、ヒーローとしての使命感と、プロデューサーとしての頭痛を、同時に感じていた。
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