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=== 001 目指せ! ヒーロー戦隊 ===
第15話 ヒーロー、スカウトする
時計塔の事件を解決し、Dランクへと昇格した翌朝。
俺たちは、街の宿屋の一室で作戦会議を開いていた。
「今後の活動方針だが、目標は二つ。『“パトロン”の追跡』と『ヒーラーのスカウト』だ」
俺がそう切り出すと、アオイが冷静に言葉を返した。
「“パトロン”の手掛かりは、ゾラが持っていた『研究日誌』だけ。ギルドが解析するのを待つしかないわ。今、私たちが能動的に動けるのは、ヒーラー探しの方よ」
その、あまりに的確な現状分析に、俺は満足げに頷いた。
「よしきた! では、早速『アーク戦隊・団員オーディション』を開催する!」
「却下」
俺の、プロデューサーとしての閃きは、一秒も経たずにアオイによって叩き落とされた。
「そんなことをすれば、腕自慢の変人が集まってきて、収拾がつかなくなるだけよ。もっと、地道に探すの」
「む……。だが、どうやって……」
俺たちが言い争っていると、ふと、アオイが何かを思い出したように、口ごもった。
「……呪いにも対応できる、腕のいい回復魔法の使い手、だったわよね?」
彼女は、少し気まずそうに、一人の人物について語り始めた。
「……モモ、という神官がいたわ。かつては、将来有望な若手パーティのヒーラーとして、その名を知らない者はいなかった。彼女の癒しの光は、どんな傷も、そして、呪いさえも解いたというわ」
素晴らしい。まさに、俺が求める人材だ。
「……でも」とアオイは続ける。「彼女は、ある日突然パーティを抜けて、表舞台から姿を消した。今では、その頃の面影もなく、安酒場で朝から酒を飲んでいるだけの、『堕ちた天才』だと……もっぱらの噂よ」
堕ちた天才。過去に何かを抱えた、訳ありのヒロイン。その、あまりにドラマチックで、王道な設定に、俺のプロデューサー魂が、轟々と燃え上がった。これ以上の逸材がいるだろうか、いや、いない!
「それだ! 挫折し、光を失った元天才! そんな彼女に、もう一度ヒーローとしての輝きを取り戻させる! なんて素晴らしいシナリオだ! よし、決まりだ! 我々『アーク戦隊』の記念すべき4人目は、彼女しかいない! 早速、スカウトしに行くぞ!」
◆
俺たちは、街の人々に「神官のモモ」の居場所を尋ねて回った。
昔の彼女を知る者は、一様に「ああ、あのモモちゃんか……」と、少し寂しそうな顔をする。そして、誰もが、街の南側にある、昼間から酔っぱらいが集まるような、安酒場の名前を口にした。
酒場に足を踏み入れると、むっとするような酒の匂いが鼻をつく。
その店の最も薄暗いテーブル席で、彼女はいた。
ピンク色の髪は艶を失い、本来は清廉であるはずの神官服は、あちこちが酒で汚れ、だらしなく着崩れている。テーブルの上には、空になった安いワインの瓶が転がり、彼女自身は、テーブルに突っ伏して、ぐうぐうと気持ちよさそうに寝息を立てていた。
俺が思い描いていた「慈愛のヒーラー、アークピンク」の姿は、そこにはなかった。
あったのは、ただのぐーたらな飲んだくれお姉さんの姿だった。
だが、俺は怯まない。むしろ、燃えていた。
この、最高の素材を、俺がプロデュースせずして、誰がするというのか。
俺は、眠る彼女の肩を、優しく揺さぶった。そして、最高の笑顔で、スカウトの言葉を投げかける。
「君が、モモさんだね? 単刀直入に言おう。――君を、俺の戦隊のヒロインに、スカウトしに来た!」
その声に、モモは、うーん、と唸りながら、ゆっくりと顔を上げた。
その虚ろな、焦点の合っていない瞳が、怪訝そうに俺を見つめたところで、物語は終わった。
俺たちは、街の宿屋の一室で作戦会議を開いていた。
「今後の活動方針だが、目標は二つ。『“パトロン”の追跡』と『ヒーラーのスカウト』だ」
俺がそう切り出すと、アオイが冷静に言葉を返した。
「“パトロン”の手掛かりは、ゾラが持っていた『研究日誌』だけ。ギルドが解析するのを待つしかないわ。今、私たちが能動的に動けるのは、ヒーラー探しの方よ」
その、あまりに的確な現状分析に、俺は満足げに頷いた。
「よしきた! では、早速『アーク戦隊・団員オーディション』を開催する!」
「却下」
俺の、プロデューサーとしての閃きは、一秒も経たずにアオイによって叩き落とされた。
「そんなことをすれば、腕自慢の変人が集まってきて、収拾がつかなくなるだけよ。もっと、地道に探すの」
「む……。だが、どうやって……」
俺たちが言い争っていると、ふと、アオイが何かを思い出したように、口ごもった。
「……呪いにも対応できる、腕のいい回復魔法の使い手、だったわよね?」
彼女は、少し気まずそうに、一人の人物について語り始めた。
「……モモ、という神官がいたわ。かつては、将来有望な若手パーティのヒーラーとして、その名を知らない者はいなかった。彼女の癒しの光は、どんな傷も、そして、呪いさえも解いたというわ」
素晴らしい。まさに、俺が求める人材だ。
「……でも」とアオイは続ける。「彼女は、ある日突然パーティを抜けて、表舞台から姿を消した。今では、その頃の面影もなく、安酒場で朝から酒を飲んでいるだけの、『堕ちた天才』だと……もっぱらの噂よ」
堕ちた天才。過去に何かを抱えた、訳ありのヒロイン。その、あまりにドラマチックで、王道な設定に、俺のプロデューサー魂が、轟々と燃え上がった。これ以上の逸材がいるだろうか、いや、いない!
「それだ! 挫折し、光を失った元天才! そんな彼女に、もう一度ヒーローとしての輝きを取り戻させる! なんて素晴らしいシナリオだ! よし、決まりだ! 我々『アーク戦隊』の記念すべき4人目は、彼女しかいない! 早速、スカウトしに行くぞ!」
◆
俺たちは、街の人々に「神官のモモ」の居場所を尋ねて回った。
昔の彼女を知る者は、一様に「ああ、あのモモちゃんか……」と、少し寂しそうな顔をする。そして、誰もが、街の南側にある、昼間から酔っぱらいが集まるような、安酒場の名前を口にした。
酒場に足を踏み入れると、むっとするような酒の匂いが鼻をつく。
その店の最も薄暗いテーブル席で、彼女はいた。
ピンク色の髪は艶を失い、本来は清廉であるはずの神官服は、あちこちが酒で汚れ、だらしなく着崩れている。テーブルの上には、空になった安いワインの瓶が転がり、彼女自身は、テーブルに突っ伏して、ぐうぐうと気持ちよさそうに寝息を立てていた。
俺が思い描いていた「慈愛のヒーラー、アークピンク」の姿は、そこにはなかった。
あったのは、ただのぐーたらな飲んだくれお姉さんの姿だった。
だが、俺は怯まない。むしろ、燃えていた。
この、最高の素材を、俺がプロデュースせずして、誰がするというのか。
俺は、眠る彼女の肩を、優しく揺さぶった。そして、最高の笑顔で、スカウトの言葉を投げかける。
「君が、モモさんだね? 単刀直入に言おう。――君を、俺の戦隊のヒロインに、スカウトしに来た!」
その声に、モモは、うーん、と唸りながら、ゆっくりと顔を上げた。
その虚ろな、焦点の合っていない瞳が、怪訝そうに俺を見つめたところで、物語は終わった。
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