異世界ヒーローレッド! ……の俺が、なぜか、魔王の力で、無双する ~でも、俺が作りたいのは最強のヒーロー戦隊です~

ひより那

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=== 001 目指せ! ヒーロー戦隊 ===

第16話 ヒーロー、大失敗する

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 虚ろな瞳が、俺を捉える。
 俺の、ヒーローとしてのスカウト宣言を受けた神官モモ。彼女は数秒間、じっと俺の顔を値踏みするように見つめた後、心底面倒くさそうに、そして、むっとするほど酒臭い息で、こう言った。

「……あぁ? せんたい? ヒロイン? 寝言は寝てから言いな、坊や」

 それだけ言うと、彼女は俺に興味を失い、カウンターに向かって声を張った。

「マスター、安いやつ、もう一本」

 完全な、無視。だが、ここで諦める俺ではない。この程度の塩対応は、プロデュースの現場では日常茶飯事だ。俺は彼女の正面の席にどっかりと腰を下ろすと、渾身のプレゼンテーションを開始した。

「君は、まだ自分の真の価値に気づいていない! 我々『アーク戦隊』は、世界の平和を守る崇高な使命を帯びている! その重要な一員、慈愛を司る“アークピンク”として、君を迎え入れたいんだ!」

 身振り手振りを交え、情熱的に語る俺。その後方のテーブルでは、アオイが両手で顔を覆って天を仰ぎ、タンポポは追加で注文したおつまみのサラミを、幸せそうに頬張っていた。

 俺の熱弁を聞き終えても、モモの表情は変わらない。彼女は、新しく運ばれてきた酒を、なみなみとグラスに注ぎながら、氷のように冷たい声で言い放った。

「……チームの絆? 世界の平和? 正義? くだらない。そんな青臭い理想で、お腹は膨れないのよ」

 俺の言葉が、彼女の古傷に触れたらしい。彼女の瞳から、酔いの気配が消え、代わりに、深く、冷え切った光が宿る。

「仲間、ね。私も昔は信じていたわ。でも、結局どうなったと思う? ヒーラーなんて、パーティにとっては便利な道具なのよ。報酬は他のメンバーが多く取り、危険な回復作業は全て押し付けられる。体と心がすり減って、ボロボロになった頃には、用済みでポイよ。それが、あなたたちが言う『仲間』の正体」

 その言葉には、経験した者だけが持つ、重い実感がこもっていた。

「だから、もうやめたの」と彼女は続ける。「誰かのために、なんて馬鹿げた理想のために、自分をすり減らすのは。『完璧に公平な契約』が結ばれた時だけ。事前に、仕事内容、稼働時間、危険度、報酬、その全てを条文に起こし、一言一句違わぬ履行が約束されるのなら、考えてあげなくもないわ。……でも、今の私は、完全にオフなの。だから、邪魔しないでくれる?」

 その、あまりに頑なな拒絶に、俺は言葉を失った。
 それでも、俺は「俺たちのチームは違う!」と理想論で食い下がったが、「夢見るお坊ちゃんは、早くおうちに帰りなさい」と、子供をあやすようにあしらわれるだけだった。

 アオイが「話は分かったわ。なら、あなたを正式な契約に基づいて雇用する、という形で……」と現実的な提案を試みても、「生憎だけど、今日の分の仕事はもう終わったの」と、取り付く島もない。
 タンポポが「これをあげますから、仲間になりましょう!」と差し出した干し肉も、彼女は無表情で見つめるだけだった。

 あらゆるアプローチが通用せず、俺たちの最初のスカウト交渉は、完全な失敗に終わった。俺たちは、すごすごと酒場を後にするしかなかった。

 酒場の外で、アオイが深い溜息をついた。

「……ダメね、あれは。心が、完全に壁を作ってしまっているわ」

 だが、俺は落ち込むどころか、逆に、プロデューサーとしての新たな炎を燃やしていた。

(そうか、そういうことか! 彼女の心を縛っているのは、過去のトラウマそのもの! ならば、俺がやるべきことは一つ! 直接スカウトするのではなく、彼女のトラウマの原因を取り除き、ヒーローとして救い出すことで、彼女の心を解放する!)

 俺は、アオイに向き直った。

「アオイ! 彼女が昔いたっていう、そのパーティの名前を教えてくれ。そいつらが、今どこで何をしているか、調べるぞ!」
「……本気で言ってるの?」

 俺の、あまりに突飛な作戦に、アオイは心底呆れかえった顔を見せた。だが、俺の目は、すでに次なるステージを見据えている。
 ヒロインの過去との決着。それこそが、彼女を真の仲間として迎え入れるための、最高のシナリオなのだから。
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