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=== 001 目指せ! ヒーロー戦隊 ===
第18話 ヒーロー、宣戦布告する
「よし、作戦は決まったな」
俺は、風切り渓谷の地図を前に、高らかに宣言した。
「三日後、俺たちは奴らに裁きを下す!」
「……ええ。準備は、万全にしておかないとね」
アオイは、これから起こるであろう格上との戦いに、緊張を隠せない様子だ。タンポポは、すでに三日後の勝利の祝賀会で何を食べるか、真剣に悩んでいる。
俺は、そんな二人に、ふと、こう告げた。
「すまない、二人とも。先に宿に戻っていてくれ。俺は、最後にやらなければならないことがある」
「? 分かりましたー」
「……何よ、一人で抜け駆けする気?」
「違う。ヒーローとしての、ケジメだ」
俺は、二人にそう言うと、一人、再びあの安酒場へと向かった。
夕暮れ時の酒場は、昼間よりも少しだけ人が多かったが、モモは、あの時と同じテーブルで、一人、静かにグラスを傾けていた。その姿は、相変わらずひどく物憂げで、世界の全てに絶望しているように見えた。
俺は、彼女の正面の席に、無言で腰を下ろした。
彼女は、俺に気づくと、心底面倒くさそうに顔をしかめる。
「……まだ、何か用? 勧誘なら、何度来たって無駄だって、言ったはずだけど」
俺は、首を横に振った。
「今日は、勧誘に来たんじゃない」
俺は、テーブルの上の彼女の瞳を、まっすぐに見つめて、静かに、しかし、力強く告げた。
「――モモさん。俺は、君を苦しめている元凶、『黄金の獅子団』と、三日後、風切り渓谷で対決する」
「……は?」
「これは、君を無理やり仲間にするための戦いじゃない。一人のヒーローとして、君の名誉と尊厳を踏みにじった、偽りの英雄を裁くための戦いだ」
俺は、それだけ言うと、席を立った。
「……ただ、君にだけは、伝えておきたかった。それだけだ」
呆然とする彼女を背に、俺は酒場を後にした。彼女の瞳に、一瞬だけ、戸惑いとは違う、何かの光が宿ったように見えたのは、俺の思い過ごしかもしれない。だが、それでいい。種は、蒔かれたのだ。
◆
それからの三日間、俺たちの準備は、完璧に進んだ。
一日目。アオイが、その天才的な頭脳をフル回転させ、「黄金の獅子団」のメンバー構成、各々の得意技、過去の戦闘スタイルを、ギルドの資料から徹底的に洗い出してくれた。ワイバーンの生態も調査し、彼らがどれほど消耗するかの予測データも完璧だ。
二日目。俺は、アオイの情報を元に、決戦の舞台を演出する。スキル【構造解析】で、風切り渓谷の出口付近の地形データを分析。岩の強度、崩れやすい場所、音の反響などを計算し、最高の舞台効果が得られるポイントを特定した。殺傷能力のない、しかし派手な「舞台装置」の設置プランを、夜通しで練り上げた。
三日目。俺たちは、作戦に必要な小道具を買い揃え、決戦の地「風切り渓谷」へと向かった。
渓谷に近づくにつれ、遠くからワイバーンの咆哮や、戦闘の衝撃音が断続的に聞こえてくる。
「……始まったようだな」
俺たちは、特定したポイントに到着すると、手分けして「舞台装置」を設置していく。アオイは「本当に、馬鹿げた作戦……」と悪態をつきながらも、その動きは寸分の狂いもなく、正確無比だった。
俺は、タンポポに、今回の作戦で最も重要な役割を伝える。
「タンポポ、君の役目は、このステージの『幕』だ。俺の合図で、渓谷の出口を、その絶対的な盾で完全に塞いでほしい。悪党どもを、一人たりとも、この裁きの舞台から逃がすな!」
「はいですー! まかせてください!」
彼女は、元気いっぱいに、その役目を引き受けた。
全ての準備が終わり、三人が息を潜めてそれぞれの配置について、どれほどの時間が経っただろうか。
渓谷内の戦闘音が、ふと、止んだ。張り詰めた静寂が、辺りを支配する。
その時、俺の立っている場所から、少し離れた崖の上の茂みが、微かに、ガサリと揺れた。
風か、あるいは、ただの小動物か。いや……違う。
(……来たな。この舞台の、最高の観客が)
俺が、口の端に笑みを浮かべた、その時だった。
長い、長い静寂の後。渓谷の奥から、疲労困憊の、しかし、どこか誇らしげな三人の人影が現れた。
「黄金の獅子団」だ。
彼らは、まさか自分たちのために、最高の「裁きの舞台」が用意されているとは知らずに、一歩、また一歩と、渓谷の出口へと近づいてくる。
リーダーのダリウスが、俺の仕掛けた最初の罠の範囲に、足を踏み入れた。
俺は、風切り渓谷の地図を前に、高らかに宣言した。
「三日後、俺たちは奴らに裁きを下す!」
「……ええ。準備は、万全にしておかないとね」
アオイは、これから起こるであろう格上との戦いに、緊張を隠せない様子だ。タンポポは、すでに三日後の勝利の祝賀会で何を食べるか、真剣に悩んでいる。
俺は、そんな二人に、ふと、こう告げた。
「すまない、二人とも。先に宿に戻っていてくれ。俺は、最後にやらなければならないことがある」
「? 分かりましたー」
「……何よ、一人で抜け駆けする気?」
「違う。ヒーローとしての、ケジメだ」
俺は、二人にそう言うと、一人、再びあの安酒場へと向かった。
夕暮れ時の酒場は、昼間よりも少しだけ人が多かったが、モモは、あの時と同じテーブルで、一人、静かにグラスを傾けていた。その姿は、相変わらずひどく物憂げで、世界の全てに絶望しているように見えた。
俺は、彼女の正面の席に、無言で腰を下ろした。
彼女は、俺に気づくと、心底面倒くさそうに顔をしかめる。
「……まだ、何か用? 勧誘なら、何度来たって無駄だって、言ったはずだけど」
俺は、首を横に振った。
「今日は、勧誘に来たんじゃない」
俺は、テーブルの上の彼女の瞳を、まっすぐに見つめて、静かに、しかし、力強く告げた。
「――モモさん。俺は、君を苦しめている元凶、『黄金の獅子団』と、三日後、風切り渓谷で対決する」
「……は?」
「これは、君を無理やり仲間にするための戦いじゃない。一人のヒーローとして、君の名誉と尊厳を踏みにじった、偽りの英雄を裁くための戦いだ」
俺は、それだけ言うと、席を立った。
「……ただ、君にだけは、伝えておきたかった。それだけだ」
呆然とする彼女を背に、俺は酒場を後にした。彼女の瞳に、一瞬だけ、戸惑いとは違う、何かの光が宿ったように見えたのは、俺の思い過ごしかもしれない。だが、それでいい。種は、蒔かれたのだ。
◆
それからの三日間、俺たちの準備は、完璧に進んだ。
一日目。アオイが、その天才的な頭脳をフル回転させ、「黄金の獅子団」のメンバー構成、各々の得意技、過去の戦闘スタイルを、ギルドの資料から徹底的に洗い出してくれた。ワイバーンの生態も調査し、彼らがどれほど消耗するかの予測データも完璧だ。
二日目。俺は、アオイの情報を元に、決戦の舞台を演出する。スキル【構造解析】で、風切り渓谷の出口付近の地形データを分析。岩の強度、崩れやすい場所、音の反響などを計算し、最高の舞台効果が得られるポイントを特定した。殺傷能力のない、しかし派手な「舞台装置」の設置プランを、夜通しで練り上げた。
三日目。俺たちは、作戦に必要な小道具を買い揃え、決戦の地「風切り渓谷」へと向かった。
渓谷に近づくにつれ、遠くからワイバーンの咆哮や、戦闘の衝撃音が断続的に聞こえてくる。
「……始まったようだな」
俺たちは、特定したポイントに到着すると、手分けして「舞台装置」を設置していく。アオイは「本当に、馬鹿げた作戦……」と悪態をつきながらも、その動きは寸分の狂いもなく、正確無比だった。
俺は、タンポポに、今回の作戦で最も重要な役割を伝える。
「タンポポ、君の役目は、このステージの『幕』だ。俺の合図で、渓谷の出口を、その絶対的な盾で完全に塞いでほしい。悪党どもを、一人たりとも、この裁きの舞台から逃がすな!」
「はいですー! まかせてください!」
彼女は、元気いっぱいに、その役目を引き受けた。
全ての準備が終わり、三人が息を潜めてそれぞれの配置について、どれほどの時間が経っただろうか。
渓谷内の戦闘音が、ふと、止んだ。張り詰めた静寂が、辺りを支配する。
その時、俺の立っている場所から、少し離れた崖の上の茂みが、微かに、ガサリと揺れた。
風か、あるいは、ただの小動物か。いや……違う。
(……来たな。この舞台の、最高の観客が)
俺が、口の端に笑みを浮かべた、その時だった。
長い、長い静寂の後。渓谷の奥から、疲労困憊の、しかし、どこか誇らしげな三人の人影が現れた。
「黄金の獅子団」だ。
彼らは、まさか自分たちのために、最高の「裁きの舞台」が用意されているとは知らずに、一歩、また一歩と、渓谷の出口へと近づいてくる。
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