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=== 002 目指せ、戦隊の基地と支える博士 ===
第21話 ヒーロー、祝勝会で乾杯する
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風切り渓谷での激闘から一夜が明けた。
俺たちは、街の宿屋の一室で、一つの大きなテーブルを囲んでいた。しかし、そこに和やかな朝食の風景はなかった。
アオイは、難しい顔で黙々とパンをかじっている。タンポポは、一人だけ幸せそうにベーコンエッグを頬張っているが、どこか遠慮がちだ。そして、問題はモモだった。昨日の戦場での凛とした姿はどこへやら、彼女はまた、少し気だるげな「オフモード」に戻り、手元のスープを、ただ無言でかき混ぜている。
覚醒した仲間。揃った四人。だが、その関係性は、まだぎこちないにも程があった。
そんな重い空気を破ったのは、宿屋の扉を叩く音だった。
現れたのはギルドの職員で、彼は俺たちに、ギルドマスターからの呼び出しを告げた。昨日の事件……「黄金の獅子団」の後処理と、マザー・ワイバーン討伐の件で、正式な報告と報酬の授与が行われるという。
「よし、行くぞアーク戦隊! 栄光の凱旋だ!」
俺が、ヒーローとして完璧な笑顔でそう意気込むと、アオイから「……その呼び方、やめなさいって言ってるでしょ」と、冷たい視線が突き刺さった。前途は多難である。
ギルドマスター・サラの執務室は、実用的でありながら、随所に彼女の激しい戦歴を物語るような武具が飾られていた。
彼女は、俺たち四人の無事を心から喜び、その功績を最大限に称賛してくれた。特に、モモに対しては、その視線を和らげ、個人的な言葉をかける。
「……おかえり、モモ。君が、自分の足で戻ってきてくれて、嬉しいよ」
「……サラ様」
どうやら、二人は旧知の仲らしい。モモは、少しだけ顔を俯かせた。
そして、サラは「黄金の獅子団」への裁定を、俺たちに告げた。
「パーティとしては、その悪質な行いを鑑み、ギルドの名において、本日をもって解散を命じた。ただし、ダリウス個人のAランク資格までは、今回の件だけでは剥奪できない。彼は今後、ソロのAランク冒険者として活動することになるだろう。……いずれ、君たちと、またどこかで顔を合わせることになるかもしれないね」
偽りの英雄は、そのチームを失った。だが、まだ、この街にいる。その事実は、俺の心に、新たな闘志の火を灯した。
サラから手渡された報酬の革袋は、今までのものとは比較にならないほどの、ずっしりとした重みを持っていた。
宿屋に戻り、俺がその莫大な報酬をきっちり四等分にすると、仲間たちの反応は三者三様だった。
「こ、これだけあれば……一生分のステーキが、食べられます……!」
タンポポは、自分の分け前の革袋を胸に抱きしめ、感涙にむせんでいる。
「……これが、私の仕事に対する、正当な対価……」
モモは、差し出された大金を、何かを噛みしめるように、静かに、しかし、確かにそれを受け取った。
そんな中、アオイは、自分の分け前を手にすると、すぐに「……ちょっと、用事を済ませてくるわ」と、一人で部屋を出ていった。
俺は、彼女の行き先を、あえて問わなかった。ヒーローとして、手を差し伸べるべきか。いや、違う。これは、彼女自身の戦いだ。俺はプロデューサーとして、彼女が自らの力で過去を乗り越えるその時まで、静かに見守ることを選んだ。
その夜、俺たちは、街で一番高級なレストランの、一番良い席にいた。
祝勝会だ。最初はぎこちなかった四人だが、最高級の料理と、芳醇な葡萄酒を前に、その雰囲気は、少しずつ和らいでいく。
そして、会が十分に盛り上がってきたところで、俺は「さて、諸君!」と、おもむろに立ち上がった。手には、この日のために書き上げた、一枚の羊皮紙が握られている。
「ここに、我々『アーク戦隊』が、今後、世界の平和を守っていく上での、行動理念をまとめてきた! 全員、心して聞くように!」
俺は、高らかに、その第一条を読み上げた。
「アーク戦隊憲章、第一条! 我々は、いかなる時も、名乗りと決めポーズを省略してはならない!」
俺の熱弁に対し、仲間たちの反応は、しかし、驚くほど冷ややかだった。
「待ちなさい」と、アオイが、こめかみを抑えながら口を挟む。「その『決めポーズ』とやらに、何らかの戦闘力向上効果でもあるの? ないなら、ただの無駄な動きよ。敵前で隙を晒すだけの、自殺行為ね。非効率的極まりないわ。却下」
「少し、いいかしら」と、モモが、静かに、しかし有無を言わせぬ口調で続ける。「その『憲章』とやらは、私がパーティに参加する際の、当初の契約には含まれていなかった、一方的な追加条項と見なせるわ。これを私に遵守させるのであれば、まずは契約内容の改定と、それに伴う追加報酬の交渉から始めるのが、筋ではないかしら?」
「あの、あのー」と、タンポポが、おずおずと手を挙げる。「第三条にある、にちようびのあさのミーティング、ですかー。その日は、パン屋さんの焼きたてハチミツパンが、限定で売り出される日なんですけど……ミーティングは、パン屋さんでやってもいいですかー?」
三者三様の、完璧な正論によって、俺の「アーク戦隊憲章」は、発布と同時に、事実上の廃案となった。
「な、なぜだ! この完璧な理念の、どこに問題があるというんだ!」
俺は本気で納得がいかず、頭を抱える。だが、すぐにプロデューサーとして気持ちを切り替えた。そうだ、メンバーの個性を尊重し、チームをまとめていくのも、また俺の役目だ。
俺は、改めてグラスを掲げ、第二章の、本当の目標を宣言した。
「まあ、いい! ならば、俺たちの次なる目標は、これだ! この街に潜む、“パトロン”の正体を突き止め、その野望を打ち砕く! そして、そのための情報収集と、俺たちの新しい『基地』となる場所を探すぞ!」
その、ようやくまともな目標に、アオイとモモも、やれやれと頷く。
こうして、新生アーク戦隊の、次なる冒険が、確かに始まったのだった。
俺たちは、街の宿屋の一室で、一つの大きなテーブルを囲んでいた。しかし、そこに和やかな朝食の風景はなかった。
アオイは、難しい顔で黙々とパンをかじっている。タンポポは、一人だけ幸せそうにベーコンエッグを頬張っているが、どこか遠慮がちだ。そして、問題はモモだった。昨日の戦場での凛とした姿はどこへやら、彼女はまた、少し気だるげな「オフモード」に戻り、手元のスープを、ただ無言でかき混ぜている。
覚醒した仲間。揃った四人。だが、その関係性は、まだぎこちないにも程があった。
そんな重い空気を破ったのは、宿屋の扉を叩く音だった。
現れたのはギルドの職員で、彼は俺たちに、ギルドマスターからの呼び出しを告げた。昨日の事件……「黄金の獅子団」の後処理と、マザー・ワイバーン討伐の件で、正式な報告と報酬の授与が行われるという。
「よし、行くぞアーク戦隊! 栄光の凱旋だ!」
俺が、ヒーローとして完璧な笑顔でそう意気込むと、アオイから「……その呼び方、やめなさいって言ってるでしょ」と、冷たい視線が突き刺さった。前途は多難である。
ギルドマスター・サラの執務室は、実用的でありながら、随所に彼女の激しい戦歴を物語るような武具が飾られていた。
彼女は、俺たち四人の無事を心から喜び、その功績を最大限に称賛してくれた。特に、モモに対しては、その視線を和らげ、個人的な言葉をかける。
「……おかえり、モモ。君が、自分の足で戻ってきてくれて、嬉しいよ」
「……サラ様」
どうやら、二人は旧知の仲らしい。モモは、少しだけ顔を俯かせた。
そして、サラは「黄金の獅子団」への裁定を、俺たちに告げた。
「パーティとしては、その悪質な行いを鑑み、ギルドの名において、本日をもって解散を命じた。ただし、ダリウス個人のAランク資格までは、今回の件だけでは剥奪できない。彼は今後、ソロのAランク冒険者として活動することになるだろう。……いずれ、君たちと、またどこかで顔を合わせることになるかもしれないね」
偽りの英雄は、そのチームを失った。だが、まだ、この街にいる。その事実は、俺の心に、新たな闘志の火を灯した。
サラから手渡された報酬の革袋は、今までのものとは比較にならないほどの、ずっしりとした重みを持っていた。
宿屋に戻り、俺がその莫大な報酬をきっちり四等分にすると、仲間たちの反応は三者三様だった。
「こ、これだけあれば……一生分のステーキが、食べられます……!」
タンポポは、自分の分け前の革袋を胸に抱きしめ、感涙にむせんでいる。
「……これが、私の仕事に対する、正当な対価……」
モモは、差し出された大金を、何かを噛みしめるように、静かに、しかし、確かにそれを受け取った。
そんな中、アオイは、自分の分け前を手にすると、すぐに「……ちょっと、用事を済ませてくるわ」と、一人で部屋を出ていった。
俺は、彼女の行き先を、あえて問わなかった。ヒーローとして、手を差し伸べるべきか。いや、違う。これは、彼女自身の戦いだ。俺はプロデューサーとして、彼女が自らの力で過去を乗り越えるその時まで、静かに見守ることを選んだ。
その夜、俺たちは、街で一番高級なレストランの、一番良い席にいた。
祝勝会だ。最初はぎこちなかった四人だが、最高級の料理と、芳醇な葡萄酒を前に、その雰囲気は、少しずつ和らいでいく。
そして、会が十分に盛り上がってきたところで、俺は「さて、諸君!」と、おもむろに立ち上がった。手には、この日のために書き上げた、一枚の羊皮紙が握られている。
「ここに、我々『アーク戦隊』が、今後、世界の平和を守っていく上での、行動理念をまとめてきた! 全員、心して聞くように!」
俺は、高らかに、その第一条を読み上げた。
「アーク戦隊憲章、第一条! 我々は、いかなる時も、名乗りと決めポーズを省略してはならない!」
俺の熱弁に対し、仲間たちの反応は、しかし、驚くほど冷ややかだった。
「待ちなさい」と、アオイが、こめかみを抑えながら口を挟む。「その『決めポーズ』とやらに、何らかの戦闘力向上効果でもあるの? ないなら、ただの無駄な動きよ。敵前で隙を晒すだけの、自殺行為ね。非効率的極まりないわ。却下」
「少し、いいかしら」と、モモが、静かに、しかし有無を言わせぬ口調で続ける。「その『憲章』とやらは、私がパーティに参加する際の、当初の契約には含まれていなかった、一方的な追加条項と見なせるわ。これを私に遵守させるのであれば、まずは契約内容の改定と、それに伴う追加報酬の交渉から始めるのが、筋ではないかしら?」
「あの、あのー」と、タンポポが、おずおずと手を挙げる。「第三条にある、にちようびのあさのミーティング、ですかー。その日は、パン屋さんの焼きたてハチミツパンが、限定で売り出される日なんですけど……ミーティングは、パン屋さんでやってもいいですかー?」
三者三様の、完璧な正論によって、俺の「アーク戦隊憲章」は、発布と同時に、事実上の廃案となった。
「な、なぜだ! この完璧な理念の、どこに問題があるというんだ!」
俺は本気で納得がいかず、頭を抱える。だが、すぐにプロデューサーとして気持ちを切り替えた。そうだ、メンバーの個性を尊重し、チームをまとめていくのも、また俺の役目だ。
俺は、改めてグラスを掲げ、第二章の、本当の目標を宣言した。
「まあ、いい! ならば、俺たちの次なる目標は、これだ! この街に潜む、“パトロン”の正体を突き止め、その野望を打ち砕く! そして、そのための情報収集と、俺たちの新しい『基地』となる場所を探すぞ!」
その、ようやくまともな目標に、アオイとモモも、やれやれと頷く。
こうして、新生アーク戦隊の、次なる冒険が、確かに始まったのだった。
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