異世界ヒーローレッド! ……の俺が、なぜか、魔王の力で、無双する ~でも、俺が作りたいのは最強のヒーロー戦隊です~

ひより那

文字の大きさ
29 / 39
=== 002 目指せ、戦隊の基地と支える博士 ===

第29話 ヒーロー、Cランクへ昇格する

しおりを挟む
 ヴァイス家の事件を終えた翌日、俺たちは、再びギルドマスター・サラの執務室にいた。
 テーブルの上には、俺たちが持ち帰った「裏帳簿」と、砕け散った「呪われし聖杯」の破片が並べられている。

「……なるほどな。投資詐欺で集めた金で、禁断の呪具に手を出し、自滅、か。救いようのない、愚かな末路だ」

 サラは、事の顛末を聞き、厳しい表情でそう呟いた。そして、俺たちに向き直ると、その顔を和らげた。

「だが、君たちのおかげで、街に潜んでいた大きな脅威を、また一つ、未然に防ぐことができた。よくやってくれたね、アーク戦隊」

 その言葉を受け、今まで黙っていたアオイが、一歩、前に出た。

「ギルドマスター。お願いがあります。この『裏帳簿』は、ヴァイス家による投資詐欺の、決定的な証拠です。これを元に、ギルドから、他の被害者への救済と、私の……私の借金の無効を、正式に働きかけていただくことは、可能でしょうか」

 彼女が、初めて、自らの問題を、他者を頼ることで公的に解決しようとする、大きな一歩を踏み出した瞬間だった。

 サラは、その申し出に、力強く頷いた。

「もちろんだ。ギルドが全面的に協力しよう。君は、もう一人で抱え込む必要はない」

 その言葉は、アオイの肩から、長年彼女を縛り付けていた、重い荷物の一つを、確かに下ろしてくれたように見えた。

 サラは、立ち上がると、俺たち四人を見渡し、宣言した。

「さて、これまでの君たちの功績――時計塔事件の解決、マザー・ワイバーン討伐、そして、今回のヴァイス家事件。これらを総合的に判断し、ギルドは、君たちのパーティランクを、本日付で、DからCへと昇格させることを、ここに決定する!」

 その日の午後、ギルドのロビーにある巨大な掲示板に、俺たちの昇格が、大々的に貼り出された。
 それを見た、周囲の冒険者たちから、どよめきと、そして、賞賛の声が上がる。

「おい、見ろよ! あの新人ども、もうCランクになったぞ!」
「当たり前だろ! Aランクの『黄金の獅子団』を実質的に解散に追い込んで、マザー・ワイバーンまで倒したんだぜ」
「すげえな、『アーク戦隊』……!」

 以前のような「若輩」として見る者は、もういない。俺たちは、名実ともに、この街の中堅パーティとして、誰もが認める存在となったのだ。

 街を歩けば、「あ、アーク戦隊の人たちだ!」と、子供たちが、憧れの眼差しを向けてくる。

(ふっ、いいぞ。ヒーローとは、こうでなくてはな! 市民の憧れの的となり、子供たちに夢を与える! 我々の活動は、着実に、この街に根付いてきている!)

 俺は、プロデューサーとして、これ以上ないほどの満足感に浸っていた。

 ◆

 その夜、四人は、いつものレストランで、Cランク昇格と、アオイの問題解決への第一歩を祝して、ささやかな祝勝会を開いていた。
 以前とは違い、そこには、もう気まずい空気はない。自然な、仲間としての会話が、テーブルの上を飛び交っている。

 食事の途中、アオイが、おもむろに、俺たち三人に、その綺麗な顔を下げた。

「……その、今回は……ありがとう。あなたたちがいなければ、私は、きっと、一生、あの過去に縛られていたわ」

 彼女が、初めて見せた、素直な感謝の言葉だった。

 俺は、プロデューサーとして、そして、ヒーローとして、最高の笑顔で返す。

「礼には及ばん! 仲間が、最高の笑顔を取り戻すこと。それこそが、ヒーローにとって、最高の報酬だからな!」

 その、相変わらずのヒーロー口調に、アオイは、ぷいっと顔をそむける。

「……やっぱり、あなた、ちょっと、ウザいわね」
 だが、その口元は、確かに、嬉しそうに、笑っていた。

 ◆

 数日後。Cランク冒険者だけが立ち入ることを許される、ギルド二階の談話室《ラウンジ》。
 俺は、そこで、他のベテラン冒険者たちが交わす、ある噂を耳にした。

「聞いたか? 隣の大陸にある、『テネブラ』って街の話だ」
「ああ、あの、魔王に生贄を捧げてるって、気味の悪い街だろ?」
「なんでも、その魔王が、最近、やけに力を増しているらしくてな。下手に近づいた商隊が、いくつか連絡を絶っているらしい。ギルドも、ついに重い腰を上げて、Aランク以上のパーティにしか、調査依頼を出さない、極秘の最高難度クエストを出したそうだ」

 魔王。
 生贄。

 その、ヒーローの魂を、激しく揺さぶるキーワードに、俺の動きが、ピタリと止まる。

(なんだ……? この、胸騒ぎは。ただの噂話じゃない。これは、俺が、俺たちアーク戦隊が、解決すべき、次なる事件の、始まりの合図だ……!)

 俺は、仲間たちに、この胸の高鳴りを伝えるため、談話室を飛び出した。
 俺の頭の中には、すでに、次なる壮大な物語の、オープニングが流れ始めていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

処理中です...