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=== 002 目指せ、戦隊の基地と支える博士 ===
第30話 ヒーロー、無謀な挑戦を宣言する
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Cランク冒険者だけが立ち入ることを許される、ギルド二階の談話室《ラウンジ》。
そこで俺の耳に飛び込んできた、「魔王」と「生贄」という、ヒーローの魂を激しく揺さぶるキーワード。
俺は、それが、次なる壮大な物語の、始まりの合図だと確信した。
俺は、仲間たちが待つ一階のテーブルへと、駆け下りた。
「聞いたか、諸君!」
俺は、興奮を隠しきれないまま、今しがた仕入れた情報を、最高のプレゼンテーションで語り始めた。
「魔王を名乗る脅威に、生贄を強いられ、恐怖に支配された街があるらしい! 住民たちは、その歪んだ平和に慣れきって、希望を失っている! これこそ、我々アーク戦隊が、その闇に光をもたらすべき、次なる舞台だ!」
俺の、あまりに熱い語りに、しかし、仲間たちの反応は、驚くほど冷ややかだった。
「待ちなさい」
最初に口を開いたのは、アオイだった。彼女は、俺の言葉の、最も重要な部分を、的確に指摘する。
「その噂の続きは、ちゃんと聞いたの? 『Aランク以上のパーティ限定の、最高難度クエスト』。私たちは、ようやくCランクになったばかり。実力も、実績も、何もかもが足りていないわ。そんなの、自殺行為以外の何物でもない」
「リスク評価の観点から見ても、無謀ね」と、モモが静かに続ける。「成功の確証がない依頼を、パーティとして受けるべきではないわ。契約違反よ、あなた」
「Aらんく……」と、タンポポが、ステーキのランクを思い浮かべるような顔で、呟いた。
至極もっともな、三者三様の反対意見。
だが、俺の決意は、微塵も揺るがなかった。
「正義のためならば、時に、ルールを覆すことさえ、ヒーローの仕事だ! 俺は、ギルドマスターに直談判してくる!」
◆ ◆ ◆
「許可できない」
ギルドマスター・サラの執務室。俺の熱意のこもった直談判は、彼女の、冷静で、しかし、有無を言わせぬ一言で、一蹴された。
「気持ちは買う。その正義感は、ヒーローとして、何より尊いものだ。だが、私は、ギルドマスターとして、所属する冒険者を、無謀な死地に送り込むわけにはいかない。これは、君たちを守るための、私の責任だ」
「しかし!」
「聞きなさい、ジン。君たちが、これまで成し遂げてきたことは、素晴らしい。だが、Aランクの世界は、君たちが思っているほど甘くはない。今の君たちでは、魔王どころか、その街にたどり着くことさえ、難しいだろう」
俺の理想論は、ギルドの「ルール」と「責任」という、巨大な壁の前に、あっさりと跳ね返された。
ロビーに戻ると、アオイが「だから言ったでしょ」と、深いため息をつく。俺たちは、完全に行き詰ってしまった。
その、重苦しい空気の中に、凛とした声が響いた。
「――マスター・サラ、彼らを行かせてやったらどうだ」
声の主は、ソロのAランク冒険者として活動を再開していた、ダリウスだった。彼は、一部始終を、柱の陰から見ていたらしい。
俺とダリウスの間に、緊張が走る。
ダリウスは、サラに向かって、静かに語りかけた。
「この男……アークレッドは、常識で測れるヒーローじゃない。それは、俺が一番よく知っている。もし、奴が『行く』と言い出したら、ギルドの許可があろうがなかろうが、必ず行くはずだ。それならば、正式な依頼として、最低限のサポートができるようにしておいた方が、賢明な判断ではないか?」
そして、彼は、初めて俺の方を向き、その目に、複雑な色を浮かべて言った。
「……勘違いするな。これは、お前のためじゃない。モモへの、俺なりの、ほんの僅かな罪滅ぼしだ。そして……お前が掲げる『正義』が、どこまで通用するのか、この目で見届けてやる」
Aランク冒険者からの、強い推薦。そして、ダリウスの言葉の裏にある覚悟。サラは、しばらく考え込んだ後、ついに、重い口を開いた。
「……分かった。特例中の特例として、依頼の受注を許可しよう。ただし、条件がある。ギルドからの、直接的な支援は一切期待するな。全て、自己責任でやり遂げること。……いいな、死ぬなよ、ヒーロー」
◆
こうして、俺は、Aランク限定の依頼書を、その手に握りしめた。それは、ひどく重い、覚悟の象徴だった。
ギルド内の冒険者たちが、「あのCランクパーティが、テネブラの依頼を!?」「正気かよ……」と、信じられないといった様子で、遠巻きに噂をしている。
ギルドを出る前、去り際に、ダリウスが俺に一言だけ、告げた。
「……おい、赤いの。絶対に、死ぬなよ。お前を、いつか、俺自身の手で超えるまではな」
それは、ライバルからの、最高の激励だった。仲間たちと共に、依頼書に記された「諦観の街、テネブラ」の名を見下ろす。
アオイとモモは、そのあまりに無謀な挑戦に、不安な表情を隠せない。だが、俺の心は、ヒーローとして、燃え上がっていた。
次なる、壮大な物語の幕が、今、確かに、上がったのだ。
そこで俺の耳に飛び込んできた、「魔王」と「生贄」という、ヒーローの魂を激しく揺さぶるキーワード。
俺は、それが、次なる壮大な物語の、始まりの合図だと確信した。
俺は、仲間たちが待つ一階のテーブルへと、駆け下りた。
「聞いたか、諸君!」
俺は、興奮を隠しきれないまま、今しがた仕入れた情報を、最高のプレゼンテーションで語り始めた。
「魔王を名乗る脅威に、生贄を強いられ、恐怖に支配された街があるらしい! 住民たちは、その歪んだ平和に慣れきって、希望を失っている! これこそ、我々アーク戦隊が、その闇に光をもたらすべき、次なる舞台だ!」
俺の、あまりに熱い語りに、しかし、仲間たちの反応は、驚くほど冷ややかだった。
「待ちなさい」
最初に口を開いたのは、アオイだった。彼女は、俺の言葉の、最も重要な部分を、的確に指摘する。
「その噂の続きは、ちゃんと聞いたの? 『Aランク以上のパーティ限定の、最高難度クエスト』。私たちは、ようやくCランクになったばかり。実力も、実績も、何もかもが足りていないわ。そんなの、自殺行為以外の何物でもない」
「リスク評価の観点から見ても、無謀ね」と、モモが静かに続ける。「成功の確証がない依頼を、パーティとして受けるべきではないわ。契約違反よ、あなた」
「Aらんく……」と、タンポポが、ステーキのランクを思い浮かべるような顔で、呟いた。
至極もっともな、三者三様の反対意見。
だが、俺の決意は、微塵も揺るがなかった。
「正義のためならば、時に、ルールを覆すことさえ、ヒーローの仕事だ! 俺は、ギルドマスターに直談判してくる!」
◆ ◆ ◆
「許可できない」
ギルドマスター・サラの執務室。俺の熱意のこもった直談判は、彼女の、冷静で、しかし、有無を言わせぬ一言で、一蹴された。
「気持ちは買う。その正義感は、ヒーローとして、何より尊いものだ。だが、私は、ギルドマスターとして、所属する冒険者を、無謀な死地に送り込むわけにはいかない。これは、君たちを守るための、私の責任だ」
「しかし!」
「聞きなさい、ジン。君たちが、これまで成し遂げてきたことは、素晴らしい。だが、Aランクの世界は、君たちが思っているほど甘くはない。今の君たちでは、魔王どころか、その街にたどり着くことさえ、難しいだろう」
俺の理想論は、ギルドの「ルール」と「責任」という、巨大な壁の前に、あっさりと跳ね返された。
ロビーに戻ると、アオイが「だから言ったでしょ」と、深いため息をつく。俺たちは、完全に行き詰ってしまった。
その、重苦しい空気の中に、凛とした声が響いた。
「――マスター・サラ、彼らを行かせてやったらどうだ」
声の主は、ソロのAランク冒険者として活動を再開していた、ダリウスだった。彼は、一部始終を、柱の陰から見ていたらしい。
俺とダリウスの間に、緊張が走る。
ダリウスは、サラに向かって、静かに語りかけた。
「この男……アークレッドは、常識で測れるヒーローじゃない。それは、俺が一番よく知っている。もし、奴が『行く』と言い出したら、ギルドの許可があろうがなかろうが、必ず行くはずだ。それならば、正式な依頼として、最低限のサポートができるようにしておいた方が、賢明な判断ではないか?」
そして、彼は、初めて俺の方を向き、その目に、複雑な色を浮かべて言った。
「……勘違いするな。これは、お前のためじゃない。モモへの、俺なりの、ほんの僅かな罪滅ぼしだ。そして……お前が掲げる『正義』が、どこまで通用するのか、この目で見届けてやる」
Aランク冒険者からの、強い推薦。そして、ダリウスの言葉の裏にある覚悟。サラは、しばらく考え込んだ後、ついに、重い口を開いた。
「……分かった。特例中の特例として、依頼の受注を許可しよう。ただし、条件がある。ギルドからの、直接的な支援は一切期待するな。全て、自己責任でやり遂げること。……いいな、死ぬなよ、ヒーロー」
◆
こうして、俺は、Aランク限定の依頼書を、その手に握りしめた。それは、ひどく重い、覚悟の象徴だった。
ギルド内の冒険者たちが、「あのCランクパーティが、テネブラの依頼を!?」「正気かよ……」と、信じられないといった様子で、遠巻きに噂をしている。
ギルドを出る前、去り際に、ダリウスが俺に一言だけ、告げた。
「……おい、赤いの。絶対に、死ぬなよ。お前を、いつか、俺自身の手で超えるまではな」
それは、ライバルからの、最高の激励だった。仲間たちと共に、依頼書に記された「諦観の街、テネブラ」の名を見下ろす。
アオイとモモは、そのあまりに無謀な挑戦に、不安な表情を隠せない。だが、俺の心は、ヒーローとして、燃え上がっていた。
次なる、壮大な物語の幕が、今、確かに、上がったのだ。
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