異世界ヒーローレッド! ……の俺が、なぜか、魔王の力で、無双する ~でも、俺が作りたいのは最強のヒーロー戦隊です~

ひより那

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=== 002 目指せ、戦隊の基地と支える博士 ===

第33話 ヒーロー、拒絶される

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 諦観の街テネブラに、夜のとばりが下りた。
 老婆エラーラの家にかくまわれた俺たちは、一人の少女を救うため、そして、この街の歪んだ運命を断ち切るため、無謀な作戦を開始しようとしていた。

「よし、作戦名は『オペレーション・エンジェルズ・リベレーション(天使解放作戦)』だ!」
 俺が、小声ながらも、力強くそう宣言すると、アオイが、心底うんざりした顔で、俺の額を指で弾いた。
「却下。普通に『リナさん救出作戦』でいいわ。いい? モモの予測通りなら、教会の警備が手薄になるのは、深夜の二時間だけ。絶対に、物音一つ立てないこと。分かった?」
「……おう」

 モモの、元聖職者としての知識から導き出された、教会の構造と警備の穴。
 アオイの、衛兵の目をくらますための、小規模な幻術魔法。そして、俺の、スキル【構造解析】と【精密操作】による、音なき解錠。
 万が一、見つかった場合は、タンポポが、その絶対的な盾で、脱出経路を確保する。作戦は完璧だ。

 ◆

 深夜。月明かりさえない、新月の夜。
 俺たち四人は、闇に紛れて、街の中心にある教会へと、その身を滑り込ませた。
 教会は、不気味なほど静まり返っていた。神聖さなど、微塵も感じられない。そこは、ただ、少女を生贄として差し出すための、冷たい儀式場だった。

 俺たちは、衛兵たちの目を、アオイの幻術で巧みにかいくぐり、モモが予測した通り、祭壇の裏に隠された、地下牢へと続く階段を発見した。
 地下牢は、冷たく、湿った空気に満ちていた。その一番奥の牢に、彼女はいた。
 粗末な白い衣をまとった、痩せた少女――リナが、ただ、膝を抱えて、虚空を見つめている。その瞳には、恐怖も、悲しみも、もはや浮かんでいない。全てを諦めきった、人形のような瞳だった。

 俺は、彼女を刺激しないよう、静かに牢の前に立つ。

「スキル、【精密操作】」

 鉄格子の、複雑な鍵の内部構造を、脳内で展開し、指先で、音もなく、その錠を開けていく。カチリ、と、小さな音が響き、牢の扉が、ゆっくりと開いた。
 リナは、その音に、何の反応も示さない。ただ、虚ろな瞳を、ゆっくりと、俺に向けただけだった。

 俺は、牢の中に入ると、彼女の前に膝をつき、できる限り、優しい声で語りかけた。

「リナ。俺は、アークレッド。君を、助けに来たヒーローだ」

 その言葉に、しかし、彼女の瞳に宿ったのは、安堵ではなかった。困惑。そして、やがて、それは、静かな、拒絶の色へと変わった。

「……帰って」

 彼女は、震える声で、しかし、はっきりと、そう言った。

「私のせいで、街の平和を、乱さないで」
「何を言っているんだ! 君は、生贄にされるんだぞ!」
「……分かってる。でも、それでいいの」

 彼女は、まるで、自分に言い聞かせるように、言葉を続けた。

「私が、生贄になれば、この街は、また、平和でいられる。みんなが、安心して暮らせる。昔、生贄を絶やした時、街は、山の守り神様に、滅ぼされたって……。私の命一つで、みんなが救われるのなら、それで、いいの……」

 助けようとした相手から、その「救い」そのものを、否定される。

 ヒーローとして、これほど、無力感を覚えたことはなかった。俺は、言葉を失った。

 その、問答の、まさに最中だった。

 カアアアアン! カアアアアン!

 教会の鐘が、侵入者の存在を告げる、けたたましい警鐘となって、静まり返った街中に響き渡った。

「まずいわ、見つかった!」

 アオイの叫びが、地下牢に響く。

「侵入者だ! 地下牢へ向かえ!」
「生贄を、奪う気だぞ!」

 階段の上から、おびただしい数の衛兵たちの、怒号と足音が、急速に近づいてくる。

 万策尽きた。この少女を、彼女の意志に反して、無理やり連れて行くことなど、ヒーローとして、断じてできない。かといって、ここで捕まるわけにもいかない。

「……撤退するぞ!」

 俺は、苦渋の決断を下した。俺たちは、リナをその場に残し、一斉に、来た道とは別の、脱出経路へと駆け出した。


 なんとか、衛兵たちの追跡を振り切り、エラーラの家へと戻った俺たち。
 作戦は、完全な、失敗に終わった。
 重い沈黙が、部屋を支配する。

 俺は、固く、拳を握りしめていた。

(……そうか。分かったぞ。俺は、根本的に、間違っていた)

 助ける、ということの意味を。ヒーローとして、為すべきことの本質を。

(彼女を、リナを、本当に救うには、まず、この街全体を、あの歪んだ『平和』という名の呪いから、解放しなければならないんだ)

 俺たちに残された道は、もう、一つしかなかった。

 儀式の日に、生贄の行列を追い、元凶である「偽の魔王」を、この街の全ての住民の目の前で打ち破る。

 そして、この歪んだ契約が、ただの幻想に過ぎないことを、証明すること。

 アーク戦隊の、本当の戦いの目的が、ここで、確かに定まった。
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