36 / 39
=== 002 目指せ、戦隊の基地と支える博士 ===
第36話 ヒーロー、博士の真実を知る
しおりを挟む
断崖の上に、気まずい沈黙が流れた。
禍々しい魔王の姿が、まるで幻のように消え去り、後には、ゴーグルをかけた、小柄な女性が一人、やれやれと肩をすくめているだけ。
祭壇の上のリナも、俺たちアーク戦隊も、目の前で起きた、あまりに非現実的な光景に、完全に思考が停止していた。
最初に我に返ったのは、俺だった。
俺はアークレッドの変身を解き、一人の青年として、その女性と対峙する。
「……お前は、一体、何者だ? あの魔王は、何だったんだ」
「ん? ああ、君がリーダーかい」
女性は、悪びれる様子もなく、にこやかに名乗った。
「あたしは、アリス。見ての通り、ただのしがない発明家さ。いやー、参った参った。君たち、あたしの作った警備人形を、全部スクラップにしちゃうんだもんなぁ。予想以上に、強かったよ」
「ふざけないで!」
その、あまりに軽い口調に、アオイが激しく詰め寄る。
「あなたが、この街を、リナさんを、生贄の恐怖で縛り付けていた元凶なのよ!」
「まあまあ、落ち着いてよ」
アリスは、手首につけた、無骨なブレスレットを指差した。
「魔王の姿は、これがあたしが発明した『広域・立体映像投影装置』が見せていた、ただの幻影さ。あたしは、君たちが来るまで、ずっと、安全な場所から、この茶番劇を演出してたってわけ。大したもんだろう?」
彼女は、恐るべき技術を、まるで、子供のおもちゃの自慢でもするかのように、あっけらかんと語る。
そして、アリスは、なぜこんなことをしたのか、その動機を語り始めた。
「あたしはね、あのテネブラって街が、大っ嫌いなのさ。閉鎖的で、陰湿で、弱い者いじめが横行する、救いようのない街。だから、教えてあげたんだよ。あいつらには、もっと大きな、共通の恐怖が必要だってね。共通の敵がいれば、人々は、団結する。生贄というルールがあれば、人々は、自分が選ばれまいと、必死に『善良な市民』を演じる。……結果、どうだい? あの街は、あたしのおかげで、いじめも、犯罪もない、完璧な『平和な街』になったじゃないか」
その歪んだ、しかし、一貫した思想。それは、一種の、独裁者としての「正義」だった。
俺は、言葉に詰まった。
(なんだ、こいつは……。やっていることは、到底、許されることじゃない。だが、その根底にあるのは、街の平和を願う、歪んだ善意……? こいつは、悪なのか? それとも……)
アリスは、そこで、ふっと、寂しそうに笑った。
「……でも、それだけじゃない。それだけだったら、あたしは、ただの独裁者だ」
彼女は、祭壇の上で、未だに震えているリナに、優しい視線を向けた。
「あたしの、本当の目的は、この歪んだシステムから、『生贄』そのものを、救い出すことさ」
彼女は、衝撃の事実を告白する。儀式で受け取った生贄を、彼女は、決して手にかけたことはない。むしろ、山の奥に、彼女が作った「隠れ里」へと保護し、そこで、新しい、本当の平和な生活を与えていたのだ。
「偽の魔王」とは、テネブラの住民を欺き、かつ、街から「生贄」として選ばれる犠牲者を、合法的かつ安全に「救出」するための、彼女が考え出した、苦肉の策だったのだ。
その、あまりに意外な告白に、俺たちは、再び言葉を失った。
「……なんて、馬鹿げたやり方」と、アオイが呟く。「でも、結果として、あなたは、多くの人を救ってきた……」
「……偽りの契約で、人々を恐怖に縛り付けた罪は、重い。でも、その契約によって、多くの命が、絶望から救われたのも、また、事実……」モモが、葛藤するように、目を伏せる。
単純な善悪二元論では割り切れない、極めて複雑な問題が、俺たちの前に、横たわっていた。
その時、モモが、祭壇のリナに、静かに近づいた。
「……いずれにせよ、この子は、もう、あの街には戻れない。彼女の心は、深く傷ついている。本当の意味で、安全な場所で、ゆっくりと癒してあげる必要があるわ」
モモの言葉に、アリスは、初めて、心からの笑みを浮かべたように見えた。
「――そう。その通りだよ。だから、あたしは、その『安全な場所』を、ずっと、作り続けてきたんだ」
彼女は、断崖の、今まで誰も気づかなかった、岩壁の一角に手をかける。
ゴゴゴゴ……と、重い音を立てて、そこが、隠し扉のように開いた。中からは、洞窟の闇ではなく、温かい、人工的な光が漏れ出している。
「――ようこそ。あたしの……いいや、あたしたちの、本当の『街』へ」
トンネルの向こうには、俺たちがまだ知らない、新しい世界が、そして、救われた人々が暮らす町が、広がっていた。
禍々しい魔王の姿が、まるで幻のように消え去り、後には、ゴーグルをかけた、小柄な女性が一人、やれやれと肩をすくめているだけ。
祭壇の上のリナも、俺たちアーク戦隊も、目の前で起きた、あまりに非現実的な光景に、完全に思考が停止していた。
最初に我に返ったのは、俺だった。
俺はアークレッドの変身を解き、一人の青年として、その女性と対峙する。
「……お前は、一体、何者だ? あの魔王は、何だったんだ」
「ん? ああ、君がリーダーかい」
女性は、悪びれる様子もなく、にこやかに名乗った。
「あたしは、アリス。見ての通り、ただのしがない発明家さ。いやー、参った参った。君たち、あたしの作った警備人形を、全部スクラップにしちゃうんだもんなぁ。予想以上に、強かったよ」
「ふざけないで!」
その、あまりに軽い口調に、アオイが激しく詰め寄る。
「あなたが、この街を、リナさんを、生贄の恐怖で縛り付けていた元凶なのよ!」
「まあまあ、落ち着いてよ」
アリスは、手首につけた、無骨なブレスレットを指差した。
「魔王の姿は、これがあたしが発明した『広域・立体映像投影装置』が見せていた、ただの幻影さ。あたしは、君たちが来るまで、ずっと、安全な場所から、この茶番劇を演出してたってわけ。大したもんだろう?」
彼女は、恐るべき技術を、まるで、子供のおもちゃの自慢でもするかのように、あっけらかんと語る。
そして、アリスは、なぜこんなことをしたのか、その動機を語り始めた。
「あたしはね、あのテネブラって街が、大っ嫌いなのさ。閉鎖的で、陰湿で、弱い者いじめが横行する、救いようのない街。だから、教えてあげたんだよ。あいつらには、もっと大きな、共通の恐怖が必要だってね。共通の敵がいれば、人々は、団結する。生贄というルールがあれば、人々は、自分が選ばれまいと、必死に『善良な市民』を演じる。……結果、どうだい? あの街は、あたしのおかげで、いじめも、犯罪もない、完璧な『平和な街』になったじゃないか」
その歪んだ、しかし、一貫した思想。それは、一種の、独裁者としての「正義」だった。
俺は、言葉に詰まった。
(なんだ、こいつは……。やっていることは、到底、許されることじゃない。だが、その根底にあるのは、街の平和を願う、歪んだ善意……? こいつは、悪なのか? それとも……)
アリスは、そこで、ふっと、寂しそうに笑った。
「……でも、それだけじゃない。それだけだったら、あたしは、ただの独裁者だ」
彼女は、祭壇の上で、未だに震えているリナに、優しい視線を向けた。
「あたしの、本当の目的は、この歪んだシステムから、『生贄』そのものを、救い出すことさ」
彼女は、衝撃の事実を告白する。儀式で受け取った生贄を、彼女は、決して手にかけたことはない。むしろ、山の奥に、彼女が作った「隠れ里」へと保護し、そこで、新しい、本当の平和な生活を与えていたのだ。
「偽の魔王」とは、テネブラの住民を欺き、かつ、街から「生贄」として選ばれる犠牲者を、合法的かつ安全に「救出」するための、彼女が考え出した、苦肉の策だったのだ。
その、あまりに意外な告白に、俺たちは、再び言葉を失った。
「……なんて、馬鹿げたやり方」と、アオイが呟く。「でも、結果として、あなたは、多くの人を救ってきた……」
「……偽りの契約で、人々を恐怖に縛り付けた罪は、重い。でも、その契約によって、多くの命が、絶望から救われたのも、また、事実……」モモが、葛藤するように、目を伏せる。
単純な善悪二元論では割り切れない、極めて複雑な問題が、俺たちの前に、横たわっていた。
その時、モモが、祭壇のリナに、静かに近づいた。
「……いずれにせよ、この子は、もう、あの街には戻れない。彼女の心は、深く傷ついている。本当の意味で、安全な場所で、ゆっくりと癒してあげる必要があるわ」
モモの言葉に、アリスは、初めて、心からの笑みを浮かべたように見えた。
「――そう。その通りだよ。だから、あたしは、その『安全な場所』を、ずっと、作り続けてきたんだ」
彼女は、断崖の、今まで誰も気づかなかった、岩壁の一角に手をかける。
ゴゴゴゴ……と、重い音を立てて、そこが、隠し扉のように開いた。中からは、洞窟の闇ではなく、温かい、人工的な光が漏れ出している。
「――ようこそ。あたしの……いいや、あたしたちの、本当の『街』へ」
トンネルの向こうには、俺たちがまだ知らない、新しい世界が、そして、救われた人々が暮らす町が、広がっていた。
0
あなたにおすすめの小説
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる