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=== 002 目指せ、戦隊の基地と支える博士 ===
第38話 ヒーロー、博士と契約を結ぶ
アリスが、リビングの壁に手をかけると、そこが、音もなくスライドし、巨大な秘密の扉が開いた。
「――あたしの、本当の仕事場を見せてやるよ。ようこそ。あたしの、おもちゃ箱へ」
その奥に広がっていたのは、俺たちの想像を、あらゆる意味で絶する空間だった。
巨大なドーム状の、広大な研究所。壁一面には、様々な種類の金属や鉱石が、素材ごとに完璧に分類され、整然と並べられている。
床には、見たこともないような工具や、魔力と電気で動くハイブリッドな機械が、機能的に配置されていた。そして、部屋の中央では、巨大な魔力炉が、青白い光を放って、静かに、しかし、力強く稼働している。
(なんだ、ここは……。特撮ヒーロー番組で見た、秘密基地の、司令室と、トレーニングルームと、開発室と、動力室を、全部一緒にしたような、夢の空間じゃないか……!)
俺は、プロデューサーとして、その完璧な「セット」に、ただただ圧倒されていた。
「どうやって、これだけのものを……?」
アオイが、呆然と呟くと、アリスは、面倒くさそうに、その場で実演して見せた。
「んー、まあ、こんな感じさ」
彼女は、足元に転がっていた、ただの鉄クズを、手袋をはめた手で掴む。すると、鉄クズは、まるで粘土のように、ぐにゃりと形を変え、あっという間に、一つの、極めて精密な歯車へと圧縮・変形してしまった。
「あたしの、このガントレットは、無機物の分子構造を、ある程度、自由に組み替えられる。まあ、その代わり、質量がちょっと減るのが、玉に瑕だけどね」
アリスは、次に、部屋の隅で動きが止まっていた、お掃除ドールに視線を向けた。彼女が、その特徴的なゴーグルを装着すると、そのレンズが微かに光る。
「あー、こりゃ、魔力伝達系のプログラムに、バグが出てるな。ちょいと、修正っと」
彼女が、ゴーグル越しにドールを数秒間見つめると、ドールは、再び、滑らかな動きを取り戻し、健気に、床の掃除を再開した。
「このゴーグルは、エネルギーの流れを視覚化して、簡単なプログラムなら、直接、書き込めるのさ。便利だろ?」
俺たちが、その、神の御業としか思えない技術に、言葉を失っていると、彼女は、腰につけた、小さな道具袋を、ぽん、と叩いた。
「まあ、一番の功労者は、こいつかな。素材は、全部、鉄屑街から、このカバンで、ちょいと拝借してくるのさ。見た目より、たくさん入るから、便利だよ」
俺は、確信した。彼女は、天才だ。俺が、ずっと、探し求めていた、ヒーローを、その隣で支える、最高の「博士」そのものだ。
アリスは、研究所の中央にある、ひときわ大きなコンソールへと、俺たちを案内した。
「で、こいつが、あたしの最高傑作。『広域・立体映像投影装置』。例の、偽の魔王を映し出してたやつさ。まあ、応用すれば、色々できるけどね」
その言葉に、俺の頭の中で、無数の、そして、最高のアイデアが、稲妻のように閃いた。
(この技術……! これは、ただの幻影じゃない! ヒーローの登場を、劇的に演出する、最高の舞台装置だ! 必殺技の背景に、爆発や、稲妻を映し出すこともできる! そして……そうだ! これを使えば、俺以外のメンバーも、戦隊ヒーローの姿に……! まさに、ヒーローの王道! 完璧な絵作りができる!)
俺は、アリスに向き直り、その生涯で、最も情熱的な、最高のプレゼンテーションを開始した。
「ドクター・アリス! 君を、我々『アーク戦隊』の、公式メカニック兼、専属博士として、正式にスカウトする!」
「はぁ?」
「君は、この『フロイハイム』を、我々の秘密基地として提供し、我々のための装備を開発するんだ! まずは、手始めに、アオイたちが、俺と同じ、アークヒーローの姿に変身できる装置の開発を頼む!」
「……正気?」
俺の、あまりに唐突な宣言に、アリスが呆気に取られるより早く、アオイが、その間に割り込んできた。
「待ちなさい、ジン! また、勝手に話を進めて! 大体、博士って何よ!? それに、私たちの変身装置ですって!? 私は、断固として、あなたみたいな、暑苦しいスーツを着るつもりはないわよ!」
さらに、モモも、冷静に口を挟む。
「興味深い提案ではあるわね。でも、その契約内容は、あまりに曖昧よ。『装備開発』と、私たちの『里の守護』。具体的に、どこまでの義務と権利が発生するのか。それを、明確な契約書として提示してもらわないと、同意はできないわ」
ジン、アオイ、モモによる、三者三様の、カオスな口論。
アリスは、その光景を、ただ、腕を組んで、面白そうに、ニヤニヤと眺めていた。
やがて、彼女は、パン、と手を叩いて、その場を収めた。
そして、俺を見て、心底、楽しそうに笑った。
「……ぷっ、あはは! あんた、最高だよ! ヒーロー戦隊の、博士、ねぇ……。いいじゃないか。あたしが、子供の頃に、憧れたもの、そのものじゃないか」
彼女の瞳に、初めて、打算ではない、純粋な好奇心と、憧憬の光が宿る。
「あんたの、その、狂ってるくらい真っ直ぐな理想に、乗ってやるよ。いいだろう。その契約、結んでやる。――リーダー」
こうして、アーク戦隊は、「基地」と「博士」という、ヒーロー活動に不可欠な、二つの大きな力を、同時に手に入れた。
アリスは、パートナーシップの証として、一つの試作品を、俺たちに手渡す。
「ほらよ、契約の着手金代わりだ。ヒーローチームには、インカムが必須だろ?」
それは、耳に装着する、小型の通信機だった。
俺は、それを手に、固く誓う。この、理想の基地と、最高の仲間たちを、必ず、守り抜いてみせると。
しかし、俺たちの、その平穏な契約の瞬間に、魔王の力を追う、本当の脅威が、刻一刻と、迫っていることを、まだ、誰も知らなかった。
「――あたしの、本当の仕事場を見せてやるよ。ようこそ。あたしの、おもちゃ箱へ」
その奥に広がっていたのは、俺たちの想像を、あらゆる意味で絶する空間だった。
巨大なドーム状の、広大な研究所。壁一面には、様々な種類の金属や鉱石が、素材ごとに完璧に分類され、整然と並べられている。
床には、見たこともないような工具や、魔力と電気で動くハイブリッドな機械が、機能的に配置されていた。そして、部屋の中央では、巨大な魔力炉が、青白い光を放って、静かに、しかし、力強く稼働している。
(なんだ、ここは……。特撮ヒーロー番組で見た、秘密基地の、司令室と、トレーニングルームと、開発室と、動力室を、全部一緒にしたような、夢の空間じゃないか……!)
俺は、プロデューサーとして、その完璧な「セット」に、ただただ圧倒されていた。
「どうやって、これだけのものを……?」
アオイが、呆然と呟くと、アリスは、面倒くさそうに、その場で実演して見せた。
「んー、まあ、こんな感じさ」
彼女は、足元に転がっていた、ただの鉄クズを、手袋をはめた手で掴む。すると、鉄クズは、まるで粘土のように、ぐにゃりと形を変え、あっという間に、一つの、極めて精密な歯車へと圧縮・変形してしまった。
「あたしの、このガントレットは、無機物の分子構造を、ある程度、自由に組み替えられる。まあ、その代わり、質量がちょっと減るのが、玉に瑕だけどね」
アリスは、次に、部屋の隅で動きが止まっていた、お掃除ドールに視線を向けた。彼女が、その特徴的なゴーグルを装着すると、そのレンズが微かに光る。
「あー、こりゃ、魔力伝達系のプログラムに、バグが出てるな。ちょいと、修正っと」
彼女が、ゴーグル越しにドールを数秒間見つめると、ドールは、再び、滑らかな動きを取り戻し、健気に、床の掃除を再開した。
「このゴーグルは、エネルギーの流れを視覚化して、簡単なプログラムなら、直接、書き込めるのさ。便利だろ?」
俺たちが、その、神の御業としか思えない技術に、言葉を失っていると、彼女は、腰につけた、小さな道具袋を、ぽん、と叩いた。
「まあ、一番の功労者は、こいつかな。素材は、全部、鉄屑街から、このカバンで、ちょいと拝借してくるのさ。見た目より、たくさん入るから、便利だよ」
俺は、確信した。彼女は、天才だ。俺が、ずっと、探し求めていた、ヒーローを、その隣で支える、最高の「博士」そのものだ。
アリスは、研究所の中央にある、ひときわ大きなコンソールへと、俺たちを案内した。
「で、こいつが、あたしの最高傑作。『広域・立体映像投影装置』。例の、偽の魔王を映し出してたやつさ。まあ、応用すれば、色々できるけどね」
その言葉に、俺の頭の中で、無数の、そして、最高のアイデアが、稲妻のように閃いた。
(この技術……! これは、ただの幻影じゃない! ヒーローの登場を、劇的に演出する、最高の舞台装置だ! 必殺技の背景に、爆発や、稲妻を映し出すこともできる! そして……そうだ! これを使えば、俺以外のメンバーも、戦隊ヒーローの姿に……! まさに、ヒーローの王道! 完璧な絵作りができる!)
俺は、アリスに向き直り、その生涯で、最も情熱的な、最高のプレゼンテーションを開始した。
「ドクター・アリス! 君を、我々『アーク戦隊』の、公式メカニック兼、専属博士として、正式にスカウトする!」
「はぁ?」
「君は、この『フロイハイム』を、我々の秘密基地として提供し、我々のための装備を開発するんだ! まずは、手始めに、アオイたちが、俺と同じ、アークヒーローの姿に変身できる装置の開発を頼む!」
「……正気?」
俺の、あまりに唐突な宣言に、アリスが呆気に取られるより早く、アオイが、その間に割り込んできた。
「待ちなさい、ジン! また、勝手に話を進めて! 大体、博士って何よ!? それに、私たちの変身装置ですって!? 私は、断固として、あなたみたいな、暑苦しいスーツを着るつもりはないわよ!」
さらに、モモも、冷静に口を挟む。
「興味深い提案ではあるわね。でも、その契約内容は、あまりに曖昧よ。『装備開発』と、私たちの『里の守護』。具体的に、どこまでの義務と権利が発生するのか。それを、明確な契約書として提示してもらわないと、同意はできないわ」
ジン、アオイ、モモによる、三者三様の、カオスな口論。
アリスは、その光景を、ただ、腕を組んで、面白そうに、ニヤニヤと眺めていた。
やがて、彼女は、パン、と手を叩いて、その場を収めた。
そして、俺を見て、心底、楽しそうに笑った。
「……ぷっ、あはは! あんた、最高だよ! ヒーロー戦隊の、博士、ねぇ……。いいじゃないか。あたしが、子供の頃に、憧れたもの、そのものじゃないか」
彼女の瞳に、初めて、打算ではない、純粋な好奇心と、憧憬の光が宿る。
「あんたの、その、狂ってるくらい真っ直ぐな理想に、乗ってやるよ。いいだろう。その契約、結んでやる。――リーダー」
こうして、アーク戦隊は、「基地」と「博士」という、ヒーロー活動に不可欠な、二つの大きな力を、同時に手に入れた。
アリスは、パートナーシップの証として、一つの試作品を、俺たちに手渡す。
「ほらよ、契約の着手金代わりだ。ヒーローチームには、インカムが必須だろ?」
それは、耳に装着する、小型の通信機だった。
俺は、それを手に、固く誓う。この、理想の基地と、最高の仲間たちを、必ず、守り抜いてみせると。
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