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=== 002 目指せ、戦隊の基地と支える博士 ===
第39話 ヒーロー、同郷の士と出会う
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フロイハイムでの、奇妙で、しかし、穏やかな日々が始まって、数日が経った頃だった。
俺たちアーク戦隊は、アリスの指示の下、広大な研究所の一角を、俺たちの「作戦司令室」として使えるように、掃除や、片付けに精を出していた。
「もう! なんで、私まで、こんなガラクタの整理を……!」
「契約です、アオイさん。私たちは、この基地を使わせてもらう代わりに、労働力を提供するという、約束ですので」
「タンポポ! それは、あたしが後で食べる分だから、勝手に味見するな!」
「はーい、アリス様ー」
そんな、騒がしくも、平和な時間の中。俺の耳につけた、アリスお手製のインカムから、彼女の声だけが、静かに響いた。
『ジン。ちょっと、大事な話がある。悪いけど、一人で、あたしのプライベートラボまで、来てくれないかい』
俺は、仲間たちに「アリスが、新しい装備のことで、リーダーにだけ話があるんだってさ」と、もっともらしい嘘をつくと、一人、彼女の元へと向かった。
研究所の最奥にある、彼女の私的な研究室。いつもは、様々な機械音が響いているはずのその場所は、今日に限って、不気味なほど静まり返っていた。
アリスは、作業の手を止め、まっすぐに俺の目を見て、問いかけた。
「単刀直入に聞くよ、ジン。……あんた、もしかして、あたしと同じ、『あっちの世界』から来たクチかい?」
その、あまりに直接的な問いに、俺の心臓が、大きく跳ねた。
「な、何を言っているんだ、アリス。俺は、見ての通り、ただの冒険者だが……」
必死に、平静を装おうとする。だが、アリスは、その大きなゴーグルの奥で、全てを見透かしたように、静かに、その根拠を語り始めた。
「あんたの、その変身した後の姿……『アークレッド』とか言ったっけ? あのデザイン、この世界の冒険者の様式とは、全く違う。プレートメイルでもなければ、レザーアーマーでもない。あの、全身を覆う、流線形のフォルム。そして、何より、あの複眼のマスク。……あたしが、昔、日曜の朝に、テレビにかじりついて見ていた、『特撮ヒーロー』ってやつに、そっくりなんだよ」
特撮ヒーロー。この世界には、絶対に存在しないはずの言葉。
それが、決定的な証拠だった。俺は、もう、言い逃れはできないと悟った。
「……だとしたら、あんたこそ、どうなんだ」
観念した俺は、今度は、自分から、彼女に問い返す。
「あんたが作る、その発明品の数々。ただの鉄クズから、精密な機械を作り出すガントレット。エネルギーを可視化するゴーグル。そして、この、ありえないほど合理的で、清潔な、地下の理想郷。どれも、この世界の技術レベルを、遥かに超えている。まるで、俺がいた世界のSF映画や、アニメに出てくる、『博士』の、『できたらいいな』という理想を、全部、詰め込んだみたいじゃないか」
俺の言葉に、アリスは、初めて、少し寂しそうな、懐かしむような笑みを浮かべた。
「……バレちまったか。そうだよ。あたしは、転生者だ。前の世界じゃ、精神科医なんて、お堅い仕事をしてたけどね。……本当は、ずっと、ヒーローの隣で、メカを作ったり、基地を守ったりする、天才博士に、なりたかったのさ」
彼女は、神に「博士としての能力が欲しい」と願ったこと、そして、その結果、三つの能力を与えられたことを、俺に打ち明けた。
無機物の構造を自在に組み替える、対価として質量が半減する、変形圧縮ガントレット。
エネルギーの流れを視覚化し、機械に直接プログラムを書き込める、エネルギー分析ゴーグル。
そして、いくらでも素材を詰め込むことができる、四次元収納カバン。
彼女の告白を受け、俺も、自らの秘密を打ち明けることにした。
ヒーローに憧れて死んだこと。神に「ヒーローになりたい」と願ったこと。そして、その結果、三本のUSB《Ultimate Soul Buster》を与えられたこと。
特に、USB①に、この世界の【魔王】そのものが封印されているという、最大の秘密を、俺は、初めて、自分以外の誰かに語った。
互いの、最大の秘密を共有し、俺たちの間に、特別な「同郷の士」としての、そして、「ヒーロー」と「博士」としての、奇妙な絆が生まれた、その時だった。
アリスが、深刻な顔で、一つの不安を口にした。
「……実は、困ったことになっててね。次の生贄を受ける時……もし、今回みたいに、君たちみたいなイレギュラーが現れて、あたしの『偽の魔王』と戦うことになった場合……そのための、迎撃用の警備マシンを、この前の戦いで、君たちに、全部、スクラップにされちまったんだ。今からじゃ、新しいのを用意できるか、正直、分からない」
その不安に対し、俺は、最高の解決策を提案した。
「――それなら、心配ない。次の儀式には、俺が、このUSB①の力を使って、本物の【魔王】に変身し、その場に立ってやる。それなら、どんな奴が来ようと、問題ないだろう?」
「……本物の、魔王に?」
アリスが、信じられないといった顔で俺を見る。
俺は、言葉ではなく、行動で、それを示すことにした。
俺は、懐から、漆黒のUSB①を取り出し、腰のアークドライバーに、突き刺した。
『CHANGE! DARKNESS MODE!』
アークレッドの時とは、全く違う。光ではない。空間そのものが、俺を中心に、闇に塗りつぶされるように、収縮していく。
禍々しく、冒涜的で、しかし、どこか神々しい、黒曜石の鎧が、俺の体を包み込む。背中からは、巨大な翼が生え、頭には、燃え盛る二本の角が現れる。
アリスは、その光景を、恐怖ではなく、彼女のゴーグルを通して、溢れ出るエネルギーの流れを、科学者としての、純粋な好奇心と、畏怖の目で見つめていた。
「……すごい。これが、本物の……」
俺は、その姿のまま、アリスに頷いた。
「ああ。これなら、問題ないだろう?」
二人だけの、新たな、そして、より強固な「共犯関係」が結ばれた後。俺が、晴れやかな顔で研究室から出てくると、リビングの入り口で、アオイ、モモ、タンポポの三人が、腕を組んで、じっと、俺を待っていた。
「……随分と、長かったじゃない。二人きりで、どんな『大事な話』をしていたのかしら?」
アオイが、氷のように冷たい声で、俺に問いかける。
「……リーダーが、特定のメンバーとだけ、秘密を共有するのは、チームの公平性を損なう、重大な契約違反に当たる可能性があるわね」
モモが、契約書の条文でも確認するかのように、冷静に指摘する。
「アリスさんのところで、何か、美味しいものでも、こっそり、食べてたんじゃないですかー?」
タンポポが、純粋な食欲から、本質を突く質問を投げかける。
三者三様の、明らかに嫉妬を含んだ追及に、俺は、これから始まる、別の意味での「戦い」を予感し、背中に、冷たい汗が流れるのを感じるのだった。
俺たちアーク戦隊は、アリスの指示の下、広大な研究所の一角を、俺たちの「作戦司令室」として使えるように、掃除や、片付けに精を出していた。
「もう! なんで、私まで、こんなガラクタの整理を……!」
「契約です、アオイさん。私たちは、この基地を使わせてもらう代わりに、労働力を提供するという、約束ですので」
「タンポポ! それは、あたしが後で食べる分だから、勝手に味見するな!」
「はーい、アリス様ー」
そんな、騒がしくも、平和な時間の中。俺の耳につけた、アリスお手製のインカムから、彼女の声だけが、静かに響いた。
『ジン。ちょっと、大事な話がある。悪いけど、一人で、あたしのプライベートラボまで、来てくれないかい』
俺は、仲間たちに「アリスが、新しい装備のことで、リーダーにだけ話があるんだってさ」と、もっともらしい嘘をつくと、一人、彼女の元へと向かった。
研究所の最奥にある、彼女の私的な研究室。いつもは、様々な機械音が響いているはずのその場所は、今日に限って、不気味なほど静まり返っていた。
アリスは、作業の手を止め、まっすぐに俺の目を見て、問いかけた。
「単刀直入に聞くよ、ジン。……あんた、もしかして、あたしと同じ、『あっちの世界』から来たクチかい?」
その、あまりに直接的な問いに、俺の心臓が、大きく跳ねた。
「な、何を言っているんだ、アリス。俺は、見ての通り、ただの冒険者だが……」
必死に、平静を装おうとする。だが、アリスは、その大きなゴーグルの奥で、全てを見透かしたように、静かに、その根拠を語り始めた。
「あんたの、その変身した後の姿……『アークレッド』とか言ったっけ? あのデザイン、この世界の冒険者の様式とは、全く違う。プレートメイルでもなければ、レザーアーマーでもない。あの、全身を覆う、流線形のフォルム。そして、何より、あの複眼のマスク。……あたしが、昔、日曜の朝に、テレビにかじりついて見ていた、『特撮ヒーロー』ってやつに、そっくりなんだよ」
特撮ヒーロー。この世界には、絶対に存在しないはずの言葉。
それが、決定的な証拠だった。俺は、もう、言い逃れはできないと悟った。
「……だとしたら、あんたこそ、どうなんだ」
観念した俺は、今度は、自分から、彼女に問い返す。
「あんたが作る、その発明品の数々。ただの鉄クズから、精密な機械を作り出すガントレット。エネルギーを可視化するゴーグル。そして、この、ありえないほど合理的で、清潔な、地下の理想郷。どれも、この世界の技術レベルを、遥かに超えている。まるで、俺がいた世界のSF映画や、アニメに出てくる、『博士』の、『できたらいいな』という理想を、全部、詰め込んだみたいじゃないか」
俺の言葉に、アリスは、初めて、少し寂しそうな、懐かしむような笑みを浮かべた。
「……バレちまったか。そうだよ。あたしは、転生者だ。前の世界じゃ、精神科医なんて、お堅い仕事をしてたけどね。……本当は、ずっと、ヒーローの隣で、メカを作ったり、基地を守ったりする、天才博士に、なりたかったのさ」
彼女は、神に「博士としての能力が欲しい」と願ったこと、そして、その結果、三つの能力を与えられたことを、俺に打ち明けた。
無機物の構造を自在に組み替える、対価として質量が半減する、変形圧縮ガントレット。
エネルギーの流れを視覚化し、機械に直接プログラムを書き込める、エネルギー分析ゴーグル。
そして、いくらでも素材を詰め込むことができる、四次元収納カバン。
彼女の告白を受け、俺も、自らの秘密を打ち明けることにした。
ヒーローに憧れて死んだこと。神に「ヒーローになりたい」と願ったこと。そして、その結果、三本のUSB《Ultimate Soul Buster》を与えられたこと。
特に、USB①に、この世界の【魔王】そのものが封印されているという、最大の秘密を、俺は、初めて、自分以外の誰かに語った。
互いの、最大の秘密を共有し、俺たちの間に、特別な「同郷の士」としての、そして、「ヒーロー」と「博士」としての、奇妙な絆が生まれた、その時だった。
アリスが、深刻な顔で、一つの不安を口にした。
「……実は、困ったことになっててね。次の生贄を受ける時……もし、今回みたいに、君たちみたいなイレギュラーが現れて、あたしの『偽の魔王』と戦うことになった場合……そのための、迎撃用の警備マシンを、この前の戦いで、君たちに、全部、スクラップにされちまったんだ。今からじゃ、新しいのを用意できるか、正直、分からない」
その不安に対し、俺は、最高の解決策を提案した。
「――それなら、心配ない。次の儀式には、俺が、このUSB①の力を使って、本物の【魔王】に変身し、その場に立ってやる。それなら、どんな奴が来ようと、問題ないだろう?」
「……本物の、魔王に?」
アリスが、信じられないといった顔で俺を見る。
俺は、言葉ではなく、行動で、それを示すことにした。
俺は、懐から、漆黒のUSB①を取り出し、腰のアークドライバーに、突き刺した。
『CHANGE! DARKNESS MODE!』
アークレッドの時とは、全く違う。光ではない。空間そのものが、俺を中心に、闇に塗りつぶされるように、収縮していく。
禍々しく、冒涜的で、しかし、どこか神々しい、黒曜石の鎧が、俺の体を包み込む。背中からは、巨大な翼が生え、頭には、燃え盛る二本の角が現れる。
アリスは、その光景を、恐怖ではなく、彼女のゴーグルを通して、溢れ出るエネルギーの流れを、科学者としての、純粋な好奇心と、畏怖の目で見つめていた。
「……すごい。これが、本物の……」
俺は、その姿のまま、アリスに頷いた。
「ああ。これなら、問題ないだろう?」
二人だけの、新たな、そして、より強固な「共犯関係」が結ばれた後。俺が、晴れやかな顔で研究室から出てくると、リビングの入り口で、アオイ、モモ、タンポポの三人が、腕を組んで、じっと、俺を待っていた。
「……随分と、長かったじゃない。二人きりで、どんな『大事な話』をしていたのかしら?」
アオイが、氷のように冷たい声で、俺に問いかける。
「……リーダーが、特定のメンバーとだけ、秘密を共有するのは、チームの公平性を損なう、重大な契約違反に当たる可能性があるわね」
モモが、契約書の条文でも確認するかのように、冷静に指摘する。
「アリスさんのところで、何か、美味しいものでも、こっそり、食べてたんじゃないですかー?」
タンポポが、純粋な食欲から、本質を突く質問を投げかける。
三者三様の、明らかに嫉妬を含んだ追及に、俺は、これから始まる、別の意味での「戦い」を予感し、背中に、冷たい汗が流れるのを感じるのだった。
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