率先して自宅警備員してたら宅配業者に両思い判定されてた話

西を向いたらね

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率先して自宅警備員してたら宅配業者に両思い判定されてた話 本編 

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悠斗はポストを覗き、思わず眉をひそめた。
また、入っている。

花束、アクセサリー、高価な菓子類など──すべて丁寧にラッピングされているが、宛名も差出人もない。

(またか…気味が悪いな…)

最初は、家族の知人か誰かがポストに入れたのかと思った。
俺は実家暮らしで、父、母、妹と同居している。いじめをきっかけに高校を中退後、そこからずるずるニートとして親の脛を齧って生活している。

だが、家族に聞いても、誰も心当たりがないという。

元々のんびりとしている家族のためか、度々届く不審物に対して不快感を抱いているのはこの家で自分だけだった。
 父も母も妹も、あまつさえそれらの贈り物を花瓶に飾ったり、食べたりしている。よく差出人不明のものなんか口に入れられるな。お気楽なものだ。

 TVで見てから長いこと食べたかった人気店のチョコレートが入っていた時は、流石に少し俺にも食べそうになったけど。



 ──ピンポーン。

インターホンが鳴った。
おそらく宅配業者だろう。

ニートである俺は一日中家にいるため、せめてもの存在意義として率先して荷物の受け取りをしている。
置き配が浸透している時代に荷物の受け取り程度で大層な、と思われるかも知れないが、置き配ボックス等の環境を整える手間や盗難などのリスクも考えて、多めに見てほしいものだ。
そんな甘ったれた自論を展開しながら玄関の扉を開けると、大きな段ボールを抱えた男が立っていた。

「ちわっす、アザース!お届け物でっす!」

そう言って配達員が、人懐っこそうな笑顔を見せる。

 「これ重いから、そっち置いちゃいますね」

そう言って水嶋は、玄関に踏み込んで小上がりの部分に段ボールを置いた。
それにしても大きいな。そういえば母さんが、園芸用の鉢と土を買ったと言っていた気がする。

 「ありがとうございます」

お礼を言って促されるままにハンコを押し、そのまま部屋に引っ込もうとしたその時だった。

「…ねえ、悠斗さん」

 後ろから声がして、思わず動きを止めた。

「悠斗さんって、いつも俺の荷物受け取ってくれるじゃないっすか。」

配達員が唐突に話し始める。
俺のことを『悠斗さん』なんて呼び方するやつはいないから、違和感を覚える。
いや、それ以前になんで俺の名前知ってんだ?いつかの荷物に書いてあるのを見たのか。

「そりゃうちの荷物なんだから受け取るに決まってんでしょう」
「でも、普通そんなにちゃんと受け取ってくれないっすよ? 他の家は時間指定しててもいなかったり、置き配とか…。悠斗さんだけは、いつ行っても100%出てくれる。俺がどんな時間に行っても、ちゃんと対応してくれる」

それは、単に俺がニートだからだ。
 いつでも暇で、他にできることもなくて、家にいるから、受け取っているだけ。

(……でも、そう言われると、ちょっと嬉しいかも)

なんだか認められたような気がして、そんな思いが首をもたげる。

「そりゃ、俺、割とずっと家にいるし… それ、皮肉かなんかですか?」

浮かれてる様子が滲まないよう、あくまで無愛想に返す。

「いや違くて、だから…悠斗さん、俺のこと好きなんでしょ。」
「…は?」

斜め上の返答に頭が追いつかない。
何?好き?誰が?何を?いつ?

唐突に飛び出しだ「好き」という単語に、5W1Hのうち一つも思い当たる節がない。
聞き間違いか?

「な、なんで?」
「だって、プレゼントもちゃんと受け取ってくれてるし!」
「…………は?」

プレゼント?

「ほら、最近ポストに入れてるやつ! 気に入ってくれました?」
「…………あれ、お前かよ…ってかそれ以前に好きって何、ですか…」

思わず口から出た言葉に、水嶋は「へ?」と首をかしげる。

「え、だって、悠斗さん俺のこと好きですよね?」
「いや、好きじゃねぇ!っです、けど…」

思わず叫び、慌てて敬語に軌道修正する。

「えっ!? でも、毎回俺の荷物受け取ってくれるし、ちゃんと顔覚えててくれるし……!」

「それは毎回お前が来るからで……」

「ほら、やっぱり意識してるじゃん!」

水嶋が声を張り上げて嬉しそうに笑う。
その顔が、妙に無邪気で、心底ゾッとした。

(……話が通じない)

悠斗はようやく、背筋が凍る感覚を覚えた。


「へへ、やっぱり両思いだったんだ!ねぇ、プレゼント、どうだった?花とか、飾ってくれてたよね!」
「ポストに物入れんのもさ、もうやめろよ…」
「え?」
「いや、びっくりするっていうか…ほら、他に家族もいるし、
 なんていうか、やめてくれ、ると、ウレシイ、デス…」

水嶋の本気で分からないといった態度に、思わず怯んでカタコトになる。


「…そっか、びっくりしちゃったか!ごめんね、そこまで気が回ってなかった。仕事中だから私用の受け渡しはやめるべきかと思って…でも、もう両思いってわかったから、次からは仕事じゃない時に堂々と渡しに来れるね。今度からは悠斗さんに直接渡すようにするね!悠斗さん…ううん、もう恋人なんだから悠斗って呼んじゃお!いいよね?」


勝手に進んでいく話に、嫌な予感がする。

そんな予感をかき消す間も無く、水嶋はポケットの中から、小さな箱を取り出した。

「……それ」
「ずっと渡したかったんだけど、ポストに入れるのも何か違う気がして。いつか直接つけてあげたいなってずっと持ち歩いてたんだ」

水嶋が箱を開ける。
中には、銀色の指輪。

「ほら、手出して?」
「いや、いらねぇよ……!」

逃げようとしたが、水嶋の手が素早く俺の指をつかむ。

「そんな照れなくてもいいのに」

そう言って、指輪をそっとはめられる。

「仕事中だけど、今日だけだから!交際一日記念ってことで許してもらえるよね!」

ぴたり、と俺の薬指にぴったり収まるサイズ。
息が詰まる。震える手を振り払おうとするが、水嶋は嬉しそうに指を撫でていた。

「やっぱり悠斗の指にぴったりだ……測ったかいがあったなぁ」

「…………は?」

頭が真っ白になる。

(測った……? いつ? どうやって?)

水嶋は相変わらず、無邪気な笑顔のままだ。

「悠斗、これからも、よろしくね」
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