1 / 1
率先して自宅警備員してたら宅配業者に両思い判定されてた話 本編
しおりを挟む
悠斗はポストを覗き、思わず眉をひそめた。
また、入っている。
花束、アクセサリー、高価な菓子類など──すべて丁寧にラッピングされているが、宛名も差出人もない。
(またか…気味が悪いな…)
最初は、家族の知人か誰かがポストに入れたのかと思った。
俺は実家暮らしで、父、母、妹と同居している。いじめをきっかけに高校を中退後、そこからずるずるニートとして親の脛を齧って生活している。
だが、家族に聞いても、誰も心当たりがないという。
元々のんびりとしている家族のためか、度々届く不審物に対して不快感を抱いているのはこの家で自分だけだった。
父も母も妹も、あまつさえそれらの贈り物を花瓶に飾ったり、食べたりしている。よく差出人不明のものなんか口に入れられるな。お気楽なものだ。
TVで見てから長いこと食べたかった人気店のチョコレートが入っていた時は、流石に少し俺にも食べそうになったけど。
──ピンポーン。
インターホンが鳴った。
おそらく宅配業者だろう。
ニートである俺は一日中家にいるため、せめてもの存在意義として率先して荷物の受け取りをしている。
置き配が浸透している時代に荷物の受け取り程度で大層な、と思われるかも知れないが、置き配ボックス等の環境を整える手間や盗難などのリスクも考えて、多めに見てほしいものだ。
そんな甘ったれた自論を展開しながら玄関の扉を開けると、大きな段ボールを抱えた男が立っていた。
「ちわっす、アザース!お届け物でっす!」
そう言って配達員が、人懐っこそうな笑顔を見せる。
「これ重いから、そっち置いちゃいますね」
そう言って水嶋は、玄関に踏み込んで小上がりの部分に段ボールを置いた。
それにしても大きいな。そういえば母さんが、園芸用の鉢と土を買ったと言っていた気がする。
「ありがとうございます」
お礼を言って促されるままにハンコを押し、そのまま部屋に引っ込もうとしたその時だった。
「…ねえ、悠斗さん」
後ろから声がして、思わず動きを止めた。
「悠斗さんって、いつも俺の荷物受け取ってくれるじゃないっすか。」
配達員が唐突に話し始める。
俺のことを『悠斗さん』なんて呼び方するやつはいないから、違和感を覚える。
いや、それ以前になんで俺の名前知ってんだ?いつかの荷物に書いてあるのを見たのか。
「そりゃうちの荷物なんだから受け取るに決まってんでしょう」
「でも、普通そんなにちゃんと受け取ってくれないっすよ? 他の家は時間指定しててもいなかったり、置き配とか…。悠斗さんだけは、いつ行っても100%出てくれる。俺がどんな時間に行っても、ちゃんと対応してくれる」
それは、単に俺がニートだからだ。
いつでも暇で、他にできることもなくて、家にいるから、受け取っているだけ。
(……でも、そう言われると、ちょっと嬉しいかも)
なんだか認められたような気がして、そんな思いが首をもたげる。
「そりゃ、俺、割とずっと家にいるし… それ、皮肉かなんかですか?」
浮かれてる様子が滲まないよう、あくまで無愛想に返す。
「いや違くて、だから…悠斗さん、俺のこと好きなんでしょ。」
「…は?」
斜め上の返答に頭が追いつかない。
何?好き?誰が?何を?いつ?
唐突に飛び出しだ「好き」という単語に、5W1Hのうち一つも思い当たる節がない。
聞き間違いか?
「な、なんで?」
「だって、プレゼントもちゃんと受け取ってくれてるし!」
「…………は?」
プレゼント?
「ほら、最近ポストに入れてるやつ! 気に入ってくれました?」
「…………あれ、お前かよ…ってかそれ以前に好きって何、ですか…」
思わず口から出た言葉に、水嶋は「へ?」と首をかしげる。
「え、だって、悠斗さん俺のこと好きですよね?」
「いや、好きじゃねぇ!っです、けど…」
思わず叫び、慌てて敬語に軌道修正する。
「えっ!? でも、毎回俺の荷物受け取ってくれるし、ちゃんと顔覚えててくれるし……!」
「それは毎回お前が来るからで……」
「ほら、やっぱり意識してるじゃん!」
水嶋が声を張り上げて嬉しそうに笑う。
その顔が、妙に無邪気で、心底ゾッとした。
(……話が通じない)
悠斗はようやく、背筋が凍る感覚を覚えた。
「へへ、やっぱり両思いだったんだ!ねぇ、プレゼント、どうだった?花とか、飾ってくれてたよね!」
「ポストに物入れんのもさ、もうやめろよ…」
「え?」
「いや、びっくりするっていうか…ほら、他に家族もいるし、
なんていうか、やめてくれ、ると、ウレシイ、デス…」
水嶋の本気で分からないといった態度に、思わず怯んでカタコトになる。
「…そっか、びっくりしちゃったか!ごめんね、そこまで気が回ってなかった。仕事中だから私用の受け渡しはやめるべきかと思って…でも、もう両思いってわかったから、次からは仕事じゃない時に堂々と渡しに来れるね。今度からは悠斗さんに直接渡すようにするね!悠斗さん…ううん、もう恋人なんだから悠斗って呼んじゃお!いいよね?」
勝手に進んでいく話に、嫌な予感がする。
そんな予感をかき消す間も無く、水嶋はポケットの中から、小さな箱を取り出した。
「……それ」
「ずっと渡したかったんだけど、ポストに入れるのも何か違う気がして。いつか直接つけてあげたいなってずっと持ち歩いてたんだ」
水嶋が箱を開ける。
中には、銀色の指輪。
「ほら、手出して?」
「いや、いらねぇよ……!」
逃げようとしたが、水嶋の手が素早く俺の指をつかむ。
「そんな照れなくてもいいのに」
そう言って、指輪をそっとはめられる。
「仕事中だけど、今日だけだから!交際一日記念ってことで許してもらえるよね!」
ぴたり、と俺の薬指にぴったり収まるサイズ。
息が詰まる。震える手を振り払おうとするが、水嶋は嬉しそうに指を撫でていた。
「やっぱり悠斗の指にぴったりだ……測ったかいがあったなぁ」
「…………は?」
頭が真っ白になる。
(測った……? いつ? どうやって?)
水嶋は相変わらず、無邪気な笑顔のままだ。
「悠斗、これからも、よろしくね」
また、入っている。
花束、アクセサリー、高価な菓子類など──すべて丁寧にラッピングされているが、宛名も差出人もない。
(またか…気味が悪いな…)
最初は、家族の知人か誰かがポストに入れたのかと思った。
俺は実家暮らしで、父、母、妹と同居している。いじめをきっかけに高校を中退後、そこからずるずるニートとして親の脛を齧って生活している。
だが、家族に聞いても、誰も心当たりがないという。
元々のんびりとしている家族のためか、度々届く不審物に対して不快感を抱いているのはこの家で自分だけだった。
父も母も妹も、あまつさえそれらの贈り物を花瓶に飾ったり、食べたりしている。よく差出人不明のものなんか口に入れられるな。お気楽なものだ。
TVで見てから長いこと食べたかった人気店のチョコレートが入っていた時は、流石に少し俺にも食べそうになったけど。
──ピンポーン。
インターホンが鳴った。
おそらく宅配業者だろう。
ニートである俺は一日中家にいるため、せめてもの存在意義として率先して荷物の受け取りをしている。
置き配が浸透している時代に荷物の受け取り程度で大層な、と思われるかも知れないが、置き配ボックス等の環境を整える手間や盗難などのリスクも考えて、多めに見てほしいものだ。
そんな甘ったれた自論を展開しながら玄関の扉を開けると、大きな段ボールを抱えた男が立っていた。
「ちわっす、アザース!お届け物でっす!」
そう言って配達員が、人懐っこそうな笑顔を見せる。
「これ重いから、そっち置いちゃいますね」
そう言って水嶋は、玄関に踏み込んで小上がりの部分に段ボールを置いた。
それにしても大きいな。そういえば母さんが、園芸用の鉢と土を買ったと言っていた気がする。
「ありがとうございます」
お礼を言って促されるままにハンコを押し、そのまま部屋に引っ込もうとしたその時だった。
「…ねえ、悠斗さん」
後ろから声がして、思わず動きを止めた。
「悠斗さんって、いつも俺の荷物受け取ってくれるじゃないっすか。」
配達員が唐突に話し始める。
俺のことを『悠斗さん』なんて呼び方するやつはいないから、違和感を覚える。
いや、それ以前になんで俺の名前知ってんだ?いつかの荷物に書いてあるのを見たのか。
「そりゃうちの荷物なんだから受け取るに決まってんでしょう」
「でも、普通そんなにちゃんと受け取ってくれないっすよ? 他の家は時間指定しててもいなかったり、置き配とか…。悠斗さんだけは、いつ行っても100%出てくれる。俺がどんな時間に行っても、ちゃんと対応してくれる」
それは、単に俺がニートだからだ。
いつでも暇で、他にできることもなくて、家にいるから、受け取っているだけ。
(……でも、そう言われると、ちょっと嬉しいかも)
なんだか認められたような気がして、そんな思いが首をもたげる。
「そりゃ、俺、割とずっと家にいるし… それ、皮肉かなんかですか?」
浮かれてる様子が滲まないよう、あくまで無愛想に返す。
「いや違くて、だから…悠斗さん、俺のこと好きなんでしょ。」
「…は?」
斜め上の返答に頭が追いつかない。
何?好き?誰が?何を?いつ?
唐突に飛び出しだ「好き」という単語に、5W1Hのうち一つも思い当たる節がない。
聞き間違いか?
「な、なんで?」
「だって、プレゼントもちゃんと受け取ってくれてるし!」
「…………は?」
プレゼント?
「ほら、最近ポストに入れてるやつ! 気に入ってくれました?」
「…………あれ、お前かよ…ってかそれ以前に好きって何、ですか…」
思わず口から出た言葉に、水嶋は「へ?」と首をかしげる。
「え、だって、悠斗さん俺のこと好きですよね?」
「いや、好きじゃねぇ!っです、けど…」
思わず叫び、慌てて敬語に軌道修正する。
「えっ!? でも、毎回俺の荷物受け取ってくれるし、ちゃんと顔覚えててくれるし……!」
「それは毎回お前が来るからで……」
「ほら、やっぱり意識してるじゃん!」
水嶋が声を張り上げて嬉しそうに笑う。
その顔が、妙に無邪気で、心底ゾッとした。
(……話が通じない)
悠斗はようやく、背筋が凍る感覚を覚えた。
「へへ、やっぱり両思いだったんだ!ねぇ、プレゼント、どうだった?花とか、飾ってくれてたよね!」
「ポストに物入れんのもさ、もうやめろよ…」
「え?」
「いや、びっくりするっていうか…ほら、他に家族もいるし、
なんていうか、やめてくれ、ると、ウレシイ、デス…」
水嶋の本気で分からないといった態度に、思わず怯んでカタコトになる。
「…そっか、びっくりしちゃったか!ごめんね、そこまで気が回ってなかった。仕事中だから私用の受け渡しはやめるべきかと思って…でも、もう両思いってわかったから、次からは仕事じゃない時に堂々と渡しに来れるね。今度からは悠斗さんに直接渡すようにするね!悠斗さん…ううん、もう恋人なんだから悠斗って呼んじゃお!いいよね?」
勝手に進んでいく話に、嫌な予感がする。
そんな予感をかき消す間も無く、水嶋はポケットの中から、小さな箱を取り出した。
「……それ」
「ずっと渡したかったんだけど、ポストに入れるのも何か違う気がして。いつか直接つけてあげたいなってずっと持ち歩いてたんだ」
水嶋が箱を開ける。
中には、銀色の指輪。
「ほら、手出して?」
「いや、いらねぇよ……!」
逃げようとしたが、水嶋の手が素早く俺の指をつかむ。
「そんな照れなくてもいいのに」
そう言って、指輪をそっとはめられる。
「仕事中だけど、今日だけだから!交際一日記念ってことで許してもらえるよね!」
ぴたり、と俺の薬指にぴったり収まるサイズ。
息が詰まる。震える手を振り払おうとするが、水嶋は嬉しそうに指を撫でていた。
「やっぱり悠斗の指にぴったりだ……測ったかいがあったなぁ」
「…………は?」
頭が真っ白になる。
(測った……? いつ? どうやって?)
水嶋は相変わらず、無邪気な笑顔のままだ。
「悠斗、これからも、よろしくね」
342
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました
あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」
穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン
攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?
攻め:深海霧矢
受け:清水奏
前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。
ハピエンです。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
自己判断で消しますので、悪しからず。
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
付き合って一年マンネリ化してたから振られたと思っていたがどうやら違うようなので猛烈に引き止めた話
雨宮里玖
BL
恋人の神尾が突然連絡を経って二週間。神尾のことが諦められない樋口は神尾との思い出のカフェに行く。そこで神尾と一緒にいた山本から「神尾はお前と別れたって言ってたぞ」と言われ——。
樋口(27)サラリーマン。
神尾裕二(27)サラリーマン。
佐上果穂(26)社長令嬢。会社幹部。
山本(27)樋口と神尾の大学時代の同級生。
振られた腹いせに別の男と付き合ったらそいつに本気になってしまった話
雨宮里玖
BL
「好きな人が出来たから別れたい」と恋人の翔に突然言われてしまった諒平。
諒平は別れたくないと引き止めようとするが翔は諒平に最初で最後のキスをした後、去ってしまった。
実は翔には諒平に隠している事実があり——。
諒平(20)攻め。大学生。
翔(20) 受け。大学生。
慶介(21)翔と同じサークルの友人。
俺の親友のことが好きだったんじゃなかったのかよ
雨宮里玖
BL
《あらすじ》放課後、三倉は浅宮に呼び出された。浅宮は三倉の親友・有栖のことを訊ねてくる。三倉はまたこのパターンかとすぐに合点がいく。きっと浅宮も有栖のことが好きで、三倉から有栖の情報を聞き出そうとしているんだなと思い、浅宮の恋を応援すべく協力を申し出る。
浅宮は三倉に「協力して欲しい。だからデートの練習に付き合ってくれ」と言い——。
攻め:浅宮(16)
高校二年生。ビジュアル最強男。
どんな口実でもいいから三倉と一緒にいたいと思っている。
受け:三倉(16)
高校二年生。平凡。
自分じゃなくて俺の親友のことが好きなんだと勘違いしている。
好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。
石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。
すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。
なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。
言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる