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白い神猫
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「白いリビア山猫だわ!」
思わずレイラは笑顔になった。
「よかったね! ネジム。お友達みたいよ」
「プルルー」
ネジムが嬉しそうに声を上げる。
「あの白猫、どうやってあんな高いところまで登れたのかしら」
レイラは不思議そうに白猫を見詰めた。
すると白猫はバステト神の頭から、石像の背中伝いに駆け下りてくる。
「みゃー!」
白猫はネジムとレイラに近づき、ブルーの目を輝かせながら鳴いた。
「にゃー!」
ネジムも白猫に応えるかのように鳴く。
「みゃー! みゃー!」
白い猫が返事をネジムにした。
「にゃー、にゃー」
するとネジムも返事をする。
(この二匹は何を話しているのかしら)
レイラは不思議そうに二匹の猫のやり取りを聞いていた。
「レイラ、ここは高位の神官しか入れない神聖なる礼拝堂だから、すぐに出て行くようにって、タミットが言ってるにゃ」
突然、ネジムが人間の言葉でレイラに話しはじめた。
「ネジム……」
レイラはびっくりして尻餅をつき、立ち上がれなくなった。
「ビックリさせてごめんなさい。あたしがネジムを人間語が話せるようにしました」
今度は雌の白猫が人間よりも流暢に人間の言葉でレイラに話しかけた。
「白猫が……」
レイラは夢でも見ているのではないかとホッペをつねった。
「痛ッ!」
(夢じゃない)
「あたしはタミット。バステトに仕える猫です。人間の言葉が話せるのはバステト神おかげです」
「おいらはネジムにゃー」
「あ、あたしはレイラ。よろしくね」
「こちらこそ」
タミットはプライドがよほど高いのか、話し終わるたびにツンと鼻を高く上げる。
「あたしたちは迷い込んでしまったの。この礼拝堂に入りたくて入ったんじゃないのよ」
「レイラは悪くないにゃ。悪いのは僕にゃ」
「一般人用の礼拝堂までご案内します」
タミットはそう言ってバステト神の石像の裏側にある、秘密の通路を二人に案内した。
「タミット待って!」
レイラはネジムを抱いたままタミットを追いかける。
「自分で走るにゃ」
ネジムはレイラの腕から飛び出しタミットを追っかけた。
「ネジム待って!」
レイラは二匹の猫を必死に追い、長い長い石の通路をひたすら駆け抜けた。
「あっ!」
通路の奥に光が見える。
「礼拝堂だわ!」
レイラが礼拝堂に駆け込むと、ネジムだけが中央にちょこんと座って待っていた。
「ネジム!」
レイラは肩で息をしながら、ネジムのところにやって来た。
「タミットは?」
「さっきの礼拝堂に慌てて帰っていったにゃ」
「そっか」
レイラはへなへなとその場に腰をおろす。
「レイラ!」
礼拝堂の入り口から両親の声がした。
「父さん! 母さん!」
レイラはすぐに立ち上がり礼拝堂に駆け込んできたムクターとマブルーカに抱きついた。
「心配したぞ」
ムクターが大きなごつい手でレイラの頭をゴシゴシ撫でた。
「ほんとに心配したのよ」
マブルーカもレイラを抱きしめる。
「プルルー」
ネジムは猫らしく鳴いてみせた。
「いったいどこを探検してたんだ?」
ムクターは優しくレイラに訊ねた。
「それは……」
レイラは少し考え、神殿の奥で見た神聖な光の礼拝堂のことは黙っていようと思った。
「ネジムを追いかけてたら、神殿の迷路のような通路に迷い込んでしまったの」
レイラは申し訳ないように頭を掻く。
「まぁ、今度から気をつけるのよ」
マブルーカが娘の手を優しく握った。
「ところで父さん、母さん。ネジムは人間の言葉を話せるの」
レイラはネジムを振り返った。
「ネジムが人の言葉を話せるって?」
ムクターもマブルーカもレイラの顔をまじまじと見た。
「今から証明して見せるわ」
レイラはネジムの前に屈み、
「ネジム、あなたが人間の言葉を話せるところを、父さんと母さんに証明して見せて」
そう言って命令した。
するとネジムは、
「プルルー」
と鳴き声をあげ、知らんぷりして右の足の爪で耳の裏をゴシゴシと掻き始めた。
「ちょっとネジム、まじめにしなさいよ」
レイラはムッとしてネジムを睨むと、ネジムはそっぽを向いてグルーミングした。
「レイラ、もう十分わかったよ」
ムクターとマブルーカは大笑いした。
「ほんとよ! ほんとなの!」
レイラは両親にネジムのことを信じてもらおうとしたが、二人はニコニコしながら礼拝堂の奥に歩いて行った。
「あなたどうして話さなかったの? あたしが嘘つきになったじゃない」
レイラはそう言ってネジムを睨んだ。
「タミットから、一番信用できる人間とだけ話すよう言われたにゃ」
ネジムは申し訳なさそうに言う。
「あたしを信用してくれたのね」
「そうにゃ」
「うん、分かったわ。あなたが人の言葉を話せることは秘密にするからね」
レイラはネジムの頭を撫でた。
「プルルー」
ネジムは嬉しそうに鳴く。
「レイラ、あなたもはやくバステト神様にご挨拶なさい」
マブルーカがレイラを呼んだ。
「は、はい!」
レイラが行くと、ネジムもすぐに追う。
「黄金じゃないけど立派なバステト神様だね」
レイラはマブルーカを見た。
「余計なこと言わない。早くご挨拶しなさい」
「はーい」
レイラはバステト神の石像の前で跪き、頭を下げると、目を瞑って神の名を繰り返し唱えた。
思わずレイラは笑顔になった。
「よかったね! ネジム。お友達みたいよ」
「プルルー」
ネジムが嬉しそうに声を上げる。
「あの白猫、どうやってあんな高いところまで登れたのかしら」
レイラは不思議そうに白猫を見詰めた。
すると白猫はバステト神の頭から、石像の背中伝いに駆け下りてくる。
「みゃー!」
白猫はネジムとレイラに近づき、ブルーの目を輝かせながら鳴いた。
「にゃー!」
ネジムも白猫に応えるかのように鳴く。
「みゃー! みゃー!」
白い猫が返事をネジムにした。
「にゃー、にゃー」
するとネジムも返事をする。
(この二匹は何を話しているのかしら)
レイラは不思議そうに二匹の猫のやり取りを聞いていた。
「レイラ、ここは高位の神官しか入れない神聖なる礼拝堂だから、すぐに出て行くようにって、タミットが言ってるにゃ」
突然、ネジムが人間の言葉でレイラに話しはじめた。
「ネジム……」
レイラはびっくりして尻餅をつき、立ち上がれなくなった。
「ビックリさせてごめんなさい。あたしがネジムを人間語が話せるようにしました」
今度は雌の白猫が人間よりも流暢に人間の言葉でレイラに話しかけた。
「白猫が……」
レイラは夢でも見ているのではないかとホッペをつねった。
「痛ッ!」
(夢じゃない)
「あたしはタミット。バステトに仕える猫です。人間の言葉が話せるのはバステト神おかげです」
「おいらはネジムにゃー」
「あ、あたしはレイラ。よろしくね」
「こちらこそ」
タミットはプライドがよほど高いのか、話し終わるたびにツンと鼻を高く上げる。
「あたしたちは迷い込んでしまったの。この礼拝堂に入りたくて入ったんじゃないのよ」
「レイラは悪くないにゃ。悪いのは僕にゃ」
「一般人用の礼拝堂までご案内します」
タミットはそう言ってバステト神の石像の裏側にある、秘密の通路を二人に案内した。
「タミット待って!」
レイラはネジムを抱いたままタミットを追いかける。
「自分で走るにゃ」
ネジムはレイラの腕から飛び出しタミットを追っかけた。
「ネジム待って!」
レイラは二匹の猫を必死に追い、長い長い石の通路をひたすら駆け抜けた。
「あっ!」
通路の奥に光が見える。
「礼拝堂だわ!」
レイラが礼拝堂に駆け込むと、ネジムだけが中央にちょこんと座って待っていた。
「ネジム!」
レイラは肩で息をしながら、ネジムのところにやって来た。
「タミットは?」
「さっきの礼拝堂に慌てて帰っていったにゃ」
「そっか」
レイラはへなへなとその場に腰をおろす。
「レイラ!」
礼拝堂の入り口から両親の声がした。
「父さん! 母さん!」
レイラはすぐに立ち上がり礼拝堂に駆け込んできたムクターとマブルーカに抱きついた。
「心配したぞ」
ムクターが大きなごつい手でレイラの頭をゴシゴシ撫でた。
「ほんとに心配したのよ」
マブルーカもレイラを抱きしめる。
「プルルー」
ネジムは猫らしく鳴いてみせた。
「いったいどこを探検してたんだ?」
ムクターは優しくレイラに訊ねた。
「それは……」
レイラは少し考え、神殿の奥で見た神聖な光の礼拝堂のことは黙っていようと思った。
「ネジムを追いかけてたら、神殿の迷路のような通路に迷い込んでしまったの」
レイラは申し訳ないように頭を掻く。
「まぁ、今度から気をつけるのよ」
マブルーカが娘の手を優しく握った。
「ところで父さん、母さん。ネジムは人間の言葉を話せるの」
レイラはネジムを振り返った。
「ネジムが人の言葉を話せるって?」
ムクターもマブルーカもレイラの顔をまじまじと見た。
「今から証明して見せるわ」
レイラはネジムの前に屈み、
「ネジム、あなたが人間の言葉を話せるところを、父さんと母さんに証明して見せて」
そう言って命令した。
するとネジムは、
「プルルー」
と鳴き声をあげ、知らんぷりして右の足の爪で耳の裏をゴシゴシと掻き始めた。
「ちょっとネジム、まじめにしなさいよ」
レイラはムッとしてネジムを睨むと、ネジムはそっぽを向いてグルーミングした。
「レイラ、もう十分わかったよ」
ムクターとマブルーカは大笑いした。
「ほんとよ! ほんとなの!」
レイラは両親にネジムのことを信じてもらおうとしたが、二人はニコニコしながら礼拝堂の奥に歩いて行った。
「あなたどうして話さなかったの? あたしが嘘つきになったじゃない」
レイラはそう言ってネジムを睨んだ。
「タミットから、一番信用できる人間とだけ話すよう言われたにゃ」
ネジムは申し訳なさそうに言う。
「あたしを信用してくれたのね」
「そうにゃ」
「うん、分かったわ。あなたが人の言葉を話せることは秘密にするからね」
レイラはネジムの頭を撫でた。
「プルルー」
ネジムは嬉しそうに鳴く。
「レイラ、あなたもはやくバステト神様にご挨拶なさい」
マブルーカがレイラを呼んだ。
「は、はい!」
レイラが行くと、ネジムもすぐに追う。
「黄金じゃないけど立派なバステト神様だね」
レイラはマブルーカを見た。
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