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シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子
第九章 12)一度も見たことのない光景
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この作戦の困難さをどうやって説明すればいいだろうか。例えばドラゴン、その生き物を目撃した者なんて誰もいないけれど、しかし翼を羽ばたかせる音を聞いた者はいるし、その死体だって土の中から発見された。ドラゴンがどこかにいるのは間違いない。
例えばこの作戦の困難さは、洞窟で眠るドラゴンの脇を通り、その尻尾の辺りにある宝箱をそっと拾い、そこから生還するくらいのこと。
この作戦が上手くいくとは到底のこと思えなかった。ギャラックは敵の城を占領しているのだ。そして依然として、街の中でも抵抗組織と戦っていることも事実。いくら真夜中であっても、それなりの警備体制を敷いて警戒しているに決まっている。
私だけではなく、カルファルだってそう思っていたはずだ。それでもこの作戦を決行したのは、私たちのアリューシアへの情。彼女の情熱に動かされて、真っ当な情勢判断をあえて棚上げして、運に賭けたということ。
しかし私たちの作戦は、その途中まで、驚くべきくらいに上手く運んだ。
一人の敵に見つかることもなく、それなりに長い道程を踏破して、何とか城壁にまで辿り着くことが出来たのだ。
もちろん城内の通路を歩いているときの緊張は計り知れないものがあった。
本当に息苦しくて、生きている心地はしなかった。次の角を曲がったとき、敵の警備兵と大勢と遭遇して、私たちの命は露と消えるのではないか。その恐怖の連続。
カルファルの魔法で物音の心配はなかったが、しかし身体は重苦しく、遅々として進まず、まるで夢の中でもがいているかのよう。
私の脆弱な神経は音を上げて、喉はカラカラに乾き、激しい頭痛と腹痛と眩暈で苦しくて堪らなかった。燭台を持つ手も始終震えていた。その震えでその炎が消えてしまいそうなくらい。
しかしギルドの道案内は正確だった。彼はこの城の隅々まで知り尽くしている。そしてカルファルの魔法も効果的であった。
棺桶などを引き摺ろうものならば、とんでもない音を回廊中に響き渡らせていたことであろう。それを完璧な無音で完遂出来たのだ。やはり、彼の魔法がなければ成功しなかった作戦。
もちろん、ギャラックの連中は油断をしていたのだろう。まさか城内に忍び込んでくる者がいるなどがいるなんて予測していなかったに違ない。
それに私たちの目的は居城の中枢に侵入して、ギャラックの首領を倒すことではなかった。私たちの目的は城の外壁への侵入。そこは城の外郭に過ぎない。警戒が弱かったことは事実。
いずれにしろ様々な幸運が幸いして、あらゆることが上手くいったのだ。最後の扉を開けて、城壁に出て、強く吹き流れる風に当たる。そこで初めて見張りの兵士と遭遇したが、アリューシアの魔法ですみやかに息の根を止めた。カルファルの魔法との連動で、叫び声も上げさせない。
そして私たちは、アリューシアの両親が吊られているその場所にまで辿り着くことが出来た。
その遺体は確かに宙に浮いていていたが、手を伸ばせば届かない距離ではない。腐敗も激しく、なかば白骨と化していたが、そんなことを忌避しているときではない。
遺体を棺桶に収容して、魔方陣を描いて、すぐに瞬間移動して塔へ。我々が描いた作戦の成功、その道筋通りに運んでいた。。その作戦がこのまま成功していても、何の不思議はなかったであろう。
しかし私たちはそれを見てしまったのだ。そのあまりにおぞましい死の光景。
城壁から見える街の光景である。ちょうど朝日が昇り始め、新しい光が街を照らし始めた瞬間だった。
両親の遺体を無表情に見上げていたアリューシアが、その光に誘われるようにして眼下を見下ろす。私も彼女と同じように視線を移した。
あまりに異様過ぎて、この光景が何を意味しているのかすぐに理解出来なかった。ただ単に、生まれてこのかた一度も見たことのない光景。それに対する驚き。
事態を飲み込めたのはしばらくしてからだ。
端的に言えば、ボーアホーブの街に、何百、何千もの死体が浮いていたのだ。ギャラックが雇った傭兵の例のあの魔法の力で。
そういえば私たちは作戦を練ることに夢中で、この街の住人たちの安否を尋ねるのを忘れていた。いや、尋ねはしたが、言葉を濁されたのかもしれない。
しかしその光景に、全ての回答はあった。その虐殺の光景が、そのまま宙に留まり続けていたのだから。そこにはきっと、サンチーヌの肉親や、ラダやリーズたちの家族の死を吊るされていただろう。
「何よ、これ!」
カルファルの魔法の効力で彼女の声は聞こえなかった。しかし彼女が叫び出したしたのは明らかだった。
それからのアリューシアの行動は早かった。彼女は来た道を逆戻りして、城内に戻る扉を開けて走り出す。
目の前に浮かんでいる両親の死体に背を向けて、彼女はギャラック家への復讐に走り出したのだ。
しかしカルファルの魔法の効力の下、彼女の走りは果てしなく遅い。だからといって追いつくことは出来ない。それは私たちも同じだから。
他の者たちは自分の仕事に意識を集中していて、走り出した彼女を止められた者はいなかった。
彼女から最も近い場所に居たのは私だった。私は彼女のあとを追って走る。もちろん私の身体だって自由が利かないから、必死に走っているつもりでも思う通りにスピードに乗れない。
例えばこの作戦の困難さは、洞窟で眠るドラゴンの脇を通り、その尻尾の辺りにある宝箱をそっと拾い、そこから生還するくらいのこと。
この作戦が上手くいくとは到底のこと思えなかった。ギャラックは敵の城を占領しているのだ。そして依然として、街の中でも抵抗組織と戦っていることも事実。いくら真夜中であっても、それなりの警備体制を敷いて警戒しているに決まっている。
私だけではなく、カルファルだってそう思っていたはずだ。それでもこの作戦を決行したのは、私たちのアリューシアへの情。彼女の情熱に動かされて、真っ当な情勢判断をあえて棚上げして、運に賭けたということ。
しかし私たちの作戦は、その途中まで、驚くべきくらいに上手く運んだ。
一人の敵に見つかることもなく、それなりに長い道程を踏破して、何とか城壁にまで辿り着くことが出来たのだ。
もちろん城内の通路を歩いているときの緊張は計り知れないものがあった。
本当に息苦しくて、生きている心地はしなかった。次の角を曲がったとき、敵の警備兵と大勢と遭遇して、私たちの命は露と消えるのではないか。その恐怖の連続。
カルファルの魔法で物音の心配はなかったが、しかし身体は重苦しく、遅々として進まず、まるで夢の中でもがいているかのよう。
私の脆弱な神経は音を上げて、喉はカラカラに乾き、激しい頭痛と腹痛と眩暈で苦しくて堪らなかった。燭台を持つ手も始終震えていた。その震えでその炎が消えてしまいそうなくらい。
しかしギルドの道案内は正確だった。彼はこの城の隅々まで知り尽くしている。そしてカルファルの魔法も効果的であった。
棺桶などを引き摺ろうものならば、とんでもない音を回廊中に響き渡らせていたことであろう。それを完璧な無音で完遂出来たのだ。やはり、彼の魔法がなければ成功しなかった作戦。
もちろん、ギャラックの連中は油断をしていたのだろう。まさか城内に忍び込んでくる者がいるなどがいるなんて予測していなかったに違ない。
それに私たちの目的は居城の中枢に侵入して、ギャラックの首領を倒すことではなかった。私たちの目的は城の外壁への侵入。そこは城の外郭に過ぎない。警戒が弱かったことは事実。
いずれにしろ様々な幸運が幸いして、あらゆることが上手くいったのだ。最後の扉を開けて、城壁に出て、強く吹き流れる風に当たる。そこで初めて見張りの兵士と遭遇したが、アリューシアの魔法ですみやかに息の根を止めた。カルファルの魔法との連動で、叫び声も上げさせない。
そして私たちは、アリューシアの両親が吊られているその場所にまで辿り着くことが出来た。
その遺体は確かに宙に浮いていていたが、手を伸ばせば届かない距離ではない。腐敗も激しく、なかば白骨と化していたが、そんなことを忌避しているときではない。
遺体を棺桶に収容して、魔方陣を描いて、すぐに瞬間移動して塔へ。我々が描いた作戦の成功、その道筋通りに運んでいた。。その作戦がこのまま成功していても、何の不思議はなかったであろう。
しかし私たちはそれを見てしまったのだ。そのあまりにおぞましい死の光景。
城壁から見える街の光景である。ちょうど朝日が昇り始め、新しい光が街を照らし始めた瞬間だった。
両親の遺体を無表情に見上げていたアリューシアが、その光に誘われるようにして眼下を見下ろす。私も彼女と同じように視線を移した。
あまりに異様過ぎて、この光景が何を意味しているのかすぐに理解出来なかった。ただ単に、生まれてこのかた一度も見たことのない光景。それに対する驚き。
事態を飲み込めたのはしばらくしてからだ。
端的に言えば、ボーアホーブの街に、何百、何千もの死体が浮いていたのだ。ギャラックが雇った傭兵の例のあの魔法の力で。
そういえば私たちは作戦を練ることに夢中で、この街の住人たちの安否を尋ねるのを忘れていた。いや、尋ねはしたが、言葉を濁されたのかもしれない。
しかしその光景に、全ての回答はあった。その虐殺の光景が、そのまま宙に留まり続けていたのだから。そこにはきっと、サンチーヌの肉親や、ラダやリーズたちの家族の死を吊るされていただろう。
「何よ、これ!」
カルファルの魔法の効力で彼女の声は聞こえなかった。しかし彼女が叫び出したしたのは明らかだった。
それからのアリューシアの行動は早かった。彼女は来た道を逆戻りして、城内に戻る扉を開けて走り出す。
目の前に浮かんでいる両親の死体に背を向けて、彼女はギャラック家への復讐に走り出したのだ。
しかしカルファルの魔法の効力の下、彼女の走りは果てしなく遅い。だからといって追いつくことは出来ない。それは私たちも同じだから。
他の者たちは自分の仕事に意識を集中していて、走り出した彼女を止められた者はいなかった。
彼女から最も近い場所に居たのは私だった。私は彼女のあとを追って走る。もちろん私の身体だって自由が利かないから、必死に走っているつもりでも思う通りにスピードに乗れない。
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