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シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子
第一章 14)約束
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アビュとアリューシアが厨房で野菜を剥いたりしているのだが、これほど仲が悪い二人が一緒に料理しているのも奇妙なことである。
ふと厨房の奥を見ると、見慣れない男性が料理している姿が見えた。
長身で痩せ型、茶色の髪をした男性だ。
この塔の料理人ではない。恐らくアリューシアが連れてきた専属の料理人に違いない。
見慣れないと言ったが、アリューシアと一緒にいるところを何度か見掛けている。彼がサンチーヌの絶賛していた料理人の一人なのだろう。
「あの人は?」
私はそう尋ねながら、まだ不毛な言い争いをしている二人の間に割って入る。
「えっ? ああ、うちの料理人のミリューよ。彼に料理を教えてもらっていたの。プラーヌス様に私の手作りの料理を食べてもらおうと思って。だって庶民の女性は、自分の手作りの料理を好きな男性に食べさせたりするんでしょ?」
アリューシアが言った。
「はあ、まあ、それが一般的な妻の姿かもしれないけど」
「私もその作戦でいこうと思ったわけよ。じゃあ、この子がしゃしゃり出てきて、包丁の持ち方が間違っているとか言い出して」
「だって本当に酷いんだもん」
「初めて包丁を持ったんだから、そんなのは仕方ないでしょ!」
「なあ、アリューシア。彼に僕を紹介してくれないかな」
また二人がケンカをし出したので、私は慌ててそう言った。
「彼ってミリューのこと? いいけど。あんたも彼から料理を習うつもりなの?」
「そうじゃない。彼の料理を食べた客たちが本当に感動していたんだ。そんなに美味しいのなら僕も一度、味わってみたいなって思って。どうかな?」
そうなのだ。彼らの料理を食べた客たちの表情、サンチーヌの言葉、それを聞いて、私も彼の料理を是非食べてみたいと思っていたのだ。
「駄目よ。彼らは私の料理人だから」
しかしアリューシアは私のささやかな願いを一蹴りする。
「はあ、そうかい・・・」
ケチな主だ。
まあ、しかし彼女がそう言うのなら仕方がない。こちらも、けっこう無礼なお願いをしたのかもしれない。
それよりも私の空腹感はもう限界に達しつつあった。まず昼食の準備である。
私はアリューシアの前を辞して、奥の食糧庫に向かいかける。
「ううん、ちょっと待って!」
しかしアリューシアは私を引き留めた。
どうしようかなあ・・・。彼女はそう言いながら、口に指を当てて、何かを計算するようにじっと宙を見始めた。「やっぱり気が変わった。いいわよ」
「何だって?」
「今夜の食事、ミリューたちに作らせる。でもその代わり一つ条件がある。プラーヌス様もご一緒なら。それが条件よ」
「ああ、それはもちろんだよ」
当然のことである。彼を差し置いて私だけ、美味しい料理を独り占め出来るわけがない。もちろんプラーヌスと一緒に食べるつもりだ。
「じゃあ、今夜のディナー、ミリューとアバンドンに絶品の料理を作らせることにするわ」
アリューシアは声を弾ませて言ってきた。「本気で楽しみにしていていいわよ」
さっきまで散々アビュに馬鹿にされて、プライドがずたずたにされていたようだったが、何だかいつもの自信を取り戻したという表情だ。それくらい、二人の料理人に信頼を置いているのだろうか。
それとも何か別の企みがあるのか?
「料理人が作ったと見せかけて、こっそりと君が作ったのを紛れ込ませるのはやめてくれよ。君は野菜の皮剥きも出来ないんだから」
私はあらかじめ釘を刺しておいた。
「はあ? そんなことするわけないじゃない。料理でプラーヌス様を喜ばせるためだったら、別に自分で作らなくてもいいなって気づいたのよ。だってあの二人が作った料理は、私が作ったも同然なんだから。彼らは私の料理人なんですもん」
「はあ、そんなものかなあ・・・」
少しも同意出来る意見ではなかったが、私は曖昧な表情で頷いておく。何とかあの料理人たちの食事が食べられそうなのに、余計なことを言ってアリューシアの機嫌を損なうわけにはいかないから。
「ちょ、ちょっとボスたちだけずるい。私も食べたいわ!」
私たちの話しをさっきまで黙って聞いていたアビュが、飛び上がりながら言ってくる。
「仕方ない、僕の分の料理を少し分けてやるよ、でも他の召使いたちには内緒だぞ」
「うん、ボス、大好きよ」
アビュはそう言って私に抱きついて、頬にキスをしてくる。まだこういうところは子供だ。嬉しいことがあると素直に表現したくなるのだろう。
「本当に庶民は下品だわ!」
アリューシアはそんなアビュを見て、吐き捨てるように言った。
ふと厨房の奥を見ると、見慣れない男性が料理している姿が見えた。
長身で痩せ型、茶色の髪をした男性だ。
この塔の料理人ではない。恐らくアリューシアが連れてきた専属の料理人に違いない。
見慣れないと言ったが、アリューシアと一緒にいるところを何度か見掛けている。彼がサンチーヌの絶賛していた料理人の一人なのだろう。
「あの人は?」
私はそう尋ねながら、まだ不毛な言い争いをしている二人の間に割って入る。
「えっ? ああ、うちの料理人のミリューよ。彼に料理を教えてもらっていたの。プラーヌス様に私の手作りの料理を食べてもらおうと思って。だって庶民の女性は、自分の手作りの料理を好きな男性に食べさせたりするんでしょ?」
アリューシアが言った。
「はあ、まあ、それが一般的な妻の姿かもしれないけど」
「私もその作戦でいこうと思ったわけよ。じゃあ、この子がしゃしゃり出てきて、包丁の持ち方が間違っているとか言い出して」
「だって本当に酷いんだもん」
「初めて包丁を持ったんだから、そんなのは仕方ないでしょ!」
「なあ、アリューシア。彼に僕を紹介してくれないかな」
また二人がケンカをし出したので、私は慌ててそう言った。
「彼ってミリューのこと? いいけど。あんたも彼から料理を習うつもりなの?」
「そうじゃない。彼の料理を食べた客たちが本当に感動していたんだ。そんなに美味しいのなら僕も一度、味わってみたいなって思って。どうかな?」
そうなのだ。彼らの料理を食べた客たちの表情、サンチーヌの言葉、それを聞いて、私も彼の料理を是非食べてみたいと思っていたのだ。
「駄目よ。彼らは私の料理人だから」
しかしアリューシアは私のささやかな願いを一蹴りする。
「はあ、そうかい・・・」
ケチな主だ。
まあ、しかし彼女がそう言うのなら仕方がない。こちらも、けっこう無礼なお願いをしたのかもしれない。
それよりも私の空腹感はもう限界に達しつつあった。まず昼食の準備である。
私はアリューシアの前を辞して、奥の食糧庫に向かいかける。
「ううん、ちょっと待って!」
しかしアリューシアは私を引き留めた。
どうしようかなあ・・・。彼女はそう言いながら、口に指を当てて、何かを計算するようにじっと宙を見始めた。「やっぱり気が変わった。いいわよ」
「何だって?」
「今夜の食事、ミリューたちに作らせる。でもその代わり一つ条件がある。プラーヌス様もご一緒なら。それが条件よ」
「ああ、それはもちろんだよ」
当然のことである。彼を差し置いて私だけ、美味しい料理を独り占め出来るわけがない。もちろんプラーヌスと一緒に食べるつもりだ。
「じゃあ、今夜のディナー、ミリューとアバンドンに絶品の料理を作らせることにするわ」
アリューシアは声を弾ませて言ってきた。「本気で楽しみにしていていいわよ」
さっきまで散々アビュに馬鹿にされて、プライドがずたずたにされていたようだったが、何だかいつもの自信を取り戻したという表情だ。それくらい、二人の料理人に信頼を置いているのだろうか。
それとも何か別の企みがあるのか?
「料理人が作ったと見せかけて、こっそりと君が作ったのを紛れ込ませるのはやめてくれよ。君は野菜の皮剥きも出来ないんだから」
私はあらかじめ釘を刺しておいた。
「はあ? そんなことするわけないじゃない。料理でプラーヌス様を喜ばせるためだったら、別に自分で作らなくてもいいなって気づいたのよ。だってあの二人が作った料理は、私が作ったも同然なんだから。彼らは私の料理人なんですもん」
「はあ、そんなものかなあ・・・」
少しも同意出来る意見ではなかったが、私は曖昧な表情で頷いておく。何とかあの料理人たちの食事が食べられそうなのに、余計なことを言ってアリューシアの機嫌を損なうわけにはいかないから。
「ちょ、ちょっとボスたちだけずるい。私も食べたいわ!」
私たちの話しをさっきまで黙って聞いていたアビュが、飛び上がりながら言ってくる。
「仕方ない、僕の分の料理を少し分けてやるよ、でも他の召使いたちには内緒だぞ」
「うん、ボス、大好きよ」
アビュはそう言って私に抱きついて、頬にキスをしてくる。まだこういうところは子供だ。嬉しいことがあると素直に表現したくなるのだろう。
「本当に庶民は下品だわ!」
アリューシアはそんなアビュを見て、吐き捨てるように言った。
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