34 / 188
シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子
第三章 1)新しい一日
しおりを挟む
昨夜のアリューシアの喜びは、それはもう大変なものだった。プラーヌスへの弟子入りが叶ったのだ。それは彼女の積年の願い。
嬉しさのあまり、その場にへたり込んで、彼女は静かに泣き出した。
そんなにも喜んでいるのだから、アリューシアは当然のようにして、プラーヌスからの交換条件を受け入れた。
これからはあの二人の料理人が、私たちの料理も作ってくれることなり、彼女の連れてきた召使いたちも、私の仕事を助けてくれるようになった。
「でもリーズだけは残しておいて。あの子は私のお化粧係なの。彼女がいなければ、服も選べないし、髪型も決まらないから」
プラーヌスが謁見の間を去り、その興奮もいくらか落ち着いてきたのか、アリューシアが私にそんなことを言ってくる。
「わかった、もちろん細かいところは君に任せる」
「その代わり、サンチーヌ、エドガル、ドニ、アデライド、ラダを貸すわ。あなたから命令は私の命令と同じだと思えって、しっかりと言っておく」
ああ、明日が来るのが楽しみだわ!
アリューシアは本当に幸せそうに、部屋に帰っていった。
それが昨夜のこと。あの美味しい夕食のあとの、謁見の間での出来事だ。
そこでプラーヌスはアリューシアを弟子として受け入れることを宣言して、その代わりアリューシアが連れてきた料理人と付き人たちが、この塔で働くことになった。
さて、それから一夜明けて今朝。
私はいつものように一人で朝食を食べ、出来るだけ素早く身づくろいを整え、いつものように中央のホールに向かう。
そして、その入り口を入ってすぐのところでアビュと落ち合う。
しかし今朝はアビュだけでなく、既にサンチーヌ、エドガル、ドニ、アデライド、ラダが私を待っていた。
「やあ、皆様、お揃いで」
私は待たしてしまったことを申し訳ないと思いながら、彼らに声を掛ける。
彼らがこの時間に来ているのなら、私はもっと早く起きて彼らを待たなければいけないだろう。
確かにこの塔では私のほうが立場は上で、命令を発することが出来るわけだけど、この仕事の経験の豊かさは彼らのほうがずっと上だと思う。
こっちも率先して働かなければ、彼らがついてきてくれるわけがない。
それに案の定、彼らの表情は一様に硬かった。私の下で仕事するのが不服だからに違いない。
彼らの信頼感を勝ち取るまで、かなりの時間が必要だろう。
私は彼らの表情を見ながら覚悟を決めた。
確かに彼らの力を借りれば、これまで停滞していた仕事が一気に処理されるかもしれない。
しかし一緒に働くとなれば、こっちはかなり気を遣わなければいけない。これからは別種の疲労感と戦わなければいけないことになるだろう。
それでも仕事が効率よく進むのならば、それに耐えよう。
「それでは早速、仕事をしましょう」
私が彼らと同じように硬い表情で言う。
しかしアビュが私の言葉に割り込むように言ってきた。
「ちょっとボス!」
私の助手、ただ一人の従順な部下、アビュ。
しかし彼女の表情も硬い。と言うか顔色が悪い。真っ青だったのだ。
「ど、どうした、アビュ」
「謁見の間で、誰か死んでるんだけど・・・」
「え? 死んでる?」
嬉しさのあまり、その場にへたり込んで、彼女は静かに泣き出した。
そんなにも喜んでいるのだから、アリューシアは当然のようにして、プラーヌスからの交換条件を受け入れた。
これからはあの二人の料理人が、私たちの料理も作ってくれることなり、彼女の連れてきた召使いたちも、私の仕事を助けてくれるようになった。
「でもリーズだけは残しておいて。あの子は私のお化粧係なの。彼女がいなければ、服も選べないし、髪型も決まらないから」
プラーヌスが謁見の間を去り、その興奮もいくらか落ち着いてきたのか、アリューシアが私にそんなことを言ってくる。
「わかった、もちろん細かいところは君に任せる」
「その代わり、サンチーヌ、エドガル、ドニ、アデライド、ラダを貸すわ。あなたから命令は私の命令と同じだと思えって、しっかりと言っておく」
ああ、明日が来るのが楽しみだわ!
アリューシアは本当に幸せそうに、部屋に帰っていった。
それが昨夜のこと。あの美味しい夕食のあとの、謁見の間での出来事だ。
そこでプラーヌスはアリューシアを弟子として受け入れることを宣言して、その代わりアリューシアが連れてきた料理人と付き人たちが、この塔で働くことになった。
さて、それから一夜明けて今朝。
私はいつものように一人で朝食を食べ、出来るだけ素早く身づくろいを整え、いつものように中央のホールに向かう。
そして、その入り口を入ってすぐのところでアビュと落ち合う。
しかし今朝はアビュだけでなく、既にサンチーヌ、エドガル、ドニ、アデライド、ラダが私を待っていた。
「やあ、皆様、お揃いで」
私は待たしてしまったことを申し訳ないと思いながら、彼らに声を掛ける。
彼らがこの時間に来ているのなら、私はもっと早く起きて彼らを待たなければいけないだろう。
確かにこの塔では私のほうが立場は上で、命令を発することが出来るわけだけど、この仕事の経験の豊かさは彼らのほうがずっと上だと思う。
こっちも率先して働かなければ、彼らがついてきてくれるわけがない。
それに案の定、彼らの表情は一様に硬かった。私の下で仕事するのが不服だからに違いない。
彼らの信頼感を勝ち取るまで、かなりの時間が必要だろう。
私は彼らの表情を見ながら覚悟を決めた。
確かに彼らの力を借りれば、これまで停滞していた仕事が一気に処理されるかもしれない。
しかし一緒に働くとなれば、こっちはかなり気を遣わなければいけない。これからは別種の疲労感と戦わなければいけないことになるだろう。
それでも仕事が効率よく進むのならば、それに耐えよう。
「それでは早速、仕事をしましょう」
私が彼らと同じように硬い表情で言う。
しかしアビュが私の言葉に割り込むように言ってきた。
「ちょっとボス!」
私の助手、ただ一人の従順な部下、アビュ。
しかし彼女の表情も硬い。と言うか顔色が悪い。真っ青だったのだ。
「ど、どうした、アビュ」
「謁見の間で、誰か死んでるんだけど・・・」
「え? 死んでる?」
0
あなたにおすすめの小説
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!
犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。
そして夢をみた。
日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。
その顔を見て目が覚めた。
なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。
数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。
幼少期、最初はツラい状況が続きます。
作者都合のゆるふわご都合設定です。
日曜日以外、1日1話更新目指してます。
エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。
お楽しみ頂けたら幸いです。
***************
2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます!
100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!!
2024年9月9日 お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます!
200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!!
2025年1月6日 お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております!
ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします!
2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております!
こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!!
2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?!
なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!!
こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。
どうしよう、欲が出て来た?
…ショートショートとか書いてみようかな?
2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?!
欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい…
2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?!
どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…
罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】
私には婚約中の王子がいた。
ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。
そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。
次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。
目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。
名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。
※他サイトでも投稿中
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
【完結】見えてますよ!
ユユ
恋愛
“何故”
私の婚約者が彼だと分かると、第一声はソレだった。
美少女でもなければ醜くもなく。
優秀でもなければ出来損ないでもなく。
高貴でも無ければ下位貴族でもない。
富豪でなければ貧乏でもない。
中の中。
自己主張も存在感もない私は貴族達の中では透明人間のようだった。
唯一認識されるのは婚約者と社交に出る時。
そしてあの言葉が聞こえてくる。
見目麗しく優秀な彼の横に並ぶ私を蔑む令嬢達。
私はずっと願っていた。彼に婚約を解消して欲しいと。
ある日いき過ぎた嫌がらせがきっかけで、見えるようになる。
★注意★
・閑話にはR18要素を含みます。
読まなくても大丈夫です。
・作り話です。
・合わない方はご退出願います。
・完結しています。
悪役令嬢が行方不明!?
mimiaizu
恋愛
乙女ゲームの設定では悪役令嬢だった公爵令嬢サエナリア・ヴァン・ソノーザ。そんな彼女が行方不明になるというゲームになかった事件(イベント)が起こる。彼女を見つけ出そうと捜索が始まる。そして、次々と明かされることになる真実に、妹が両親が、婚約者の王太子が、ヒロインの男爵令嬢が、皆が驚愕することになる。全てのカギを握るのは、一体誰なのだろう。
※初めての悪役令嬢物です。
初恋が綺麗に終わらない
わらびもち
恋愛
婚約者のエーミールにいつも放置され、蔑ろにされるベロニカ。
そんな彼の態度にウンザリし、婚約を破棄しようと行動をおこす。
今後、一度でもエーミールがベロニカ以外の女を優先することがあれば即座に婚約は破棄。
そういった契約を両家で交わすも、馬鹿なエーミールはよりにもよって夜会でやらかす。
もう呆れるしかないベロニカ。そしてそんな彼女に手を差し伸べた意外な人物。
ベロニカはこの人物に、人生で初の恋に落ちる…………。
わけありな教え子達が巣立ったので、一人で冒険者やってみた
名無しの夜
ファンタジー
教え子達から突然別れを切り出されたグロウは一人で冒険者として活動してみることに。移動の最中、賊に襲われている令嬢を助けてみれば、令嬢は別れたばかりの教え子にそっくりだった。一方、グロウと別れた教え子三人はとある事情から母国に帰ることに。しかし故郷では恐るべき悪魔が三人を待ち構えていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる