私の邪悪な魔法使いの友人2

ロキ

文字の大きさ
43 / 188
シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子

第三章 10)七人の愛人

しおりを挟む
 香水の香りを漂わせるこの男、プラーヌスの知り合い、旧知の仲らしい。彼が嘘を言っていなければであるが。
 しかしアリューシアしかり、そういう客は決まって偉そうで、傲慢な感じを漂わせているのだろうか。

 「大きめの部屋を頼む。連れの女性が七人いるんだ。あいつら、どこに行ったかな?」

 男は再び伸びをして、ようやく机の上から足を下ろした。「なかなか素敵な机じゃないか。嫌いじゃないぜ、こういう机」

 私の険しい眼差しに気づいたのだろう、カルファルと名乗った男は机をパラパラと払い、機嫌を取るように微笑んでくる。

 「女性が七人だって?」

 私はその言葉に引っ掛かる。

 「そうさ。七人とも俺を愛している」

 「は、はあ・・・」

 「公平を期するため、七人と同じ部屋で寝る。だから大きめの部屋を用意してくれよ」

 何という男であろうか。私はこの男が更に嫌いになりそうだった。
 しかしどれだけこの男が無礼でも、私がこの男のことを大嫌いであったとしても、プラーヌスの客かもしれない相手を勝手に追い払うわけにはいかない。

 「わかった。プラーヌスに君のことを伝えてくる。ところで彼とはどういう知り合いなのだろうか?」

 「あいつとどういう知り合いかって? おいおい、まるで女みたいなことを聞く奴だな。ねえ、あの子とどういう関係? ちょっと親しげにしてれば、どんな女性とでも肉体関係があるように見えるらしい」

 「はあ?」

 何を言っているのだ、彼は。私は愕然として、その男を見つめる。

 「女たちは俺にそう言うのさ!」

 「僕が聞きたいのは」

 「わざわざ遠くから訪ねて来たんだ」

 彼は私の言葉を制して言ってくる。「とにかくプラーヌスと逢いたい。まあ、しかしどうせあいつのことだ。まだ寝ているんだろ? いや、ようやく起き出す時間かな」

 ああ、確かにその通りだ。この男はプラーヌスの生活のサイクルを理解しているようだ。それなりに親しい付き合いなのかもしれない。
 まさにちょうど今頃、謁見の間に現れる時間である。いや、もしかしたら既に到着しているかもしれない。
 ということは、いつまでもこの男の相手をしている時間はないということ。
 急がなければいけない。プラーヌスは人を待たせることは厭わないが、待つことは大嫌いなのだから。

 「わかった。とりあえず部屋くらいは用意しよう」

 もう少し話しを聞いて、この男の素性を知っておくべきだと思ったが、この辺りで切り上げることにした。あとはアビュか召使いに、この男の世話を任せよう。
 私は執務室から出ようとする。その同じタイミングで扉が開いた。折りよくアビュが入ってきた。

 「あれ? ボス、もう帰ってたんだ? 探し回ってたのに。この人、主の知り合いなんだって」

 「ちょうどいいところに来た。アビュ、彼に部屋を用意してやってくれ。僕はプラーヌスと会ってくる」

 「おお、さっきの可愛いお嬢さんだね。飛びきり大きな部屋にしてくれよ。ベッドも大きなベッドだ」

 男がアビュに向かって声を上げた。

 「はいはい」

 可愛いお嬢さんと言われて、アビュは満更でもないようだ。照れるとムッとした表情になるから、これはアビュが喜んでいるときの顔だ。
 どうやらこの男を執務室に通したのはアビュのようだ。
 見知らぬ男をいきなり執務室に入れてはいけないことぐらいアビュだって理解しているに違いないが、この男の妙なペースに巻き込まれたのだろう。
 口の上手い男だ。女性の扱いにも馴れている。アビュを言い包めるぐらい容易いことだったに違いない。
 しかしこれから、こんなことがあってはならない。
 きつくアビュに言い渡しておかないと思いながら、私は部屋を出る。

 「アビュ、あとは頼む。彼に食料と飲み物も出してやってくれ」

 「うん、わかった」

 「おい、カルファルだぞ。カルファルが来たと伝えるんだ。プラーヌスはすぐにわかるはずだ」

 背後で男の声がする。私はその言葉に返事を返さず、謁見の間に急いで向かう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生『悪役』公爵令嬢はやり直し人生で楽隠居を目指す

RINFAM
ファンタジー
 なんの罰ゲームだ、これ!!!!  あああああ!!! 本当ならあと数年で年金ライフが送れたはずなのに!!  そのために国民年金の他に利率のいい個人年金も掛け、さらに少ない給料の中からちまちまと老後の生活費を貯めてきたと言うのに!!!!  一銭も貰えないまま人生終わるだなんて、あんまりです神様仏様あああ!!  かくなる上はこのやり直し転生人生で、前世以上に楽して暮らせる隠居生活を手に入れなければ。 年金受給前に死んでしまった『心は常に18歳』な享年62歳の初老女『成瀬裕子』はある日突然死しファンタジー世界で公爵令嬢に転生!!しかし、数年後に待っていた年金生活を夢見ていた彼女は、やり直し人生で再び若いままでの楽隠居生活を目指すことに。 4コマ漫画版もあります。

【完結】エレクトラの婚約者

buchi
恋愛
しっかり者だが自己評価低めのエレクトラ。婚約相手は年下の美少年。迷うわー エレクトラは、平凡な伯爵令嬢。 父の再婚で家に乗り込んできた義母と義姉たちにいいようにあしらわれ、困り果てていた。 そこへ父がエレクトラに縁談を持ち込むが、二歳年下の少年で爵位もなければ金持ちでもない。 エレクトラは悩むが、義母は借金のカタにエレクトラに別な縁談を押し付けてきた。 もう自立するわ!とエレクトラは親友の王弟殿下の娘の侍女になろうと決意を固めるが…… 11万字とちょっと長め。 謙虚過ぎる性格のエレクトラと、優しいけど訳アリの高貴な三人の女友達、実は執着強めの天才肌の婚約予定者、扱いに困る義母と義姉が出てきます。暇つぶしにどうぞ。 タグにざまぁが付いていますが、義母や義姉たちが命に別状があったり、とことんひどいことになるザマァではないです。 まあ、そうなるよね〜みたいな因果応報的なざまぁです。

【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する

影清
ファンタジー
英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。 ※残酷な描写は予告なく出てきます。 ※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。 ※106話完結。

半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜

侑子
恋愛
 小さな村のはずれにあるボロ小屋で、母と二人、貧しく暮らすキアラ。  父がいなくても以前はそこそこ幸せに暮らしていたのだが、横暴な領主から愛人になれと迫られた美しい母がそれを拒否したため、仕事をクビになり、家も追い出されてしまったのだ。  まだ九歳だけれど、人一倍力持ちで頑丈なキアラは、体の弱い母を支えるために森で狩りや採集に励む中、不思議で可愛い魔獣に出会う。  クロと名付けてともに暮らしを良くするために奮闘するが、まるで言葉がわかるかのような行動を見せるクロには、なんだか秘密があるようだ。  その上キアラ自身にも、なにやら出生に秘密があったようで……? ※二章からは、十四歳になった皇女キアラのお話です。

さようなら、私の愛したあなた。

希猫 ゆうみ
恋愛
オースルンド伯爵家の令嬢カタリーナは、幼馴染であるロヴネル伯爵家の令息ステファンを心から愛していた。いつか結婚するものと信じて生きてきた。 ところが、ステファンは爵位継承と同時にカールシュテイン侯爵家の令嬢ロヴィーサとの婚約を発表。 「君の恋心には気づいていた。だが、私は違うんだ。さようなら、カタリーナ」 ステファンとの未来を失い茫然自失のカタリーナに接近してきたのは、社交界で知り合ったドグラス。 ドグラスは王族に連なるノルディーン公爵の末子でありマルムフォーシュ伯爵でもある超上流貴族だったが、不埒な噂の絶えない人物だった。 「あなたと遊ぶほど落ちぶれてはいません」 凛とした態度を崩さないカタリーナに、ドグラスがある秘密を打ち明ける。 なんとドグラスは王家の密偵であり、偽装として遊び人のように振舞っているのだという。 「俺に協力してくれたら、ロヴィーサ嬢の真実を教えてあげよう」 こうして密偵助手となったカタリーナは、幾つかの真実に触れながら本当の愛に辿り着く。

ガチャから始まる錬金ライフ

あに
ファンタジー
河地夜人は日雇い労働者だったが、スキルボールを手に入れた翌日にクビになってしまう。 手に入れたスキルボールは『ガチャ』そこから『鑑定』『錬金術』と手に入れて、今までダンジョンの宝箱しか出なかったポーションなどを冒険者御用達の『プライド』に売り、億万長者になっていく。 他にもS級冒険者と出会い、自らもS級に上り詰める。 どんどん仲間も増え、自らはダンジョンには行かず錬金術で飯を食う。 自身の本当のジョブが召喚士だったので、召喚した相棒のテンとまったり、時には冒険し成長していく。

【完結】平民聖女の愛と夢

ここ
ファンタジー
ソフィは小さな村で暮らしていた。特技は治癒魔法。ところが、村人のマークの命を救えなかったことにより、村全体から、無視されるようになった。食料もない、お金もない、ソフィは仕方なく旅立った。冒険の旅に。

【完結90万pt感謝】大募集! 王太子妃候補! 貴女が未来の国母かもしれないっ!

宇水涼麻
ファンタジー
ゼルアナート王国の王都にある貴族学園の玄関前には朝から人集りができていた。 女子生徒たちが色めき立って、男子生徒たちが興味津々に見ている掲示物は、求人広告だ。 なんと求人されているのは『王太子妃候補者』 見目麗しい王太子の婚約者になれるかもしれないというのだ。 だが、王太子には眉目秀麗才色兼備の婚約者がいることは誰もが知っている。 学園全体が浮足立った状態のまま昼休みになった。 王太子であるレンエールが婚約者に詰め寄った。 求人広告の真意は?広告主は? 中世ヨーロッパ風の婚約破棄ものです。 お陰様で完結いたしました。 外伝は書いていくつもりでおります。 これからもよろしくお願いします。 表紙を変えました。お友達に描いていただいたラビオナ嬢です。 彼女が涙したシーンを思い浮かべ萌えてますwww

処理中です...