私の邪悪な魔法使いの友人2

ロキ

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シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子

第五章 3)神が禁じていること

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 「な、なるほど。まあ、シュショテは子供だからね。親元を離れてここまで来たんだから、そういうこともあるだろ・・・」

 いや、そんなことあるわけがない。子供だといっても、彼はアビュと同じくらいの年齢。
 私とアビュが同じベッドで寝ることがありえないのと同じで、プラーヌスとシュショテが一緒に寝るなんて。
 しかも人間嫌いのプラーヌスが! 

 同性と寝床を同じにすること、それは神が禁じていることの一つでもある。少年が相手となれば更に罪は深い。
 まあ、神の言うことなんて聞くプラーヌスではないのだけど。

 「お、落ち着くんだ、アビュ」

 「それはこっちのセリフよ、ボス」

 「あ、ああ、そうだね」

 私は執務室の中をぐるぐる歩き回るのをやめ、いったん椅子に腰を下ろす。「まあ、でも自由じゃないか、プラーヌスがどのような趣味を持っていても別に問題ない、そうだろ、アビュ?」

 私は自分に言い聞かせるように言う。アビュは腕組みをしながら、「果たしてそうかしら」と言ってくる。

 シュショテはプラーヌスの助手だ。プラーヌスが雇った魔法使いの少年。
 彼はかなり有能な魔法使いらしい。プラーヌスがあの少年に好感を抱いていたのは何となくわかっていた。
 お互い惹かれ合ったのならば、そういうことが起きても仕方ないのではないだろうか? 

 まあ、確かに、そもそもこのような欲望を遂げるためにあの少年を雇ったのだとしたら、プラーヌスのことを見損なってしまいそうだけど。助手なんて名ばかりで、実はおのれの欲望を満足させるのが目当てだったとすれば。
 とはいえ、人を好きになったりするのは自由じゃないか。これは私が関わるような問題ではない。

 「そうだけどさ」

 しかしアビュの表情は曇ったままだ。「無理やりとかは駄目じゃない? 言い忘れたんだけど、シュショテの背中が傷だらけだったんだけど・・・」

 「な、な、何だって?」

 「そ、そうなの、裸だったんだ」

 「なるほど、で?」

 「主が服を着ていたかどうかは見てないけど、布団にくるまってて。でもシュショテの背中は見えた。鞭で打たれたみたいに、赤く腫れてた」

 「そ、そうか・・・」

 寝床の二人の姿が、私の脳裏に生々しく浮かび上がってくる。
 プラーヌスのベッドは大きい。三人くらい眠れるようなサイズ。長い枕があり、清潔な白いシーツと、しわだらけの布団。その白い寝床の上で寄り添って眠る二人の姿。
 頭がクラクラしてきて、私はテーブルに首を垂れる。

 「アビュ、この話し、誰にも言ってないだろうな?」

 うな垂れたまま、私は言う。

 「う、うん、当たり前でしょ」

 「良かった」

 もしアビュが誰かに話せば、その話しはあっという間に塔の中を駆け巡ってしまうだろう。
 この塔は大きなようで狭い。そして想像以上に閉鎖的である。ガラス玉が砕けるように反響して、塔中に轟くに違いない。

 「朝食はいつもの台座の上に置いておいたから。鉄柵の扉の前。だから、主は見られたことに気づいてないと思うけど・・・」

 「なるほど、工作もしておいたのか」

 さすが優秀な助手だ。しかし相手はあのプラーヌスである。そんなことで誤魔化すことが出来るのだろうか。
 いや、そもそも扉を開けたまま寝ていたのだ。やはり彼だって隙を見せることはあるのだろう。

 「わかった、君はその話しを忘れよう」

 「ああ、うん」

 忘れられるわけがないでしょ、アビュはそんな表情を見せてくる。

 「僕も忘れる」

 「でもさ、このままじゃシュショテがかわいそうだよ」

 アビュの目は潤んでいた。
 まだまだアビュは子供だ。その寝床で起きているかもしれないことを本当に理解出来ているのか定かではないが、アビュはシュショテのことを本気で案じている様子。

 アビュとシュショテが会話をしている姿を見たことがある。同年代だし気も合うようだ。少なくともアビュがシュショテと話しているときの表情は、アリューシアが相手のときよりずっと楽しげである。

 「それも含めて、僕に任せてくれと言ってるんだよ」

 「う、うん、わかった。ボスを信じているからね」

 シュショテはプラーヌスの助手だから、深夜まで彼の仕事を手伝っている。早寝早起きが習慣づいていそうな朴訥なシュショテも、生活のペースをプラーヌスに合わせようとしているのだ。
 それでも、昼になる前には私たちの前に姿を現す。プラーヌスよりもずっと早起きだ。今日だって食堂辺りで待ち構えていたら会えるだろう。

 シュショテと会って、それとなく話しを聞いておくべきであろう。
 それが私の取るべき選択。そんなことは理解している。しかしそんな気になれない。
 私は本当に気持ちが重くなって、何度目かのため息を吐く。
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