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シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子
第五章 24)二人の間の過去
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カルファルの香水の匂いが強い。
塔の中でその香りと接していたときは、別に嫌な気分を感じたりはしなかったが、森の中で嗅ぐと、とても不快だった。
私のその感情に同意するように、サンチーヌもが眉を顰めている。
香水の匂いだけではない。彼のまとっている衣装も酷かった。
純白の上着に金色のマント。長い髪は複雑に編み込まれて、昆虫の触覚のように逆立っている。
声を聞かなければ、いったい何者なのかわからないくらい、昨日の恰好からの変貌ぶり。
「ああ、カルファル。君も意外と早起きだね。見ての通りさ。森の開拓だよ。僕たちはここを農地にするつもりなんだ」
虫でも追い払うような態度で、私は彼をあしらってやる。
しかし厚顔なカルファルがそんなことで傷つくはずがない。
「なるほど。楽しそうじゃないか。俺も手伝ってやろうか? 俺の魔法なら、この森を瞬時に焼き尽くすことが出来るぜ。コツコツと斧なんかで切る必要はない」
その言葉と同時に大木が倒れる轟音が響いた。
私たちのいる場所からかなり離れた木が倒れただけなのに、私の頭上に何か降ってきそうな気配を感じ、思わず首をすくめてしまう。
「い、いや、伐採した樹木で砦を作るんだ。余計なことはしないでくれよ、カルファル」
私は平静を取り繕いながら、彼に言う。
「砦だって? この塔を襲う勢力でも存在するのか?」
一方、魔法使いのカルファルの度胸は大したものだ。こんなことでは一切動じない。
「まあ、この塔だって色々と問題を抱えているのさ。それはそうと、君の魔法は農作物を育てるときに役立つかもしれない」
「ん? どういうことだ?」
昨夜、プラーヌスが妙な熱意を込めて語っていた言葉を思い出す。
彼はカルファルを、その新しい農地で働かせたいようなのだ。
プラーヌスは、この無駄に美しく着飾った伊達男に、農作物を育てるという、まるで似つかわしくない仕事をやらせて、ちょっとした意趣晴らしを企てているよう。
プラーヌスはカルファルに、深い恨みでもあるかのようだった。一方のカルファルにも、プラーヌスに不思議な執着のようなものがあるに違いない。
二人の過去に何があったのだろうか?
私は改めてそれを疑問に思う。
「なあ、カルファル。一つ聞きたいことがあるんだけど」
「その前に、俺の魔法が役立つってどういうことだ?」
「い、いや、それはまあ、プラーヌスから聞いてもらえればいい。彼は君に何か仕事を頼みたいらしい」
「仕事だって?」
カルファルが興味深そうな表情を示す。また違う木が倒れる音が響いた。
「奴も俺に頼りにしているわけか。あいつも素直になったものだ」
「いや、そういうわけでもないのだけどさ・・・」
カルファルがプラーヌスの考えていることを知れば、頭に来るのは間違いないことであろう。
私はこのような話しを中途半端に切り出してしまったことを後悔している。
プラーヌスはカルファルにその仕事をやらせることで、カルファルのようなレベルの魔法使いは農夫としか役に立たない。そう言いたいようなのである。
プラーヌスはそうやって、カルファルを侮蔑したいのだ。
プラーヌスは魔法使いとして圧倒的に高位の存在のはずだ。
それなのにカルファルに対する余裕のない振る舞い。彼はどうにかして、カルファルをやりこめようと必死だ。
そしてカルファルはプラーヌスのその余裕の無さを見通した上で、そんなプラーヌスを挑発している。
彼に旅の資金を借りようとしているのは、その最たる例ではないだろうか。
「カルファル、君はプラーヌスの旧友なんだろ? いったい、どのような知り合いなのかな? 昔、何かあった? プラーヌスに尋ねても何も答えてくれない」
「まあ、そうだろうな」
カルファルはそう言って、にんまりとほほ笑む。
「プラーヌスは自分のことを話したがらない」
「あいつは昔から、そういうところがあったな」
「いつからの友人なのかな?」
「いつだったかな。俺も昔のことはすぐに忘れるタイプだからな」
「お、おい。だけど」
カルファルもプラーヌスと同じように勿体ぶって何も喋らないつもりなのだろうか。
魔法使いというのは、そういう生き物なのかもしれない。このような些細なことでも秘密にしておいて、何かそれにとても価値があるかのように振る舞うのだ。
かと思いきや、カルファルはいつものあの軽い口調で言ってくる。心なしか、その金色のマントをはためかせて。
「仕方ない。教えてやろうか? 俺たちの過去を」
「あ、ああ」
「あれはいつだったかな、ずいぶん若いときの話しだ」
「ちょっと待ちなさいよ!」
カルファルがその過去について話そうとし始めたときだ、我々がいる森の中に、枝を揺らす風よりも大きな騒めきが巻き起こった。
もたもや、この森に馴染みの登場人物がやってきた。
塔の中でその香りと接していたときは、別に嫌な気分を感じたりはしなかったが、森の中で嗅ぐと、とても不快だった。
私のその感情に同意するように、サンチーヌもが眉を顰めている。
香水の匂いだけではない。彼のまとっている衣装も酷かった。
純白の上着に金色のマント。長い髪は複雑に編み込まれて、昆虫の触覚のように逆立っている。
声を聞かなければ、いったい何者なのかわからないくらい、昨日の恰好からの変貌ぶり。
「ああ、カルファル。君も意外と早起きだね。見ての通りさ。森の開拓だよ。僕たちはここを農地にするつもりなんだ」
虫でも追い払うような態度で、私は彼をあしらってやる。
しかし厚顔なカルファルがそんなことで傷つくはずがない。
「なるほど。楽しそうじゃないか。俺も手伝ってやろうか? 俺の魔法なら、この森を瞬時に焼き尽くすことが出来るぜ。コツコツと斧なんかで切る必要はない」
その言葉と同時に大木が倒れる轟音が響いた。
私たちのいる場所からかなり離れた木が倒れただけなのに、私の頭上に何か降ってきそうな気配を感じ、思わず首をすくめてしまう。
「い、いや、伐採した樹木で砦を作るんだ。余計なことはしないでくれよ、カルファル」
私は平静を取り繕いながら、彼に言う。
「砦だって? この塔を襲う勢力でも存在するのか?」
一方、魔法使いのカルファルの度胸は大したものだ。こんなことでは一切動じない。
「まあ、この塔だって色々と問題を抱えているのさ。それはそうと、君の魔法は農作物を育てるときに役立つかもしれない」
「ん? どういうことだ?」
昨夜、プラーヌスが妙な熱意を込めて語っていた言葉を思い出す。
彼はカルファルを、その新しい農地で働かせたいようなのだ。
プラーヌスは、この無駄に美しく着飾った伊達男に、農作物を育てるという、まるで似つかわしくない仕事をやらせて、ちょっとした意趣晴らしを企てているよう。
プラーヌスはカルファルに、深い恨みでもあるかのようだった。一方のカルファルにも、プラーヌスに不思議な執着のようなものがあるに違いない。
二人の過去に何があったのだろうか?
私は改めてそれを疑問に思う。
「なあ、カルファル。一つ聞きたいことがあるんだけど」
「その前に、俺の魔法が役立つってどういうことだ?」
「い、いや、それはまあ、プラーヌスから聞いてもらえればいい。彼は君に何か仕事を頼みたいらしい」
「仕事だって?」
カルファルが興味深そうな表情を示す。また違う木が倒れる音が響いた。
「奴も俺に頼りにしているわけか。あいつも素直になったものだ」
「いや、そういうわけでもないのだけどさ・・・」
カルファルがプラーヌスの考えていることを知れば、頭に来るのは間違いないことであろう。
私はこのような話しを中途半端に切り出してしまったことを後悔している。
プラーヌスはカルファルにその仕事をやらせることで、カルファルのようなレベルの魔法使いは農夫としか役に立たない。そう言いたいようなのである。
プラーヌスはそうやって、カルファルを侮蔑したいのだ。
プラーヌスは魔法使いとして圧倒的に高位の存在のはずだ。
それなのにカルファルに対する余裕のない振る舞い。彼はどうにかして、カルファルをやりこめようと必死だ。
そしてカルファルはプラーヌスのその余裕の無さを見通した上で、そんなプラーヌスを挑発している。
彼に旅の資金を借りようとしているのは、その最たる例ではないだろうか。
「カルファル、君はプラーヌスの旧友なんだろ? いったい、どのような知り合いなのかな? 昔、何かあった? プラーヌスに尋ねても何も答えてくれない」
「まあ、そうだろうな」
カルファルはそう言って、にんまりとほほ笑む。
「プラーヌスは自分のことを話したがらない」
「あいつは昔から、そういうところがあったな」
「いつからの友人なのかな?」
「いつだったかな。俺も昔のことはすぐに忘れるタイプだからな」
「お、おい。だけど」
カルファルもプラーヌスと同じように勿体ぶって何も喋らないつもりなのだろうか。
魔法使いというのは、そういう生き物なのかもしれない。このような些細なことでも秘密にしておいて、何かそれにとても価値があるかのように振る舞うのだ。
かと思いきや、カルファルはいつものあの軽い口調で言ってくる。心なしか、その金色のマントをはためかせて。
「仕方ない。教えてやろうか? 俺たちの過去を」
「あ、ああ」
「あれはいつだったかな、ずいぶん若いときの話しだ」
「ちょっと待ちなさいよ!」
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もたもや、この森に馴染みの登場人物がやってきた。
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