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シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子
第五章 37)刺激的な仕事
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これはいったいどういうことなんだ! 酒場の主人が、傭兵たちが、街路に散らばった瓦礫を踏みつけながら、私に詰め寄ってくる。
他の野次馬たちも私をにらみつけてきた。
「あんたはあのガキの知り合いのようだな、 おい、え? そうだろ?」
酒場の主人は、空に浮いているシュショテを指差しながら言う。
「そう、その通りです」
今更、嘘もつけない。
いや、嘘をつくわけにもいかないであろう。むしろここは開き直って、彼らに助けを求めるのが得策ではなかろうか。
ここには幾つもの戦場を渡り歩いてきた傭兵たちが揃っているはず。彼らは私なんかよりもずっと、こういう非常事態の対処に馴れている。
「あ、あの少年と知り合いです! 彼は本来ならば、とても優秀な魔法使いなんだけど。だけど何やら取り乱しているようで・・・」
「取り乱しているどころじゃないぞ! 大聖堂の尖塔が壊したんだろ? 怪我人だって出ている」
その通りである。本当にシュショテはとんでもないことをしてくれた。
しかし大聖堂自体が崩れ去ったわけではないようだ。その最上階の尖塔が崩れ落ちているだけ。
もし大聖堂それ自体が崩壊していれば、もっと多くの参拝者や聖職者たちが、その建物の下敷きになっていたことであろう。それは本当にとんでもない惨劇。
その最悪のカタストロフィは免れている様子。まだ彼らに救いを求められる余地はあるはず。
「ここに魔法使いに詳しい傭兵はいないだろうか? 僕に協力してほしい。暴れているあの少年を落ち着かせるためです。必要ならば、即急に契約を結びたいのだけど」
私は思い切ってそう発言した。
都合が良過ぎるかもしれない。この街を壊している魔法使いの仲間だとして、こちらが取り押さえられておかしくない状況かもしれない。
しかしそれを避けるためにも、私は強気の発言をする必要があるはず。
「僕に協力してくれれば、ここですぐに金貨一枚を払おう!」
私はそう言って、金貨を一枚取り出して、堂々とした態度で傭兵たちを見渡す。
それが効果を奏したのか、責めるように見ていた酒場の主人の視線が少し柔らかくなった気がする。他の傭兵たちもだ。
「良い傭兵を紹介したいところだ。しかし魔法に通じている傭兵なんて、ここにはいないな」
酒場の主人は残念そうに言ってきた。他の傭兵たちも視線を逸らす。
「そうですか・・・」
やはり彼らの力を頼ることは無理なようだ。しかし傭兵たちの敵意を和らげることは出来かもしれない。
「そんなことよりも、このままあの少年がここで暴れ続けるならば、誰かが奴を射殺すかもしれないぞ」
さっきまで黙っていたスザンナが私に声を掛けてきた。「役人や、城壁にいる衛兵たちも、いずれ駆けつけてくるだろう。血の気の多い奴も多い。そいつらが黙って見続けていることはない」
ああ、ありえるな。そのような表情で、他の傭兵たちも頷く。
「な、ならば、そういう連中からあの少年を守って欲しい。それでもさっきと同じ報酬を払います」
「いいだろう。手伝おう」
スザンナは即座に同意してくれた。視線を逸らした傭兵たちのほうが多かったが、それでも何人かの傭兵たちも頷いてくれる。
「おお、有り難い!」
酒場で話しをしていたとき、スザンナは私の持ちかけた仕事にまるで興味を示しはしなかったが、今、そのときの態度とはまるで違う。何やらこの危機的状況を前にして、彼女の表情は生き生きとしていた。
若い傭兵のスザンナは、このような刺激的な仕事を求めていたのだろうか。
彼女は何人かの傭兵たちに声を掛けながら、手近の建物の中に飛び込んでいった。
すぐに彼女の姿がその建物の二階の窓から見えた。更に彼女は窓から身を乗り出し、屋根の梁に手を掛け、身体をくるりと回転させ、屋根によじ登っていく。
どうやら高い屋根から周囲を見渡して、辺りの様子を伺おうとしているようだ。シュショテには一切注意を払わない。あの少年を害する連中が現れたとき、どのように対処するか、それだけに集中しているようだ。
スザンナは想像以上に有能な傭兵のような気がする。酒場の主人の意見に間違いはなかったようだ。それが期せずして示されたようである。
しかしそんな彼女の鋭敏そうな表情が、絶望的な傷口を見た医者のように暗く曇った。
スザンナは何かを目撃したようだ。
他の野次馬たちも私をにらみつけてきた。
「あんたはあのガキの知り合いのようだな、 おい、え? そうだろ?」
酒場の主人は、空に浮いているシュショテを指差しながら言う。
「そう、その通りです」
今更、嘘もつけない。
いや、嘘をつくわけにもいかないであろう。むしろここは開き直って、彼らに助けを求めるのが得策ではなかろうか。
ここには幾つもの戦場を渡り歩いてきた傭兵たちが揃っているはず。彼らは私なんかよりもずっと、こういう非常事態の対処に馴れている。
「あ、あの少年と知り合いです! 彼は本来ならば、とても優秀な魔法使いなんだけど。だけど何やら取り乱しているようで・・・」
「取り乱しているどころじゃないぞ! 大聖堂の尖塔が壊したんだろ? 怪我人だって出ている」
その通りである。本当にシュショテはとんでもないことをしてくれた。
しかし大聖堂自体が崩れ去ったわけではないようだ。その最上階の尖塔が崩れ落ちているだけ。
もし大聖堂それ自体が崩壊していれば、もっと多くの参拝者や聖職者たちが、その建物の下敷きになっていたことであろう。それは本当にとんでもない惨劇。
その最悪のカタストロフィは免れている様子。まだ彼らに救いを求められる余地はあるはず。
「ここに魔法使いに詳しい傭兵はいないだろうか? 僕に協力してほしい。暴れているあの少年を落ち着かせるためです。必要ならば、即急に契約を結びたいのだけど」
私は思い切ってそう発言した。
都合が良過ぎるかもしれない。この街を壊している魔法使いの仲間だとして、こちらが取り押さえられておかしくない状況かもしれない。
しかしそれを避けるためにも、私は強気の発言をする必要があるはず。
「僕に協力してくれれば、ここですぐに金貨一枚を払おう!」
私はそう言って、金貨を一枚取り出して、堂々とした態度で傭兵たちを見渡す。
それが効果を奏したのか、責めるように見ていた酒場の主人の視線が少し柔らかくなった気がする。他の傭兵たちもだ。
「良い傭兵を紹介したいところだ。しかし魔法に通じている傭兵なんて、ここにはいないな」
酒場の主人は残念そうに言ってきた。他の傭兵たちも視線を逸らす。
「そうですか・・・」
やはり彼らの力を頼ることは無理なようだ。しかし傭兵たちの敵意を和らげることは出来かもしれない。
「そんなことよりも、このままあの少年がここで暴れ続けるならば、誰かが奴を射殺すかもしれないぞ」
さっきまで黙っていたスザンナが私に声を掛けてきた。「役人や、城壁にいる衛兵たちも、いずれ駆けつけてくるだろう。血の気の多い奴も多い。そいつらが黙って見続けていることはない」
ああ、ありえるな。そのような表情で、他の傭兵たちも頷く。
「な、ならば、そういう連中からあの少年を守って欲しい。それでもさっきと同じ報酬を払います」
「いいだろう。手伝おう」
スザンナは即座に同意してくれた。視線を逸らした傭兵たちのほうが多かったが、それでも何人かの傭兵たちも頷いてくれる。
「おお、有り難い!」
酒場で話しをしていたとき、スザンナは私の持ちかけた仕事にまるで興味を示しはしなかったが、今、そのときの態度とはまるで違う。何やらこの危機的状況を前にして、彼女の表情は生き生きとしていた。
若い傭兵のスザンナは、このような刺激的な仕事を求めていたのだろうか。
彼女は何人かの傭兵たちに声を掛けながら、手近の建物の中に飛び込んでいった。
すぐに彼女の姿がその建物の二階の窓から見えた。更に彼女は窓から身を乗り出し、屋根の梁に手を掛け、身体をくるりと回転させ、屋根によじ登っていく。
どうやら高い屋根から周囲を見渡して、辺りの様子を伺おうとしているようだ。シュショテには一切注意を払わない。あの少年を害する連中が現れたとき、どのように対処するか、それだけに集中しているようだ。
スザンナは想像以上に有能な傭兵のような気がする。酒場の主人の意見に間違いはなかったようだ。それが期せずして示されたようである。
しかしそんな彼女の鋭敏そうな表情が、絶望的な傷口を見た医者のように暗く曇った。
スザンナは何かを目撃したようだ。
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