私の邪悪な魔法使いの友人2

ロキ

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シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子

第七章 6)謎の中に取り残されて

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 謎の中に取り残されたまま、独りにされる。
 私は首を傾げて、表情を歪めて、同じ文化を共有していない異国の者が見ても、「何だって?」という表情をしていることがわかるに違いない。
 こんな私の姿を誰か絵をに描いてはくれないだろうか。それとも彫像でもいい。歴史に残る芸術作品になるはずだ。その作品に題名をつけるならば、「謎の中に取り残されし男」が打ってつけに違いない。

 フローリア。
 その名前に聞き覚えがないわけでもない。どこかで聞いたような気がする。アビュが私をからかおうとしているわけでないことは確かだと思う。
 しかし思い出すことが出来ない。引っかかってはいるが、記憶の中から上手く取り出すことが出来ない。

 「何なんだよ、いったい!」

 この苛立ちを誰にぶつければいいのかわからない。アビュにぶつけても仕方がないことだ。それはわかっている。

 いや、このような曖昧な記憶というものは、別に不思議なものではないかもしれない。
 この場所、この瞬間、以前にも来たことがある。体験したことがある。そんな既視感を覚えることは誰にだってあるらしいではないか。
 この記憶もそういうものではないだろうか。

 それに間もなくして訓練室に到着したので、私はもうこのことについて思い悩むのをやめる。いつまでも謎の中の佇んではいられない。
 当初の予定通り、まずアリューシアに会いに来たのである。シュショテのことを彼女に話して、もしかしたら心配しているかもしれないアリューシアを安心させてやるつもりなのだ。
 アリューシアは、プラーヌスからの課題を何としてでもクリアーしようと頑張っているはずだ。今朝も訓練室にいるらしい。アリューシアの侍女のラダから、しっかりとその事実を確かめてきた。
 そういうわけなので、シュショテのことは心配ないと言って、魔法の勉強に集中させてやりたい。

 しかし訓練室には誰もいなかった。私は無人の部屋の中を呆然と見渡す。
 扉は半分開いていて、窓も開け放たれている。机の上には数冊の書物が置かれている。水晶玉だってある。
 ここにアリューシアがいたことは間違いのないだろうが、肝心のアリューシアの姿が見えない。

 「おい、アリューシア?」

 一応、声をかけてみるが、やはり返事はなかった。
 気分転換のため、どこかを散歩しているのだろうか。それほど集中力のあるタイプにも思えないので、十分にあり得ることだ。
 それならば、ここで待っていたら、いずれ戻ってくるかもしれない。しかしそんな悠長なことをしている時間的な余裕はない。

 それともアリューシアの身に何かあったのだろうか。私は嫌な予感も感じた。カルファルのことを思い出したのである。
 カルファルは私に宣言したではないか、アリューシアを俺の女にすると。
 カルファルがアリューシアをさらって、どこかに消えたのではないか! そして、彼女を強引に自分の女にするつもりなのだ。

 そう思うと、何やらこの部屋の光景は、その事件の名残りを漂わせているような気がしてくる。
 机の上の辞書や書物は開かれたままだ。水晶玉も光が灯っている。椅子は倒れてこそいないが、斜めになっていて、急いで立ち上がった気配が見受けられる。

 しかしまだ朝ではないか。一日は始まったばかりである。こんな時間からこのようなことをするのだろうか。
 まあ、あの男ならば、やりかけないが。

 私は部屋を出た。カルファルの部屋に向かって走った。

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