私の邪悪な魔法使いの友人2

ロキ

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シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子

第七章 22)心を触っているという手触り

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 言葉は真実とつながっていなくても、真実とつながっているような響きを持って、私の許から離れていって、とても深刻な重みをもって、相手に届いてしまうことがあるようだった。

 私は自分がしでかしてしまった光景を前に呆然としてしまう。ああ、何てことを言ってしまったのだろうか。
 アリューシアの面倒を見るということ。それはすなわち今のこの文脈では、結婚してくれと言っているのも同然なわけである。
 どうやらアリューシアも、そういう意味として受け止めている。

 心にもない言葉である。彼女と結婚するつもりなんてない。
 とはいえ、アリューシアがカルファルに不幸にされるのを見るのは忍びない。
 プラーヌスが彼女を弟子として認めてくれれば、全てが上手くいくのだけど。

 だけどそんなことは起きえない。だったら、私がアリューシアを守るしかないのだ。つまり、これは仕方がないこと。彼女を守るためならば、きっとこういう嘘でも許されるはずだ。
 もちろんそんなふうに割り切ることなんて出来ないから、頭を抱えたくなっているのだが。

 「ちょっと待って、ちょっと待って、どういうこと?」

 アリューシアはさっきまで座っていた寝台から腰を浮かせた。私に求愛されて、この場から逃げたいと思っているのだろうか。
 そんな彼女を横目で見ながら、依然として私は続ける。

 「えーと、だから僕が君を、何て言うか・・・、まあ、わかるだろ?」

 「わ、わかるけど。ちょっと待ってよ、突然、そんなこと言われても・・・。いえ、別に突然ってわけでもないわよね? ずっと前から、もしかしたらって思っていたから」

 「え?」

 何という自惚れであろうか。男ならば、基本的にすべて自分を愛していると思うタイプなのだろうか、アリューシアという少女は。
 しかしその誤解が役に立つならば、当然否定する必要はない。「気づいていたのか」と、私は意味ありげに苦笑いしておく。

 「だけど、ちょっと待ってよ!」

 アリューシアはまた寝台に腰かける。そして顔を赤らめて俯く。

 「本当に本当に、驚くことばかりで。あの、えーと・・・」

 アリューシアが更に言葉を促すように、私に向かって首を傾げる。
 もしかしたら、手応えはそれほど悪くないのかもしれない。アリューシアの表情の変遷を見ながら思った。それが私に余裕と自信を与えてくれた。

 「もうカルファルに決めたのかもしれないけど。僕にもチャンスを与えて欲しいんだ」

 更に私は言う。本当に恥知らずな言葉だ。しかしそんな言葉を言いながら、私は不思議なくらいに高揚していた。
 何か直接、アリューシアの心を触っているという手触り。それはとても柔らかくて、傷つきやすくて、人の身体に触れるよりも私を興奮させる。

 「き、決めてないよ、まだ、何も」

 アリューシアは私の瞳をしっかりと見つめながら、返事を返してきた。

 「で、でも」

 「カルファルか、僕か・・・。時間はもうほとんどない」

 「でもプラーヌス様が!」

 「プラーヌスはしかし。彼にこだわっても無駄だ」

 私は苛立ち気に吐き捨てる。もちろん、それも演技だ。
 しかし、私にこのような演技が出来るなんて。きっとこれはカルファルからの影響。私は彼に出会って、悪いことを覚えてしまったのかもしれない。

 「うん、それはわかっているけど」

 一方、アリューシアは本当に無垢で、透明な表情で見つめてくる。これまで一度も、私に見せたことのない表情。私たちの関係が変わったのは明らかだった。
 私はそのアリューシアを見つめ返しながら、ちょっとした戦慄のようなものを感じる。人の心を動かすというのは、何と簡単なことなのだろうかと。
 好きだ。君に興味があるんだ。その言葉にこれほどの効果があるなんて! 

 「呆れたわ!」

 そのとき、私たちの背後から、そんな声が聞こえてきた。
 それは私とアリューシアだけの世界を壊す、外からの声。私は本当に心臓が潰れるのかと思うくらいに驚いてしまった。

 どうやらアビュの声である。その事実にはすぐに気づいた。しかし彼女の声が聞こえてくるわけがない。これは幻聴に違いない。私は恐る恐る振り返ってみる。
 もちろん幻聴など聞こえてくるわけなどなくて、残念ながらアビュが立っている。

 「な、何なんだよ、アビュ・・・」

 「扉が開いてましたからね、ええ、はい」

 「そ、そうか」

 「えーと、何て言いますか、今回は本当に幻滅しました。ボス」

 アビュはまるで感情がこもっていない平坦な口調で言ってくる。
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