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シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子
第八章 1)アリューシアの章
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アリューシアのその姿を目にした人がいたとしたら、彼女が空を見上げていると思うだろうが、実際、空なんて見てはおらず、彼女が見ているのは思い出か、自分の中の悲しみ。
アリューシアはまだ、全てを理解したわけではなかった。自分の世界に何が起きたのか把握したわけではない。
しかしバラバラに散らばっていた感情が一つの像を結び、何かの形として立ち上がっているような感触を覚えている。その果てに出来上がるのは、おそらく絶望。
「嘘でしょ?」
アリューシアは声に出す。しかし彼女の声を聞いている者は誰もいない。彼女は荒野の中に独りで立っている。
アリューシアは塔を飛び出して、ただ悲しみに導かれて走り続けた。
疲れて立ち止まって、そして空を見上げて、「嘘でしょ?」と発した。
誰も追い掛けてくるものはいないようだ。「何よ、ちょっと」と思う一方で、一人になりたくて、サンチーヌやラダ、そしてシャグランを上手く捲いたのは彼女自身でもある。
広大な塔。その敷地から出て、息が切れてもまだ走り続けて、塔から遠く離れたのだから、彼女を見つけられる者なんておそらくいない。
彼女は誰に邪魔されることなく、悲しみに浸れる空間を確保出来たわけだ。
「えーと、ちょっと待ってね。まず、また戦争が起きました。あいつらが、うちのお城を攻めてきました」
アリューシアは独りで喋り出す。
「多分、きっとアラン兄さんがすぐに兵を率いて戦ったはずよね?」
「でも負けたんだな、ああ、うん」
「で?」
「それで、兄さんは殺されたの?」
「まだ、それはわからないんだよね。上手く逃げて、どこかで生きているかもしれない、うんうん」
「でも、兵士たちはほとんど殺されて、城を守る戦力はなくなって」
「パパとママも、姉たちも、みんな殺されたらしい・・・」
この塔に落ち延びてきた、あの兵士のもたらした情報だ。しかし彼女もその言葉をすぐに信じたわけではない。まだ真偽が定まっていない情報、もしくは最悪の場合、その兵士が嘘を言っている可能性だってある。
サンチーヌたちもその兵士を詰問するように問い質し、出来るだけ彼から情報を引き出そうとしていた。
しかしその兵士は嘘をつくような人物ではない。ギャラック家の中でもそれなりに地位のある人。
それにキャバル国でまた政変が起きているかもしれないと、シャグランも言っていたではないか。数日前、街を訪れたときに、彼が小耳に挟んだという噂。
それより何より、その情報を信じざるを得なくなったのは、ボーアホーブの居城にいるお抱えの魔法使いクリストフに連絡しても、彼から応答がなかったという事実。
魔法使いクリストフとならば、どれだけ遠く離れていても、魔法を使って話しをすることが出来る。水晶玉越しに彼の顔を見ることが出来るのだ。
魔族との契約を打ち切っているアリューシアは、魔法を使うことが出来ない状態だから、シュショテを呼びつけて彼に連絡を取らせた。
しかしクリストフは連絡を返さなかった。考えられることは二つ。発信元がアリューシアの魔族ではないから、応答しなかったという可能性。
とはいえ、クリストフは彼女が魔法の修行のためにこの塔を訪れたことを知っている。アリューシアがガルディアン契約の魔族を変えた可能性くらい思い至るはずだ。
だったらもう一つの可能性。クリストフが何か物理的事情で、返答を返せないという場合。クリストフの身に何かあったかもしれないということ。
それはすなわち、ボーアホーブ家に何か起きたかもしれないということで、あの兵士の情報を裏打ちする事実。
「えーと、もしかしたら私には帰るところがなくなったってこと?」
アリューシアはとても軽い口調でつぶやく。
そんなことをつぶやきながら、彼女は手の中にある水晶玉を見つめる。
この水晶玉を通してクリストフと連絡しようとしたけれど、まだ魔族と契約を交わすことが出来ていないから、今はただのクリスタルの塊に過ぎない。
「いえ、それどころか私は全てを失った?」
アリューシアはまだ、全てを理解したわけではなかった。自分の世界に何が起きたのか把握したわけではない。
しかしバラバラに散らばっていた感情が一つの像を結び、何かの形として立ち上がっているような感触を覚えている。その果てに出来上がるのは、おそらく絶望。
「嘘でしょ?」
アリューシアは声に出す。しかし彼女の声を聞いている者は誰もいない。彼女は荒野の中に独りで立っている。
アリューシアは塔を飛び出して、ただ悲しみに導かれて走り続けた。
疲れて立ち止まって、そして空を見上げて、「嘘でしょ?」と発した。
誰も追い掛けてくるものはいないようだ。「何よ、ちょっと」と思う一方で、一人になりたくて、サンチーヌやラダ、そしてシャグランを上手く捲いたのは彼女自身でもある。
広大な塔。その敷地から出て、息が切れてもまだ走り続けて、塔から遠く離れたのだから、彼女を見つけられる者なんておそらくいない。
彼女は誰に邪魔されることなく、悲しみに浸れる空間を確保出来たわけだ。
「えーと、ちょっと待ってね。まず、また戦争が起きました。あいつらが、うちのお城を攻めてきました」
アリューシアは独りで喋り出す。
「多分、きっとアラン兄さんがすぐに兵を率いて戦ったはずよね?」
「でも負けたんだな、ああ、うん」
「で?」
「それで、兄さんは殺されたの?」
「まだ、それはわからないんだよね。上手く逃げて、どこかで生きているかもしれない、うんうん」
「でも、兵士たちはほとんど殺されて、城を守る戦力はなくなって」
「パパとママも、姉たちも、みんな殺されたらしい・・・」
この塔に落ち延びてきた、あの兵士のもたらした情報だ。しかし彼女もその言葉をすぐに信じたわけではない。まだ真偽が定まっていない情報、もしくは最悪の場合、その兵士が嘘を言っている可能性だってある。
サンチーヌたちもその兵士を詰問するように問い質し、出来るだけ彼から情報を引き出そうとしていた。
しかしその兵士は嘘をつくような人物ではない。ギャラック家の中でもそれなりに地位のある人。
それにキャバル国でまた政変が起きているかもしれないと、シャグランも言っていたではないか。数日前、街を訪れたときに、彼が小耳に挟んだという噂。
それより何より、その情報を信じざるを得なくなったのは、ボーアホーブの居城にいるお抱えの魔法使いクリストフに連絡しても、彼から応答がなかったという事実。
魔法使いクリストフとならば、どれだけ遠く離れていても、魔法を使って話しをすることが出来る。水晶玉越しに彼の顔を見ることが出来るのだ。
魔族との契約を打ち切っているアリューシアは、魔法を使うことが出来ない状態だから、シュショテを呼びつけて彼に連絡を取らせた。
しかしクリストフは連絡を返さなかった。考えられることは二つ。発信元がアリューシアの魔族ではないから、応答しなかったという可能性。
とはいえ、クリストフは彼女が魔法の修行のためにこの塔を訪れたことを知っている。アリューシアがガルディアン契約の魔族を変えた可能性くらい思い至るはずだ。
だったらもう一つの可能性。クリストフが何か物理的事情で、返答を返せないという場合。クリストフの身に何かあったかもしれないということ。
それはすなわち、ボーアホーブ家に何か起きたかもしれないということで、あの兵士の情報を裏打ちする事実。
「えーと、もしかしたら私には帰るところがなくなったってこと?」
アリューシアはとても軽い口調でつぶやく。
そんなことをつぶやきながら、彼女は手の中にある水晶玉を見つめる。
この水晶玉を通してクリストフと連絡しようとしたけれど、まだ魔族と契約を交わすことが出来ていないから、今はただのクリスタルの塊に過ぎない。
「いえ、それどころか私は全てを失った?」
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