男装の薬師は枯れぬ花のつぼみを宿す

天岸 あおい

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二章 暗紅の瞳の男

再会

 悶絶する彼らを見下ろしながら、みなもは小さく息をつく。

「やっぱり追手か……悪いけど諦めてくれるかな? せっかく助けた人をまた危ない目に合わせるのは面白くないし、俺も死にたくないから」

 記憶を曖昧にする薬を振りかけておこうと、みなもが腰のポーチを弄っていたその時、

「美人さんのワガママは聞いてやりたいところだが、そういうワケにもいかねぇな!」

 聞き覚えのある声がすると同時に、倒れていた男たちの中から一人だけ飛び起き、みなもへ迫る。

 馬鹿な、なぜ動ける?!

 咄嗟に短剣を抜いて応じれば、ガキィッ、と刃がかち合う。
 足に力を込め、押し負かされないようにと堪えるが――みなもの力をすべて短剣に乗せても男の力には敵わず、弾き返すことは敵わない。

 押し切ろうとすればできるはずなのに、男は力を適度に加えたまま膠着を続ける。
 首を伸ばし、顔を隠した頭部をみなもへ寄せた。

 わずかに男の口が見える。
 どこか楽しんでいるような、軽い笑み。

 声と合わさり、みなもの脳裏へ昼間の記憶を呼び起こさせた。

「……昼間はどうも」

 苦笑しながら言ってみれば、男の口端がますます引き上がった。

 軽くピュウと口笛を吹き、男は顔から布をはずす。
 そこには見たくもなかった北方特有の白い顔と濁った暗紅の瞳があった。

「覚えていてくれたか、嬉しいなあ」

「俺は嫌なことをされたら、ずっと根に持つ性分だからね。昼間の仕返しができるから会えて嬉しいよ」

 青年は昼間と変わらず顔をにやけさせ、細まった瞳にみなもを映す。

「ふぅん……じゃあずっとイジめていたら、寝ても覚めてもオレのことが頭から離れねぇってことか。いいなあソレ」

「は? その軽薄そうな顔そのままの考えだな。本当に悪趣味……」

「そう言いながら誘ってるんじゃねーの? あんな堅物よりオレに興味を持ってくれたとか?」

「まさか。二度と顔も見たくなかった……よ!」

 力で劣っているからと余裕を見せている青年へ、みなもはわざと力を抜き、身を引く。

 がくん、と前に倒れた青年の隙を見逃さず、みなもは短剣の持ち手を両手で掴み、柄を勢いよく叩きつけようとした。

 顔を上げないまま、青年は大きくしゃがみ込む。
 みなもの一撃が外れ、すぐ攻撃の体勢を整えようとしたが――ダンッ。青年に手首を掴まれ、みなもは背中ごと壁に押し付けられてしまった。

「離せ……っ!」

「殺気隠してないヤツを離せるかよ。せっかくだ、もっとお互いのことを知ろうじゃねーか」
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