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二章 エリクの異変
ロジーと共有~パパ、きおくがあってもヘンだしねー~
◇ ◇ ◇
《おはよー! ……って、あれ? ママ、だいじょうぶ?》
朝になり、枕元で体を起こしたロジーが、ベッドに腰掛けていたガイを覗き込んでくる。
ふぅ、と気だるげな息をついてから、ガイはロジーに笑いかけた。
「ああ、おはようロジー。あまり眠れていないが、大丈夫だ」
昨日、風呂から出た後、すぐにエリクはベッドに横になった。
あれだけ昂っていたものをそのままにしたこともあり、なかなか寝付けないようだったが、一刻ほどで寝息を立て始めていた。
その様子も含めて、ガイはエリクに背を向けて寝たフリをして、様子を伺っていた。
何が起きるか分からない。ロジーもいる以上、気を抜いてはいけないとガイはエリクが寝た後に見張り続けていた。
何度か意識が細切れになり、浅い睡眠は取れている。それでもほぼ徹夜の状態で、ガイは朝から体の怠さを感じていた。
《ホントにだいじょうぶ? ボクがねてるときに、なにかあったの?》
当然の疑問をぶつけられて、ガイは言葉を詰まらせる。思わずもうひとつのベッドで寝ているエリクを見やってしまう。
昨夜のエリクは様子がおかしかった。
記憶がなくても奇行は相変わらずで、雄の証を大きくしていたことも、エリクを知っていれば別段驚くことではない――アレに慣れている自分もどうかと思うが、問題はそれではない。
背中を向けた時に感じた、嫌な気配。
しばらく辺りに敵の気配はないかと探ってみたが、あの時近くにいたのはエリクだけだった。
もしかすると気のせいかもしれない。だが、今のエリクは魔王アギュリズに魂を半分奪われた状態だ。何が起きてもおかしくはない。
警戒するに越したことはないだろうと判断しながら、おもむろにガイはロジーに小声で伝える。
「ロジー、少し外で話をしようか……今、近くに魔の気配はあるか?」
《んー……べつにないよー。だからおそといけるよ。フフ、ママひとりじめー》
軽やかにトテテテとロジーがガイの肩に乗ってくる。
この無邪気さに内心癒やしを覚えながら、ガイは足を忍ばせて静かに部屋を出た。
宿の主に近くを散歩したいと告げ、ガイは近くの森に入っていく。
ちょうど木々で宿が隠れる所まで歩くと、低木の枝にロジーを乗せ、顔を合わせた。
「実はエリクについてなんだが、何か嫌な気配を感じたんだ。少し様子がおかしい気もするんだが……」
《パパ、きおくがあってもヘンだしねー。きおくがなくてもヘンって、パパらしいね》
ロジーの言葉にガイは何度も頷いてしまう。
自分だけでは悶々と心の中で悩むしかなかったが、こうして思い出と感覚を共有できる存在がいて本当に良かったと思わずにはいられなかった。
ただの奇行だけならば笑い話にできるが、昨夜の気配はそんなものではない。
ガイは表情を引き締め、声を低くしてロジーに尋ねる。
「念の為に聞くが、ロジーはエリクから何か感じるか?」
《んーとねー……たましいがはんぶんになっちゃったから、パパのせーきがよわってるのはわかるよー。でも、それだけー》
「そうか……もしや魂を奪われただけでなく、魔の眷属になったりするのかと思ったんだが、その気配はなさそうなのか」
《パパはそまらないよー。だってボクがいるんだもの! あっ、でも……》
胸を張った後、ロジーが小さな手で気まずげに自分の頬を掻く。
《ボク、よるはおきていられないから……ねてると、まもりがうすくなっちゃうかも……》
「なるほど、つまり昼間は心配しなくていいということだな。常に警戒しなくていいというのは、本当にありがたい。ロジーには感謝しきりだな」
ガイが素直に思ったことを口にすると、ロジーは大きな目をぱちくりとさせる。
そしてピョイン、と枝からガイの懐へと跳び込む。
《ママー、だいすきー!》
「まったく甘えん坊だな、ロジーは」
大きな腕を寄せてロジーを胸で受け止めると、ガイは口元を綻ばせた。
《おはよー! ……って、あれ? ママ、だいじょうぶ?》
朝になり、枕元で体を起こしたロジーが、ベッドに腰掛けていたガイを覗き込んでくる。
ふぅ、と気だるげな息をついてから、ガイはロジーに笑いかけた。
「ああ、おはようロジー。あまり眠れていないが、大丈夫だ」
昨日、風呂から出た後、すぐにエリクはベッドに横になった。
あれだけ昂っていたものをそのままにしたこともあり、なかなか寝付けないようだったが、一刻ほどで寝息を立て始めていた。
その様子も含めて、ガイはエリクに背を向けて寝たフリをして、様子を伺っていた。
何が起きるか分からない。ロジーもいる以上、気を抜いてはいけないとガイはエリクが寝た後に見張り続けていた。
何度か意識が細切れになり、浅い睡眠は取れている。それでもほぼ徹夜の状態で、ガイは朝から体の怠さを感じていた。
《ホントにだいじょうぶ? ボクがねてるときに、なにかあったの?》
当然の疑問をぶつけられて、ガイは言葉を詰まらせる。思わずもうひとつのベッドで寝ているエリクを見やってしまう。
昨夜のエリクは様子がおかしかった。
記憶がなくても奇行は相変わらずで、雄の証を大きくしていたことも、エリクを知っていれば別段驚くことではない――アレに慣れている自分もどうかと思うが、問題はそれではない。
背中を向けた時に感じた、嫌な気配。
しばらく辺りに敵の気配はないかと探ってみたが、あの時近くにいたのはエリクだけだった。
もしかすると気のせいかもしれない。だが、今のエリクは魔王アギュリズに魂を半分奪われた状態だ。何が起きてもおかしくはない。
警戒するに越したことはないだろうと判断しながら、おもむろにガイはロジーに小声で伝える。
「ロジー、少し外で話をしようか……今、近くに魔の気配はあるか?」
《んー……べつにないよー。だからおそといけるよ。フフ、ママひとりじめー》
軽やかにトテテテとロジーがガイの肩に乗ってくる。
この無邪気さに内心癒やしを覚えながら、ガイは足を忍ばせて静かに部屋を出た。
宿の主に近くを散歩したいと告げ、ガイは近くの森に入っていく。
ちょうど木々で宿が隠れる所まで歩くと、低木の枝にロジーを乗せ、顔を合わせた。
「実はエリクについてなんだが、何か嫌な気配を感じたんだ。少し様子がおかしい気もするんだが……」
《パパ、きおくがあってもヘンだしねー。きおくがなくてもヘンって、パパらしいね》
ロジーの言葉にガイは何度も頷いてしまう。
自分だけでは悶々と心の中で悩むしかなかったが、こうして思い出と感覚を共有できる存在がいて本当に良かったと思わずにはいられなかった。
ただの奇行だけならば笑い話にできるが、昨夜の気配はそんなものではない。
ガイは表情を引き締め、声を低くしてロジーに尋ねる。
「念の為に聞くが、ロジーはエリクから何か感じるか?」
《んーとねー……たましいがはんぶんになっちゃったから、パパのせーきがよわってるのはわかるよー。でも、それだけー》
「そうか……もしや魂を奪われただけでなく、魔の眷属になったりするのかと思ったんだが、その気配はなさそうなのか」
《パパはそまらないよー。だってボクがいるんだもの! あっ、でも……》
胸を張った後、ロジーが小さな手で気まずげに自分の頬を掻く。
《ボク、よるはおきていられないから……ねてると、まもりがうすくなっちゃうかも……》
「なるほど、つまり昼間は心配しなくていいということだな。常に警戒しなくていいというのは、本当にありがたい。ロジーには感謝しきりだな」
ガイが素直に思ったことを口にすると、ロジーは大きな目をぱちくりとさせる。
そしてピョイン、と枝からガイの懐へと跳び込む。
《ママー、だいすきー!》
「まったく甘えん坊だな、ロジーは」
大きな腕を寄せてロジーを胸で受け止めると、ガイは口元を綻ばせた。
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