嫌われ将軍(おっさん)ですがなぜか年下の美形騎士が離してくれない

天岸 あおい

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三章 ありがたい?再会

相談したかったこと

   ◇ ◇ ◇

 部屋を取って荷物を置いた後、ガイたちは宿のカフェに向かった。

 通常の席に加えてテラス席もあるカフェは、好天に恵まれたこともあってか仕切りがない。柔らかな海風が店内にそよぎ、長居したくなる心地よさを与えてくれている。

 まばらにティータイムを楽しむ仲睦まじい男女や、談笑中の地元民らしき女性たちがいる中で、体が大きく屈強な肉付きのゲインはよく目立った。

「ガイ、こっちだ」

 大きな日よけの傘のあるテラス席に、ゲインは座っていた。すぐにガイに気づき、軽く手を上げて呼んでくる。
 待ち合わせた知己に対して自然な行動だが、ガイの背後でエリクの気配が刺々しくなる。

 離れて座っているラヒュからも同様の空気が漂い、俺たちは約束したのでは? と一瞬ガイは戸惑ってしまう。

 片や記憶喪失ゆえの警戒で、片や嫉妬。これも仕方ないことかと密かに息をついてから、ガイはエリクに振り向いた。

「すまないが行ってくる。ただ話すだけだ、心配しないでくれ」

「……はい。それでも相手は元敵将とのことですから、どうかくれぐれもお気をつけください、ガイ」

 なぜか自分と顔を合わすと、エリクは苛立ちの形相も気配も消える。代わりに捨てられた子犬のような表情になり、ガイの胸が締め付けられる。

 安心させたくて、つい手を伸ばしてエリクの頭を撫でそうになる。だが、今は元上官と部下。これは行き過ぎだと拳を握り込んで堪え、ガイはゲインの席へと足を運んだ。

 丸テーブルを挟んで向かい側にガイが座ると、ゲインが快活な笑みを浮かべる。

「よもや異国の地で二度もガイに再会できるとはな。愛馬の導きらしいが、その馬は戦場で何度も俺との激闘を味わっているはずなのだが……なんとも豪胆な馬だ」

「おそらく前にゲインが俺たちの愛馬を保護して、水と食料を与えたことを覚えているのだろう。その後に俺たちを探しに行き、連れて来てくれた。どうやら一連のことを理解しているらしい。賢いやつだ」

 加えて言葉に出していなかった主の悩みと望みを汲み取り、ゲインに気づいて導いてくれたことを思うと、聡明なのは間違いない。

 これからも愛馬を大事にしていこうと改めて誓った後、ガイはテーブルに腕を置き、軽く身を乗り出した。

「さっそく本題に入るが……ゲインに聞きたいことがある。これは他の誰でもない、ゲインにしか聞けないことだと思う」

「う、うむ。ガイにここまで期待されるとは光栄だな。その期待に応えなければ男ではないな。うむ」

 ガイの話にゲインがソワソワし始める。目も泳ぎ、わずかに頬も赤みがさし、手で自らを扇ぎ出す。

 離れた所でこちらの様子を伺っているラヒュとエリクが気になり、落ち着かないのだろうか? と思いつつ、ガイは話を切り出した。

「ゲインは、その……前に君が言っていた、独占欲が強すぎる嫉妬深い体力無尽蔵の若い恋人と付き合い続けていくために、何かしていることはあるのか?」

 前に隣国サグニア王国で再会した際のことだ。警戒したエリクがわざとガイと恋仲であると匂わせた時、ゲインが漏らした話をガイは覚えていた。

 あの時は年下の恋人と付き合うのは大変なのだとしか思わなかった。しかし今は恋人がラヒュだとわかり、自分もエリクと関係を持つようになり、ゲインの言葉を痛感していた。

 何をどれだけやっても満足しない――特に今のエリクは夜になると飢え続ける獣のごとくガイを求めてくる。

 このままではエリクの魂を取り戻す前に、自分の身が保たない。
 目的を果たさぬまま共倒れにならぬためにも、ゲインから若い恋人の猛攻に耐えられる術を聞きたかった。

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