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三章 ありがたい?再会
年下の恋人を持つ先人の言葉
一瞬、ゲインの体が硬直する。それからすぐに瞳が泳ぎ出したかと思えば、頭を抱えたり、低く唸ったりして落ち着きがなくなる。
明らかにゲインが動揺しているのが伝わってくる。
もし自分が同じようなことを聞かれたなら、さらに激しく動揺を見せてしまうのは想像に難くなく、ガイは心の中ですまないと謝るしかなかった。
そうこうしている内に、給仕の女性が氷入りの冷えた紅茶をガイたちのテーブルに置いていく。どうやら先にゲインが注文してくれていたらしく、給仕に会釈した後にすぐ喉を潤し、それから口を開いた。
「確かに、それはなかなか人には聞けぬ内容だな。同じ条件の者など、そう多くはないだろうし……あのエリクという者は、ラヒュよりも若いのだろ?」
「二十二歳だ。元は伯爵令息だが、騎士団に入った直後から連戦続きでも衰えを見せないほどの体力だった」
「そうか……その上であの執着心に行動力で、同担拒否の強者か。ラヒュと負けず劣らずなのだろうな、色々と……」
話しながらゲインが遠い目をしていく。つられてガイもエリクとの夜の日々を思い出し、同じような目になって共感し合っていると、
《パパ、いつもはなぢだしてるけど、それでもげんきなのー。いまはきおくがないけど、それでもママたいへんなのー。だからママがげんきでいられるほうほう、おしえてほしいのー》
ガイの懐にいたロジーに小声で話しかけられ、ゲインが目を見張る。
「そこに何かいるのか、ガイ?」
「あ、ああ。黒竜殿から預かっている子がいる……ロジー、少し静かにしてもらえるか? あまりエリクを待たせて、不安にさせる訳にはいかない」
懐を覗き込み、わずかに見えるロジーと目を合わせながらガイは言い聞かせる。するとロジーがコクコク頷いてくれた。
《わかったー。じゃあ、ママがわすれないように、ボク、しっかりきいてるねー》
……下手なことは言えないし、聞かせられない。
ガイが目配せすると、察したようにゲインが頷いてくれる。
「事情はわかった。随分と親思いの賢い子のようだな……それにしても、ガイがママか……ママ……」
「言いたいことはわかる……俺もまだ慣れていない。だがロジーの育ての親になれたことは誇らしく思う」
「ふむ……確かにママだな」
「何か言ったか?」
「あ、いや、ゴホン……色々大変そうなのはわかった」
咳払いをした後、ゲインが気を取り直したように顔を引き締め、ガイを真っ直ぐに見た。
「俺たちの年齢では応え続けるのは大変だ。ガイのことだから、日々の鍛錬は欠かしていないのだろ? だが体力維持はできても、疲労の蓄積を解消するのは別だ。特に食は重要だ」
「確かに。俺も家にいる時は気をつけるようにしている。だが、旅をしているとそうも言っていられなくてな……」
「そんな時は蜂蜜がいいぞ。どこの市場でも入手できて、日持ちもする。あと胡桃も殻付きで持ち歩くもいいし、店で木の実の焼き菓子なんか購入するといい」
「蜂蜜……っ。滋養強壮に良いとは聞いていたが、やはり効果があるのか?」
「ああ。口にすればすぐに力になってくれる……連戦を重ねている最中の時でも、すぐ接種できるのもありがたい。まともに食事できない時もあるからな」
「連戦か……そうだな。前もって水に蜂蜜を溶かして、枕元に置いておいたほうが良さそうだ」
「良いと思うが、それに頼りすぎないほうがいい。ガイ、肉はしっかり食べられるか? 魚でもいい。年を取ったら胃に堪えると言って食べなくなる者もいるが、しっかり食べろ――」
話を聞きながら、ガイはゲインに心から感心する。
やはり年下の恋人を相手にしてきた先人は違う。具体的な話を聞けるのは本当にありがたかった。
明らかにゲインが動揺しているのが伝わってくる。
もし自分が同じようなことを聞かれたなら、さらに激しく動揺を見せてしまうのは想像に難くなく、ガイは心の中ですまないと謝るしかなかった。
そうこうしている内に、給仕の女性が氷入りの冷えた紅茶をガイたちのテーブルに置いていく。どうやら先にゲインが注文してくれていたらしく、給仕に会釈した後にすぐ喉を潤し、それから口を開いた。
「確かに、それはなかなか人には聞けぬ内容だな。同じ条件の者など、そう多くはないだろうし……あのエリクという者は、ラヒュよりも若いのだろ?」
「二十二歳だ。元は伯爵令息だが、騎士団に入った直後から連戦続きでも衰えを見せないほどの体力だった」
「そうか……その上であの執着心に行動力で、同担拒否の強者か。ラヒュと負けず劣らずなのだろうな、色々と……」
話しながらゲインが遠い目をしていく。つられてガイもエリクとの夜の日々を思い出し、同じような目になって共感し合っていると、
《パパ、いつもはなぢだしてるけど、それでもげんきなのー。いまはきおくがないけど、それでもママたいへんなのー。だからママがげんきでいられるほうほう、おしえてほしいのー》
ガイの懐にいたロジーに小声で話しかけられ、ゲインが目を見張る。
「そこに何かいるのか、ガイ?」
「あ、ああ。黒竜殿から預かっている子がいる……ロジー、少し静かにしてもらえるか? あまりエリクを待たせて、不安にさせる訳にはいかない」
懐を覗き込み、わずかに見えるロジーと目を合わせながらガイは言い聞かせる。するとロジーがコクコク頷いてくれた。
《わかったー。じゃあ、ママがわすれないように、ボク、しっかりきいてるねー》
……下手なことは言えないし、聞かせられない。
ガイが目配せすると、察したようにゲインが頷いてくれる。
「事情はわかった。随分と親思いの賢い子のようだな……それにしても、ガイがママか……ママ……」
「言いたいことはわかる……俺もまだ慣れていない。だがロジーの育ての親になれたことは誇らしく思う」
「ふむ……確かにママだな」
「何か言ったか?」
「あ、いや、ゴホン……色々大変そうなのはわかった」
咳払いをした後、ゲインが気を取り直したように顔を引き締め、ガイを真っ直ぐに見た。
「俺たちの年齢では応え続けるのは大変だ。ガイのことだから、日々の鍛錬は欠かしていないのだろ? だが体力維持はできても、疲労の蓄積を解消するのは別だ。特に食は重要だ」
「確かに。俺も家にいる時は気をつけるようにしている。だが、旅をしているとそうも言っていられなくてな……」
「そんな時は蜂蜜がいいぞ。どこの市場でも入手できて、日持ちもする。あと胡桃も殻付きで持ち歩くもいいし、店で木の実の焼き菓子なんか購入するといい」
「蜂蜜……っ。滋養強壮に良いとは聞いていたが、やはり効果があるのか?」
「ああ。口にすればすぐに力になってくれる……連戦を重ねている最中の時でも、すぐ接種できるのもありがたい。まともに食事できない時もあるからな」
「連戦か……そうだな。前もって水に蜂蜜を溶かして、枕元に置いておいたほうが良さそうだ」
「良いと思うが、それに頼りすぎないほうがいい。ガイ、肉はしっかり食べられるか? 魚でもいい。年を取ったら胃に堪えると言って食べなくなる者もいるが、しっかり食べろ――」
話を聞きながら、ガイはゲインに心から感心する。
やはり年下の恋人を相手にしてきた先人は違う。具体的な話を聞けるのは本当にありがたかった。
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