薔薇の溺愛~黒き吸血鬼は愛に沈む~

天岸 あおい

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三章 バラの香に囚われて

都合の良い誘い

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 本当はクウェルク様がビクトルを誘惑し、意のままに操ろうと仕込んでいる最中。傍から見れば恋愛のように見えるならば、そう思わせておいたほうが都合はいい。

 あくまで当人同士のこと。そう線を引いただけに過ぎないのだが、ミカルの目が我が事のように嬉々と輝く。

「貴方の口からそのような言葉を聞けるとは……恋に落ちるのに、人も魔の者も変わらないということですよね?」

「う……まあ、そういうことになるな」

「彼らは私たちと同じくらいの時を過ごし、体と心を許し合う仲になりました。それを認めるということは、私とそうなる可能性も否定していないということですね」

 ……それとこれとは話は別だ。
 思わず俺は頭を抱えて唸ってしまう。

「当人同士のことだと言っただろう。ククたちがそうなったからといって、俺たちもそうなるとは限らない」

「そうですね、分かっています。しかし、その考えを持っていなければ、恋仲になるという選択肢が貴方の中で生まれませんし、選択肢になければその道を選ぶことがない……可能性があるかないかは大きな差ですよ」

 ミカルが満面の笑みを浮かべてから、ふと視線を横にずらして一考する。

 そして軽く身を前に乗り出し、顔を真っすぐに向けて俺に告げた。やけに真剣な眼差しを向け。

「貴方を得るためには時間がない……今の私は、どんな手段を使ってでもカナイの心に近づいていく時間と、私を知る期間が欲しい。そのためなら協会を裏切ることも厭いません」

「なんだと……?」

「私がどれだけ貴方を本気で求めているか、もう気づいているはず。カナイ自身がどれだけ私にとって価値があるか……心まで許さずとも、その身を一時でも差し出すだけで、私は貴方に命を捧げると約束しましょう」

 ミカルを味方にできる……俺の身ひとつで。
 口だけで約束して、その後にあっさりと反故するような男ではない。今までの生活でそれはよく分かった。

 協会と折り合いが悪く、過去の恨みも秘めている。むしろよく協会を内側から変えてやろうと考えたものだと未だに思ってしまう。

 コイツのことを知った今なら、十分に成立することだと確信できる。
 俺たち魔の者と手を組み、協会から逃れ、ともに生きていくことを。

 実質、他の魔の者はミカルを避けるだろうから、俺の近くに居続けることになるだろう。そして俺を口説き、時間をかけて距離を詰め――勘弁してくれ。

 内心泣きたくなったが、理性は計算高くミカルを受け入れる。

 ビクトルだけでなく、ミカルも味方にすることができれば、間違いなく逃げることができるだろう。しかも望みは俺の体。犠牲にするのはそれだけ。むしろ割に合い過ぎる。

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