薔薇の溺愛~黒き吸血鬼は愛に沈む~

天岸 あおい

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四章 そして彼は愛を知る

隠れ家

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 ミカルは街道が伸びるままに町の中へは入らず、迂回して裏側の寂れた所から足を踏み入れた。

 そうして密集して集まった家々の中から、人気のない古びた家へ私を案内する。
 中は完全に明かりが入らぬよう窓に板が張られ、完全な闇の中、埃っぽいにおいに出迎えられる。魔の者である俺の目は、暗くても中の様子は把握できる。

 人の目では何も分からないはずだが、ミカルはまるで見えているかのように部屋の中へと入っていき、奥にある暖炉へと向かっていく。

 しゃがみ込んで何か手を動かしているミカルに首を傾げていると、しばらくしてほのかに青白い光が暖炉から生まれ、近くをささやかに照らした。

「どうぞこちらへ。体が冷えているでしょう……こう見えて温もりもありますから」

「いったい何をした? 火とは違うものらしいが……」

「結界石を独自に調合して作ったものです。魔の者を封じる以外の使い道はないかと、一時期研究していたのですよ。色々と使えて便利ですよ」

 手招きされるままに俺も近づいてみれば、確かに温もりが伝わってくる。
 不思議なものだと思いながら、俺はミカルの隣へ立つ。

「結界石が材料ならば、俺がこれを浴び続ける内は弱ってしまうんじゃないのか?」

「大丈夫ですよ。魔の者を封じるためには、結界石に術をかける必要がありますから。それをしなければ、カナイを害するものにはなりません」

 薄く微笑みながら答えると、カナイはそっと俺の濡れぼそった前髪に触れてくる。

「今すぐ拭く物を用意しますから、濡れたものをすべて脱いで下さい。これぐらいで死ぬことはないでしょうが、気持ちのいいものではないと思いますし」

 一瞬、どきりと胸が跳ねる。
 こんなずぶ濡れの状態だ。そう判断して脱ぐように言っているのは、別におかしなことではない。

 しかし肌をさらせばどんな目で見られるかを知っている体が、カッと熱くなって簡単に疼きを覚える。

 こんな時に体がミカルを欲しがってしまうなんて……どう考えても飲まされた薬のせいだ。

 羞恥を覚えながら俺は「分かった」と返事をし、濡れて肌に貼りつく服を脱いでいく。
 なかなかに俺を離してくれなくて、袖から腕を引き抜くだけでも一苦労だ。

 どうにか俺を重くしていたものをすべて脱ぎ外した時。

「……カナイ……」

 背後からミカルの手が回され、俺は深く抱き込まれていた。
 ぴたりと密着した背中から、ミカルの温もりと鼓動が心地よく伝わってきた。
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