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序章 プロローグ
2.死んじゃったみたいです
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「確か胸刺されたはずだけど・・・・」
言葉を発した中年男は周囲を見渡すが、そこには真っ白の空間だった。見える範囲には何もなく、誰もいない。刺された筈の胸には傷一つない。痛みも出血の痕もなかった。
「あの世ってやつかな。ほんとにあるなんてね。橋本さんにも会えるかもなぁ」
彼の名前は蔵田始。彼の生前の職業は看護師であり、病院の病棟で勤務していた。1か月前に入院していた橋本育夫さん89歳を看取った。彼が生前良く言っていたのがあの世の話であった。妻には先立たれており、あの世で会って一緒に暮らしたいといつも言っていたのだ。
暫くそんなことを考えながら立っていたが特に状況は変化することもなく暇になったので、なぜこうなっているのか整理することにした。
始がこうなる直前、日勤を終え帰宅するため歩いていた夜道で突然現れた男に胸を刺されたのだ。
「俺の女を返せーー」
と叫び始を刺したのだ。始は今現在付き合っている人はいなかった。人違いなのかと思うと少し凹んだが、2か月前に同じ職場の人に夜勤の休憩時間に彼氏と別れたらストーカーのようになって困っていると相談されたことがあった。その時自分と付き合っていることにすればいいんじゃないかという話になったことを思い出した。
「あぁ、あの子のストーカーに刺されたのか」
と思わず呟いていた。
「まぁもう済んでしまったことは仕方ないか。じゃぁ、ここは生死の境ってところかな。昔話でじいちゃんがよく話していた花畑も川もないけど」
意外に生に執着がなかった。上下左右どこを向いても真っ白の空間。自分がきちんと立てているのかも分からない。もし今風景が出てくれば地面に頭が刺さっていても驚かないであろう変な自信が始にはあった。
「それにしても暇だなぁ」
始は一人暮らしが長いせいかつい自分一人であると思っていることを口走ってしまうという癖を身に着けていた。
その瞬間、真っ白な空間に掘り炬燵とその上に蜜柑とお手拭き、お茶が湯気を立てて出現した。
『すみませんが、もう少し時間がかかりますので、お待ちいただけますか?』
と声が頭に響いた。空気が震えて聞こえる声というよりダイレクトに脳が言葉を変換したかのような少しくぐもった声であった。
始は仕方ないと思いつつ掘り炬燵に足を入れお茶を啜った。するとテーブルの上に5冊の本が出現した。
「・・・・かなり時間かかるってことかな」
と呟き、声の主を待つ時間をつぶすため本を手に取った。
1冊目のタイトルは『ラス・シャムラの歴史』。2冊目は『初級魔法講座』3冊目『特殊魔法講座』、4冊目『世界の国々の情勢』、5冊目『ハンドブック』。
始は本好きであり、普段おくびにも出さないが心の中では割と中二病を永く患っていた。そのため初級魔法講座の本を手に取る。
「魔法って心躍るな・・・」
表紙を開けるとタイトルが『ラス・シャムラの歴史』に変わっていた。
「あれ?俺初級魔法の本を取ったはずだよな・・・・」
と思いつつ残りの4冊の山を見ると一番上に『初級魔法講座』とタイトルがあった。間違えたのかと考え、一番上の本を取り、表紙をめくるとやはりそこには『ラス・シャムラの歴史』とあった。数回繰り返しても同様であった。
「・・・・んー。順番に読めってことかな。ま、どうせ全部読みたかったし、いっか。」
と納得した。
言葉を発した中年男は周囲を見渡すが、そこには真っ白の空間だった。見える範囲には何もなく、誰もいない。刺された筈の胸には傷一つない。痛みも出血の痕もなかった。
「あの世ってやつかな。ほんとにあるなんてね。橋本さんにも会えるかもなぁ」
彼の名前は蔵田始。彼の生前の職業は看護師であり、病院の病棟で勤務していた。1か月前に入院していた橋本育夫さん89歳を看取った。彼が生前良く言っていたのがあの世の話であった。妻には先立たれており、あの世で会って一緒に暮らしたいといつも言っていたのだ。
暫くそんなことを考えながら立っていたが特に状況は変化することもなく暇になったので、なぜこうなっているのか整理することにした。
始がこうなる直前、日勤を終え帰宅するため歩いていた夜道で突然現れた男に胸を刺されたのだ。
「俺の女を返せーー」
と叫び始を刺したのだ。始は今現在付き合っている人はいなかった。人違いなのかと思うと少し凹んだが、2か月前に同じ職場の人に夜勤の休憩時間に彼氏と別れたらストーカーのようになって困っていると相談されたことがあった。その時自分と付き合っていることにすればいいんじゃないかという話になったことを思い出した。
「あぁ、あの子のストーカーに刺されたのか」
と思わず呟いていた。
「まぁもう済んでしまったことは仕方ないか。じゃぁ、ここは生死の境ってところかな。昔話でじいちゃんがよく話していた花畑も川もないけど」
意外に生に執着がなかった。上下左右どこを向いても真っ白の空間。自分がきちんと立てているのかも分からない。もし今風景が出てくれば地面に頭が刺さっていても驚かないであろう変な自信が始にはあった。
「それにしても暇だなぁ」
始は一人暮らしが長いせいかつい自分一人であると思っていることを口走ってしまうという癖を身に着けていた。
その瞬間、真っ白な空間に掘り炬燵とその上に蜜柑とお手拭き、お茶が湯気を立てて出現した。
『すみませんが、もう少し時間がかかりますので、お待ちいただけますか?』
と声が頭に響いた。空気が震えて聞こえる声というよりダイレクトに脳が言葉を変換したかのような少しくぐもった声であった。
始は仕方ないと思いつつ掘り炬燵に足を入れお茶を啜った。するとテーブルの上に5冊の本が出現した。
「・・・・かなり時間かかるってことかな」
と呟き、声の主を待つ時間をつぶすため本を手に取った。
1冊目のタイトルは『ラス・シャムラの歴史』。2冊目は『初級魔法講座』3冊目『特殊魔法講座』、4冊目『世界の国々の情勢』、5冊目『ハンドブック』。
始は本好きであり、普段おくびにも出さないが心の中では割と中二病を永く患っていた。そのため初級魔法講座の本を手に取る。
「魔法って心躍るな・・・」
表紙を開けるとタイトルが『ラス・シャムラの歴史』に変わっていた。
「あれ?俺初級魔法の本を取ったはずだよな・・・・」
と思いつつ残りの4冊の山を見ると一番上に『初級魔法講座』とタイトルがあった。間違えたのかと考え、一番上の本を取り、表紙をめくるとやはりそこには『ラス・シャムラの歴史』とあった。数回繰り返しても同様であった。
「・・・・んー。順番に読めってことかな。ま、どうせ全部読みたかったし、いっか。」
と納得した。
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