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第3章 航路
60.面接するみたいです
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中央広場には中央に大きな噴水があり、そこを中心に大通りが東西南北へと続いている。東の門を出ればハジメの土地になる予定のマコンの港町。西の門を出れば森が広がりそこを抜けると商業都市シードへ、南の門を出れば湿地帯とサバンナが広がるダス国へ、そこを抜ければ砂漠地帯が広がる。北の門を出れば帝国へ、帝国の港町から元エルフの国へと航路がある。
イヴの街の中央広場には自分で店を持ちたい者がその費用をためるために露店が出せるようになっており、今も若い人々が様々な店を出している。ハジメたちは噴水の前のベンチまでくる途中にあった果実水を出す店で飲み物を買っていた。ついでにお見舞いに行くための手土産的なものも買っておいた。4人が中央広場の噴水の前のベンチに座っていると、ジェフが息を切らせながら走ってきた。ハジメたちの前まで来る。
「すいやせん、お待たせしました」
ハジメは取りあえずまだ手付かずの果実水を渡し飲むように勧める。ジェフは一度は断ったが再度勧めると、感謝を述べて一気に飲み干す。
少ししてジェフが落ち着いてきたのでハジメたちはキルトの下へと向かった。歩いて10分ほどして時代劇などで良く見た長屋風の場所に着く。その一角に家族3人で住んでいるらしい。もともとは一軒家に住んでいたようだが、嵩む治療費の為に安いこの家に越してきたのだという。
ジェフが玄関を開けるとそこにはハジメの知るアパートのような作りになっている。ジェフの後ろについていくとどうやら2LDKの間取りであった。
一番奥の部屋の扉を開けると椅子に座って心配そうにベッドに横になっている子どもを見ているマーサが居た。
「・・・マーサさん・・・」
目の下に隈を作り顔色も青白く見えた。ハジメの声にふと目を上げたマーサが
「・・・ハジメさん・・・。旦那を雇ってくれたと。本当にありがとうございます」
と無理に笑顔を作って言う。その声からも様々な疲労が垣間見える。ハジメがキルトを見ているのに気づいたのかマーサが話し始める。
「・・・2か月ほど前に風邪を引いたように咳をし始めて・・・。それから動くと息が切れて・・・、そして1か月とちょっとで寝込むようになってしまったの・・・。治療師様にも見て頂いたんですけど、原因は分からないって・・・」
「・・・時間かければ治るのでは?」
マーサの話に疑問を感じてジェフを見る。
「えぇ、ポーション飲み続ければいいって言われたんです。でもそれがかなりの高額で・・・」
と言う。ジェフがポーションをハジメの前に1本出してくる。
「これなんです。これ1本1万Sするんですよ。これを毎日飲むと良くなるって言われてるんです」
ハジメは胡散臭さを感じる。
「そうですか・・・お辛いところですね・・・。今は私が看ていますから、お二人で買ってきた屋台ものでも召し上がってください。陽はお茶と食事の準備を。コウとリナリーはお二人を連れてテーブルへ」
と指示を出す。マーサが「でも、側にいてあげないと」と言うので、今マーサとジェフが倒れてしまえば大変なことになることを説明すると、「旦那、すいやせん」とジェフがマーサを促しハジメ以外はその部屋を出て行った。
「さてと・・・」
ハジメはキルトの体に触れる。かなり体温が高く、呼吸も早い。脈もかなりの速さであった。元気な時のキルトを知らないが、肌がやや黄色い。ハジメは閉ざされた瞼を指で空ける。眼球結膜が本来の白とは違いかなり黄色く染まっている。掛布団を剥がし、腹部を触るがやや張っている様子。お腹の左右に手を置き、左側を軽く叩くと波動を感じる。
「これは・・・腹水も溜まっているし、信じたくはないけど、急性肝炎?もしかしたら劇症までいってるかも・・・」
状況を呟く。
「旦那様、鑑定を使ったほうがよろしいかと」
と陽の声がする。彼の方を見ずに鑑定を使う。
<鑑定>
キルト:マーサとジェフの子。イノシシの肉から感染。既に急性肝炎から劇症肝炎へと症状が悪化している。
ハジメの嫌な予感が当たり、キルトは限りなく死に近い状況である。ハジメはアイテムボックスから死蔵していたキュアポーションを取り出す。
「効けばいいんだけど・・・」
とそれを飲ませようとするが飲み込まない。
「旦那様。キルト君の胸を開けてそこにポーションを投げてください」
と言い陽がキルトの服を脱がせる。確かにポーションは体に掛けても皮膚から吸収される。緊急用に備えてポーションは割れやすい瓶で売ることが常識である。飲むよりは効果は薄いがハジメのアイテムボックスにはまだ沢山のポーションがあるのだ。ハジメは瓶の蓋を開けようとするが、陽が
「旦那様、そのまま投げつけてください」
と真顔で言う。ハジメは不思議に思ったが今まで陽の言うように行動して間違っていたことはない。ハジメはポーションをキルトの胸に目掛けて投げる。当たった瞬間容器は飛び散りキュアポーションが彼の胸に広がる。その瞬間暖かい光がキルトを包み込む。数秒後その光は収まり少年がうっすらと目を開ける。
「・・・だ・・・だれ?」
白く戻った眼球結膜から黒い瞳をハジメに向けている。
「僕は薬剤師だよ。体の調子はどう?」
とハジメが聞くと
「・・・うん。少し体が怠いけど・・・。おじさん、ありがとう」
とキルトが自分で体を起こし、陽が脱がせたパジャマに袖を通している。
「そうか、それなら良かった。着替えたらこれとこれを1本ずつ飲んでね」
と頭を撫でる。キルトは恥ずかしそうな顔をしていたが、「うん」と元気よく答えた。ハジメは衰えた体力を戻すために先に体力ポーションを飲ませ、その後キュアポーションを飲ませた。
「お父さんとお母さんは?」
とキルトが言うので、
「台所にいるよ。呼んでおいで」
とハジメが笑顔で言った。そして彼は部屋の扉を開けて両親が待つ台所へと行くのだった。その後号泣する声が2人分聞こえたがハジメは落ち着くまで待つことにする。
「旦那様。旦那様はご自分のスキルをお忘れのようでしたので恐れながら指示させていただきました」
と陽が言う。
「俺のスキル?」
「ええ、旦那様は道具投擲の最高レベルを神から授かったはずです」
ハジメが慌ててスキルを開き鑑定すると
道具投擲Lv.10:道具を投げるためのスキル。投擲した場合その道具の持つ効果を50倍にまで引き上げる。
「俺って投げた方が強い・・・・?でも破裂弾は普通だったけど・・・」
ペン太がハジメの頭の上に上がり
「もう、あわてんぼうさん。破裂弾は武器でしょ。投げるなら道具だよ」
と手でぺんぺんと叩きながらぷんぷんしている。ペン太はハジメの魔力で構築されているため、その姿が見えるのはハジメと精霊たちだけである。
「でも、戦いの神アナト様にお願いして貰ったスキルだから、武器にも使えるって思うじゃん・・・」
「旦那様、あの時アナト様は「銃も剣も刀もあるがそれでいいのか?」と問いました。それで旦那様もそれでいいとおっしゃったのですよ」
凹んでいるハジメに飛び散ったガラスを集め、熱で溶かし再度ポーション瓶にした陽が追い打ちを掛ける。
「まぁ、悩んでも仕方ないか。今度時間見つけて武器か道具かを調べてみるよ。戦う力はあって困らないから・・・」
「おーポジティブシンキングー♪」
とハジメの言葉にペン太が陽気に答える。
「それでリナリーとコウは何してるの?」
とハジメが陽に聞くと
「ご夫婦ともに疲労されていたのと、食べるものがかなり少なくなっていたので、買いに行って貰いました」
と言う。食べ物が少なってたというより、そこを削ってポーションを買っていたのだろう。あの普通のポーションを。確かに食べ物による肝炎だった場合体力ポーションを使うのは分かる。あまり動かずゆっくりしていたら治るものだから日本にも薬はなかった。勿論商売において安く買って高く売るというのは常識である。しかしそれを1万Sで売るとなるともはや詐欺というところだろう。ジェフとマーサが共働きで稼ぐ賃金は月に40万S程度だろう。しかし毎日1万Sもする薬を1か月与えたら45万Sになる。今までの蓄えで今まではなんとかなったのだろうが、かなり厳しい経済状況だったことは想像し難くない。その為に家を売り、賃料の安い長屋での生活になったのだ。
「陽。2人を追いかけてお祝いがてら体力の着くものを買ってくるように言って貰える?」
と言うと台所の方から「はい」と言う声がし扉が開く音がした。そして重いものが置かれる振動がする。陽はハジメに
「戻ってきたようですよ」
と声を掛けるとキルトの居た部屋の扉を開けた。「まぁ、足りなければまた買いに行けばいいか」とハジメは独り言を言い部屋を出るとそこにはキルトなら入って遊べるほど大きな籠に魚やら肉やら野菜や果物が載っていた。
「旦那様、どうやらもう一度買い物に行かなくても大丈夫そうです」
と陽がそっと言った。ハジメは笑顔になる。そこへコウがやってきて
「ご主人様」
と言うと陽が「旦那様ですよ」と訂正する。もうコウは奴隷ではないのだ。
「だ・・・旦那様」
と言い換えモジモジしている。言い慣れていないのだろうが、なんとも新鮮かつ可愛らしい。
「コウ、お金はどうしたの?」
と言うと商人ギルドのカードを見せ
「これで払いました。初めて自分で支払いしました」
と自慢げな顔になっている。リナリーは台所でご飯を準備している。ハジメはコウの口座に今回の費用を振り込もうかと思ったがやめておいた。自分の稼いだお金を自分で判断して使ったのだ。これはハジメが口を出すことではない。
「キルト君。まだ治ったばかりだからお部屋で横になっておいて。ご飯できたら呼ぶから」
とハジメが言うと不満の表情を浮かべたが、コウがお兄さんぽく宥めて部屋に連れて行った。ジェフはハジメに近寄り、
「一体全体どういうことなんです?旦那。あんなに動くのも辛そうだったのに・・・」
と言うとマーサもこっちを見る。
「えっとですね。たまたま似た症状を知っていたので。かなり危険な状態だったので、申し訳なかったんですが、たまたま作っていたキュアポーションを使わせていただきました」
とハジメは正直に言う。実際にはキュアポーション(3)を使ったがそこは内緒にしておく。
「それでこれからしばらく、私が大丈夫ですと言うまでこのポーションを1日1本飲んで欲しいのです」
と取りあえず1週間分の9本渡す。それにマーサが表情を曇らせ
「あの・・・・」
「旦那、いくらですか?今すぐには払えませんが、必ず支払いしますんで」
とジェフがマーサに代わり言いながらハジメの両腕をがっちりと掴む。ハジメは困った様な表情になり、
「いえ。先ほどもお伝えした通り、このポーションは完成しているとは言え、まだ確証がありません。その為に息子さんを利用したのです。あぁ、体には問題がないことはわかっていますのでそこは安心してください。ですので費用は不要です」
と真面目な顔で告げる。
「旦那・・・・」
とジェフが苦々しい顔になる。
「・・・そうですか、そんなに状況が悪かったんですね・・・」
とマーサが言う。陽がその後を続ける。
「そうですね。もって後数日と言ったところでした」
表情を変えずに淡々と夫婦に言う。
「・・・そんなに・・・」
とジェフは茫然とする。マーサは
「あの子の命が長らえたと思えばそんなことは気にしません。このポーションを飲ませればいいんですね」
と薄黄色の液体の入ったフラスコを振る。
「えぇ、そうです」
とハジメは短く答える。そして4人でジェフの家を後にする。大通りまでもうすぐというところまで来ると
「旦那、まってくだせー」
と声がする。後ろを振り返るとジェフが居た。
「・・・本当にありがとうございました。息子が実験に使われたと聞いたときは腹も立ちましたが、旦那は息子の命の恩人です。明日から、よろしくお願いします・・・」
と頭を下げる。ハジメは笑顔になり、
「えぇ、こちらこそよろしくお願いしますね」
と握手をした。
イヴの街の中央広場には自分で店を持ちたい者がその費用をためるために露店が出せるようになっており、今も若い人々が様々な店を出している。ハジメたちは噴水の前のベンチまでくる途中にあった果実水を出す店で飲み物を買っていた。ついでにお見舞いに行くための手土産的なものも買っておいた。4人が中央広場の噴水の前のベンチに座っていると、ジェフが息を切らせながら走ってきた。ハジメたちの前まで来る。
「すいやせん、お待たせしました」
ハジメは取りあえずまだ手付かずの果実水を渡し飲むように勧める。ジェフは一度は断ったが再度勧めると、感謝を述べて一気に飲み干す。
少ししてジェフが落ち着いてきたのでハジメたちはキルトの下へと向かった。歩いて10分ほどして時代劇などで良く見た長屋風の場所に着く。その一角に家族3人で住んでいるらしい。もともとは一軒家に住んでいたようだが、嵩む治療費の為に安いこの家に越してきたのだという。
ジェフが玄関を開けるとそこにはハジメの知るアパートのような作りになっている。ジェフの後ろについていくとどうやら2LDKの間取りであった。
一番奥の部屋の扉を開けると椅子に座って心配そうにベッドに横になっている子どもを見ているマーサが居た。
「・・・マーサさん・・・」
目の下に隈を作り顔色も青白く見えた。ハジメの声にふと目を上げたマーサが
「・・・ハジメさん・・・。旦那を雇ってくれたと。本当にありがとうございます」
と無理に笑顔を作って言う。その声からも様々な疲労が垣間見える。ハジメがキルトを見ているのに気づいたのかマーサが話し始める。
「・・・2か月ほど前に風邪を引いたように咳をし始めて・・・。それから動くと息が切れて・・・、そして1か月とちょっとで寝込むようになってしまったの・・・。治療師様にも見て頂いたんですけど、原因は分からないって・・・」
「・・・時間かければ治るのでは?」
マーサの話に疑問を感じてジェフを見る。
「えぇ、ポーション飲み続ければいいって言われたんです。でもそれがかなりの高額で・・・」
と言う。ジェフがポーションをハジメの前に1本出してくる。
「これなんです。これ1本1万Sするんですよ。これを毎日飲むと良くなるって言われてるんです」
ハジメは胡散臭さを感じる。
「そうですか・・・お辛いところですね・・・。今は私が看ていますから、お二人で買ってきた屋台ものでも召し上がってください。陽はお茶と食事の準備を。コウとリナリーはお二人を連れてテーブルへ」
と指示を出す。マーサが「でも、側にいてあげないと」と言うので、今マーサとジェフが倒れてしまえば大変なことになることを説明すると、「旦那、すいやせん」とジェフがマーサを促しハジメ以外はその部屋を出て行った。
「さてと・・・」
ハジメはキルトの体に触れる。かなり体温が高く、呼吸も早い。脈もかなりの速さであった。元気な時のキルトを知らないが、肌がやや黄色い。ハジメは閉ざされた瞼を指で空ける。眼球結膜が本来の白とは違いかなり黄色く染まっている。掛布団を剥がし、腹部を触るがやや張っている様子。お腹の左右に手を置き、左側を軽く叩くと波動を感じる。
「これは・・・腹水も溜まっているし、信じたくはないけど、急性肝炎?もしかしたら劇症までいってるかも・・・」
状況を呟く。
「旦那様、鑑定を使ったほうがよろしいかと」
と陽の声がする。彼の方を見ずに鑑定を使う。
<鑑定>
キルト:マーサとジェフの子。イノシシの肉から感染。既に急性肝炎から劇症肝炎へと症状が悪化している。
ハジメの嫌な予感が当たり、キルトは限りなく死に近い状況である。ハジメはアイテムボックスから死蔵していたキュアポーションを取り出す。
「効けばいいんだけど・・・」
とそれを飲ませようとするが飲み込まない。
「旦那様。キルト君の胸を開けてそこにポーションを投げてください」
と言い陽がキルトの服を脱がせる。確かにポーションは体に掛けても皮膚から吸収される。緊急用に備えてポーションは割れやすい瓶で売ることが常識である。飲むよりは効果は薄いがハジメのアイテムボックスにはまだ沢山のポーションがあるのだ。ハジメは瓶の蓋を開けようとするが、陽が
「旦那様、そのまま投げつけてください」
と真顔で言う。ハジメは不思議に思ったが今まで陽の言うように行動して間違っていたことはない。ハジメはポーションをキルトの胸に目掛けて投げる。当たった瞬間容器は飛び散りキュアポーションが彼の胸に広がる。その瞬間暖かい光がキルトを包み込む。数秒後その光は収まり少年がうっすらと目を開ける。
「・・・だ・・・だれ?」
白く戻った眼球結膜から黒い瞳をハジメに向けている。
「僕は薬剤師だよ。体の調子はどう?」
とハジメが聞くと
「・・・うん。少し体が怠いけど・・・。おじさん、ありがとう」
とキルトが自分で体を起こし、陽が脱がせたパジャマに袖を通している。
「そうか、それなら良かった。着替えたらこれとこれを1本ずつ飲んでね」
と頭を撫でる。キルトは恥ずかしそうな顔をしていたが、「うん」と元気よく答えた。ハジメは衰えた体力を戻すために先に体力ポーションを飲ませ、その後キュアポーションを飲ませた。
「お父さんとお母さんは?」
とキルトが言うので、
「台所にいるよ。呼んでおいで」
とハジメが笑顔で言った。そして彼は部屋の扉を開けて両親が待つ台所へと行くのだった。その後号泣する声が2人分聞こえたがハジメは落ち着くまで待つことにする。
「旦那様。旦那様はご自分のスキルをお忘れのようでしたので恐れながら指示させていただきました」
と陽が言う。
「俺のスキル?」
「ええ、旦那様は道具投擲の最高レベルを神から授かったはずです」
ハジメが慌ててスキルを開き鑑定すると
道具投擲Lv.10:道具を投げるためのスキル。投擲した場合その道具の持つ効果を50倍にまで引き上げる。
「俺って投げた方が強い・・・・?でも破裂弾は普通だったけど・・・」
ペン太がハジメの頭の上に上がり
「もう、あわてんぼうさん。破裂弾は武器でしょ。投げるなら道具だよ」
と手でぺんぺんと叩きながらぷんぷんしている。ペン太はハジメの魔力で構築されているため、その姿が見えるのはハジメと精霊たちだけである。
「でも、戦いの神アナト様にお願いして貰ったスキルだから、武器にも使えるって思うじゃん・・・」
「旦那様、あの時アナト様は「銃も剣も刀もあるがそれでいいのか?」と問いました。それで旦那様もそれでいいとおっしゃったのですよ」
凹んでいるハジメに飛び散ったガラスを集め、熱で溶かし再度ポーション瓶にした陽が追い打ちを掛ける。
「まぁ、悩んでも仕方ないか。今度時間見つけて武器か道具かを調べてみるよ。戦う力はあって困らないから・・・」
「おーポジティブシンキングー♪」
とハジメの言葉にペン太が陽気に答える。
「それでリナリーとコウは何してるの?」
とハジメが陽に聞くと
「ご夫婦ともに疲労されていたのと、食べるものがかなり少なくなっていたので、買いに行って貰いました」
と言う。食べ物が少なってたというより、そこを削ってポーションを買っていたのだろう。あの普通のポーションを。確かに食べ物による肝炎だった場合体力ポーションを使うのは分かる。あまり動かずゆっくりしていたら治るものだから日本にも薬はなかった。勿論商売において安く買って高く売るというのは常識である。しかしそれを1万Sで売るとなるともはや詐欺というところだろう。ジェフとマーサが共働きで稼ぐ賃金は月に40万S程度だろう。しかし毎日1万Sもする薬を1か月与えたら45万Sになる。今までの蓄えで今まではなんとかなったのだろうが、かなり厳しい経済状況だったことは想像し難くない。その為に家を売り、賃料の安い長屋での生活になったのだ。
「陽。2人を追いかけてお祝いがてら体力の着くものを買ってくるように言って貰える?」
と言うと台所の方から「はい」と言う声がし扉が開く音がした。そして重いものが置かれる振動がする。陽はハジメに
「戻ってきたようですよ」
と声を掛けるとキルトの居た部屋の扉を開けた。「まぁ、足りなければまた買いに行けばいいか」とハジメは独り言を言い部屋を出るとそこにはキルトなら入って遊べるほど大きな籠に魚やら肉やら野菜や果物が載っていた。
「旦那様、どうやらもう一度買い物に行かなくても大丈夫そうです」
と陽がそっと言った。ハジメは笑顔になる。そこへコウがやってきて
「ご主人様」
と言うと陽が「旦那様ですよ」と訂正する。もうコウは奴隷ではないのだ。
「だ・・・旦那様」
と言い換えモジモジしている。言い慣れていないのだろうが、なんとも新鮮かつ可愛らしい。
「コウ、お金はどうしたの?」
と言うと商人ギルドのカードを見せ
「これで払いました。初めて自分で支払いしました」
と自慢げな顔になっている。リナリーは台所でご飯を準備している。ハジメはコウの口座に今回の費用を振り込もうかと思ったがやめておいた。自分の稼いだお金を自分で判断して使ったのだ。これはハジメが口を出すことではない。
「キルト君。まだ治ったばかりだからお部屋で横になっておいて。ご飯できたら呼ぶから」
とハジメが言うと不満の表情を浮かべたが、コウがお兄さんぽく宥めて部屋に連れて行った。ジェフはハジメに近寄り、
「一体全体どういうことなんです?旦那。あんなに動くのも辛そうだったのに・・・」
と言うとマーサもこっちを見る。
「えっとですね。たまたま似た症状を知っていたので。かなり危険な状態だったので、申し訳なかったんですが、たまたま作っていたキュアポーションを使わせていただきました」
とハジメは正直に言う。実際にはキュアポーション(3)を使ったがそこは内緒にしておく。
「それでこれからしばらく、私が大丈夫ですと言うまでこのポーションを1日1本飲んで欲しいのです」
と取りあえず1週間分の9本渡す。それにマーサが表情を曇らせ
「あの・・・・」
「旦那、いくらですか?今すぐには払えませんが、必ず支払いしますんで」
とジェフがマーサに代わり言いながらハジメの両腕をがっちりと掴む。ハジメは困った様な表情になり、
「いえ。先ほどもお伝えした通り、このポーションは完成しているとは言え、まだ確証がありません。その為に息子さんを利用したのです。あぁ、体には問題がないことはわかっていますのでそこは安心してください。ですので費用は不要です」
と真面目な顔で告げる。
「旦那・・・・」
とジェフが苦々しい顔になる。
「・・・そうですか、そんなに状況が悪かったんですね・・・」
とマーサが言う。陽がその後を続ける。
「そうですね。もって後数日と言ったところでした」
表情を変えずに淡々と夫婦に言う。
「・・・そんなに・・・」
とジェフは茫然とする。マーサは
「あの子の命が長らえたと思えばそんなことは気にしません。このポーションを飲ませればいいんですね」
と薄黄色の液体の入ったフラスコを振る。
「えぇ、そうです」
とハジメは短く答える。そして4人でジェフの家を後にする。大通りまでもうすぐというところまで来ると
「旦那、まってくだせー」
と声がする。後ろを振り返るとジェフが居た。
「・・・本当にありがとうございました。息子が実験に使われたと聞いたときは腹も立ちましたが、旦那は息子の命の恩人です。明日から、よろしくお願いします・・・」
と頭を下げる。ハジメは笑顔になり、
「えぇ、こちらこそよろしくお願いしますね」
と握手をした。
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