神々の依頼、面倒なんですけどっ!

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第5章 第1節 東の塔 ~耕す~

97.塔を昇り始めるみたいです

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馬車は夕方と言うには遅く、夜と言うには早いうちに大森林の最寄りの街『アリス』へ到着した。この街は大森林で取れる木材や薬草などが主力商品となっている。

翌日アインツは帰路についた。念のため、体力ポーションを5本渡しておく。道中はひかりが遠隔で監視してくれていて、危険が迫ればすぐ対応できるようになっている安心仕様である。

まいを連れてハジメはアインツを見送った後、大森林へと向かった。道は一応通っているがあぜ道であり、あまり良くはない。それでも久々の探検にハジメの心は踊っていた。まいも初めてのハジメと2人での旅に興奮と、彼を守ると言う使命に燃えていたが、そこはそれ好奇心の塊である風精霊の特徴で、見る物全てに興奮をしている。旅をする精霊なのだが、自分の肉体で歩いて見るモノは五感が刺激されているのだろう。きょろきょろしつつ歩いていた。

30分程歩くと遠くに森林の緑が目に入るようになってきた。周囲の景色も芝生のようなものから伸びた草が現れ始めている。ハジメは薬になる物を限定として<周囲探査ソナー>を掛けていたが、収穫できるものはハジメの畑で取れる薬草の良品質だけであり、目を引くものはなかった。まぁ本番は森に入ってからだと思っているのでそんなに落胆することはなかったのだが。

ようやく目の前に森が迫ってきて、今まではしゃいでいたまいが急に黙り込む。どうしたのかと思い顔を覗き込むと、彼女の両目から光が消えていた。そして、彼女はハジメが見えないかのようにどんどんと森の中へ入っていく。ハジメは慌てて彼女を追いかけた。おそらくこれが管理神ワーデンが言っていた『精霊を連れて行けば分かる』と言うやつだろう。彼女の歩くスピードはハジメが追いつけるほどのもので、彼女のこの行動はハジメを導くためのものであることは理解できた。彼は彼女を追いかけながら自分の装備を改めて確認した。

5分程歩くと何かの膜を通り抜けた感覚がした。そこはすこし開けた場所で、広場の中央には先が見えないほどの塔がそびえていた。ハジメが塔を眺めていると、ゴゴゴゴゴっ、という地震のような揺れを感じ、そちらを見ると、まいが扉を開け、中に入って行くところが見えた。ハジメは慌ててその後を追う。ハジメが塔の中に入ったとき、まいの姿は既になかった。

「取りあえず探しながら上に行きますか・・・・」

そういって真っ暗な塔内に一歩分歩くと、唯一の光源だった扉がバタンと閉まり、周囲は真っ暗になる。神様の依頼ということもあり、彼女に何かあるとは思っていなかった。ハジメは太陽光サンライトで辺りを照らそうとする。広い場所で少し肌寒い時は太陽光サンライトで光と暖かさを得ることにしていた。光生成クリラは明るくなるだけで熱は発しないから。

扉が閉まって1拍の間をおいてハジメのいる場所より遠くから、灯りが灯って行きた。どうやら壁に松明のようなものが付いているようだ。灯りが全て灯ったときよくよくみると炎ではなく、なにかしらの魔法が光っているようだった。夜明けの薄暗い感じではあるが、動くのには問題はない。この階はただの大きい部屋のようだった。念のためハジメは太陽光《サンライト》を部屋の中央に呼び出しておく。周囲は昼間の様に明るくなった。明るくなると人間ある程度怖さは緩和される。

ハジメは外へ続く扉を見ると取っ手はなく、引き開けることは出来そうもなかった。勿論押してみたがびくりともしない。

「クリアするか死ぬしか出られないということか・・・」

そう呟き、周囲の石壁を軽く叩いてみる。カンっという音がしたことから石ではなく何かしらの金属であろうことは簡単に判断できた。アイテムボックスからこの世界に来たばかりのときに拾った石を取り出し思いっきりぶつけてみるが、石が砕けただけで壁にはなんの損傷もなかった。天井を見上げると10mくらいはあるだろうか。よくよく見るとハジメから見て一番奥に上へと続く階段があり、その階段の左右に緑色の扉があるのが分かった。階段まではおよそ15mほどだろうか。

「・・・こういう時って扉が開いて敵がいっぱい出てくるというモンスターハウスちっくな出来事が起こるんだけどな・・・」

ハジメがそう呟くと

【ステージ1開始】

左側の扉が観音開きに開き、蟻がぞろぞろ出てくる。蟻と言っても大きさは1匹50㎝ほどある。手には槍や弓、杖を持っている。ハジメが鑑定を使うと

軍隊蟻:1軍隊辺り2万匹を有する。歩兵蟻、弓兵蟻、魔法蟻がおり、それぞれ隊長が存在する。隊長をまとめる指揮官が1匹あり、その上に女王蟻が君臨する。殲滅するには全ての蟻を倒さなくてはならない。

と知った。その間に歩兵蟻が最前線に出てきてその後ろに弓兵隊、少し間を空けて魔法隊が位置し、その背後に一際大きい女王蟻が見える。どうやら陣形を作っているようだった。

「・・・魚鱗?」

ハジメは中二病の真っ最中に三国志にハマっていたのである。その時日本の陣形にも興味を持って調べたことがあったのである。

「・・・・魚鱗の陣形ならなんとかなるかなぁ」

とハジメは呟き鉄針版の破裂丸を3つ取り出し、真上に投げ

吹き飛べブラッシュアウェイ

と風の魔法を唱える。一瞬にして放り投げられた破裂丸は蟻たちの背後、女王蟻の背後の壁まで到達し、強固な壁に叩きつけられ、破裂する。飛び出した針は蟻たちをから襲う。魚鱗の陣は左右と後ろからの攻撃に脆い。防御力の弱い魔法蟻たちと、弓兵蟻の大部分はハジメのその攻撃により命を失った。隊長蟻と指揮官、女王蟻はダメージを負ったものの、大したものではなさそうである。

「まずまずかな。取りあえず、もう少し敵の数を減らそうか。暴風ハリケーン

弓兵蟻を中心に竜巻を起こす。歩兵蟻たちもぎりぎり範囲内である。一瞬にして蟻たちは風の渦に巻き込まれ、鉄の針に体を貫かれていく。先ほど放った鉄の針の再利用である。鋭く作られた針は一点に圧力がかかる為貫通力は高いのである。またハジメの付与魔法によって強固を付与されているため壊れにくくなっているのだ。

1分程して風の力が弱まってくると軍隊蟻はその数を1/1000ほどまで減らしていた。ハジメは続けて蟻たちのいる天井に向かって吹き飛べブラッシュアウェイで破裂丸を運びぶつけ、頭上から針の雨を降らせた。そして蟻たちは全滅したのだった。

【蟻たちの殲滅を確認。ステージ1-1クリア。宝箱1つ解放。これより休憩30分を挟んでステージ1-2を開始します】

と室内にアナウンスのようなものが流れる。ハジメを天井を見ていた視線を蟻たちが居た場所に向けると部屋の中央に宝箱が1つ現れており、今ハジメが倒した蟻たちは光に包まれ消えていった。

「・・・ステージクリアの報酬?」

そう呟きながら宝箱に近づく。恐る恐る箱を空けると、そこには大きなクッションの上に待ち針20本と大きさの違う縫い針が10本のセットが針山に刺さって置かれている。鑑定すると

裁縫セットの1つ

としか分からなかった。

「この塔クリアしたら裁縫セットが出来るのかなぁ」
考えていると

【ステージ1-2開始】

とアナウンスがあり、今度は右のドアが開く。そこからは全身鎧に包まれた騎士風の蟻と黒と白のローブを纏った蟻、隊長蟻と指揮官蟻、女王蟻が現れる。上位の蟻も例外なく全身を鎧に包まれている。事件は先ほどと一緒の魚鱗の陣である。

「今回は破裂丸はあまり効きそうにないなぁ・・・。じゃぁこれかな暴風ハリケーン

蟻たちを風の渦が襲う。ハジメはまだ日の目を見ない体力ポーション(真)を取り出し、腐敗ニグレドを掛ける。そしてそのポーションを荒れ狂う風の渦へと投げ入れる。そして暫くして風が収まった時には全ての蟻は死に絶えていたのだった。

「・・・やっぱり、この毒薬の作り置きは止めよう・・・」

【蟻たちの殲滅を確認。ステージ1-2クリア。宝箱1つと階段を解放します】

先ほど開けた宝箱が閉まる。ハジメが開けなおすとそこには糸切り鋏が針と同じように置かれていた。それをアイテムボックスに仕舞うと上に向かう階段を上って行った。

そして2階は街だった・・・・。
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