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第5章 第2節 北の塔 ~種まき~

115.寄付するみたいです

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冒険者と私兵団の損害は甚大とまではいかないものの、それなりに大きかった。戦いが始まって2時間で戦線離脱者は1/3程で、残りの半数は新人冒険者たちだった。

この原因はエルフの国からの輸入に頼っていたことに起因する。ポーションに限らず品物は製造場所に最も近い販売所が低価格となる。そこから品物が輸送されると販売価格に輸送代金と護衛代が加算さるのは当然のこと。ハジメが現れるまでポーションはエルフ国で作られ、王都に運ばれ、そこから各都市に販売されていた。そのため王都での価格が一番安かったのだが、現在はイブの街からポーションが販売されることになり、価格の最安値の地域が変わった。このことであまり稼ぎがない登録されたばかりの新人冒険者の活動の中心がイブの街となったのは当然のことだった。加えてこの街の周辺はあまり強い敵はいないこともそれに拍車をかけた。そうなるとイブの街では低難易度の依頼が、王都では高難易度の依頼が集まることになる。所謂住み分けである。

ハジメによってポーションの価格が押さえられたこともあり、冒険者たちはより長期間の依頼を受けやすくなり、その活動範囲は格段広がっていき、数多くの魔物の素材が冒険者たちによってギルドに運ばれ様々な研究が進み、高品質の武具や日用品雑貨などが作られるようになっていた。

ともかく2時間の命のやり取りでまともに戦えるのは最初の人数の1/6となっていたのだ。これに対して魔物の軍団は残り1/5程度だった。戦っている場所の視界が開け、やや離れたところに居る4体の2回りほど大きい存在を知ることになった。

「やっぱりキングが4体・・・」

リナリーたちの所属するパーティーの側に居たベテランであろう女性シーフが呟く。これだけの集団行動を魔物がとったのだキングが存在していることは予測していただろうが、その数に驚いたようだった。

「・・・4個体のキングがこの軍隊を指揮している・・・?」

本来キングが生まれていても4個体が協力して襲うということはないとされている。しかし現に冒険者たちの前には4種族のキングが存在している。防衛者たちの表情に恐怖が浮かんだ。

4体のキングが一斉に咆哮を上げると残っていた魔物集団が一斉に冒険者たちに襲いかかってきた。


更に2時間ほどで防衛者たちは1/3が戦闘不能におちいり、残りも疲弊していた。魔物たちは若干残存しているがもう間もなく殲滅出来るだろうという程度だった。残っていたハーピー30体が地上に降り、ゴブリンたちをその背に乗せ、再び空に舞い上がる。

「・・・ゴブリンがハーピーの背中に乗った・・・・?」

冒険者の誰かが思わず呟く。ハーピーの背に乗ったゴブリンは弓を引き攻撃を再開した。ゴブリンライダーがこの世界の歴史で初めて登場した瞬間だった。

あまりの事態に混乱する冒険者たちにゴブリンが放った矢は面白いように当たる。それはリナリーたちパーティーも例外ではない。幸いなことにリナリーのウェストバッグはハジメのアイテムボックスと繋がっている。彼女はウエストポーチに手を突っ込んだ。

「・・・・ポーションが増えてる・・・・」

彼女が戸惑うのは仕方ないことだった。先ほどまで1万ほどあった普通のポーションはそのままに、ポーション(真)が同じ数存在していた。リナリーが驚いているうちにもその数は増えている。

「・・・旦那様・・・。使わせていただきます」

ハジメの想いを受け取り感謝を捧げた。


ハジメはパトリシアを走らせていた。この戦いで自分に求められることは戦うことよりも質の高いポーションを提供すること。幸いなことに体力ポーションと魔力ポーションは1万本ほどアイテムボックスにはストックがあり、その5倍ほどすぐさま作ることが出来る。ハジメはパトリシアにイブに向かうように指示を出し、自身は体力・魔力ポーション(真)をアイテムボックス内で作り始める。

「・・・・リナリー・・・・」

作ったポーション(真)がその量を減らしていることにハジメは気付き少し安心しできた。パトリシアは懸命にイブの街を目指して走っている。後1時間もすれば見えるところまで来ていた。


リナリーは城門前まで戻って来た。そこには防衛軍を率いる副ギルド長が居る。それに気づいた彼は

「リナリーさん、どうしました?誰か怪我でもしましたか?」

パーティーメンバーが居ないリナリーに問う。

「緊急のお話があります。指揮官のテントでお願いします」

彼女が真剣な顔でそう言う。副ギルド長は彼女をテントへと案内する。テント内は2人だけだった。

「ポーションをお渡しします」

そう言うと返事を待たず、次々にウエストポーチから麻袋を取り出しその中からポーションを出し、彼に渡した。

「・・・・これは・・・・?」

彼女が取り出しているのはポーションの色が今までにないほど綺麗に澄んでいる。

出所でどころは詮索無用です。余った分は全て返却してください。絶対に秘匿してください」

そう言ってリナリーが遮り、各ポーションを5000本ずつ、麻袋にして1000袋ほど出し終えた時重体の戦士が運び込まれたと指揮官に報告が入る。リナリーは無言でその取り出した澄んでいるポーションを2本持ち外に出ると簡易担架に乗せられた彼に掛けた。その瞬間煙を出しながら傷口が塞がっていった。10秒ほどで呼吸も安定した。

「起き上がったらこれを飲ませて」

そう言って1本のポーションを運んでいる人物に渡し、彼女は再度戦場へと戻って行った。門前まで敵が攻め入ってない時は怪我人を城内へと輸送することになっている。怪我は治ったが意識を失っている戦士を運ぶため、城内へと続く扉がゆっくりと開いていく。彼の目にギルド長が映った。副ギルド長はセバスチャンに近寄り耳打ちする。

「・・・ポーションが届きました・・・」

ギルド長が顔を上げる。

「どこからですか?テリー」

副ギルド長テリーはポケットに入れてあったポーションを取り出しセバスチャンに渡した。

「・・・リナリーさんが出所は詮索無用という条件で渡してくれました」

「・・・有難い・・・ハジ・・・」

セバスチャンは思わず呟いてしまったのだろう。慌てて口をつぐんだ。そして、リナリーから渡されたポーションの1/3は城内へと運ばれることになった。城門外で外傷を治し意識を失った者は城内へと運ばれ気が付いた時に飲ませる方法を取るためである。

そうして再度城門は閉じられた。

「誰か、商業ギルドへ使いを!」

城内へと運ばれた重傷者は中央広場へと運ばれ寝かされている。移送した帰りに2種類のポーションを商業ギルドのエヴァに極秘で鑑定してもらい、その結果を持ち帰るようにセバスチャンが命令を出す。そしてその結果が届けられたのは20分程あとである。そう、商業ギルド長のエヴァ本人と共に。

「なんなのよ、この出鱈目でたらめなポーションはっ」

体力ポーション(真):体力を回復させる。効果300%増強。四肢欠損もその部位があれば治すことが出来る。売買価格不明 使用期限残り:6か月 

魔力ポーション(真):魔力を回復させる。魔素草の成分を抽出し精霊の水で薄めたもの。効果300%増強。余剰魔力分は1時間以内であれば即座に補填される。 売買価格不明 使用期限残り:6か月

1枚の紙をセバスチャンに突きつける。

「・・・・これほどとは・・・・。エヴァさん、これはリナリーさんが詮索無用で持ってきたのです・・・・」

エヴァはその言葉に黙りこくる。

「戦場に4500、こちら側に1500ほどあります。不使用分は返却という条件です」

「・・・・わかりました。では商業ギルドで管理します」

少し冷静になったエヴァはセバスチャンにそう伝える。

「・・・お願いします。これらは知られてはいけない・・・」

「・・・出したら、彼の存在は新しい戦争を生み出してしまう・・・」

2人はそう頷き合った。

「・・・それでも今の状況にはとてもありがたい・・・」

「・・・でも、私たちは彼の居場所を奪ってしまうわ。そうなると彼はここからいなくなってしまうでしょうね・・・」

2人の胸を罪悪感が支配していく。
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