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3.バティストは思い出した-2
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「あ、そうか。そうだよね」
「言葉遣いは全く持って正しくないが、着眼点は悪くない」
「ありがとう?」
「ございます」
「ございます」
どう説明したもんかな、と王子様が考え出した。いや、いい悪い、で答えてくれていいんだが。
「私は前回の記憶、とやらを持ってはいない。しかし、殿下がそうで、あるというのであれば、それに従って行動する」
「それはそれで、ええと、駄目、なんじゃねえの?」
殴られなかった。ジジイに向かっては、別に口調はどうでもいいらしい。なんでだ。
「どこが駄目だと思う?」
「王子様が、駄目なことしたら、駄目だって言わねぇと、駄目だろう?」
「そうだな。側付きとして、爺やとして、駄目な時は駄目だというべきだ。お前の言葉遣いの事のようにな」
「だよな」
良かった。そうだよな。俺は間違っていなかったよな。いや、じゃあ分かってて、駄目だって言ってねえのか? うん?
首をひねって考える俺に、ジジイが笑う。
「十年以内に、というのは確かに考えモノではあるが、魔王が復活する、というのは事実であろう。そうしてそれに備えるのは、間違ったことではないのだ」
「ないのか」
「今ここでお前に教えるのは割愛するが」
「かつあい」
「今教えはしないが、殿下のお考えを裏付ける証拠もある。だから、私は殿下のお考えに従い、行動した。分かるか?」
なるほど。ジジイの言葉は所々難しくてよく分からねぇが、多分、信じられる当てがあった、ってことなんだろう。だから俺は頷いて、王子様の方をもう一度見る。
それから、ジジイを見た。俺はこんな時、なんていえばいいんだ。
「大変お待たせいたしました。お話をお続けください」
「大変、お待たせ」
「復唱せんでよい」
「おう……はい」
殴られる前に、言い直した。俺はやったぞ。
復唱しないで覚えられる気はしないが、まあ、十年ぐらいあるらしいから、その間に覚えりゃいいだろう。今すぐ、って話じゃない、ってことは、分かった。
「僕が記憶を持っているのは、今回が初めてじゃない。かれこれ九回くらいは、もしかしたらもっと多いかもしれない。それくらい、僕達は魔王に負けている」
「俺が参加したのは、多分、二、三回だな」
「そうだね。僕もそう記憶している。そうしてそのどれもで君は……とても強かったが、どこかを欠損していた」
けっそん。あれか、腕なかったりとかそういうヤツの事か。それはまあ、仕方がないだろう。奴隷剣士なんて、そんなもんだ。強くなければ死ぬし、強くなりすぎたら壊される。
王子様がすごい悲しそうな顔で、テーブルに置かれたクッソ高そうなカップに視線をやる。多分、俺を見たくないんだろう。今の俺はただまあちょっとなにも食えてなかったから骨と皮だが、あの時と違って腕も目もある。
「だから君を、無事な状態で……仲間に、したかった」
王子様が言葉を選んだのが分かる。俺いくらしたんだろう。あとでジジイに聞いたら分かるかな。
しかし、どうだろうな。
「今の俺は、前の俺より強くなれない可能性があるぞ。前の俺は、がむしゃらに戦わないといけなかった」
死にたくなくて生きていたくて、腕を折られようが千切られようが食われようががむしゃらに生きていた。けれど心が折れてしまって、死んだ記憶もある。そこは持ち越さなくてよくないか。
「多分、なんだけれど」
「……はい」
また、おう、と答えそうになった。ぎこちないけれどちゃんとはいと言えたから、問題はないだろう。慣れるまで、大変そうだけどな。
「僕は、前の僕が出来たことが、一通りできる」
「マジかすっげえな!」
殴られたけれど、言葉はない。言い換えを教えてくれよ。
ジジイはどっちかって言うと、話を進める方を優先したのかもしれない。それはまあ、そうか。
「勿論この体はまだ子供だから、使えない魔法もあるけれどね。だから君も、学べば使えるようになるかもしれないんだ」
「体の使い方だから、どうだろうな」
頭を使う方法ならなんとかなるかもしれないけれど、体と心の話だから、どうだろうか。まあそんな難しい事を、俺が考える必要はないだろう。
「今回は、それを試してみようと思うんだ」
良い笑顔の王子様だった。
確かに、大人になった俺は前回までの俺と同じように戦えた。片手で戦斧をぶん回せたし、両手があるからそれよりでかい武器も扱えた。がむしゃらにぶん殴るだけじゃなくて、敵の攻撃をいなしたり、連携の仕方なんかも教わることが出来た。騎士が習うように、俺に教えてくれたからだ。色んな事を。
しかし結果から言えば、俺たちは負けた。いい線は行ったんだ。俺の攻撃は明確に魔王に効いていた。魔王に届いていた。どうでもいいことかもしんねえけど、魔王なんで毎回姿形が違うんだ。統一しやがれ。
聖女様も勇者様も今回も、前の事を思い出しゃしなかったけれど、俺と王子様だけで倒せそうな勢いだった。いや、倒せた。
「勇者様がとどめを刺して、聖女様が封印しないとダメなのか!」
という、ことらしい。
まあ、分かったからいいじゃねえか。覚えとけよ魔王、次はねえからな。
「言葉遣いは全く持って正しくないが、着眼点は悪くない」
「ありがとう?」
「ございます」
「ございます」
どう説明したもんかな、と王子様が考え出した。いや、いい悪い、で答えてくれていいんだが。
「私は前回の記憶、とやらを持ってはいない。しかし、殿下がそうで、あるというのであれば、それに従って行動する」
「それはそれで、ええと、駄目、なんじゃねえの?」
殴られなかった。ジジイに向かっては、別に口調はどうでもいいらしい。なんでだ。
「どこが駄目だと思う?」
「王子様が、駄目なことしたら、駄目だって言わねぇと、駄目だろう?」
「そうだな。側付きとして、爺やとして、駄目な時は駄目だというべきだ。お前の言葉遣いの事のようにな」
「だよな」
良かった。そうだよな。俺は間違っていなかったよな。いや、じゃあ分かってて、駄目だって言ってねえのか? うん?
首をひねって考える俺に、ジジイが笑う。
「十年以内に、というのは確かに考えモノではあるが、魔王が復活する、というのは事実であろう。そうしてそれに備えるのは、間違ったことではないのだ」
「ないのか」
「今ここでお前に教えるのは割愛するが」
「かつあい」
「今教えはしないが、殿下のお考えを裏付ける証拠もある。だから、私は殿下のお考えに従い、行動した。分かるか?」
なるほど。ジジイの言葉は所々難しくてよく分からねぇが、多分、信じられる当てがあった、ってことなんだろう。だから俺は頷いて、王子様の方をもう一度見る。
それから、ジジイを見た。俺はこんな時、なんていえばいいんだ。
「大変お待たせいたしました。お話をお続けください」
「大変、お待たせ」
「復唱せんでよい」
「おう……はい」
殴られる前に、言い直した。俺はやったぞ。
復唱しないで覚えられる気はしないが、まあ、十年ぐらいあるらしいから、その間に覚えりゃいいだろう。今すぐ、って話じゃない、ってことは、分かった。
「僕が記憶を持っているのは、今回が初めてじゃない。かれこれ九回くらいは、もしかしたらもっと多いかもしれない。それくらい、僕達は魔王に負けている」
「俺が参加したのは、多分、二、三回だな」
「そうだね。僕もそう記憶している。そうしてそのどれもで君は……とても強かったが、どこかを欠損していた」
けっそん。あれか、腕なかったりとかそういうヤツの事か。それはまあ、仕方がないだろう。奴隷剣士なんて、そんなもんだ。強くなければ死ぬし、強くなりすぎたら壊される。
王子様がすごい悲しそうな顔で、テーブルに置かれたクッソ高そうなカップに視線をやる。多分、俺を見たくないんだろう。今の俺はただまあちょっとなにも食えてなかったから骨と皮だが、あの時と違って腕も目もある。
「だから君を、無事な状態で……仲間に、したかった」
王子様が言葉を選んだのが分かる。俺いくらしたんだろう。あとでジジイに聞いたら分かるかな。
しかし、どうだろうな。
「今の俺は、前の俺より強くなれない可能性があるぞ。前の俺は、がむしゃらに戦わないといけなかった」
死にたくなくて生きていたくて、腕を折られようが千切られようが食われようががむしゃらに生きていた。けれど心が折れてしまって、死んだ記憶もある。そこは持ち越さなくてよくないか。
「多分、なんだけれど」
「……はい」
また、おう、と答えそうになった。ぎこちないけれどちゃんとはいと言えたから、問題はないだろう。慣れるまで、大変そうだけどな。
「僕は、前の僕が出来たことが、一通りできる」
「マジかすっげえな!」
殴られたけれど、言葉はない。言い換えを教えてくれよ。
ジジイはどっちかって言うと、話を進める方を優先したのかもしれない。それはまあ、そうか。
「勿論この体はまだ子供だから、使えない魔法もあるけれどね。だから君も、学べば使えるようになるかもしれないんだ」
「体の使い方だから、どうだろうな」
頭を使う方法ならなんとかなるかもしれないけれど、体と心の話だから、どうだろうか。まあそんな難しい事を、俺が考える必要はないだろう。
「今回は、それを試してみようと思うんだ」
良い笑顔の王子様だった。
確かに、大人になった俺は前回までの俺と同じように戦えた。片手で戦斧をぶん回せたし、両手があるからそれよりでかい武器も扱えた。がむしゃらにぶん殴るだけじゃなくて、敵の攻撃をいなしたり、連携の仕方なんかも教わることが出来た。騎士が習うように、俺に教えてくれたからだ。色んな事を。
しかし結果から言えば、俺たちは負けた。いい線は行ったんだ。俺の攻撃は明確に魔王に効いていた。魔王に届いていた。どうでもいいことかもしんねえけど、魔王なんで毎回姿形が違うんだ。統一しやがれ。
聖女様も勇者様も今回も、前の事を思い出しゃしなかったけれど、俺と王子様だけで倒せそうな勢いだった。いや、倒せた。
「勇者様がとどめを刺して、聖女様が封印しないとダメなのか!」
という、ことらしい。
まあ、分かったからいいじゃねえか。覚えとけよ魔王、次はねえからな。
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