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【本編】一章 bule drop(2年次10月頃~過去有)
bule drop -6- 1年前
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「あ、姫ー、急だけど、新入生、姫のところになったから」
久我が寮を訪れる3日前の夜のこと。
姫坂は、クラスの友人たちと寮の談話室で寛いでいたところ副寮長の葉室から声を掛けられた。
(知ってる…)
1年の2学期も始まってすぐのこと。この中途半端な時期に転入生がやってくるという。表向きは転入生、裏の顔は、梟の雛鳥。立派な組織の一員だ。
「そっかー、ついに来ちゃったか。短いひとり暮らしだったね、姫」
残念そうに答えるのは、姫坂と同じ1年5組の綾瀬伊織。
茶色い瞳に少しだけ心配の色をのせて姫宮を見てくる。
染めているわけじゃなく少し赤茶色の髪と瞳なのは、そういう体質なのかもしれない。
姫坂の白い肌の色とは違い、健康的な色をしている。本人曰く、きっと日に浴びすぎなんだよね、とのことだ。
綾瀬は姫坂に背中を預けるようにしてソファに横座りしゲーム機をいじっていたが、それを放り、心もち居住まいを正した。
ゲームより、新しく来る転入生に興味が移ったのだろう。
くるくるとよく表情が動き、目鼻立ちがはっきりしていて、人好きする雰囲気だ。
実際、彼は人懐こく優しい少年である。
姫坂の一番の親友であり、気のおける仲だ。
自分のことを最初から特別な目で見ない上に、距離なく接してきた。
その距離感のなさに最初に戸惑いがあったものの、彼からは一切邪な視線も態度も感じなかった。
そのことが、姫坂をより驚きにかえ、同時安心させた。
そして、親友である最大の理由は、彼、綾瀬が、梟の雛鳥組織の一員だったからである。
入学するより先に仕事で知ったわけだが、入学当初は、そんなに一般の生徒とも分け隔てなく接して大丈夫なのかとハラハラしたほどだ。
因みに同じAグループの護衛班に所属し、相方は、同じ学年で別クラスにいる、成績トップクラスの生徒で大らかな少年である。
護衛班は単独の仕事もあるが、ターゲットの周囲における護衛目的として他班と合同に任務を行うことも少なくない。
2日前に暗殺班と合同で依頼を受けて任務が終了したから、早くてもあと3日は仕事はこないだろう。
「よし、今度は何か月持つか賭けようぜ?」
面白そうに口にしたのは、西園寺大翔。
彼も姫坂や綾瀬と同じ1年5組の生徒だ。
彫りの深い顔が、少しだけエキゾチックさを感じるものの、今どきのイケメンだ。
彼は有名な建設会社の三男で、葉室とは幼馴染にあたる。
「もう、また大はそうやって面白がるんだから…伊織の半分でもいいから心配してあげなよ」
何かあったら頼ってね、と柔らかいアルトボイスで告げてくるのは、西園寺の同室で同クラスの八尋由樹だ。
名前を言うと、大抵の人間が、おしい、と口にする。
彼も西園寺と葉室と幼馴染である。
因みに彼の父親は警察官の上層部の人間で、母親は後妻で一回り下の看護師でかなりの美人らしい。
美人らしい、というのを聞いて、だろうな、としか感想を持たれないのは、八尋自身が美人だからだ。
背はそこそこあるものの、線が細いので、私服だとぱっと見男性か女性か迷うかもしれない。
一重であるのに大きい瞳が印象的だ。
因みに彼には腹違いの年の離れた兄が3人いるが、3人に…や、父を合わせて男4人に溺愛されているため、休日の帰ってこいコールが激しい。
西園寺は、幼稚園の頃から彼らに敵と見なされて、大人げない態度を取られていた。
西園寺の八尋における執着が激しいのだからそれも仕方ないのかもしれない。
「てかさー、姫ー、ほんとに大丈夫?」
伊織が心配そうにのぞき込む。
入学してから半年で既に3人が姫坂の部屋を出て行った。
つまるところ、相方を解消されたのだ。すべて、相手からの申し出による辞退が2人、リーダー命令によるものが1人。
姫坂は一年前から梟の雛鳥としてすでに活動していた。いわゆる特例の飛び級みたいなものだ。
組織所有のビル内で生活し仕事をこなしていたが、その頃も相方は一度の仕事だけで続いたことはない。
理由は皆同じ、性的対象として姫坂を見てしまうからだ。
直近の、約10日前まで相方だった少年は、仕事の手際は不慣れなところもあったが、とても性格の優しい素朴な少年だった。
姫坂は、やっと相方が決まるかもしれないと思ったのだが、すぐに解消されて、少なからずショックを受けた。
姫坂のせいじゃない、でもごめん、と謝られ、彼は転校にもなった。
一番堪えもしたが、僕のせいじゃないのは当たり前だ、と開き直る性格でもあった。
リーダーからは、歩み寄れとは言われていない。
お前も運がないだとか、相手が悪いな、だとか、相方には隙を見せるな生活には気をつけろ、だとか言われる始末だ。
今まで何も言わずに諦めていたが、前回の解消時にリーダーの立川には初めて相方に文句をつけた。
(次はって思いたいけど)
「ありがと、伊織。でも、期待してないから」
「じゃ、なくてさー、部屋!片付いてんの?」
「あ……」
1人だからと自由に使いすぎた。
12帖ある部屋の間取りは、部屋ごとに自由にしていいと言われていることをいいことに、相手のデスクと棚を全てベッド側によせ、ひらけた10帖ほどを悠々自適に使っていた。
仕事部屋のほうは、これを機にと回線を増やしより快適になったはずで、問題ないと思いたい。
「んもー、姫ってばそういうとこ抜けてるよね」
しょうがないなー、手伝うよ、と伊織が快く引き受ける。
僕たちも手伝おうか?の八尋に、姫坂はやんわりと断わりを入れた。
八尋はちゃんと手伝ってくれるけれど、西園寺は逆に色々と掘り出してくるだろう。
それに仕事部屋の入り口は絶対にわからないつくりになっているが、綾瀬がぽろっと仕事部屋のことを口にしてしまいそうである。
トータルで見たら、断ったほうがいいし、八尋だけっていう選択もできない。
「次はさ、いい人が来てくれるといいね?」
のぞき込む伊織は、同部屋というより、雛鳥の相方として、という意味だろう。
「期待してない」
姫坂は、自分に言い聞かせるように、再度同じ答えを返した。
********
周りからは、麗しの姫とナイト3人組とひそかに言われています。
久我が寮を訪れる3日前の夜のこと。
姫坂は、クラスの友人たちと寮の談話室で寛いでいたところ副寮長の葉室から声を掛けられた。
(知ってる…)
1年の2学期も始まってすぐのこと。この中途半端な時期に転入生がやってくるという。表向きは転入生、裏の顔は、梟の雛鳥。立派な組織の一員だ。
「そっかー、ついに来ちゃったか。短いひとり暮らしだったね、姫」
残念そうに答えるのは、姫坂と同じ1年5組の綾瀬伊織。
茶色い瞳に少しだけ心配の色をのせて姫宮を見てくる。
染めているわけじゃなく少し赤茶色の髪と瞳なのは、そういう体質なのかもしれない。
姫坂の白い肌の色とは違い、健康的な色をしている。本人曰く、きっと日に浴びすぎなんだよね、とのことだ。
綾瀬は姫坂に背中を預けるようにしてソファに横座りしゲーム機をいじっていたが、それを放り、心もち居住まいを正した。
ゲームより、新しく来る転入生に興味が移ったのだろう。
くるくるとよく表情が動き、目鼻立ちがはっきりしていて、人好きする雰囲気だ。
実際、彼は人懐こく優しい少年である。
姫坂の一番の親友であり、気のおける仲だ。
自分のことを最初から特別な目で見ない上に、距離なく接してきた。
その距離感のなさに最初に戸惑いがあったものの、彼からは一切邪な視線も態度も感じなかった。
そのことが、姫坂をより驚きにかえ、同時安心させた。
そして、親友である最大の理由は、彼、綾瀬が、梟の雛鳥組織の一員だったからである。
入学するより先に仕事で知ったわけだが、入学当初は、そんなに一般の生徒とも分け隔てなく接して大丈夫なのかとハラハラしたほどだ。
因みに同じAグループの護衛班に所属し、相方は、同じ学年で別クラスにいる、成績トップクラスの生徒で大らかな少年である。
護衛班は単独の仕事もあるが、ターゲットの周囲における護衛目的として他班と合同に任務を行うことも少なくない。
2日前に暗殺班と合同で依頼を受けて任務が終了したから、早くてもあと3日は仕事はこないだろう。
「よし、今度は何か月持つか賭けようぜ?」
面白そうに口にしたのは、西園寺大翔。
彼も姫坂や綾瀬と同じ1年5組の生徒だ。
彫りの深い顔が、少しだけエキゾチックさを感じるものの、今どきのイケメンだ。
彼は有名な建設会社の三男で、葉室とは幼馴染にあたる。
「もう、また大はそうやって面白がるんだから…伊織の半分でもいいから心配してあげなよ」
何かあったら頼ってね、と柔らかいアルトボイスで告げてくるのは、西園寺の同室で同クラスの八尋由樹だ。
名前を言うと、大抵の人間が、おしい、と口にする。
彼も西園寺と葉室と幼馴染である。
因みに彼の父親は警察官の上層部の人間で、母親は後妻で一回り下の看護師でかなりの美人らしい。
美人らしい、というのを聞いて、だろうな、としか感想を持たれないのは、八尋自身が美人だからだ。
背はそこそこあるものの、線が細いので、私服だとぱっと見男性か女性か迷うかもしれない。
一重であるのに大きい瞳が印象的だ。
因みに彼には腹違いの年の離れた兄が3人いるが、3人に…や、父を合わせて男4人に溺愛されているため、休日の帰ってこいコールが激しい。
西園寺は、幼稚園の頃から彼らに敵と見なされて、大人げない態度を取られていた。
西園寺の八尋における執着が激しいのだからそれも仕方ないのかもしれない。
「てかさー、姫ー、ほんとに大丈夫?」
伊織が心配そうにのぞき込む。
入学してから半年で既に3人が姫坂の部屋を出て行った。
つまるところ、相方を解消されたのだ。すべて、相手からの申し出による辞退が2人、リーダー命令によるものが1人。
姫坂は一年前から梟の雛鳥としてすでに活動していた。いわゆる特例の飛び級みたいなものだ。
組織所有のビル内で生活し仕事をこなしていたが、その頃も相方は一度の仕事だけで続いたことはない。
理由は皆同じ、性的対象として姫坂を見てしまうからだ。
直近の、約10日前まで相方だった少年は、仕事の手際は不慣れなところもあったが、とても性格の優しい素朴な少年だった。
姫坂は、やっと相方が決まるかもしれないと思ったのだが、すぐに解消されて、少なからずショックを受けた。
姫坂のせいじゃない、でもごめん、と謝られ、彼は転校にもなった。
一番堪えもしたが、僕のせいじゃないのは当たり前だ、と開き直る性格でもあった。
リーダーからは、歩み寄れとは言われていない。
お前も運がないだとか、相手が悪いな、だとか、相方には隙を見せるな生活には気をつけろ、だとか言われる始末だ。
今まで何も言わずに諦めていたが、前回の解消時にリーダーの立川には初めて相方に文句をつけた。
(次はって思いたいけど)
「ありがと、伊織。でも、期待してないから」
「じゃ、なくてさー、部屋!片付いてんの?」
「あ……」
1人だからと自由に使いすぎた。
12帖ある部屋の間取りは、部屋ごとに自由にしていいと言われていることをいいことに、相手のデスクと棚を全てベッド側によせ、ひらけた10帖ほどを悠々自適に使っていた。
仕事部屋のほうは、これを機にと回線を増やしより快適になったはずで、問題ないと思いたい。
「んもー、姫ってばそういうとこ抜けてるよね」
しょうがないなー、手伝うよ、と伊織が快く引き受ける。
僕たちも手伝おうか?の八尋に、姫坂はやんわりと断わりを入れた。
八尋はちゃんと手伝ってくれるけれど、西園寺は逆に色々と掘り出してくるだろう。
それに仕事部屋の入り口は絶対にわからないつくりになっているが、綾瀬がぽろっと仕事部屋のことを口にしてしまいそうである。
トータルで見たら、断ったほうがいいし、八尋だけっていう選択もできない。
「次はさ、いい人が来てくれるといいね?」
のぞき込む伊織は、同部屋というより、雛鳥の相方として、という意味だろう。
「期待してない」
姫坂は、自分に言い聞かせるように、再度同じ答えを返した。
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周りからは、麗しの姫とナイト3人組とひそかに言われています。
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