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本編
-213- デート中
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「アサヒの元居た場所ではわかりませんが、市井で障がいがある者は、家族の助けを得られない場合、スラムに追いやられることは珍しくありません。
ですから、自ら進んで見世物館に入っている者もいると聞いたことがあります」
「………」
ふたりしてタイラーに手伝って貰っておしゃれをして馬車に乗り込んだ矢先。
これからデートだと言うのに、俺は気になっちまった見世物館についてオリバーに問うた。
目的の店まで向かう途中のことだ。
途中だって立派にデートかもしれないが、気になっちまったままだと楽しめない。
こういうことは先に聞いておくべきことだろう。
すると、オリバーからは障がい者の扱いについて衝撃的なことを告げられた。
スラム街……や、うん、低層の下にはスラムがあるって言うのは聞いていた。
聞いてはいたが、ちゃんとその存在の背景までを把握はしていなかった。
「障がいになったら仕事は何も出来なくなるのか?」
「そうですね……例えば足が不自由な人でも手先が器用であれば、物づくりを行うことも出来るでしょう。
でも、生活に支障が出るほど重い障がいを生まれながらにして抱えている場合は、家族の手助けがなければ仕事は厳しいでしょうね。それに、帝都は障がいのありなしに関わらず平等に税金がかかります。子供のうちに捨てられることも少なくありません」
「そっか」
結構っつーか、かなり厳しい現実問題だ。
や、保険がないんだったな。
ギルドに入っているなら仕事での怪我や病気はギルド経由で補償が出るらしいが、他は実費だ。
医者に診せるのも金がかかる。
まあさ、俺なんかが考えたところで、じゃあ何か出来んのか?って言ったらなんも出来ないし、聞いたところでどうにもなんねーだろうし、手助けにもならないからお前が考えるだけ無駄だって言われたらそうかもしんねえけどさ。
少なくとも日本であれば、生活の保障があった。
だがこの帝国のどこにも、そんな保障はないっぽい。
「因みに、エリソン侯爵領に限っては支援があります」
「え?」
「支援タウンと言って、家族の手助けがなく重い障がいを抱えている等、支援が必要な方々が暮らす街があるんですよ」
「そうなのか?」
「はい。昔はスラムがありましたが、今現在エリソン侯爵領にはスラムはありません」
「それは、エリソン侯爵領だけか?」
「支援タウンはエリソン侯爵領だけじゃないでしょうか。領主によって各領の規則も変わってきますし変わりもするので、そうした取り組みもまちまちです。
例えば辺境は、警備隊員が殉職された場合、残された家族には手厚い保障があったはずです」
「なるほど」
少しずつは良くなってきている場所もあるってことか。
「オリバーは見世物館に行ったことあるか?」
「いいえ、実際に足を運んだことはありません。行った者から話を聞いたことはありますが」
「そっか」
「価値観の違い、でしょうか。私は聞いていて不快に思いましたが、『教育に良い』と思っている者も少なからずいたようですので」
「……わかんねー」
「それでいいんですよ、アサヒが胸を痛める必要はありません。アサヒが見世物館に興味を持たずで良かったです」
「別の意味で興味っつーか、関心はあるけどな」
俺が何かできるわけじゃないけれど、気になっちまうのは、たぶん、今の俺が幸せに暮らしているからだろう。
全てに余裕があるから、周りに障がいの奴がいないのにそんな心配ができるんだと思う。
偽善だと思われたっていい。
でも、あるってことだけは受け止めておきたい。
人を人扱いしない人間も場所もあるってことだ。
思えば、俺は神器様っつー存在で、それだって本来人とは違う扱いをされるところだったんだ。
養子に入れて貰って、オリバーと結婚をして、人として扱って貰えていることには本当に感謝でしかない。
「救いの手は領主だけじゃないんですよ。貧富の差は確かに年々ひらいていますが、だからこそ富を得た者は、貢献する余裕が出てきています。
少しずつですが、私の周りでは良くなっているように感じています。
キャンベル商会では、障がい者であっても求人の応募は可能です。コナーは人柄と能力と経験をみて採用するので、商会員の中には、目の不自由な方や足の不自由な方がいたはずです」
「へえ」
実にコナーらしいな。
そういや蝗害に対してもどうやって町の復興に貢献するかっていう問題を打ち明けていたっけ。
そういうところが、あいつのいいところだと思う。
ま、性癖においては全く理解に苦しむけどな。
「アサヒ」
「………」
めっずらし。
や、触れるだけのキス自体は全然めずらしくもなんともないんだけどさ。
けど、こうやって真剣な顔でっていうのは、あんまり覚えがないっつーか。
控えめに言って、ときめき以外の何でもない。
「コナーのことを考えるのは、おしまいです」
「っふは!」
何を言ってくるのかと思ったら、それか!
もっとシビアな話をしてくるかと思ってちょっとだけ身構えちまった。
真剣な顔して言うことか?
や、オリバーは至って真剣だ。
こういうお子様じみた言葉なところがオリバーらしくて、俺は思わず噴き出した。
自分でコナーを称えていたじゃねえか、な?
本っ当に良く言うわ。
おかげで俺の心はオリバーでいっぱいだ。
そんな小さいところで焼きもちやいてくるオリバーが、俺はすげー好きだ。
ですから、自ら進んで見世物館に入っている者もいると聞いたことがあります」
「………」
ふたりしてタイラーに手伝って貰っておしゃれをして馬車に乗り込んだ矢先。
これからデートだと言うのに、俺は気になっちまった見世物館についてオリバーに問うた。
目的の店まで向かう途中のことだ。
途中だって立派にデートかもしれないが、気になっちまったままだと楽しめない。
こういうことは先に聞いておくべきことだろう。
すると、オリバーからは障がい者の扱いについて衝撃的なことを告げられた。
スラム街……や、うん、低層の下にはスラムがあるって言うのは聞いていた。
聞いてはいたが、ちゃんとその存在の背景までを把握はしていなかった。
「障がいになったら仕事は何も出来なくなるのか?」
「そうですね……例えば足が不自由な人でも手先が器用であれば、物づくりを行うことも出来るでしょう。
でも、生活に支障が出るほど重い障がいを生まれながらにして抱えている場合は、家族の手助けがなければ仕事は厳しいでしょうね。それに、帝都は障がいのありなしに関わらず平等に税金がかかります。子供のうちに捨てられることも少なくありません」
「そっか」
結構っつーか、かなり厳しい現実問題だ。
や、保険がないんだったな。
ギルドに入っているなら仕事での怪我や病気はギルド経由で補償が出るらしいが、他は実費だ。
医者に診せるのも金がかかる。
まあさ、俺なんかが考えたところで、じゃあ何か出来んのか?って言ったらなんも出来ないし、聞いたところでどうにもなんねーだろうし、手助けにもならないからお前が考えるだけ無駄だって言われたらそうかもしんねえけどさ。
少なくとも日本であれば、生活の保障があった。
だがこの帝国のどこにも、そんな保障はないっぽい。
「因みに、エリソン侯爵領に限っては支援があります」
「え?」
「支援タウンと言って、家族の手助けがなく重い障がいを抱えている等、支援が必要な方々が暮らす街があるんですよ」
「そうなのか?」
「はい。昔はスラムがありましたが、今現在エリソン侯爵領にはスラムはありません」
「それは、エリソン侯爵領だけか?」
「支援タウンはエリソン侯爵領だけじゃないでしょうか。領主によって各領の規則も変わってきますし変わりもするので、そうした取り組みもまちまちです。
例えば辺境は、警備隊員が殉職された場合、残された家族には手厚い保障があったはずです」
「なるほど」
少しずつは良くなってきている場所もあるってことか。
「オリバーは見世物館に行ったことあるか?」
「いいえ、実際に足を運んだことはありません。行った者から話を聞いたことはありますが」
「そっか」
「価値観の違い、でしょうか。私は聞いていて不快に思いましたが、『教育に良い』と思っている者も少なからずいたようですので」
「……わかんねー」
「それでいいんですよ、アサヒが胸を痛める必要はありません。アサヒが見世物館に興味を持たずで良かったです」
「別の意味で興味っつーか、関心はあるけどな」
俺が何かできるわけじゃないけれど、気になっちまうのは、たぶん、今の俺が幸せに暮らしているからだろう。
全てに余裕があるから、周りに障がいの奴がいないのにそんな心配ができるんだと思う。
偽善だと思われたっていい。
でも、あるってことだけは受け止めておきたい。
人を人扱いしない人間も場所もあるってことだ。
思えば、俺は神器様っつー存在で、それだって本来人とは違う扱いをされるところだったんだ。
養子に入れて貰って、オリバーと結婚をして、人として扱って貰えていることには本当に感謝でしかない。
「救いの手は領主だけじゃないんですよ。貧富の差は確かに年々ひらいていますが、だからこそ富を得た者は、貢献する余裕が出てきています。
少しずつですが、私の周りでは良くなっているように感じています。
キャンベル商会では、障がい者であっても求人の応募は可能です。コナーは人柄と能力と経験をみて採用するので、商会員の中には、目の不自由な方や足の不自由な方がいたはずです」
「へえ」
実にコナーらしいな。
そういや蝗害に対してもどうやって町の復興に貢献するかっていう問題を打ち明けていたっけ。
そういうところが、あいつのいいところだと思う。
ま、性癖においては全く理解に苦しむけどな。
「アサヒ」
「………」
めっずらし。
や、触れるだけのキス自体は全然めずらしくもなんともないんだけどさ。
けど、こうやって真剣な顔でっていうのは、あんまり覚えがないっつーか。
控えめに言って、ときめき以外の何でもない。
「コナーのことを考えるのは、おしまいです」
「っふは!」
何を言ってくるのかと思ったら、それか!
もっとシビアな話をしてくるかと思ってちょっとだけ身構えちまった。
真剣な顔して言うことか?
や、オリバーは至って真剣だ。
こういうお子様じみた言葉なところがオリバーらしくて、俺は思わず噴き出した。
自分でコナーを称えていたじゃねえか、な?
本っ当に良く言うわ。
おかげで俺の心はオリバーでいっぱいだ。
そんな小さいところで焼きもちやいてくるオリバーが、俺はすげー好きだ。
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