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本編
-22- おはぎは猫じゃない
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「あらあら、今日は猫ちゃんも一緒に食べるのね」
ソフィアがにこにこした顔で、5枚の皿を用意し始め、タイラーが椅子をもう一つ追加して持ってきた。
この家では、夕食だけみんなで同じものをとることにしている。
テーブルもハーフサイズだ。あんなでーんと長いテーブルじゃ話をするのも距離が遠くてかなわない。
最初はタイラーにとんでもないと遠慮されたが、俺がそうしたいと言ったらそうなった。
給仕されるのは慣れないから、朝食後と、3時のお茶の時間だけにしてもらっている。
様付けもやめてもらった。
敬語はしょうがなくだ、あんまり畏まられるのはやめてほしい、とお願いした。
だって、なんかすげー居心地悪いんだもん。
「うん、急に増えてごめん。あ、ソフィア手伝うよ」
「大丈夫ですよ、猫ちゃん一匹くらい。ふふっいつも助かります、そんなことアサヒにしてもらうことじゃないですのに」
「いーのいーの、俺一般庶民の出だから。
あ、あと、おはぎって名前にしたから、ソフィアもそう呼んでやって」
「まあ、おはぎ。いい名前を貰ってよかったわね」
ぼーっとつったってるオリバーは無視だ無視。
なんだ、こいつさっきから。
「えーと……、ソフィア、この猫知ってるの?」
「?よく裏庭でお茶してると来ますのよ、オリバー様が侯爵様から預かったのでは?」
「私は知らない」
「あらまあ…どこかで飼われてるのかしら?」
「えー?でも、俺のことご主人様って言ってきたよ?この家の猫だろ?
アサヒって呼ぶように言ったけどさ、それに…名前、つけちゃったよ?」
「…ご主人様ですか、あー…名前、つけちゃったんですよね……」
「もうなんだよ、さっきから!いいだろ、猫の一匹や二匹!」
「猫じゃないんですよ!」
へ?
猫じゃない?
「猫だろ?」
「二足歩行の猫がいますか?いないでしょう!」
「…ここにいる」
「だから、猫じゃないんです!猫は喋らないし、二足歩行では歩きません!常識でしょう!」
「…………」
あーなんだよ……常識?常識ねぇ…常識だ?
クッソむかつく。
「常識ってさ、……俺ここにきてまだ3日目なんだけど。
今まで魔法自体なかったんだ、猫が二足歩行で歩いたって喋ったってそういうもんだって思ったって仕方ないだろ?
大体、常識非常識言われたら、男が妊娠出来る方がよっぽど非常識だろーが」
むすっとして言えば、オリバーははっと息を飲んで眉を下げてくる。
怒鳴り散らさず、冷ややかに言ったからかもしれない。
けど、常識って言葉は……今の俺にすげーささって痛い。
「……すみません」
「すげー傷ついたから、なぐさめて」
ごめんなさい、機嫌直して、と頬と目元の黒子あたりと唇にキスが降ってくる。
オリバーが所かまわず口づけるから、3日目にしてタイラーとソフィアの前では慣れたものだ。
少しずつイライラも収まる。
こいつの匂い、マジで落ち着くし…、キスも、まあ、優しいし…嬉しい。
「でも、アサヒ。結構…いえ、かなり、内緒にしないとというか、領主様に相談案件、なくらいには大事なんですよ?」
「なんで?」
「ケットシー、彼は妖精です。帝国で妖精は伝説、ドラゴンと同じくらいおとぎ話なんですよ。
あーしかも、アサヒ、契約までしちゃって……どうしましょう」
「?妖精?おはぎ、羽生えてないし、もふもふしてんじゃん。妖精はないよ、なー?」
おはぎに同意を求めると、器用にスプーンを持って見上げてくる。
おー肉球で持てるのか、すげーな。
『アサヒ、ご飯、食べていい?アサヒも一緒』
「おー、一緒に食おうぜ、せっかくの料理がさめちまう。オリバーも。…なんか交渉が必要なら後でちゃんと聞くから、先食おう?」
「…はい」
ソフィアがにこにこした顔で、5枚の皿を用意し始め、タイラーが椅子をもう一つ追加して持ってきた。
この家では、夕食だけみんなで同じものをとることにしている。
テーブルもハーフサイズだ。あんなでーんと長いテーブルじゃ話をするのも距離が遠くてかなわない。
最初はタイラーにとんでもないと遠慮されたが、俺がそうしたいと言ったらそうなった。
給仕されるのは慣れないから、朝食後と、3時のお茶の時間だけにしてもらっている。
様付けもやめてもらった。
敬語はしょうがなくだ、あんまり畏まられるのはやめてほしい、とお願いした。
だって、なんかすげー居心地悪いんだもん。
「うん、急に増えてごめん。あ、ソフィア手伝うよ」
「大丈夫ですよ、猫ちゃん一匹くらい。ふふっいつも助かります、そんなことアサヒにしてもらうことじゃないですのに」
「いーのいーの、俺一般庶民の出だから。
あ、あと、おはぎって名前にしたから、ソフィアもそう呼んでやって」
「まあ、おはぎ。いい名前を貰ってよかったわね」
ぼーっとつったってるオリバーは無視だ無視。
なんだ、こいつさっきから。
「えーと……、ソフィア、この猫知ってるの?」
「?よく裏庭でお茶してると来ますのよ、オリバー様が侯爵様から預かったのでは?」
「私は知らない」
「あらまあ…どこかで飼われてるのかしら?」
「えー?でも、俺のことご主人様って言ってきたよ?この家の猫だろ?
アサヒって呼ぶように言ったけどさ、それに…名前、つけちゃったよ?」
「…ご主人様ですか、あー…名前、つけちゃったんですよね……」
「もうなんだよ、さっきから!いいだろ、猫の一匹や二匹!」
「猫じゃないんですよ!」
へ?
猫じゃない?
「猫だろ?」
「二足歩行の猫がいますか?いないでしょう!」
「…ここにいる」
「だから、猫じゃないんです!猫は喋らないし、二足歩行では歩きません!常識でしょう!」
「…………」
あーなんだよ……常識?常識ねぇ…常識だ?
クッソむかつく。
「常識ってさ、……俺ここにきてまだ3日目なんだけど。
今まで魔法自体なかったんだ、猫が二足歩行で歩いたって喋ったってそういうもんだって思ったって仕方ないだろ?
大体、常識非常識言われたら、男が妊娠出来る方がよっぽど非常識だろーが」
むすっとして言えば、オリバーははっと息を飲んで眉を下げてくる。
怒鳴り散らさず、冷ややかに言ったからかもしれない。
けど、常識って言葉は……今の俺にすげーささって痛い。
「……すみません」
「すげー傷ついたから、なぐさめて」
ごめんなさい、機嫌直して、と頬と目元の黒子あたりと唇にキスが降ってくる。
オリバーが所かまわず口づけるから、3日目にしてタイラーとソフィアの前では慣れたものだ。
少しずつイライラも収まる。
こいつの匂い、マジで落ち着くし…、キスも、まあ、優しいし…嬉しい。
「でも、アサヒ。結構…いえ、かなり、内緒にしないとというか、領主様に相談案件、なくらいには大事なんですよ?」
「なんで?」
「ケットシー、彼は妖精です。帝国で妖精は伝説、ドラゴンと同じくらいおとぎ話なんですよ。
あーしかも、アサヒ、契約までしちゃって……どうしましょう」
「?妖精?おはぎ、羽生えてないし、もふもふしてんじゃん。妖精はないよ、なー?」
おはぎに同意を求めると、器用にスプーンを持って見上げてくる。
おー肉球で持てるのか、すげーな。
『アサヒ、ご飯、食べていい?アサヒも一緒』
「おー、一緒に食おうぜ、せっかくの料理がさめちまう。オリバーも。…なんか交渉が必要なら後でちゃんと聞くから、先食おう?」
「…はい」
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