異世界に召喚された猫かぶりなMR、ブチ切れて本性晒しましたがイケメン薬師に溺愛されています。

日夏

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本編

-47- お説教と羞恥心

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「なあ、オリバー、なんでそんな大事なこと言い忘れんの?」
「すみません」

蓮君とオリバーとが軽く紹介をし終えたところで、どこに通すか悩んだ末、コンサバトリーへと向かうことになった。
おはぎも一緒だ。いつもふらっといなくなって呼べば来るんだが、今は俺の横をふにふにと可愛い足で歩いている。

どこで休むか決めたのは、アレックス様だ。
蓮君のため、だろうな。
最初の印象が悪すぎたが、蓮君に向けられる目はとても優しいものだった。
大切にされているんだろうと、ほっとする。

俺はコンサバトリーに向かいながらもぐちぐちと隣のオリバーを説教し始めた。

「俺、アレックス様威嚇したあげく、思いっきり蹴り入れようとしちまったじゃねえか」
「え?なんでそんなことしたんです?」
「そりゃお前、昨……」

タイラー、昨夜のことは、オリバーには言ってないんだったか。
変に責任感じる必要もないことだが、相手が元同僚だなんて自分のせいで…って気落ちしそうだもんな。

「はー…初日になんつったか覚えてる?“この家は普段私たちしか入れないようになっていますから安心してください”そう言ったよな?」
「…言いました」
「その“私たち”っつーのは、オリバーとタイラーとソフィアだって思ったとしてしかたないよな?
そん中にアレックス様が入ってるとは思わないだろ?」
「そう、ですね…はい」
「お前、今日来られること誰にも言ってねーの?ソフィアもタイラーも出ちまったじゃん」

ソフィアは昼食後、いつも買い物へ出かけるし、タイラーは昼食後出かけると言っていた。
特にタイラーだ。
俺には地下牢の場所が分からないし、穴が空きそうだとかいうのもわからない。
どうする?タイラーが戻ってきてからでいいのか?
朝の時点で知らせるっつってたし、昨夜のことをアレックス様はすでに知られていた。
随分早いが、今日来るってこと知ってたら、その手間だっていらなかったはずだろ。

「重ね重ねすみません。
あ、でも大丈夫ですよ?アレックスはいつもふらっとこられますから、ソフィアに言えばちゃんと15時のお茶も夕飯も作ってくれます」
「は?…だったら尚更言ってくれよ」

ふらっと来られるって、なら言え、先に。
それに。
それに、俺は………。

「わ、凄い!こっちもとても居心地がよさそう」

コンサバトリーの扉を開くと、蓮君が嬉しそうに声を上げる。
アレックス様もオリバーも自慢げに笑みを浮かべてる。
アレックス様はわかるが、なんでオリバーが自慢げなんだ。

「そうでしょう?アサヒもとても気に入ってる場所なんですよ。ね?…アサヒ?」
「…っお前さ、蓮君がアレックス様のところにいるってことも知ってたんだろ?
アレックス様、俺がオリバーのところにいるってご存じだったぞ」
「あ…はい、そうですね、アレックスから聞きました」
「なんで言ってくんねーの?俺、他の三人が今どこにいるか知りたいっつったじゃん」
「すみません」
「謝ってほしいわけじゃねーんだけど、なんでかって聞いてんの。
その分じゃ、他のやつもどこにいるか知ってんのか?」
「ええ、アレックスから聞きました。お一人は私とアレックスの友人、もうお一人はアレックスのお師匠様のところだと聞いてます。
良い方々ですし、近々会えると思いますよ」
「………っ」

俺が、場の空気を悪くしてるってのはわかる。
けど、俺にも譲れないものもある。
本当はちょっとどころじゃなくて、すげー気にしてた。
三人がどこにいったのか、だ。
よかった。
けど、本当になんで?
なんでそんなこと黙ってたんだ?
まさかなにか俺にとって都合が悪いことがあって、だから黙ってた、なんてことねーよな?

「ほんと、なんで言ってくんねーの?それ、いつの話?」
「昨日の夕方です。アレックスから連絡が入りました」

なら、俺がオリバーに三人の居場所が知りたいと、頼んだ時の方が先か。

「じゃなんですぐ教えてくんねーの?あんなペリエだかなんだか知らねーけど、変な実を食わされて強制的に眠らされて、知らないところに勝手に引き取られて。
俺はお前だったから良かったけど、ちょっとどころかすげー心配してたんだ」

ほっとしたのと、なんで教えてくれなかったのかっていう思いで、泣きそうだ。
ふんわりと、オリバーが俺の両手を取る。
見上げると、心底申し訳なさそうな顔で俺を見る。
それだけで絆されそうになるが、今回はそうならねえぞ…っと気合をいれる。
顔が良いって、マジでこういうとき得だよな。

「ごめんなさい、本当はすぐに教えようと裏庭まで行ったんですよ?夕食前でしたし、迎えに。
そしたら、アサヒとケットシーが一緒にいるだけでなく、おはぎ、と名づけまでしたというからびっくりして忘れてしまって。夕飯時は、どうやってアレックスにおはぎのことを話したらいいか…ということで頭がいっぱいでした」
『オリバー、おはぎのせいにするのよくない!』

うっかり、そうか、ならしょうがないな、なんて思っちまったが、オリバーにおはぎがツッコミをいれる。
そうだ、おはぎのせいにするのはよくない、よくねーよ。

「だよな、おはぎのせいにするのはよくないよなー。夕飯時はわかった。けど、今まで時間いっぱいあっただろ」
「昨夜は…あなたがあまりにも可愛すぎて。それに今日は先ほどナイトポーションを受け取るまで色々期待してしまって、受け取ったら受け取ったで、またーーー」
「っ馬鹿!お前何言っ……」

阿保かー!人前で何言ってんだ、タイラーとソフィアはともかく、少しは友人の前では取り繕えよ!
はぐはぐと何も言えないくなってる俺に、こともあろうか、オリバーは手の中の俺の両手に口づけを落とした後、目元にも口づけてくる。
待て待て待て!
確かに普段通りの通常運転だが、これは人前でやっていいことじゃねーだろ!
このままだと唇にもキスしそうだ、それはちょっと人前では俺にはハードルが高い。

「ちょ、何やって!」
「ごめんなさい、アサヒ。次からちゃんと気を付けますから。機嫌直してください」
「った、わかったから!俺も言い過ぎたから!あー、本当、すみません、色々」

「ぶはっ!はははっ!マジか、お前すげーな、アサヒ」

アレックス様に謝ると、アレックス様は吹き出し、大笑いされる。
蓮君は微笑ましそうな顔をして俺を見ていた。
あー、すっげーいたたまれねえ!

羞恥心で、俺の顔から火が出そうだった。
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