異世界に召喚された猫かぶりなMR、ブチ切れて本性晒しましたがイケメン薬師に溺愛されています。

日夏

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本編

-138- 温室にて

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「え?タイラーとソフィアも使うの?」
「はい。そのようなものがあるのでしたら、是非私たちにも試させて下さい」

タイラーの頭とソフィアの頭を見た後、オリバーに目を向ける。
や、だってさ、二人ともふさふさしてんじゃん。
毛生え薬なんて要らなくね?

「なら、最初に出来たこちらの育毛薬を試して貰えるかい?
抜け毛を防いで、髪本来のツヤとハリとコシが出る、という効果があるのだけれど」
「まあ、素敵ね!」
「是非!」

この食いつきよう、やっぱ他人が見ても分からないが、自分では気になるのか。
効果があって、気に入ったなら切らさないように作ったらいいか。

男も女もいくつになってもエイジングケアについては食いつきがいいらしい。
別邸に出かけた俺たちの話に、ベテラン組が食いついたもんな。

今度、シワとシミに効く薬をオリバーに提案してみよう、等と思いながら温室に向かう。

温室には様々な植物が育てられているが、経過を怠れない植物が数種類。
いくつかあるけれど、中でも蜜蜂を誘引する蘭の花と、ニームの木については来年には結果が欲しいらしい。

現在蜜蜂の巣を増やすには、その蘭の花を近くに植えるんだが、上手くいくこともあれば、失敗することもあるという。
その成功率をあげる蘭の花を研究中だ。

これは、オリバーが独自に研究している花だという。
現在使われている蘭の花は、茶色っぽくてあんまり可愛くないんだが、オリバーの作っている蘭は、ピンク色した可愛い蕾がついている。
木属性で成長を早めた時には効果が期待できる蘭の花が咲いたので、今度は魔法を極力削いで育てているらしい。
無事に蕾が膨らんでいるので、ちゃんと育っているっぽい。
残念ながら薬草じゃないので、俺の目では効果の善し悪しは分からなかった。

「ちゃんと育ってるな」
「ええ。効果も高いようですね、元の蘭とは別物です」
「へえ、見た目も可愛いな」
「ええ。気候にはどうしても左右されるので、直に育てると開花がずれるのは仕方ありませんね」
「生花じゃないと効果ないのか?」
「え?」
「だから、生花じゃないと駄目なのか?ドライフラワーにするとか……それか、誘発物だけ取り出すとか、そーゆーの出来ねーの?
防水のワックスに混ぜたりすりゃ楽じゃね?養蜂は全くの無知だから、素人感覚でしかねーけどさ」
「………考えもしませんでした」

びっくりした目でオリバーは俺を見てくる。
誘発効果が弱いからもっと良い花があれば良いのに、という声に応えてきたから、花本来をどうにかしようとすることに意識が向いていたらしい。

「ありがとうございます、アサヒ。この花が咲いたら、誘発物だけ抽出してみましょう」
「重っ!あーほら、ニームの木も見に行くんだろ」
「はい」

抱きついてくるオリバーをそのままニームの木の方へ向かう。
この木は、元々帝国内には生息していなかったものらしい。

じゃあ、どうやって手に入れたのかと言うと、どっかの知らない旅商人がキャンベル商会の馬車休憩でかち合った際に、食べ物との物々交換で手に入れたという。
珍しい種だから、と、理由はそれだけだったようだ。
それが、アレックス様を通して、オリバーに回ってきた。
種からここまで育てるのに、木属性の魔法も使って2年以上かかってるらしい。

実がなれば、その実は特定の虫に対して虫除け効果があるんだとか。
そして、それだけじゃない。

「蜜蜂には影響しないという点で非常に優れています。
また、人や動物に害はなく、解熱薬や鎮痛薬、傷薬としても効果が期待できます。
非常に優れているので、育てられないかと思いまして」
「すげー木だよなあ。まだちっせえけど」

そう、まだ木というか、茎に近い。
背丈は俺より低いし、プランターで10本並んでるだけだ。
親の木は、でっかい大木だというから、育てば立派な木になるらしい。
ある程度育ったら、1本残して、他はエリソン侯爵領のどこかに植えたいという。

「お願いします」
「おう」

このニームの木々は、俺の水魔法の水で水やりをしている。
土の栄養も俺の土魔法だ。
確実に伸びるのが早くなったとオリバーは言うが、普通の野菜なんかと比べるとずっと遅い気がする。

とにかく早く成長させて、防虫薬に植えるだけじゃなく、薬効成分を取り出し薬の研究もしたいらしい。
やりたいことが尽きないな、全てエリソン侯爵領のためだ。
そこは、尊敬する。

「そういやさ」
「はい」

水をやりながら、神器のことを聞いてみようと思った。
今なら2人きりだ。

「神器の身体の構造?コナーが人とは違うことが沢山あるっつってたけどさ、それまだ聞いてなかったから」
「……すっかり忘れてました」
「だよな、俺も」
「……すみません」
「や、いーよ。知らなかったからってどうこうなってるわけじゃないしさ」

本気で謝ってくるオリバーに告げると、ばつの悪い笑顔に変わった。
水やりはそろそろいいかもしれない。
魔法の水とはいえ、やりすぎは良くないらしい。

「こんなもんか?」
「ええ、十分です。ありがとうございます。……あちらで少し話しましょうか」
「ん?わかった」

あちら、というのは、カウチソファが置かれてある場所だ。
そういや、オリバーと一番最初に出会ったのもあそこだったな。

今じゃ、俺のお気に入りの場所だ。
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