165 / 218
本編
-165- 心惹かれる存在 オリバー視点
しおりを挟む
「───っなんで話ながらイチャイチャすんだよ、勘弁してくれよ」
「ごめんなさい。アサヒが可愛らしくて、つい」
「………」
アレックスとの通信を終えて、しっかり5秒は経ったときのことでした。
アサヒが耐えきれないような声をあげてきます。
勘弁してくれ、と言いながらも嫌がっていないのはわかります。
ですから、その証拠に、こうやって抱きしめながら謝ると、大人しくなるのです。
本当に可愛らしい人です。
「何を考えているんですか?」
「え?」
いつもよりも黙る時間が長く微動だにしないアサヒが気になりました。
元の世界のことでも、何か思いだしているのでしょうか?
「私の腕の中で私以外のことを考えないでください」
「や、なんか、恋人……まあ、もう夫夫なわけだけどさ。付き合ってこんなふわふわした感情になってんのオリバーだけだなって思っただけ」
「私もこんなに心惹かれたのはアサヒだけです」
他人と比べれられるのは、あまり好きではありません。
過去の経験上、私の方がいつも劣っていたから、というのもあると思います。
『前の彼氏は僕がこうしていたら抱きしめてくれたのに、オリバーはしてくれないのか』だとか、『前の彼氏より本当に見た目だけはいいよね』だとか。
ですが、アサヒがそれをすると複雑な気持ちになります。
アサヒの場合は、いつも逆だからです。
比べられてもいつも私の方が優れているんです。
ですから、たとえ比べられても嫌な気持ちになることはありません。
ただ、その度にアサヒを知っている人がいることに嫉妬するだけです。
恋愛において、相手からのされ待ちを嫌でも学び、年数を重ねる毎に察しは良くなりました。
ですが、アサヒからは殆どそれを感じたことがありません。
寧ろ、私が先に動くととても可愛らしい反応を見せてくれます。
慣れているのに慣れていない、それがとても可愛らしい。
私が抱擁を緩めると、アサヒは肩越しに振り返ってきました。
薄く形の良いアサヒの唇が目に入ります。
その唇を間近にとらえ、誘われるように触れる。
そう、ただ、触れるだけの口づけです。
にも関わらず、甘い苺の香りが鼻の奥まで届くのです。
いつでも欲してしまうほどに、甘く、時に暴力的な程の誘惑にも感じます。
私の理性を毎回試してくれます。
アサヒは、どうでしょうか。
『すげーいい匂い』といつも言ってくれてはいますが、アサヒも同じようになるのでしょうか。
そうだったら、とても幸せなことですね。
今日もほら、こうやって間近に見つめると、アサヒはそっとその瞳を伏せて頬を染めるのです。
その仕草がとても可愛らしくて、鼻が触れ合うほどに近づいて気持ちを確かめる、というこの行為自体が癖になってしまいました。
アサヒの手が私の肩にそっとのせられて、そのまま私の方へと向き合ってくれました。
初めの頃、このような軽い戯れに慣れていないアサヒは戸惑いばかりでぎこちなかったのを覚えています。
ですが、最近になってやっとアサヒ自身から動いてくれるようになりました。
抱かれ慣れてはいる。
でも、愛されなれていない。
それを知ってから、より私は日々愛情を注いでいます。
少しずつ変わるアサヒを知るたび、私はとても嬉しくなります。
後ろから抱きしめるのも好きですし、そのまま口付けるのも好きです。
ですが、向かい合うとアサヒの可愛らしい表情をつぶさに感じ取れるのでもっと好きです。
アサヒの腕が私の両肩へと回るのが、口付けの合図でした。
柔らかな甘い唇を啄むように口づけると、アサヒもそれに応えてくれます。
こういう時のアサヒは、いつもとても気持ちよさそうにしてくれるんですよ?
私のキスが上手いのではないかと錯覚するほどです。
私もとても気分が良い。
鼻の奥から脳内へと甘い香りが駆け上がり、もっと深くまで味わいたい気持ちをぐっと抑えます。
口付けだけでこのような気持ちになるのはアサヒが初めてです。
アサヒの細い腰を支えて、その体をサイドボードの上へと促すと、軽々と納まってしまいました。
アサヒの身体自体細いのですが、その腰は本当に細いと思います。
神器様だから、というのもあるかもしれませんが、身体の骨組みがもう私たちと違う気がするのです。
それにしても、アサヒの視線の方が少しだけ高いのは、新鮮ですね。
白く美しいアサヒの首筋を視線が捉え、私の下で乱れる姿を思い出してしまいました。
このまま軽い口づけを楽しむのもいいですが、深く甘い口づけに変えても誰も文句は言わないでしょう。
口付けは、口付けですから。
明るいうちから抱くわけじゃありませんし。
深く味わおうと、私がせがむ様に唇を寄せた時でした。
カタリと音が上がったその瞬間、アサヒがビクッと身を震わせました。
同時に息を飲み、視線を自分の右手に向けています。
どうやら、梟の足先とアサヒの手がぶつかってしまったようです。
「ふふっ……ごめんなさい」
アサヒのドキドキして鼓動がてのひらから伝わり、思わず笑いが漏れてしまいました。
もし梟を倒して壊してしまったとしても、私のせいです。
『すげーびっくりした』というアサヒは本当にびっくりしたようですね。
梟のせいで、甘い雰囲気がどこかへ消えてしまったようにも思います。
そのことに少しだけ悔しさが沸き上がりました。
「降ろしてくんね?」
「嫌だと言ったら?」
口では降ろして欲しいと言っても、そうしたくないのはアサヒも同じなのでしょう。
本当に可愛らしい人です。
「このままじゃお前の腕ん中にいても、こいつにずっと気を取られるけど?」
「それは困りますね」
「じゃあ───」
「ベッドとソファとどちらがいいですか?」
アサヒを抱き上げて問うと、アサヒがより可愛らしい顔を見せてくれました。
もう、このまま抱いてしまってもいいのではないでしょうか?
「っベッドは駄目だ」
残念ですね、駄目だそうです。
まあ、アサヒの真面目な性格上、今から抱かれるという選択肢はないのでしょう。
「……仕方ないですね。夜まで待ちましょう」
「そうしてくれ」
「喜んで」
『そうしてくれ』と言ったアサヒは、きっと有言実行です。
嫌だとは言わせませんし、私から誘わなければきっと可愛らしく誘ってくれるでしょう。
一瞬そちらへ、くらりと気持ちが傾いてしまいました。
ですが、アサヒからのお誘いはまた次の機会に楽しみにしておくことにします。
今夜は、私から。
最初から最後まで、心も身体もその全てを甘い優しさで満たしてあげましょう。
「ごめんなさい。アサヒが可愛らしくて、つい」
「………」
アレックスとの通信を終えて、しっかり5秒は経ったときのことでした。
アサヒが耐えきれないような声をあげてきます。
勘弁してくれ、と言いながらも嫌がっていないのはわかります。
ですから、その証拠に、こうやって抱きしめながら謝ると、大人しくなるのです。
本当に可愛らしい人です。
「何を考えているんですか?」
「え?」
いつもよりも黙る時間が長く微動だにしないアサヒが気になりました。
元の世界のことでも、何か思いだしているのでしょうか?
「私の腕の中で私以外のことを考えないでください」
「や、なんか、恋人……まあ、もう夫夫なわけだけどさ。付き合ってこんなふわふわした感情になってんのオリバーだけだなって思っただけ」
「私もこんなに心惹かれたのはアサヒだけです」
他人と比べれられるのは、あまり好きではありません。
過去の経験上、私の方がいつも劣っていたから、というのもあると思います。
『前の彼氏は僕がこうしていたら抱きしめてくれたのに、オリバーはしてくれないのか』だとか、『前の彼氏より本当に見た目だけはいいよね』だとか。
ですが、アサヒがそれをすると複雑な気持ちになります。
アサヒの場合は、いつも逆だからです。
比べられてもいつも私の方が優れているんです。
ですから、たとえ比べられても嫌な気持ちになることはありません。
ただ、その度にアサヒを知っている人がいることに嫉妬するだけです。
恋愛において、相手からのされ待ちを嫌でも学び、年数を重ねる毎に察しは良くなりました。
ですが、アサヒからは殆どそれを感じたことがありません。
寧ろ、私が先に動くととても可愛らしい反応を見せてくれます。
慣れているのに慣れていない、それがとても可愛らしい。
私が抱擁を緩めると、アサヒは肩越しに振り返ってきました。
薄く形の良いアサヒの唇が目に入ります。
その唇を間近にとらえ、誘われるように触れる。
そう、ただ、触れるだけの口づけです。
にも関わらず、甘い苺の香りが鼻の奥まで届くのです。
いつでも欲してしまうほどに、甘く、時に暴力的な程の誘惑にも感じます。
私の理性を毎回試してくれます。
アサヒは、どうでしょうか。
『すげーいい匂い』といつも言ってくれてはいますが、アサヒも同じようになるのでしょうか。
そうだったら、とても幸せなことですね。
今日もほら、こうやって間近に見つめると、アサヒはそっとその瞳を伏せて頬を染めるのです。
その仕草がとても可愛らしくて、鼻が触れ合うほどに近づいて気持ちを確かめる、というこの行為自体が癖になってしまいました。
アサヒの手が私の肩にそっとのせられて、そのまま私の方へと向き合ってくれました。
初めの頃、このような軽い戯れに慣れていないアサヒは戸惑いばかりでぎこちなかったのを覚えています。
ですが、最近になってやっとアサヒ自身から動いてくれるようになりました。
抱かれ慣れてはいる。
でも、愛されなれていない。
それを知ってから、より私は日々愛情を注いでいます。
少しずつ変わるアサヒを知るたび、私はとても嬉しくなります。
後ろから抱きしめるのも好きですし、そのまま口付けるのも好きです。
ですが、向かい合うとアサヒの可愛らしい表情をつぶさに感じ取れるのでもっと好きです。
アサヒの腕が私の両肩へと回るのが、口付けの合図でした。
柔らかな甘い唇を啄むように口づけると、アサヒもそれに応えてくれます。
こういう時のアサヒは、いつもとても気持ちよさそうにしてくれるんですよ?
私のキスが上手いのではないかと錯覚するほどです。
私もとても気分が良い。
鼻の奥から脳内へと甘い香りが駆け上がり、もっと深くまで味わいたい気持ちをぐっと抑えます。
口付けだけでこのような気持ちになるのはアサヒが初めてです。
アサヒの細い腰を支えて、その体をサイドボードの上へと促すと、軽々と納まってしまいました。
アサヒの身体自体細いのですが、その腰は本当に細いと思います。
神器様だから、というのもあるかもしれませんが、身体の骨組みがもう私たちと違う気がするのです。
それにしても、アサヒの視線の方が少しだけ高いのは、新鮮ですね。
白く美しいアサヒの首筋を視線が捉え、私の下で乱れる姿を思い出してしまいました。
このまま軽い口づけを楽しむのもいいですが、深く甘い口づけに変えても誰も文句は言わないでしょう。
口付けは、口付けですから。
明るいうちから抱くわけじゃありませんし。
深く味わおうと、私がせがむ様に唇を寄せた時でした。
カタリと音が上がったその瞬間、アサヒがビクッと身を震わせました。
同時に息を飲み、視線を自分の右手に向けています。
どうやら、梟の足先とアサヒの手がぶつかってしまったようです。
「ふふっ……ごめんなさい」
アサヒのドキドキして鼓動がてのひらから伝わり、思わず笑いが漏れてしまいました。
もし梟を倒して壊してしまったとしても、私のせいです。
『すげーびっくりした』というアサヒは本当にびっくりしたようですね。
梟のせいで、甘い雰囲気がどこかへ消えてしまったようにも思います。
そのことに少しだけ悔しさが沸き上がりました。
「降ろしてくんね?」
「嫌だと言ったら?」
口では降ろして欲しいと言っても、そうしたくないのはアサヒも同じなのでしょう。
本当に可愛らしい人です。
「このままじゃお前の腕ん中にいても、こいつにずっと気を取られるけど?」
「それは困りますね」
「じゃあ───」
「ベッドとソファとどちらがいいですか?」
アサヒを抱き上げて問うと、アサヒがより可愛らしい顔を見せてくれました。
もう、このまま抱いてしまってもいいのではないでしょうか?
「っベッドは駄目だ」
残念ですね、駄目だそうです。
まあ、アサヒの真面目な性格上、今から抱かれるという選択肢はないのでしょう。
「……仕方ないですね。夜まで待ちましょう」
「そうしてくれ」
「喜んで」
『そうしてくれ』と言ったアサヒは、きっと有言実行です。
嫌だとは言わせませんし、私から誘わなければきっと可愛らしく誘ってくれるでしょう。
一瞬そちらへ、くらりと気持ちが傾いてしまいました。
ですが、アサヒからのお誘いはまた次の機会に楽しみにしておくことにします。
今夜は、私から。
最初から最後まで、心も身体もその全てを甘い優しさで満たしてあげましょう。
136
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
目が覚めたら宿敵の伴侶になっていた
木村木下
BL
日本の大学に通う俺はある日突然異世界で目覚め、思い出した。
自分が本来、この世界で生きていた妖精、フォランだということを。
しかし目覚めたフォランはなぜか自分の肉体ではなく、シルヴァ・サリオンという青年の体に入っていた。その上、シルヴァはフォランの宿敵である大英雄ユエ・オーレルの『望まれない伴侶』だった。
ユエ×フォラン
(ムーンライトノベルズ/全年齢版をカクヨムでも投稿しています)
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
男前受け
病み墜ちした騎士を救う方法
無月陸兎
BL
目が覚めたら、友人が作ったゲームの“ハズレ神子”になっていた。
死亡フラグを回避しようと動くも、思うようにいかず、最終的には原作ルートから離脱。
死んだことにして田舎でのんびりスローライフを送っていた俺のもとに、ある噂が届く。
どうやら、かつてのバディだった騎士の様子が、どうもおかしいとか……?
※欠損表現有。本編が始まるのは実質中盤頃です
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
僕に双子の義兄が出来まして
サク
BL
この度、この僕に双子の義兄が出来ました。もう、嬉し過ぎて自慢しちゃうよ。でも、自慢しちゃうと、僕の日常が壊れてしまう気がするほど、その二人は人気者なんだよ。だから黙って置くのが、吉と見た。
そんなある日、僕は二人の秘密を知ってしまった。ん?知っているのを知られてしまった?が正しいかも。
ごめんよ。あの時、僕は焦っていたんだ。でもね。僕の秘密もね、共有して、だんだん仲良くなったんだよ。
…仲良くなったと、そう信じている。それから、僕の日常は楽しく、幸せな日々へと変わったんだ。そんな僕の話だよ。
え?内容紹介が内容紹介になってないって?気にしない、気にしない。
幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について
いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。
実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。
ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。
誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。
「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」
彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。
現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。
それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる