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本編
-476- なりたいもの
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「レン様、難しいお顔してる」
「レン様大丈夫?」
「ごめんね、つい明日のこと考えちゃった。大丈夫だよ」
いけない、子供たちを心配させてしまった。
せっかく一緒にこうしてお昼を共にしてるのに。
今日のお昼は野菜やお肉がたくさん入って栄養満点のかぼちゃのグラタンと、白い丸パンだ。
グラタンって言っても、マカロニは入っていない。
メインがかぼちゃで、鶏肉やブロッコリー人参きのこなんかが入っているホワイトクリームソースの上からチーズがかかっていて、焼き色がついてるものだ。
だから、グラタン、だ。
かぼちゃの甘みとホワイトクリームの甘みとそれからチーズの塩気って凄く合うんだなあと思う。
今日もおいしいご飯で、子供たちも笑顔で食べてる。
レナードの方へちらりと目を向けると、穏やかそうな顔でグレース様や子供たちと談笑しながらフォークを進めていた。
レナードはグレース様と一緒の席にしたのだけれど、正解だったみたいだ。
ここの子供たちは幼くても、きちんと座って食事をすることが出来てる。
行儀がいい子供たちだし、何より察しが良い。
それに思いやりに溢れてる。
たとえ血のつながった親兄弟がいなくても、愛情と繋がりがこの孤児院にはある。
他領は分からないけれど、エリソン侯爵領に一つしかない孤児院で、これだけの人数しかいないと考えると、如何にこの地が豊かであることが認識できる。
戦争がない、紛争がない、大きな災害がない、疫病がない、これらの影響が大きいかもしれない。
そう思うと、鎖国状態だとしても、決して悪いことだけとは限らないんだよね。
生まれなくなったのは魔力の高い女性であって、魔力の少ない女性は普通に生まれる。
平民は、もともと魔力が少ない人たちが多い。
だから市井に住む、民人たちの暮らしには殆どその影響がない。
今は、だ。
お父様が国境を一人で守っているのは安全でありそうで、その実は危ういと僕は思っている。
重い責任を持たされているお父様は、あの性格な上にそれを容易く出来てしまう実力があるからさも簡単そうにしてる。
とても歪な状態だとは思う。
諸外国の戦争がないならば、開国するメリットの方がずっと大きいと思うし、本来の自然な状態だとは思うんだよね。
アレックスが開国主義だろう考えは、お父様の重い足枷を外したいからだとも思う。
今日の席には二人ずつ分かれたから、どのテーブルも子供たちはとても楽しそうだ。
特にヴィオラとブルーノの席はとても賑やかだった。
ブルーノの体術とヴィオラの剣使いに興味深々のようだ。
僕の席は、今回もネロとパーシー、そしてルカが一緒だ。
「レン様ー、レン様は子供のときに何になりたかったの?」
ネロが丸パン両手にしながら、僕に問うてくる。
「ん?僕はね、俳優になりたいって思って、小さい頃から劇団に入っていたよ」
「小さいってどれくらい?」
「ネロとパーシーと同じくらいかな」
「えー?!」
「すごーい!」
「僕ねー大きくなったらねー、お菓子つくるのー」
「良いねー、お菓子屋さんかあ」
「美味しく出来たらね、レン様にあげるの」
「本当?嬉しいなー」
「僕はね僕はねー、おそうじやさん!」
「おそうじやさん?」
「うん!かっこいいの!馬車に立って乗るの!」
「ネロが言ってるおそうじやさんは、肥料を作ってる農家の人のことだよ」
おそうじやさんってどんな仕事かな?と思っていたら、答えはルカから返ってきた。
トイレは水洗だったし、エリソン侯爵邸は基本魔法でゴミが処理されちゃうから今まで気にしていなかった。
通常、エリソン侯爵領では生ゴミを収集してそれを肥料に変えるようだ。
その集める処理をする人は、作業服を着て、魔道具の大きな機械をのせた馬車で各箇所を二人組で回っているらしい。
一人は馬車の操縦を、もう一人が専用の足場に立ち、ゴミを収集して魔道具の機械に入れる作業をするそう。
つまり、元の世界だと、ゴミ収集の作業員ってところか。
エリソン侯爵領では、ごみ収集から肥料を作るのは、農家の仕事のひとつみたい。
まだ見たことのないその馬車に、僕も興味が湧いてくる。
「僕もその馬車見てみたいな」
「闇の日は収集にこないから今日は見られないけど、平日の午前中に来てるよ、たぶん今も」
「そっか」
学校に行ってる間は見られないから、『たぶん今も』なんだろう。
「ルカは何になるの?」
パーシーがルカに尋ねる。
すると、ルカがちょっと難しい顔をした。
「まだ分からないよ」
「なりたいのないの?」
「とくには」
「「えー?!」」
ネロとパーシーのふたりがびっくりしたように声を上げる。
「みんながみんななりたいものがあるわけじゃないでしょ?」
「でも、でも、いいなって思うのもないの?」
「……ないよ」
「えー?ないの?」
「お歌は?ルカじょうずなの!」
「うん、じょうずよ!ルカのお歌はまあるいの!」
「ね?まあるいね!」
「うん!まあるくてあったかいの!」
ネロとパーシーが口々にルカの歌が上手だと褒める。
お歌がまあるいってどういうことだろうか?
そう思うも、ネロもパーシーもまあるいって思ってるみたいだ。
まあるくてあったかい、か。
優しくてあたたかい気持ちになるってことかな?
「…考えてみるよ」
ルカは、なんだか難しい顔をしながらも、ちょっと照れてた様子で小さく呟いていたよ。
「レン様大丈夫?」
「ごめんね、つい明日のこと考えちゃった。大丈夫だよ」
いけない、子供たちを心配させてしまった。
せっかく一緒にこうしてお昼を共にしてるのに。
今日のお昼は野菜やお肉がたくさん入って栄養満点のかぼちゃのグラタンと、白い丸パンだ。
グラタンって言っても、マカロニは入っていない。
メインがかぼちゃで、鶏肉やブロッコリー人参きのこなんかが入っているホワイトクリームソースの上からチーズがかかっていて、焼き色がついてるものだ。
だから、グラタン、だ。
かぼちゃの甘みとホワイトクリームの甘みとそれからチーズの塩気って凄く合うんだなあと思う。
今日もおいしいご飯で、子供たちも笑顔で食べてる。
レナードの方へちらりと目を向けると、穏やかそうな顔でグレース様や子供たちと談笑しながらフォークを進めていた。
レナードはグレース様と一緒の席にしたのだけれど、正解だったみたいだ。
ここの子供たちは幼くても、きちんと座って食事をすることが出来てる。
行儀がいい子供たちだし、何より察しが良い。
それに思いやりに溢れてる。
たとえ血のつながった親兄弟がいなくても、愛情と繋がりがこの孤児院にはある。
他領は分からないけれど、エリソン侯爵領に一つしかない孤児院で、これだけの人数しかいないと考えると、如何にこの地が豊かであることが認識できる。
戦争がない、紛争がない、大きな災害がない、疫病がない、これらの影響が大きいかもしれない。
そう思うと、鎖国状態だとしても、決して悪いことだけとは限らないんだよね。
生まれなくなったのは魔力の高い女性であって、魔力の少ない女性は普通に生まれる。
平民は、もともと魔力が少ない人たちが多い。
だから市井に住む、民人たちの暮らしには殆どその影響がない。
今は、だ。
お父様が国境を一人で守っているのは安全でありそうで、その実は危ういと僕は思っている。
重い責任を持たされているお父様は、あの性格な上にそれを容易く出来てしまう実力があるからさも簡単そうにしてる。
とても歪な状態だとは思う。
諸外国の戦争がないならば、開国するメリットの方がずっと大きいと思うし、本来の自然な状態だとは思うんだよね。
アレックスが開国主義だろう考えは、お父様の重い足枷を外したいからだとも思う。
今日の席には二人ずつ分かれたから、どのテーブルも子供たちはとても楽しそうだ。
特にヴィオラとブルーノの席はとても賑やかだった。
ブルーノの体術とヴィオラの剣使いに興味深々のようだ。
僕の席は、今回もネロとパーシー、そしてルカが一緒だ。
「レン様ー、レン様は子供のときに何になりたかったの?」
ネロが丸パン両手にしながら、僕に問うてくる。
「ん?僕はね、俳優になりたいって思って、小さい頃から劇団に入っていたよ」
「小さいってどれくらい?」
「ネロとパーシーと同じくらいかな」
「えー?!」
「すごーい!」
「僕ねー大きくなったらねー、お菓子つくるのー」
「良いねー、お菓子屋さんかあ」
「美味しく出来たらね、レン様にあげるの」
「本当?嬉しいなー」
「僕はね僕はねー、おそうじやさん!」
「おそうじやさん?」
「うん!かっこいいの!馬車に立って乗るの!」
「ネロが言ってるおそうじやさんは、肥料を作ってる農家の人のことだよ」
おそうじやさんってどんな仕事かな?と思っていたら、答えはルカから返ってきた。
トイレは水洗だったし、エリソン侯爵邸は基本魔法でゴミが処理されちゃうから今まで気にしていなかった。
通常、エリソン侯爵領では生ゴミを収集してそれを肥料に変えるようだ。
その集める処理をする人は、作業服を着て、魔道具の大きな機械をのせた馬車で各箇所を二人組で回っているらしい。
一人は馬車の操縦を、もう一人が専用の足場に立ち、ゴミを収集して魔道具の機械に入れる作業をするそう。
つまり、元の世界だと、ゴミ収集の作業員ってところか。
エリソン侯爵領では、ごみ収集から肥料を作るのは、農家の仕事のひとつみたい。
まだ見たことのないその馬車に、僕も興味が湧いてくる。
「僕もその馬車見てみたいな」
「闇の日は収集にこないから今日は見られないけど、平日の午前中に来てるよ、たぶん今も」
「そっか」
学校に行ってる間は見られないから、『たぶん今も』なんだろう。
「ルカは何になるの?」
パーシーがルカに尋ねる。
すると、ルカがちょっと難しい顔をした。
「まだ分からないよ」
「なりたいのないの?」
「とくには」
「「えー?!」」
ネロとパーシーのふたりがびっくりしたように声を上げる。
「みんながみんななりたいものがあるわけじゃないでしょ?」
「でも、でも、いいなって思うのもないの?」
「……ないよ」
「えー?ないの?」
「お歌は?ルカじょうずなの!」
「うん、じょうずよ!ルカのお歌はまあるいの!」
「ね?まあるいね!」
「うん!まあるくてあったかいの!」
ネロとパーシーが口々にルカの歌が上手だと褒める。
お歌がまあるいってどういうことだろうか?
そう思うも、ネロもパーシーもまあるいって思ってるみたいだ。
まあるくてあったかい、か。
優しくてあたたかい気持ちになるってことかな?
「…考えてみるよ」
ルカは、なんだか難しい顔をしながらも、ちょっと照れてた様子で小さく呟いていたよ。
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