異世界に召喚された二世俳優、うっかり本性晒しましたが精悍な侯爵様に溺愛されています

日夏

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本編

-47- みんなの居場所

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「僕はアレックスのことがちゃんと好きだよ。ここにいてもいい?」
「ああ。ずっといてくれ」

腕を緩めて、アレックスをのぞき込むと照れくさそうに笑ってくれた。
アレックスは、僕を初めてみた時から欲しいって思ってくれたんだ。
神器だからじゃないって、僕だからだって、そこも嬉しい。

元の世界には帰りたいと思ってたけれど、でもね?
もう、アレックスを好きになっちゃったから、たとえ元の世界に帰れるとしても、アレックスと離れるのは嫌だよ。
それに、戻れないっていうのもわかってる。

元の世界の…父さんと母さんと、皆、すごく心配をかけていると思うけれど、心配しないで、とは言いたい。
僕は、元気にしているから。好きな人を見つけたからって、言いたい。

それに、ここでだって、役者を続けていけそうだ。
前は、僕と家族とファンのために役者をやっていた。
ここでは、僕とアレックスのために役者をやるんだ。

「えーと、お二方とも、そろそろ俺の話もいいですかね?」

セオが、おもむろに声をかけてくる。

「…なんだ」
むすっとした声がアレックスから上がった。
腕は僕の背に優しく回ったままだ、照れ隠しかもしれない。

「えー、まず、レン様にご報告です。レン様が探していた神器様方ですが、居場所がわかりました」
「え、もう?」
「そりゃあ、直接ルーカス様まで聞きに行っきましたからね。まだ帝都に入る前だったし、すぐ捕まりましたよ」
「どこにいるの?」
「全員帝都に。なんと全員アレックス様の懇意にする人達だったから、安心してください」

アレックスの懇意にする人達か、それだけで少し安心する。
僕だけがこんな優遇されてたら心が痛い。

「は?誰だ」
胸をはって答えるセオに、アレックスが怪訝そうに返した。

「誰って、言わなくても察しがつくでしょー?
帝都の屋敷をお貸してるワグナー子爵の三男、ワグナー様に、誰もが知るキャンベル商会の商会長キャンベル様、そして、三公にして奇人と謳われるスペンサー公爵様」
「はあ?や、待て待て、オリバーとコナーは、まあ…分からなくないがスペンサー公…って、師匠が?帝都にいんのか?」

「そーです、結構転々としてたらしいんだけど、今帝都で流行ってるプリンにはまったらしいです」
「は?プリン?」
「はい。で、帝都のはずれに小さな家を借りて、菓子店にいそいそと通っているって噂」
「なにやってんだ、あの人……」

「なんでも、その神器様ってのが、属性鑑定で無が出たらしくてですね、前代未聞。
それで、どうしようかって思ったらしいんだけど、スキルに、菓子職人と家事があったから、スペンサー公に届けたら喜んで引き受けてくれたって話です。
属性も、スペンサー公に言わせると精属性だったとか。あるんですねー、人間で精属性!精霊ですよ、精霊!やーさすが神器様」

「精霊…、マジか……、や、てか、オリバーは?あいつ神器なんていりませんっつって、あり得ない凄い要求出したって聞いてるぞ?」
「その、ありえない要求が全部通った方らしいですよ?年が近く美しく肌が白く、属性は水と木と土の三属性持ち、スキルに薬と薬草の鑑定、調合に、交渉」
「…すげーなそりゃ」
「なので、アレックス様があとで連絡とってみてください」
「ああ、わかった」

色々とわからないことが多いけれど、みんなアレックスの懇意にしている人たちで、3人にはすぐに会えそうだっていうのがわかっただけでも良かった。
僕が知らない人でも、僕が信じてる人の懇意にしてる人なら、信じられる。

「あー、あと、それとですねー」
ガツン、ガツガツ
セオが言いにくそうにまだ話を進めようとすると、バルコニーの窓ガラスがガツガツと叩かれる。
目を向けると、烏だった。

「あ、やべ」
アレックスがつぶやいて、僕のそばを離れて慌ててバルコニーの扉をあけると、一羽の烏が入ってきた。
そのまま、アレックスめがけてガツンっと頭をつつく。

「痛えー……」
『アレックス!仕事中戻るのは良いけど、通信切るのはよくないぞ!心配するだろ!…その様子なら大丈夫そうだね』
「あー、悪い…ちょっと色々あって、そっち戻れそうもない、です」
『戻れそうもないんじゃなくて、戻りたくないだけでしょー?全く。まー心優しい僕が、今日だけ、特別に許してあげるけど。
帰りの記録ついてないから、今日泊りってことにしておくからね?明日は直接部屋に入りな』
「ありがとうございます」

烏が喋ってる。もう、なんでもありだ。
戻る戻らないって、そうか、アレックス、セバスが呼んで、瞬間移動でこっちにきちゃったんだっけ。
でも、なんで、本人じゃなくて烏なんだろう?
アレックスが敬語ってことは、アレックスの上司かな?
上司にしては、気軽な感じがするけれど。

『でも、よかったねー、アレックス!泣いちゃうほど愛しい人が出来て、僕は嬉しいよ!』
「はあ?おい、どこから見てたんだ!?」
『いやあ、感動したよ、本当に。もう、僕まで嬉しくて涙が流れそうになったね!直接見えないのが残念だ』
「勘弁してくれよ」

烏が両羽を広げて躍るようにぴょんぴょん跳ねてる。
アレックスが真っ赤になって、それを目にしたセオの笑い声が耳に入ってくる。
セオは笑い上戸だ。
烏がくるっと僕の方を向くと、綺麗に礼をしていた。
ボウ・アンド・スクレープだ。
僕も、舞台の最後の挨拶で何度もやっていた仕草。

『はじめましてレン君。こんな姿で失礼。僕はアレックスの学友で現在は上司、魔法省で副官をしているユージーンだよ。
今度、魔法省に遊びに来てね』
「レン=ミズハラです。あの、今日は、僕のせいでご迷惑おかけしてすみません。はい、直接お会いできるのを楽しみにしています」
『……ひゃー!あー…うん、遊びに来てとはいったけど、うん。駄目だ、こっそりくるか、内緒でくるか…』

内緒もこっそりも同じじゃないの?と疑問を持ってると、復活したアレックスが僕の肩を抱いてくれる。

「連れてけるわけないだろ、あんな巣窟!
遊んでないで、仕事しろよ、仕事」
『はいはい、戻る戻る。じゃ、アレックスまた明日。
あんまり頑張って、寝不足になるんじゃないよ、腰振りすぎて痛めないようにねー』
「黙れ!」

烏は器用にバルコニーの扉を開けて、一度くるっと向きをかえる。
手を振るように羽を広げてから、飛び去っていった。

急に静かになった部屋に、最初に言葉をかけたのは、アレックスだった。

「あー…それで、セオ、さっき言いかけた話はなんだ?」
「や、副官長の使役した烏が来てますよ、と」

「そういうことは、先に言ってくれ!」
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