異世界に召喚された二世俳優、うっかり本性晒しましたが精悍な侯爵様に溺愛されています

日夏

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本編

-222- 大満足のフルコース

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「スープでございます」
「ああ。久しいな、これは」
「綺麗な色だね」

続いてスープが目の前に置かれる。
うっすら桃色の可愛い色したスープは、透明でとても綺麗だ。
具はないのに、味はいろんな野菜や旨味が詰まってる。
甘さの強いコンソメベースの玉ねぎスープみたいな感じで、これも凄く美味しかった。

「エスカルゴンのソテーでございます」
「これも久しいな、天候が良かったのに……てか、うちの領で見つかったのか?」
「夕方運送ギルドを通してバークレイ子爵からの贈り物として届けれられました。森で遭遇したので是非とのことです、ご入籍のお祝いだと」
「早いな、相変わらず」
「場所によるものかもしれませんが、情報も行動もいち早いお方ですね」

色々と疑問が浮かぶけれど、エスカルゴンっていうのは天候がいいと手に入りにくいもので、そもそもエリソン侯爵領ではあまりいないものみたいだ。
それでもって、森で遭遇することもある……うん、見た目はどうみても、大ぶりなホタテの貝柱だ。
バターの香りがして凄く美味しそう。
でも、エスカルゴンっていうくらいだから、動物か、魔物なんだろうなあ。

「エスカルゴンって何?」
「エスカルゴが魔物化したものだ。養殖が難しいらしく、野生にしかいない。
雨が降った次の日に出てくることもあるが、単体で行動してるため中々見つかることが少ないんだ。
でかいんだが、エスカルゴと違ってかなり素早いんだ」
「え?見た目はかたつむりだよね?」
「カタツムリ?見た目はエスカルゴがデカくなっただけみたいに見えるし、人を襲うようなことはなく、食い物はどうやら苔らしいんだが。なんせ……素早いんだ、本当に」
「そんなに早いんだ?……え、でも、そんな貴重なものなの?」
「ああ。市場に出回ることはめったにない。味はエスカルゴと違って、旨味がある。久しぶりに食うな」

アレックスが笑みを浮かべながら口にする。
凄く美味しそうに食べるから、それだけで美味しい。
うん、見た目もホタテだけれど、味もホタテだ。
とっても美味しい!

「エスカルゴと違って、生でもうまい」
「これ、ホタテにそっくりだけれど、生でも食べられるなら、まんまホタテだね」
「そうか?ああ、風味は似てるか……ホタテは生で食わないな、こっちじゃ」
「そうなの?帝都だと海産物も多いんでしょう?」
「ああ。出回ってるが、魚介は基本すべてに火を通すぞ。生はよっぽど……塩漬けがあるか、あれは生だ」
「そっか」
「海側の地方ならとれたてで生を食う文化もあるが、一般的な食い方じゃない」

なるほど。鮮度の問題らしい。
確かに、氷も貴重なくらいだ。
運送に気を付けていても生食は厳しいのかもしれない。

「魚介は好きか?」
「うん、嫌いじゃないよ?でも、どちらかといったらお肉の方が好きかな」
「そうか」
「うん」

うーん、僕も何となくアレックスの言動の先が読めるようになってきた。
僕が好きだと言ったら、また市場に行くと言い出しかねない。
現に、またセバスが変な顔してたもん。
僕が答えたら、ほっとしたような顔をした。
それに、魚と肉とじゃ、肉の方が好きだ。
お寿司は別だけれど、煮魚や焼き魚よりは、肉の方が好きなのは事実だ、嘘は言ってない。

その後も、エリソン侯爵領で取れる食べ物の話や、生産の話をアレックスはしてくれた。
帝都で出回ってるものの違いにも語ってくれたよ。
もちろん、言動には気を付けた。
帝都で出回ってる物に関しては、食べたい発言はしなかった。
それに、エリソン侯爵領で作ってる物のほうが興味ある。
流行のスイーツだって、流行だから食べたいって気にはならない。
流行より、季節のものを使ったイアンの手掛けるスイーツの方がずっと楽しみだ。

口直しのソルベは、今日はベリー系のソルベで、これもとっても美味しくて、口の中がさっぱりしたよ。
アントレの肉料理は、鶏肉の蜂蜜マスタードソースで、これもとても美味しかった。
もも肉で柔らかくて、皮がぱりっとしていて、さっぱりしてるのにしっとりやわらかで脂がのってた。

サラダは、ハーフリースのように華やかに盛り付けられていて、見た目も綺麗だし味も勿論文句なしの美味しさだった。
これも、アレックスが好きなビーンズやナッツが入っていて、ビーンズっていっても、枝豆だ。
ナッツはクルミだった。
どちらも馴染みあるものだったし安定の美味しさがあって、クリーム系のドレッシングソースもあってた。


そして、お待ちかねのデザートだ。
「これも久しいが……こんな盛り付けは初めて見る」
「綺麗だね!」
「蜂蜜のミルクアイスでございます」

大きな白いお皿に、アーモンド形のまっしろなアイスと、三色のクリーム、あとはホワイトチョコかな?
それと、目を引くのが蜂の巣の形をした、はちみつ色した薄い飴細工の飾りだ。
それに、一粒ずつ楕円の黒い小さな粒と、エメラルド色した小さな粒が並んでる。
どちらも人差し指の爪くらいの大きさで、ぴかぴかしていて、宝石みたいだ。
僕ら2人のブローチを模してくれたみたい。

「レンが来てから、イアンもマーティンも作り甲斐があるらしい」
「無理させてないならいいんだけれど……ん!美味しい!優しい甘さでさっぱりしてる!」
「ないとは思うが?」

ちらりとアレックスがセバスに目を向けると、セバスが軽く頷いてくる。
大丈夫みたい。

「無理はしていないと思いますよ?二人とも好きでやってるようですから」
「ならよかった」



最後にあたたかくておいしい紅茶を飲みながら、ほっと息を漏らすと、セバスとアレックスが嬉しそうに笑みを浮かべる。
お腹いっぱいだ。
心もお腹も満たされて、幸せな気分になった。
お腹いっぱい食べるのは良くないって言うけれど、どれも美味しくてぺろっと食べちゃった。

「ささやかどころか、凄く贅沢な時間だったね」
「ああ、どれも久しぶりに口にしたが、見た目は初めてなものばかりだったな……戻りたくないが、少し問題があって帰りは遅くなりそうだ。
今日は先に休んでいてくれ」
「そっか……」

昨日の今日でえっちはできないかもだけれど、さわりっこくらいいいよねって思ってたのに残念だ。
先に寝ていいくらいには遅くなるってことだ。
本当は帰りを待ちたいけど、僕が寝ずに待っていたら、プレッシャーになるかもしれない。

この時期は領も仕事場も忙しいって言っていたし、昨日のようにまるっと時間が取れるのは今後難しいとも言ってたもんね。

「戻ってはくる?」
「ああ」
「じゃあ、その時は隣で寝てね?」
「わかった」

アレックスの忙しさを少しでも手助けできるよう、僕なりに頑張ろう。
触れるだけの口づけを受けながら、僕は何度か感じた決意を再度胸にしたよ。
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